鈴木彩艶の背中を追って――浦和レッズユースGKマルコムアレックス恵太が抱く尊敬とライバル心|ユース教授・安藤隆人の「育成ノート」

日本代表GK鈴木彩艶の背中を追いかける、浦和レッズユースの守護神がいる。
尊敬と感謝を胸に抱きながらも、その先にあるのは「超えるべき存在」としてのライバル心。
成長の実感と課題、そして覚悟――マルコムアレックス恵太の現在地に迫る。

目次

進化を示した守備範囲と主体性

5月15日に北中米ワールドカップに挑む日本代表26名が発表された。その中には、日本の絶対的守護神であるGK鈴木彩艶も当然のように選出された。

この発表の翌日、帝京科学大学千住総合グラウンドで行われたプリンスリーグ関東1部・第7節の帝京vs浦和レッズユースに取材に行くと、鈴木の背中を追いかける後輩GKが躍動感あふれるプレーを見せていた。

「アカデミーの大先輩としてすごく誇りに思うし、めちゃくちゃ尊敬しているからこそ、僕も彩艶さんのような存在になりたいと思っています」

前日の発表を受けてこう思いを口にする浦和ユースの3年生GKマルコムアレックス恵太は、帝京戦において187cmのサイズと身体能力、そして守備範囲の広さを見せ、1-0の勝利に大きく貢献した。

鈴木への思いを記す前に、この試合で彼が見せた成長について触れたい。昨年はシュートセーブとキックで非凡なものを見せていたが、個人的には守備範囲という面では、前に出る迫力やDFラインの裏をカバーするスピードに物足りなさを感じていた。

だが、今年に入ると前への飛び出しのスピードと質が一気に向上していた。この試合でもDFラインを高く保つコーチングと、背後に来たボールに対する積極的な飛び出しから味方につないだり、強烈なロングキックで相手をひっくり返したりと、明らかに守備範囲が広がっていた。

それについて聞いてみると、嬉しそうな表情を浮かべてこう口にした。

「そう言われて嬉しいです。実は昨年途中に試合に出られない時期があったのですが、そのときにコーチから『発信力が足りない』と指摘されていました。コーチングなどができないから、そこまで信頼をつかめなかったのは明白だと思ったので、徐々に意識して声を出すことや、積極的に前に出て味方の背中を押すプレーを練習から出すようにしてきました」

出られなかった時間が変えた「発信力」

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すぐには改善できなかったが、最高学年を迎えたことでより自覚と責任感が芽生え、意識していたことが表に出るようになった。

「どんどん自信がついてきて、今日の試合もフィールドには『後ろは俺がカバーするから、みんなは思い切って前に行ってほしい』と伝えましたし、自然と声が出て、体も動くようになってきて、一歩目がスムーズに出るようになりました」

成長を実感している一方で、目標としている存在の背中がどんどん遠くなっていることも実感している。話題が鈴木に変わると、引き締まった表情に切り替わった。

“彩艶ハウス”に込められた感謝と決意

「彩艶さんの存在は、憧れる一方で悔しさもあるんです。実はアカデミーの練習場(与野八王子グラウンド)にすごく素晴らしいアカデミー用クラブハウスが完成したんです。彩艶さんの移籍金でできたので『彩艶ハウス』とも呼ばれているのですが、大きなクラブハウスでシャワー室もあるし、筋トレルームもある。本当に感謝しかありませんし、このことを当たり前だと絶対に思ってはいけない。同時に、こんな素晴らしい施設を同じGKというポジションのアカデミーの大先輩が作ってくれたわけですから、僕も将来もっと成長して海外に羽ばたいていって、彩艶さんのように移籍金で育ててくれたアカデミーに恩返しできる選手になりたいと強く思うようになりました。だからこそ、今のままではいけないと思いますし、そういう気持ちを抱かせてくれたのは彩艶さんのおかげです」

憧れを超えるためのライバル心

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マルコムは小学生の頃から浦和のアカデミーに所属しており、ジュニア時代にユースだった鈴木が全体練習後に黙々と筋トレをする姿を見たり、同じGKとして話をしたりすることがあった。だからこそ、より身近に感じる存在であり、怪我で一時帰国しているときには「日々の積み重ねが本当に大事。それはサッカーだけじゃなくて、それ以外のところもきちんとやらない限り、サッカーに反映されないよ」という言葉をもらった。

「筋トレしていた姿が忘れられなくて、僕もジュニアユースから筋トレを積み重ねるようになりましたし、普段の練習や試合でもコーチなどからは『彩艶はこうだった』と名前が出るので、重要な基準になっています。本当にいろいろな面から刺激と向上心をもらえています」

感謝の気持ちや学びだけではなく、超えないといけない存在として強烈なライバル心も抱き続けながら、マルコムアレックス恵太は、己の信念と技術に磨きをかける。

取材・文=安藤隆人
大学卒業後、地元の第一地方銀行に就職するも、フリーサッカージャーナリストとして週末だけ活動。2005年7月に5年半勤めていた銀行を辞め、単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は40を超える。本の著作・共同制作は14作。最新作は『ドーハの歓喜 2022 世界への挑戦、その先の景色』と早川史哉の半生を描いた『ともに歩き出す』(徳間書店)。NumberWebで11年連載などの執筆活動以外にも講演・講師活動を小学校、中学校、高校、大学、企業と年10回ほど幅広く行っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年10月〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチも兼務する。W杯も2大会連続取材予定。

ユース教授・安藤隆人の「育成ノート」

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超ワールドサッカー編集部
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