声は、チームの空気を変える。感情を内に秘めず、仲間に伝えることで生まれるエネルギーがある。第4回は、ポジティブさと表現力で周囲を動かす“外向型リーダー”の価値に迫る。
高校サッカー界屈指の注目CB

今、高校サッカー界で最も注目度の高いCBの一人と言っていいだろう。
流通経済大柏の新3年生、メンディーサイモン友は、187cmのサイズと跳躍力を生かした高い打点のヘディングと、両足から繰り出される正確なキックを武器に、一発で局面を変えるフィードやFWの裏抜けを逃さないスルーパスで攻撃のチャンスを創出する力を持つ。
元FWで、昨年はFWとCBの両方を高いレベルでこなしたように、スピードとシュートセンスも兼ね備える。まさに陸空、攻守に関わる万能型アスリートだ。
その実力から、多くのJリーグクラブが関心を寄せている。今年初めにはジュビロ磐田とジェフユナイテッド千葉の練習に参加し、攻守両面で持ち味を発揮して高い評価を得た。
“内に秘めない”という強さ
彼の魅力は高いアスリート能力だけではない。前向きで非常にポジティブな性格こそが、大きな武器となっている。
どうしても闘志や主張を持っていても、多くの選手はそれを内に秘めてしまう。もちろん、それは決して悪いことではない。「多くを語らず」で黙々とプレーし、世界の舞台に立つ選手も多い。
だが、全員がそうなってしまうと、チームに活力や前へのエネルギーは生まれない。
筆者は、青森山田高の正木昌宣監督が選手たちに口にしていた「内に秘めるな」という言葉が印象に残っている。サッカーはチームスポーツであり、仲間を鼓舞し、雰囲気を変える存在が必要だ。
内に秘めずに表現し、周りに伝える。その体現者こそがメンディーである。彼は常に大きな声で周囲を鼓舞し、良いプレーには全力で称賛を送り、伝えるべきことははっきりと言葉にすることができる。
さらにピッチ外ではムードメーカーに徹し、周囲を盛り上げてコミュニケーションが取りやすい環境を作る。彼の周りには自然と人が集まってくる。
ポジティブさと向き合った時間

「もともとの明るい性格もあると思うのですが、どの環境に行っても自分を出すことは大事にしています。サッカー中でもオフでも、自分の長所は出していかないといけないと思っています。見ている人にどのようにプラスの影響を与えられるかが大事だと思って行動しています」
もちろん、最初から今のような振る舞いができていたわけではない。高校に入るまでは、ただの明るいキャラクターだった。しかし、流通経済大柏という高いレベルの環境の中で、自分はどうあるべきかを考えるようになった。
時にはその考えがまとまらず、自分をうまく表現できなかったり、違う方向に出てしまったりすることもあった。
それでも、榎本雅大監督や高橋隆コーチは彼の持ち味を尊重しながら、「その明るさをどうチームのプラスにしていくのか」を問い続けた。
FWでの起用や、昨年のプリンスリーグ関東2部終盤でのセカンドチームキャプテン任命など、責任ある立場を与えることで、彼のポジティブさをプレーや振る舞いに繋げるよう導いていった。
ピッチ内外で示した影響力
もともと人に頼られることが好きで、仲間との絆を大切にする性格もあり、彼は昨年1年間でプレー面でも人間性の面でも大きく成長した。
トップとセカンドチームを行き来する中でも、着実に経験を積み重ね、成長のステップを踏んできた。
さらに11月のU-17日本代表では不動のCBとしてベスト8進出に貢献しただけでなく、ピッチ外でも存在感を示した。宿泊先ホテルが一緒だったメキシコ代表との交流では、持ち前の明るさで関係を築き、チーム同士の交流へと発展させた。
「場を盛り上げるのが得意ですし、言われるよりは自分が先に動くタイプなんで」
その言葉通りの行動力で、ピッチ外でもチームに価値をもたらした。
リーダーとしての現在地とこれから
今年、彼は高校ナンバーワンCBとして注目されるだけでなく、チームのキャプテンに就任。U-18日本高校選抜、U-18日本代表でも中心選手として存在感を放つ。Jヴィレッジカップでは優勝に貢献し、大会MVPにも輝いた。
「声を出したり、場を盛り上げたりすることはナチュラルにやれていますが、その分、言われる覚悟もできています。自分のプレーが悪くて落ち込むと、チームの雰囲気も悪くなってしまう。だからこそ、どんな時でもポジティブに振る舞うことを大事にしています」
今後はU-18日本高校選抜の欧州遠征に加え、ベルギーの名門・RSCアンデルレヒトへの練習参加も控える。
「まずは海外を体感して、その上で自分にとってどの道がいいのかを考えたいと思っています」
内に秘めない熱さと、冷静な自己分析。
その両方を併せ持つCBは、自らの現在地を見据えながら、次なるステージへと歩みを進めていく。
取材・文=安藤隆人
大学卒業後、地元の第一地方銀行に就職するも、フリーサッカージャーナリストとして週末だけ活動。2005年7月に5年半勤めていた銀行を辞め、単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は40を超える。本の著作・共同制作は14作。最新作は『ドーハの歓喜 2022 世界への挑戦、その先の景色』と早川史哉の半生を描いた『ともに歩き出す』(徳間書店)。NumberWebで11年連載などの執筆活動以外にも講演・講師活動と、東海大学リーグ1部に所属する名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターを兼務する。W杯も2大会連続取材予定。
ユース教授・安藤隆人の「育成ノート」

