ダービーの醍醐味か勝者のマナーか? 清水がダービー後の一部サポーターの挑発行為を謝罪/編集部コラム

▽ダービーの醍醐味か勝者のマナーか…。7日に開催された“静岡ダービー”では、その2つのバランスの難しさを問うような出来事が起こった。

▽清水エスパルスは10日、10月7日に開催された明治安田生命J1リーグ第29節ジュビロ磐田戦において、試合終了後の一部サポーターによる挑発行為を謝罪した。

▽清水の発表によると、一部サポーターは5-1で清水の勝利に終わったダービー終了後、磐田の勝利時に歌われる歌を挑発的な目的で歌ったという。

▽クラブはこの行為に関して、「相手に対する挑発行為であることは明らかであり、スポーツマンシップにも反し、クラブとして到底容認できる行為ではありません。今後、二度とこのようなことが行われないよう、クラブといたしましても厳正に対処して参ります」と、クラブとしての見解を発表した。

▽さらに、「ご来場いただいたジュビロ磐田サポーターの皆様はじめ、ジュビロ磐田関係者の皆様に、不快な思いをさせてしまいましたことに対し、深くお詫び申し上げます」と、磐田サイドへの謝罪の言葉を述べた。

▽今回の一件に関しては磐田サイドやサポーター側からの申し入れ、あるいは挑発を問題視したクラブ、清水サポーターの指摘により、謝罪文の掲載という形になった模様だ。しかし、個人的にはクラブが謝罪すべき案件なのか疑問だ。

▽もちろん、今回の挑発行為によって磐田サイドやサポーターが不快な思いをしたことは事実であり、清水が試合運営者として謝罪を行う気持ちも理解できる。とはいえ、挑発行為は選手やスタッフ、運営側が主導して行ったものではなく、人種差別的な意図や相手を必要以上に貶めるようなものでもなく、個人的にはブラックユーモアの範疇だと思う。

▽また、この試合が人間教育の場でもある高校や大学サッカーの場であれば、問題になってもおかしくないが、今回はエンターテイメント性も求められるプロサッカーの舞台で行われたものであり、それも“ダービー”という特別な一戦だ。

▽イングランド発祥といわれるダービーマッチは、同じ都市や州など同一地域に本拠地を置くクラブ同士が対戦する、いわゆるローカル・ダービーや、労働者階級の支持するクラブと、資本家階級の支持するクラブが対峙する社会的な立場の違いを起源としたものなどがある。

▽とりわけサッカーが社会、文化に根差しているヨーロッパや南米ではバルセロナvsレアル・マドリーの“エル・クラシコ”や、ローマvsラツィオの“デルビー・デッラ・カピターレ”、ミランvsインテルの“デルビー・ディ・ミラーノ”ボカ・ジュニアーズvsリーベル・プレートの“スーペル・クラシコ”など、多くの有名なダービーマッチがある。

▽また、チームや街の規模に限らず、ダービーは常にピッチ上、スタンドに熱狂をもたらす大スペクタクルの特別な一戦だ。そこには喜怒哀楽のすべてが詰まっており、順位争いとは異なる大きな魅力がある。

▽そして、そのダービーを特別なものとするのが、両クラブ間の対立関係だ。試合前の荘厳なコレオグラフィーに定評がある“デルビー・ディ・ミラーノ”では両サポーターが多くのお金やアイデアをつぎ込んで、いかに巧く相手サイドを挑発できるか腐心する。また、ダービーで勝敗が決することになれば、勝者のサポーターはリターンマッチが行われるまでの期間、敗者側のサポーターをイジる特権を得ることになり、勝者はこの優越感をずっと継続することを望み、敗者はこの屈辱をリターンマッチまでの糧とする。この関係性が入れ替わっていくことで、ダービーとしての深みが生まれていく。

▽もちろん、『敗者は勝者を讃え、勝者は敗者を敬う』という武士道精神を伝統とする日本の相手を敬う考え方や勝者のマナーというものは素晴らしいものである。ただ、普段のゲームとは異なるダービーに限っては少しぐらいの挑発はブラックユーモアとして許容されるべきだとも思う。

▽今回のダービー後、磐田を率いる名波浩監督は、「選手には清水のサポーターが喜んでいる姿を、いつかここでその悔しさを晴らせるように、ちゃんと目に焼き付けておけと、言いました。実際そのミーティングが終わった時に、外にすぐ出て、何人かの選手がちゃんとそれを見ていました。ロッカーで泣いている選手もいましたけど、この悔しさはチームとして次につながると信じたいです」と、磐田の勝利時に歌われる歌を聞いたかに関しては言及していないもののダービー敗戦の悔しさを次への糧としたい旨の発言をしていた。

▽また、SNS上ではそれが磐田サポーターの総意ではないが、「次は必ずダービーに勝って“勝ちロコ(清水勝利後の儀式)”をやろう」というような意見も出ていた。

▽家族連れでの観戦も多いJリーグの試合で過度の挑発合戦や罵り合いは相応しくないと思われるが、ダービーの醍醐味である“悔しさ”、“喜び”を増幅させるような隠し味程度の挑発やブラックユーモアは受け入れられてほしいと感じる。
《超ワールドサッカー編集部・岸上敏宏》

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超ワールドサッカー編集部
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