ワールドカップ開幕を目前に控えた日本代表にとって、これ以上ない朗報と言っていいだろう。
冨安健洋が戻ってきた。
日本最高峰のディフェンダーは、この数年間、度重なる負傷との戦いを余儀なくされてきた。その能力に疑いの余地はない。それでも、ピッチに立ち続けることができなければ、チームに力をもたらすことはできない。だからこそ、日本代表にとって冨安の復帰は、単なる戦力の上積み以上の意味を持つ。
約2年ぶりに代表のピッチに立ったアイスランド戦では、83分間にわたって安定したプレーを披露。高いパス成功率や対人守備の強さなど、改めてそのクオリティの高さを示した。一方で本人は、自身の出来よりもチームの課題に目を向けていた。
ワールドカップで勝つために何が必要なのか。そして、長年最終ラインを支えてきた吉田麻也から何を受け継いでいくのか。復帰戦後に語った言葉から、冨安の現在地を探る。

83分間で示した、自分が選ばれた理由
冨安健洋にとって、この試合はW杯本番前、最初で最後のアピールの場だった。
先発出場した冨安は83分までプレー。約2年ぶりの日本代表戦とは思えないほどの落ち着いたプレーで最終ラインを支えた。スタッツを見ても、76本中69本のパスを成功させ、成功率は91%を記録。デュエルでも5回中3回で勝利を収めた。
特にビルドアップでは安定した配球を続け、攻撃の起点として機能。守備面では前半41分、アイスランドのカウンターに対して持ち味のスピードを発揮し、決定機を未然に防いだ。さらに後半アディショナルタイムにはCKの流れからボレーシュートを放つなど、攻守両面で存在感を示している。
久しぶりの代表戦という状況についても、本人はいたって冷静だった。
「デビュー戦、怪我の復帰戦っていうのは……感傷に浸るものかなと思ってたら、まあ試合なんで、そんな暇もないですし」
復帰そのものではなく、目の前の試合に集中する。冨安らしい姿勢が、ピッチ上のプレーにも表れていた。
久保・堂安をどのように生かすか

長い時間プレーしたことについても、冨安自身に不安はなかった。
「別に長くプレーすることに関しては、特に。ずっと練習を見てきてたんで、そこの積み上げはあるかなっていうふうには思ってた」
コンディション面への手応えを口にした一方で、試合内容については満足していない。
「連係のところにもなるかもしれないですけど、特に攻撃のところで、もうちょっと(堂安)律とかタケ(久保建英)とかのところをシンプルに使ったりとか、彼らはクオリティがある選手たちなので、そういう選手たちをもっと気持ちよくプレーさせることができればよかったなというふうには思います」
冨安が挙げたのは、前線のタレントをより生かすためのボールの動かし方だ。堂安や久保といった個の力を持つ選手たちへ、より良い形でボールを届けること。その質を高めることが、チーム全体の攻撃力向上につながると考えている。
また、守備面や組織面についても、今後は自らがより積極的に声を出し、リーダーシップを発揮していく必要性を感じているという。カウンターを受ける場面を減らすためのリスク管理も含め、本戦に向けて改善すべきポイントは少なくない。
「思い出作りに来てるわけでもないんで、そこは選手としてピッチに立ってる以上、その責任っていうのはありますし、ピッチに立てない選手もちろんいる中で選んでもらってるんで、そこは選手としてやるべきことをやる」
ワールドカップ開幕まで残された時間はわずか。冨安はチームを勝たせるために何ができるかを見据えている。
背番号22に込めたリスペクト
このアイスランド戦では、もう一つ注目すべき場面があった。長年日本代表の最終ラインを支えてきた吉田麻也との共演である。
13分間という短い時間ではあったが、冨安と吉田が再びセンターバックで並ぶ姿が実現した。
今回、冨安は本戦で着用する22番ではなく15番を背負ってプレーした。吉田が招集されたことを受け、自身の背番号を譲った形だ。
19歳で代表デビューして以来、冨安は長く吉田の隣でプレーし、多くを学んできた。その関係性は今回のコメントからも伝わってくる。
「いい意味で違和感なくというか、普通に今日の試合も隣でできましたし、本当にこういう引退試合をされるべき存在ですし、僕は19歳で(代表に)入ってから、ずっと麻也さんの隣で学ばさせてもらいながらプレーしてきたので、今日こうして僕も同じピッチに立ててよかったなっていうのは本当に強く思います」
日本代表で長くキャプテンを務めた吉田への敬意は、冨安の言葉の随所に表れていた。
「いい時間だったなっていうふうに思います」
吉田が長年背負ってきた22番。その番号を託されている冨安にとって、この日の共演は特別な時間になったはずだ。

