ブンデスリーガでは開幕から4試合で4ゴール。得点ランキングでもトップタイに立つなど、フライブルクで充実のスタートを切っている鈴木唯人。日本代表でも先発の機会をつかみ、大きな手応えを感じているのかと思った。
ところが、10月1日に行われたエクアドル戦後に本人から返ってきた言葉は「ボチボチだったんじゃないかな」。さらに「めちゃくちゃしっくり来てるかって言われたら、まあ、もうチョイ」と続けた。
ゴールが取れていないからなのかと思えば、本人は「点とかはそんな気にしてない」と言う。
では、日本代表で感じている“もうチョイ”とは一体何なのか。
フライブルクとは違う代表の役割
フライブルクで鈴木が主にプレーしているのは、4ー2ー3ー1のトップ下だ。
右ウイングのヤン・ニクラス・ベステ、ストライカーのイゴール・マタノビッチ、左ウイングのデリー・シェアハント。前線の3人と距離を取りながら、前後左右に動いてボールに触り、ドリブルを織り交ぜて攻撃の糸口を探る。
一方、日本代表は3ー4ー2ー1で、鈴木は左シャドーとしてプレーする。フライブルクのトップ下とは異なり、2シャドーの選手同士やセンターフォワード、左ウイングバックとの距離は近い。一人で局面を打開するだけではなく、周囲との距離や動き出し、タイミングを合わせながら攻撃を組み立てる場面が増える。
鈴木自身も9月24日のウルグアイ戦後に「フライブルクと全く同じようなプレーをして、ここでいいプレーができるかっていったらそうではない」とフライブルクと代表の違いについて話している。
周囲も、やり方も違う。だからこそ、フライブルクで結果を出しているプレーを、そのまま代表に持ち込めばいいわけではない。
では、その違う環境の中で、鈴木は周囲との関係をどう作っているのか。
久保建英との距離も縮まった
その変化はウルグアイ戦から見え始めていた。
2シャドーの位置から降りて中村敬斗や田中碧と絡む場面も見せる。準備期間がほとんどなかった中で、「相手の立ち位置見ながら動こう」と考えてプレーしていたという。試合後には周囲との関係性について、「お互いやりたいことも、タケも含めてですけど、イメージの共有はだいぶ出来てんじゃないかな」と手応えを口にしていた。
その感覚が、10月1日のエクアドル戦では、より具体的なプレーとして表れている。
24分、田中碧から縦パスが入ると、谷村海那がポストプレーでボールを落とす。そこに鈴木が入り込み、右足でフィニッシュ。シュートは枠を外れたものの、前線からの落としを受けて最後まで攻撃に絡んだ。
そして、象徴的だったのが46分だ。ボールを受けるために久保建英が下がる。それに合わせて鈴木が背後のスペースへ走り込み、そこへ久保から絶妙なスルーパスが通る。最後はトラップが長くなったものの、久保が落ちれば鈴木が裏を狙うというイメージは共有されていた。鈴木も「イメージはお互い合ってた」と振り返る。
65分には、左サイドで中村敬斗、堂安律とつなぎ、堂安のグラウンダーのマイナスのクロスを上田綺世が落とす。そこに鈴木が入り込み、右足でフィニッシュ。GKの正面だったが、周囲の動きに合わせて最後の局面まで入っていった。
こうしたプレーを振り返り、鈴木は周囲との関係について「少なからず良くなってきてる」と話している。ウルグアイ戦で見え始めたイメージの共有が、エクアドル戦では久保との関係性から裏への動き出しにつながり、中村、堂安、上田との連動という形になって表れた。
まだ、すべてが自然につながるわけではない。だからこそ鈴木は、「一緒にプレーする時間が増えていけばもうチョイ面白くなっていく」と話す。
「僕自身は僕自身」
そして、これからの日本代表を考えたとき、鈴木が立つ左シャドーというポジションにも目が向く。
これまでこの位置を担ってきた南野拓実が長期離脱中。前回のワールドカップでも左シャドーの人選は継続的な課題の一つとなっただけに、アジアカップでこのポジションを誰が担うのかは一つのテーマになる。
鈴木がこの位置にさらにフィットしていけば、日本代表にとって新たな選択肢になる。ただ、本人は誰かの代役になろうとしているわけではない。
「僕自身は僕自身。全然違う選手だと思うので」
ワールドカップではチュニジア戦の1試合、12分間の出場にとどまった。
「もう別にそんな気にしてないですし。日頃やってることしか出ないんで、特別いつも通りやろうって感じで出た」
あれから時間が経ち、今はドイツで充実した時間を過ごしている。そして、日本代表では周囲との関係性を一つずつ築いている。
「もうチョイ、まだまだできるかなと思います」
4戦4ゴールの男が、日本代表ではまだ「もうチョイ」と言う。その「もうチョイ」の先に、どんな鈴木唯人が見えてくるのか。
取材・文=川嶋正隆

