W杯ベスト16の壁、その先へ――PK戦で問われる“蹴る覚悟”と小川航基の価値

 「次のワールドカップで点を決めるのは僕です」 

プロ8年目を迎えた2023年夏、そう宣言して海を渡ったFW小川航基が、初めて臨むW杯での“有言実行”に向け、ゴールを奪うイメージをふくらませている。

■「ここに懸けていた」つかみ取ったW杯の切符

 森保一監督率いる日本代表が、千葉県内で北中米ワールドカップ(W杯)に向けて始動。 トレーニング3日目を迎えた5月28日、全体練習後に入念な室内トレーニングを行い、最後に取材陣の前に姿を見せたのは、自身初のW杯出場に意気込む小川だった。

「(決まるまでは)やっぱりそわそわしてたし、今までに感じたことのない気持ちで過ごしていた。素直に嬉しかったし、それだけここに懸けてたんだなって思いました」

 メンバー発表までの胸中を率直に振り返る小川だが、ここに辿り着くまでの道のりは決して順風満帆ではなかった。

 “超高校級ストライカー”として大きな期待を背負いながらも、プロ入り後は思うように結果を残せない時期が続いた。2017年にはU-20W杯で左膝前十字靭帯損傷および外側半月板損傷の大怪我を負い、長いリハビリ生活も経験。ピッチに立てない苦しさと向き合いながら、それでも前を向き続けてきた。

 だからこそ、ようやく辿り着いた夢の舞台への思いは、誰よりも強い。

「オランダに渡ってからも、正直納得のいく結果を残せてないし、代表でも、ただ選ばれただけで何も始まってない。何のために海外に渡ったのかをしっかり考えて、この大会で暴れたい」

 2024年3月以降、日本代表に継続して招集され、14試合10ゴールという結果を残してきた。それでも、その表情に慢心の色は一切ない。

■得意のPKは「2つくらいやってきたものがある」

「口だけになるつもりは全くなかったし、言うことを決めてたわけじゃないんですけど。横浜FCに関わるみんなのおかげで自分は活躍できたので、あの場で何か決意表明をしたいという思いの中で、ああいう言葉がぱっと出た」

 オランダ1部・NECナイメヘンへの移籍が決まった2023年7月、当時所属していた横浜FCのセレモニーで「次のW杯で点を決める」と、小川は力強く宣言した。 

 そんな小川が“ゴールで証明する”上で、一つ重要な局面として見据えているのがPKだ。

 2022年のカタールW杯では、日本代表は決勝トーナメント1回戦でクロアチアにPK戦の末に敗戦。さらに2010年の南アフリカW杯でもパラグアイにPK戦で屈しており、ベスト16の壁として“PK”は長年の課題となっている。

 だからこそ、小川のような“決め切れるキッカー”の存在は、大舞台において大きな意味を持つ。

 実際、小川はプロ入り後、PKを一度も外していない実績を持つなど、この局面において高い信頼を誇るストライカーだ。

 「試合の中でもPKのシーンはあるし、PK戦になる可能性もある」 FWとして理想は流れの中でゴールを奪うこと。それでも勝敗を分ける一撃になり得るPKの重要性を、小川は強く理解している。 「あんまり話さない方がいいかな」と笑みを浮かべながらも、その裏では入念な準備を積み重ねている。

「僕自身、森保監督から練習するように言われてきた中で、しっかり考え抜いて、2つくらい……やってきたものがあるので、自信はあります。もちろんシチュエーションによって変えることも考えてますし、スタジアムの雰囲気だったり、キーパーの特性だったりもある」

 流れの中でのゴール、そして勝負を決める一撃。その両方を託せる存在として、小川は大舞台に挑む。

 かつて掲げた言葉を現実に変えるために――その右足に、日本の未来がかかる瞬間が訪れるかもしれない。

取材・文=青木ひかる
編集=川嶋正隆

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超ワールドサッカー編集部
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