なぜ吉田湊海は一瞬で決められるのか。勝負を分ける“ボールフォーカス力”の本質|ユース教授・安藤隆人の「育成ノート」

良いストライカーの定義とは何か。それは当然ゴールを決めることができる選手となるが、そこに必要な要素がいくつかある。その中で1つ挙げるとするなら、ゴール前でのボールの動きを瞬時にフォーカスできる力だ。

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ゴール前で問われる“ボールフォーカス力”

良いストライカーの定義とは何か。それは当然ゴールを決めることができる選手となるが、そこに必要な要素がいくつかある。その中で1つ挙げるとするなら、ゴール前でのボールの動きを瞬時にフォーカスできる力がある。

ワンタッチゴールやワントラップシュートなどでこの力が求められるように、クロスの軌道の把握だけではなく、こぼれ球、ディフレクションや接触プレー、ピッチコンディションの影響などにより予想外の動きをしたボールを瞬時に目で捉え、身体を反応させる。この力が長けているストライカーは非常に能力が高い。

前置きが長くなってしまったが、高円宮杯プレミアリーグEASTの帝京長岡vs鹿島アントラーズユースの取材に行った際に、鹿島ユースのエースストライカー・吉田湊海のプレーを見て、その能力の高さを感じ取った。

一瞬の判断が生んだゴール

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すでにプロ契約済みで、一昨年度は1年生ながらプレミアEASTで得点王(10ゴール)、昨年度はプレミアEASTで得点ランキング3位の13ゴールを叩き出したストライカーは、この試合でも大暴れをした。

0-1で迎えた前半27分、左サイドのDF岩土そらのライナーのクロスに対し、吉田はニアサイドに飛び込んだ。

「相手の背後に一度消えてから飛び込んで、最初はヘディングで直接叩き込もうと思ったのですが、ちょっとボールが低くて、自分の胸らへんに飛んできた」

大きくジャンプをして相手と競り合いながら、ヘディングをキャンセルして胸トラップ。ボールは足元にこぼれたが、その間に相手と交錯。相手DFは完全にボールの行く方を見失っていたが、吉田は着地直前からボールを目でしっかりと捉えていた。

着地してからすぐさまボールに向かい、素早いシュートフォームから左足で豪快にゴールに突き刺した。相手DFもGKもシュート体勢に入ってから反応していたが、時すでに遅しだった。

このシーン、シュートがもう少し遅かったらこの2人にブロックされていた可能性があった。

「トラップしたボールがうまく落ちてくれたし、着地の瞬間は多分相手も反応できていなかったと思うので、その隙をついてハンドオフでグッと(競り合った)相手DFの前に出てスペースを確保してから打ちました。咄嗟の反応で決めることができました」

これはストライカーの本能で片付けられるものではなく、彼に『瞬時のボールフォーカス力』という重要な『技術』が備わっているからこそ、ゴールに結びつけられたものだったと言っていい。

日常の積み重ねが生む力

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後半6分にも石渡の浮き球の縦パスに抜け出した吉田は、ワントラップから飛び出してきたGKを見て浮き球でかわしてから、無人のゴールにヘディングで押し込み、勝負を決定づける4点目をマーク。2ゴールの活躍で4-2の勝利に貢献した。

試合後、『ボールフォーカス力』について話を向けると、精悍な表情でこう返した。

「確かにボールはよく見るようにしています。それは普段のシュート練習をやっている時から常にこぼれ球は意識しているし、ペナルティーエリア内では必ずシュートで終わると意識しているので、その日々の積み重ねがおっしゃられるようなボールを捉える力になっているんじゃないかなと思います」

まさに日常が試合にそのまま出る。常にボールの場所を把握するだけではなく、こぼれてくる場所を予測し続け、かつ高い集中力を持って狙い続けていないとこの目は養えない。

「これは中学時代(FC多摩ジュニアユース)の時からずっと意識づけられていると思います。常にゴールを狙う、シュートを打つ。僕は昔からそこに軸を置いてプレーしてきたので、ボールを捉えながら、その周りの相手と味方を把握してシュート、自分がプレーできるエリアを作り出してからのシュートは、身体に染み付いていると思います」

プレー全体を支える技術と意識

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この力は他のプレーでもベースになっている。日常で培ってきた能力は、空間把握能力も発達させた。例えばこの試合の前半23分と35分に見せたプレーがそれを実証している。

1つ目はカウンターから吉田が中央をドリブルで運び、シュートを打つと見せかけて右足アウトサイドで浮き球のスルーパスをDFラインの裏に抜け出したFW滝澤周生に出したシーン。

2つ目のシーンは岩土の浮き球のロビングに反応し、左ポケットに侵入すると、後ろから来たボールを右アウトサイドに乗せて吸収するようなトラップで足元に置き、鋭いターンからゴール前でフリーになったFW石渡智也へマイナスのクロス。石渡のシュートは相手GKのビッグセーブに阻まれた。

2つとも空間把握能力と足元の技術が凝縮されたプレーだった。

「右のアウトサイドはかなり大事にしていて、ちょっとボールが前に出てしまった時とかに、左足より右足のアウトの方が先に出せるので、咄嗟に相手より早くボールに触れるし、それで相手が食いついてくれたら、ワンツーなどで自分がもう一回前に入っていける。それにアウトサイドは相手からしたら読みづらいというか、ノーモーションだし、反応しづらいと思うんです。中学校の時にアウトサイドを思いつきで使ってみたら、『これは試合で活用できる』と思ったので、自分の中でトライして、工夫してきたことで、これも感覚でできるようになった印象です」

続く第3節の流通経済大柏戦でも、左からのスルーパスに対し、一瞬で相手の立ち位置を見てボールをスペースに流し込み、鮮やかなターンで前を向いてGKとの1対1を制し、決勝点となる2試合連続弾を挙げてみせた。

ただ能力が高いだけではない。常にチャレンジをすることで気づきを得て、それを日常の中で黙々と積み重ねてきたからこその能力、技術である。これらを培っていく日々はこの先も変わらない。吉田湊海の才能はまさにそこにある──。

取材・文=安藤隆人
大学卒業後、地元の第一地方銀行に就職するも、フリーサッカージャーナリストとして週末だけ活動。2005年7月に5年半勤めていた銀行を辞め、単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は40を超える。本の著作・共同制作は14作。最新作は『ドーハの歓喜 2022 世界への挑戦、その先の景色』と早川史哉の半生を描いた『ともに歩き出す』(徳間書店)。NumberWebで11年連載などの執筆活動以外にも講演・講師活動と、東海大学リーグ1部に所属する名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターを兼務する。W杯も2大会連続取材予定。

ユース教授・安藤隆人の「育成ノート」

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超ワールドサッカー編集部
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