なぜ若手の成長は止まるのか? ポストユースで見えた“決定的な差”|ユース教授・安藤隆人の「育成ノート」

若手選手の成長は、なぜ止まってしまうのか。

Jリーグが新たに創出した「ポストユースマッチ」の現場には、そのヒントと課題の両方があった。

ユース年代からトップ、海外までを追い続けるサッカージャーナリスト・安藤隆人氏が、“育成のリアル”をひも解く新連載がスタート。第1回は、現場で見えた決定的な差に迫る。

目次

若手の成長を阻む「試合機会の減少」という現実

3月11日と13日、愛知県のCSアセット港サッカー場でJFA/Jリーグポストユースマッチが行われた。Jリーグで出場機会の少ない若手選手に実戦の場を提供する目的で昨年発足し、今回で5回目の開催となる。

 これまで関東、大阪、香港、イングランドなどで実施されてきたが、今回は愛知県で開催。デンソーカップサッカー第25回日韓(韓日)定期戦に合わせ、全日本大学選抜、全韓国大学選抜と対戦するスケジュールが組まれ、20名の選手がピッチに立った。

 昨年は高卒2年目の世代が中心で、齋藤俊輔(KVCウェステルロー)森壮一朗(名古屋グランパス)らも参加していた。今回はU-19世代として高卒ルーキーが中心となり、プロ2年目は早生まれのDF松本果成(湘南ベルマーレ)のみ。さらに高校3年生ながらプロ契約を結んだFW吉田湊海(鹿島アントラーズ)も名を連ねた。

 これまでも繰り返し指摘されてきたのが、若手選手の試合経験の激減だ。高校や大学までは主力として当たり前のように出場していた選手たちが、プロ入り後は出場機会を失う。それにより成長曲線が鈍化し、才能が十分に磨かれないという問題が、若手の底上げにおけるボトルネックとなっている。

 もちろん、内田篤人や冨安健洋のように高卒1年目からレギュラーを掴む選手もいる。プロである以上、年齢に関係なく競争にさらされるのは当然であり、出られない時期に自分と向き合い、研鑽を積む「下積み」は不可欠だ。

 しかし、出場時間が極端に減る状況では話は別だ。1年目に一定の出場機会を得たとしても、2年目にはプレースタイルや癖を徹底的に分析され、持ち味を発揮できずにパフォーマンスが低下する、いわゆる「2年目のジンクス」に陥るケースも少なくない。その結果、出場機会のさらなる減少につながっていく。

なぜ“2年目の壁”は生まれるのか

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 常に手を差し伸べる必要はないが、定期的に強度の高い相手と戦う機会の創出は、高卒選手にとって重要な“きっかけ”となる。こうした背景があるからこそ、ポストユースマッチの継続や、2026〜2027年シーズン開幕予定のJリーグU-21リーグ創設といった具体的な動きが生まれている。

 では、この「機会」をどう活用するか。ここが極めて重要になる。制度設計など構造的な議論はもちろんだが、それと同時に問われるのが「選手の意識」だ。

 このような機会を「与えられたもの」と捉えるだけでは、いくら出場しても成長にはつながらない。出場が決まった時点で、自身のコンディションや課題、ストロングポイントを整理し、明確な意図を持って試合に臨む。そして試合後にはセルフフィードバックを行い、日々のトレーニングや将来のビジョンに落とし込んでいく。

 さらに重要なのが、「反骨心」と「危機感」だ。現状への悔しさをエネルギーに変え、ハングリーにサッカーへ向き合う。このサイクルを回し続けることで、こうした試合は確実に成長の起点となる。

成長を分けるのは「機会」ではなく「向き合い方」

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 かつてプロ1年目の堂安律がガンバ大阪U-23でJ3リーグに出場していた際、こう語っている。

トップではなくここで試合に出ているのは悔しいし、自分が情けない。でも、ここで全力を尽くせなければ絶対に上には行けない

 この言葉は、本質を突いている。

 今回、U-19Jリーグ選抜と全日本大学選抜の一戦を取材したが、立ち上がりは多くの選手に硬さが見られ、連携もぎこちなかった。しかし時間の経過とともに、徐々に持ち味を発揮する選手が増えていった。

 中でも印象に残ったのが、DF村上慶(横浜F・マリノス)とFW吉田だ。

 村上は全日本大学選抜戦で先発出場。試合を追うごとにギアを上げていく姿が印象的だった。本人も「試合機会が少ない中で、自分にできることとできないことを確認し、試す場だという意識で臨んだ」と語っており、明確な準備がパフォーマンスに表れていた。

 一方の吉田は、「FWなので、出た以上はゴールを取らないといけない」と語り、常にゴールを狙う姿勢を貫いた。全日本大学選抜戦では両チーム最多の4本のシュートを放ち、全韓国大学選抜戦では1ゴールを記録。貪欲な姿勢が際立っていた

 こうした試合では、自分にベクトルを向けて準備してきた選手と、そうでない選手の差が如実に表れる。その差は時間とともに広がり、やがて埋めがたいものとなるだろう。

 もちろん、途中で気づいても遅くはない。むしろ、その気づきのきっかけとなるのであれば、この取り組み自体に大きな意義がある。

 機会を作るだけでは不十分であり、形骸化するリスクもある。それを防ぐためには、ポストユースマッチやU-21リーグの制度設計といった運営側の工夫に加え、選手自身の意識向上が不可欠だ。

 今回の取材を通じて、その重要性を改めて実感した。

取材・文=安藤隆人
大学卒業後、地元の第一地方銀行に就職するも、フリーサッカージャーナリストとして週末だけ活動。2005年7月に5年半勤めていた銀行を辞め、単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は40を超える。本の著作・共同制作は14作。最新作は『ドーハの歓喜 2022 世界への挑戦、その先の景色』と早川史哉の半生を描いた『ともに歩き出す』(徳間書店)。NumberWebで11年連載などの執筆活動以外にも講演・講師活動と、東海大学リーグ1部に所属する名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターを兼務する。W杯も2大会連続取材予定。

ユース教授・安藤隆人の「育成ノート」

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超ワールドサッカー編集部
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