エースストライカーであり、キャプテンでもある――。
この2つの役割を同時に背負うことは、周囲が思っている以上に難しい。
鹿島学園FW内海心太郎は今、その両立の難しさに直面している。責任感が強いからこそ生まれる葛藤。そして、その先にある成長とは何か。
エースストライカーとキャプテン、2つの役割の難しさ
エースストライカーでキャプテン。この2つの役割を同時にこなすのは、周りの人が思っている以上に難しい。それはなぜか。
キャプテンは自分のプレーだけではなく、周りを鼓舞する声かけをしないといけない。時には厳しく、時には背中を押すように。そのためには常に全体を見て、雰囲気などを察知しながらやらなければならない。そうなると、ポジション的に全体を見渡せるポジションの方がその役割をこなしやすい。
だが、FWは最前線に君臨し、自分より前には味方がいない。それゆえに全体を見たり、声を掛けたりするためには背後を向かないといけない。
その意識が強くなればなるほど、プレーは後ろ向きになり、例えば動き出しや背後への飛び出しを持ち味としているストライカーは、その第一歩が遅れてしまったり、タイミングを逃してしまったりすることがある。それが「いつもの自分のプレーができない」という葛藤を生み出し、悪循環に陥っていく。
これは決して仮説ではなく、これまで多くのストライカーであり、キャプテンの選手を取材してきて、一度は陥ってしまう実際の現象だ。
岡崎慎司が語った葛藤と“背中で語る”キャプテン像

例えば、元日本代表のレジェンドストライカーである岡崎慎司も、滝川第二高時代に同じ悩みに苦しんでいた。
「前向きなプレーがしたいのに、どうしても後ろが気になってしまう。でも、ただ自分のプレーをしていればいいという立場でもない。いま、動き出しなどが鈍っている感覚なんです」
当時、彼はこう口にしていた。その際に伝えたのは「背中で語るキャプテンに徹しろ」ということだった。
試合中は何度も動き出したり、何度もスプリントをしたりして、「俺はここに動いているぞ」「ゴールを狙い続けているぞ」とプレーで伝える。身体を張ったプレーを見せることで仲間を鼓舞する。愚直なまでにチームのために、ゴールのためにプレーする姿を見せて背中で引っ張り、試合前やハーフタイムにキャプテンとしてみんなに声をかける。このメリハリをつけることで、岡崎は実際に『背中で語る頼もしいキャプテン』となった。
内海心太郎が直面する現実とプレッシャー
いま、ちょうど同じ悩みに直面している選手がいる。鹿島学園のエースストライカー、内海心太郎だ。
昨年、2年生エースとしてずば抜けた身体能力を駆使し、ポストプレーから裏抜け、クロスに飛び込む能力を存分に発揮。高校選手権では鹿島学園の大躍進を最前線で牽引し、3ゴールを挙げて準優勝に貢献した。
今年、背番号は9から10番に変わり、鈴木雅人監督からキャプテンに任命された。プリンスリーグ関東1部・第3節の西武台高戦に取材に行くと、この試合で彼はMF中原瀬那の右からのクロスに勢いよく飛び込んで右足で合わせ、開幕から3試合連続ゴールを叩き込んだ。しかし、チームは1-3で敗れて開幕から2敗1分と、初勝利は叶わなかった。
「今年は自分がキャプテンとしてチームを勝利に導かないといけない中で、全体を鼓舞することができず、悪い流れをなかなか断ち切れなかった。先輩たちが残してくれた準優勝という結果は、自分としては感じないようにしているのですが、やっぱり重たいプレッシャーになっていると思います。プレー中のマークの厳しさもそうですし、相手の意識もそうですし、ピッチ外でもファンやサポーターの人から『今年も期待しているよ』といろいろな応援メッセージをいただけることは本当にありがたいのですが、今の僕はまだそこをプレッシャーに感じてしまう部分があるんです。もちろん、これを重く感じるのではなく、プラスに変えていける選手にならないといけないと思っています」
この言葉に、彼の葛藤がにじみ出ていた。同時に、自分のプレーに対する違和感も覚えていた。
「ゴールこそ取れているのですが、どうしても最初の一歩目の動き出しが遅れたり、反応が遅れたりと、僕のストロングポイントがなかなか出せないという現実に直面しています」
責任感が強く、情熱も溢れているからこそキャプテンに任命された。そして、それが強いからこそ、余計に葛藤する。
実際に西武台戦では、いつもなら相手の前に入って屈強なフィジカルと跳躍力を生かしてボールを収め切れるはずのシーンでイーブンボールとなってしまい、上手く収めきれなかったり、味方に落としきれなかったりした。それでも彼の持つ前への推進力とゴール前の勝負強さを発揮したのはさすがだが、やはり葛藤はプレーにも見て取れた。
葛藤を超えた先にある成長

「あまり周りには口には出さないのですが、素直に苦しいです。でも、この1年間で何度もこういう壁にぶち当たって、屈しないでそれを超えていくことこそが自分を一番成長させてくれると思っています。鈴木監督に大きなチャンスを与えてもらっていると受け止めているので、そこは向き合うようにしています」
そう思いを口にする彼に岡崎慎司の高校時代の話をすると、表情が一変した。あの頃の彼と同じように責任感が強く、かつ貪欲なストライカーだからこそ気付けることがある。選ばれし者にしか背負えないそのプレッシャーに打ち勝ち、自分のプレーがピッチで表現できるようになってこそ、これまで以上の大きな成長を手にすることができる。
「僕は本当に恵まれていると思います。昨年、先輩たちにあれだけ最高の経験をさせてもらって、今年は責任感や人間性をもっと磨くチャンスをもらって。本当に鹿島学園に来て良かったと心から思っているので、これから折れないで何度もチャレンジをして、全力を尽くして、チームを引っ張っていきたいと思います」
立ち振る舞いが想いとして周囲に広がり、自分と周りを強くする。エースストライカーとしての自覚と責任感を持ち、驕らず、怯まず、溌剌とプレーすることがキャプテンシーになる。想いを宿したストライカーの今後の成長譚が楽しみでならない。
取材・文=安藤隆人
大学卒業後、地元の第一地方銀行に就職するも、フリーサッカージャーナリストとして週末だけ活動。2005年7月に5年半勤めていた銀行を辞め、単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は40を超える。本の著作・共同制作は14作。最新作は『ドーハの歓喜 2022 世界への挑戦、その先の景色』と早川史哉の半生を描いた『ともに歩き出す』(徳間書店)。NumberWebで11年連載などの執筆活動以外にも講演・講師活動と、東海大学リーグ1部に所属する名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターを兼務する。W杯も2大会連続取材予定。
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