「自分より上」と認めるライバルがいるからこそ、人は強くなれる。流通経済大柏のキャプテンを務めるCBメンディー・サイモン友にとって、鹿島アントラーズユースのDF元砂晏翔仁ウデンバは、常に意識する存在だ。その背中を追い続ける男が抱く、敬意と野心とは――。
「ウデンバの方が上」互いを認め合った2人のライバル関係

ライバルの存在が、人を強くする――。
自分より上にいると認める相手がいる。だからこそ、もっと強くなりたいと思える。その差を逃げずに受け止め、少しでも埋めようともがく日々こそが、自分自身をより成長させていく。
流通経済大柏のキャプテンを務め、U-16、U-17、U-18日本代表にも選出されているプロ注目の3年生CBメンディー・サイモン友には、明確に意識するライバルがいる。それは鹿島アントラーズユースのDF元砂晏翔仁ウデンバだ。
「僕はずっとウデンバの方が上だと思っています。高校年代において自分も上のレベルにいるCBだとは思っているのですが、やっぱりウデンバは特別で、間違いなく僕より上。同年代では今のところ彼がナンバーワンCBだと思っています」
186cmのサイズを生かした空中戦の強さと、屈強なフィジカル、判断力を駆使した守備が武器のメンディーに対し、192cmの圧倒的なサイズを誇り、同様に空中戦の強さと守備力を備え、かつビルドアップ能力にも長けたウデンバ。
共に大きなポテンシャルを持ち、誕生日も3か月半違い。同じ時代に生まれ、同じポジションを担う2人がライバルになることは、ある意味必然であった。
出会いは昨年4月のU-17アジアカップ(サウジアラビア)。それまでU-16、U-17日本代表にはそれぞれ選出されていたが、同じタイミングで呼ばれることはなかった。お互いを意識していたが、実際に同じチームになったのは、U-17W杯出場をかけたアジア最終予選が初めてだった。
そこで2人はお互いを強烈なライバルとして認め合い、昨年11月のU-17W杯(カタール)では、グループリーグ第1戦と第2戦こそポジション争いを繰り広げていたが、グループリーグ最終戦ではCBコンビを組んでポルトガルを相手に2-1の勝利に貢献すると、そこから2人はベストパートナーとなった。
ラウンド32の南アフリカ戦ではクリーンシート(3-0)を達成。ラウンド16の北朝鮮戦でも身体を張った守備と息の合ったコンビネーションを見せ、1-1からのPK戦勝利に貢献し、歴代最高成績に並ぶベスト8進出の原動力となった。
首位攻防戦で見せた圧倒的な存在感。「今日は僕の勝ちかな」

あれから10か月。2026年に入ってからは代表で共にプレーする機会がなく、プレミアリーグEASTでの戦いが直接顔を合わせる機会となった。
1回目は4月19日の第3節で、結果は2-3で鹿島ユースが勝利。夏の中断期間を経て今月19日の第14節、首位を争う両チーム(1位・流経大柏、2位・鹿島ユース)が激突した。
「今週1週間は僕がワーワー言わなくても、全員がかなり集中をして全力でサッカーに取り組んでいました。僕も火曜日の練習再開から『今週絶対に勝つぞ』という声をかけた時も、すでにみんなに響いていたのでいい状態で臨めたと思います」
気合い十分のメンディーはこの試合、アンカーを務めるMF内田煌生がU-17日本代表の新潟国際ユース参加のため不在となる影響を受けて、本来のCBではなくアンカーとしてピッチに立った。
「ボランチは昨年も経験したポジションだったので戸惑いはありませんでした。とにかく後ろに来たボールは全部僕が対応するつもりでやりました」
最終ラインの前に立ちはだかり、鋭い出足と球際の強さを発揮して相手の攻撃を食い止める。空中戦では完全に制空権を握り、前半はボールを奪うだけでなく、ドリブルを駆使して積極的に攻撃にも関与した。
後半終了間際にはロングボールからウデンバとの空中戦を迎えると、頭一つ抜け出してヘディングで競り勝つなど、終始圧倒的な存在感を放った。チームは4-0の完封勝利。首位攻防戦で完璧な試合運びを見せ、リベンジを果たすとともに、首位の座をがっちりと守った。
試合後のメンディーにライバルとの戦いについて尋ねると、「競り合いの部分では(鹿島ユースの)全員にも負けなかったと思います。ウデンバと競り合うシーンはあまりなかったのですが、最後に彼との競り合いで上からヘッドで叩けたので、今日は僕の勝ちかなと思っています」と手応えを口にした。
だが、その直後にこう続けた。
「でも、改めて自分よりウデンバの方が上だと思いました。彼は190cmを超える高さがあって、競り合いも強くて、足元の技術もあって、あとはスライディングや状況判断がとても優れている選手だと思っているし、今日一緒にプレーしてやっぱり上手いなと思った」
その言葉に、卑屈さは微塵もない。
相手の優れた部分を具体的に理解し、敬意を払いながら今の自分との差を冷静に見つめている。だからこそ、その差を埋めるために何をすべきかも必然的に見えてくる。
プロを経験するライバルとの差を感じた悔しさ

U-17W杯以降、ウデンバは早生まれのために今年のU-17アジアカップに出場し、11月には2大会連続となるU-17W杯を控えている。さらに一つ上のU-19日本代表にも選出。鹿島ではトップ昇格が決まり、トップチームでの練習を重ね、2026/27シーズンのJ1リーグでは開幕戦からベンチ入りを経験し、東京ヴェルディ戦でJ1デビューを飾っている。
この流経大柏戦も彼が同日に行われたJ1・第8節の川崎フロンターレ戦のベンチ外になったことでユースに戻っての出場となった経緯もある。
「昨年も僕より上でしたが、そこまで大きな差は感じませんでした。でも、今年の彼は常にプロのトップレベルを経験し続けていて、『彼の方が成長しているな』と感じることが多くて、ものすごく悔しかったんです」
ただ、メンディーもウデンバに負けないくらいの濃い時間を過ごしている。
新チームになってキャプテンに任命されると、持ち前の明るいキャラクターで常にチームの先頭に立ち続けた。さらにJ1、J2の複数クラブの練習に参加し、高評価をつかみ取った。
そして、この夏にはヨーロッパで1か月もの武者修行を敢行した。ベルギーの2クラブとイングランドの1クラブの練習に参加し、そこでも高評価をつかみ取っている。
「エノさん(榎本雅大監督)やスタッフの人たちの支えもあって、本当にいろいろな経験を積ませてもらっています。特にヨーロッパにいた1か月は非常に濃い時間で、英語は少し分かるのですが、フランス語とか全然分からない中で練習に参加をして、生活面も含めて海外でプレーする難しさも知りましたし、楽しさも知った。僕がこの先、歳をとっても思い出せるような夏になったと思っています」
異なる環境で刺激を受け、より高いレベルに身を置くことで、自らの可能性を広げてきた。
チームを離れる時間も多かったが、学校に戻ればキャプテンとして前向きな言葉で周りを鼓舞したり、時には厳しい指摘でチームを引き締めたりと、チームを牽引する強い責任感も芽生えた。
今回の鹿島ユース戦で見せた、普段とは異なるポジションでの堂々たるプレーも、そうした経験の積み重ねがあってこそだろう。
それでも、本人は満足していない。
「今日、僕らはチームとしては勝ちましたが、個人としてはまだまだウデンバには勝てていないと思ったので、もう一度気持ちを引き締めてこれからを過ごしていきたいと思っています」
「この年代で自分が一番に」追い続ける背中、その先へ
ライバルの実力を認めることは、決して敗北を認めることではない。むしろ、その背中を追い続ける覚悟の表れなのだ。
「もっと成長をして、この年代では同い年でも1個上でも2個上でも、自分が一番という存在になりたいです」
今はまだ、ウデンバの方が上にいる。だからこそ、追いかける。追いつき、追い越すために、自分を磨き続ける。
ライバルを認める潔さと、誰にも負けたくない、絶対に勝つという強烈な野心。その両方を胸に宿すメンディー・サイモン友は、まだまだ強くなる。
取材・文=安藤隆人
大学卒業後、地元の第一地方銀行に就職するも、フリーサッカージャーナリストとして週末だけ活動。2005年7月に5年半勤めていた銀行を辞め、単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は40を超える。本の著作・共同制作は14作。最新作は『ドーハの歓喜 2022 世界への挑戦、その先の景色』と早川史哉の半生を描いた『ともに歩き出す』(徳間書店)。NumberWebで11年連載などの執筆活動以外にも講演・講師活動を小学校、中学校、高校、大学、企業と年10回ほど幅広く行っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年10月〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチも兼務する。W杯も2大会連続取材。
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