▽「まさかこっちも同じ境遇になるとは」そんな風に私が肩を落としていたのは日曜日、ビセンテ・カルデロンでの試合の後、ミックスゾーンに出て来たキャプテン、ガビが「この先、向こうが3試合落とし、尚かつウチが全勝し続けるのは難しい」と言っているのを聞いた後のことでした。いやあ、前日、お隣さんの練習をバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場に見に行った帰り、レアル・マドリー番の記者たちが「勝ち点差がこれ以上開いたら、もうリーガは終わり。CL準々決勝は4月だし、それまで一体、何をしたらいいのかね」と愚痴っているのが耳に入った時には内心、「アトレティコが6差をキープしてくれるはずだから、私はヒマにならないわ」とまったく意味なく、上から目線で同情すら感じていたんですけどね。
▽その日の午後、首位のバルサが苦労しながらもラス・パルマスとのアウェイ戦に1-2で勝ち、一旦は差がアトレティコと9、マドリーと10開いても、どうせ一晩だけのことだろうとタカを括っていたものの、まさか、あんな最悪な日曜になるとは! ええ、それぞれ必勝だった試合を引き分けてしまったマドリッドの両雄は、月曜に決勝が5月22日、ビセンテ・カルデロンで開催と決まったのはともかく、すでにコパ・デル・レイからも敗退。互いに今季、唯一のタイトル獲得への道がCLしかなくなってしまったとなれば、あまりにハードルが高すぎるような気がするのは私だけではないと思うんですが…。
▽とはいえ、嘆いてばかりいても始まらないので、先週末の試合の様子をお伝えしていくことにすると。金曜にはレバンテに3-0で負け、とうとうヘタフェが5連敗となってしまった後、次にキックオフだったのは日曜正午にセビージャをエスタディオ・デ・ラス・バジェカスに迎えたラージョ。相手は3日前にELベスト32のモルデ戦1stレグがあったため、疲れているかと思いきや、とんでもない。司令塔のバネガがベンチスタートだったのもまったく関係ないようで、前半10分にはCKからのゴール前での混戦を利用して、ヌゾンジが先制点をゲット。続いて20分にもGKファン・カルロスの弾いたビトロのシュートを元ラージョのイボラが押し込んで、あっという間に2点差にされているんですから、いかにも守備が苦手な彼ららしいじゃないですか。
▽まあ、その辺に関しては、「aunque tiene pequeñas lagunas/アウンケ・ティエネ・ペケーニャス・ラグーナス(ちょっとした穴はあっても)、ウチはいいサッカーをするチーム」と、パコ・ヘメス監督があまり気にしていないようなのでいいのかもしれませんが、打つ手はいつものように早くて、29分にはボランチのバエナをサイドアタッカーのエンバルバに、34分には左SBナチョをFWマヌーチョに代えて、ラージョは前半のうちから3バック体制に突入。でも、それが見事に功を奏したんですよ。42分にはエンバルバのクロスをマヌーチョがゴール前から、後半17分にはベベのラストパスをミクが5試合連続となるゴールにして、とうとう声を限りに応援するサポーターに応えてしまったから、根性あるじゃないですか。
▽結局、これで2-2と勝ち点1を獲得できたため、ヘメス監督は「Este es el mejor momento del equipo/エステ・エス・エル・メホール・モメントー・デル・エキポ(今はチームにとって一番いい時期)。2カ月前だったら、きっと追いつけなかっただろう」とご機嫌だったんですが、それでもまだ降格圏との差が4ポイントしかない15位ですからね。残留の目安となる勝ち点40までもあと15あるため、これからは失点も少々、控え目にして、白星を積み重ねてもらいたいかと。そうそう、今節の結果で同じ弟分のヘタフェは14位、両者の勝ち点差も1しかないとなれば、この先は熾烈なマドリッド3番目のチーム拝命争いを期待してもいいのでしょうか。
▽そしてバジェカスから戻り、午後4時からは近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でマラガvsマドリーを見た私でしたが、最初に驚かされたのは古巣訪問となったイスコがいきなりヒゲを剃って、すっかり22歳という実年齢相応の顔になっていたこと。ただ、前日の記者会見でジダン監督から、「Ya solo me falta un gol de Isco/ジャー・ソロ・メ・ファルタ・ウン・ゴル・デ・イスコ(あと私に足りないのはイスコのゴールだけ)」と、名指しでハッパをかけられたのを受け、気合いを入れ直すつもりのイメチェンだったとしたら、腰痛で欠場となったベンゼマの代わりに、せっかくfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/何となくCFの位置にいる選手)として起用されたにも関わらず、あまりピッチでの効用はなかった? それでもマドリーは前半32分にはクロースの蹴ったFKをクリスチアーノ・ロナウドが頭で捻じ込んで、何とか先制点を挙げます。
▽その時のロナウドの位置がオフサイドだったのも線審には気づかれなかったため、これで首位との差が勝ち点7に戻ったかと私も喜んでいたんですが、いえいえ、世の中、そう甘くはありません。その3分後、ロナウドが珍しくPKを失敗、GKカメニに弾かれてしまったのはツイていなかったとも言えますが、前半からいい攻めを見せていたマラガが後半20分、CKから一旦はクリアされたボールを取り戻し、ウェリグトンからのクロスでアルベントーサが同点ゴールを挙げてしまったから、さあ大変! いやあ、これまでのパターンだと、そのうちグラナダ戦のモドリッチやアスレティック・ビルバオ戦のハメス・ロドリゲスのように、世界一、裕福なクラブの特技を生かして獲得したタレント溢れる選手が起死回生のgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を挙げて、何とかなっていたんですけどね。どうやらこの日は例外だったよう。
▽むしろマドリーの方が、GKナバスがparadon(パラドン/スーパーセーブ)を連発、ジダン監督まで「ウチは勝ち点1を救ったのかもしれない」と言っていたような有様でしたから、最後は1-1のドローで済んでまだ良かった? うーん、マラガのハビ・グラシア監督も試合前には「No veo tantas diferencias entre este Madrid y el de la primera vuelta/ノー・ベオ・タンタス・ディファレンシアス・エントレ・エステ・マドリッド・イ・エル・デ・ラ・プリメーラ・ブエルタ(今のマドリーとシーズン前半戦のマドリーにそれ程、違いは見られない)」と話していましたが、これでジダン監督就任からの8試合はベニテス前監督とまったく同じ6勝2分け。アウェイが苦手なところも変わっていませんし、バルサとは勝ち点5差から9差に拡大って、もうどうしたらいいんでしょう。
▽とはいえ、それでも匙を投げられないのがマドリーの辛いところで、「En absoluto hemos dicho adiós a la Liga/エン・アブソルート・エモス・ディッチョー・アディオス・ア・ラ・リーガ(ウチは絶対にリーガにサヨナラした訳ではない)。まだ勝ち点は沢山、残っているのだから、降参はしないよ」という指揮官を始め、「Mientras matemáticamente no haya campeón, vamos a luchar/ミエントラス・マテマティカメンテ・ノー・アジャ・カンペオン、バモス・ア・ルチャール(数字的に優勝が決まらない限り、ボクらは戦う)」(セルヒオ・ラモス)と、選手たちも徹底抗戦は宣言しているんですけどね。今まで残り13節でこれ程の差を覆したチームは1つもないそうで、何より「数字的に」って言葉自体が、「Adiós a la Liga/アディオス・ア・ラ・リーガ」と歌っていたラ・ロサレダのスタンドじゃありませんが、やっぱりもうマドリーのリーガは終わったという雰囲気を醸し出しているかと。
▽え、それでもその時点ではまだ希望を持って、午後8時半からのビジャレアル戦に向かったんじゃないのかって? まあ、そうなんですけどね。こちらは本当にどうしたらいいかわからなくなるぐらい不毛な展開で、いえ、負傷のカラスコの代理に抜擢されたコレアは奮闘したんですけどね。頼みの綱のグリースマンも前半終了間際のヘッドが惜しくも外れた程度でノーゴールを5試合連続に伸ばし、フェルナンド・トーレスの3試合連続得点なども現在の能力を超える高望みだったよう。そんな極度のゴール日照りが仇となり、最後までELナポリ戦の谷間に当たるせいで、ローテーションをかけてきた相手から1点も奪えず、逆に途中出場した元アトレティコのアドリアン、レンタル移籍中でシーズン前半戦には決勝点を挙げたレオ・バプチストンに恩返しをされずに良かったという、スコアレスドローで終了することに。
▽いえ、アトレティコに次ぐリーガで2番目に少ない失点数である相手の守備は固かったのは確かなんですけどね。せっかく先週はビセンテ・カルデロンの芝を貼り替えたというのにも関わらず、ボール扱いの上手い敵を恐れてpatadon(パタドン/ロングボール)を多用。地上戦でのパス成功率もたったの57%と、およそ2本に1本は失敗するような状態でも、シメオネ監督が平静を保っていられるのは常に、「ビジャレアルとの差は勝ち点6のまま。Eso para nuestro torneo y nuestra forma de pensar es positivo/エソ・パラ・ヌエストロ・トルネオ・イ・ヌエストラ・フォルマ・デ・ペンサール・エス・ポシティーボ(それがウチの大会で、ウチの考え方としてはポジティブ)」と、アトレティコの目標はあくまでリーガ3位であるという建前があるから?
▽おまけに「上位3チームとは戦力の厚みに差がありすぎて、son inalcanzables para el Villarreal/ソン・インカンサブレ・パラ・エル・ビジャレアル(ビジャレアルには到達不可能)」(マルセリーノ監督)というコメントなども聞かれた日には、ますます安心できるでしょうけど、だったら勝ち点8差あるバルサは超安心しているかと。うーん、コケなども「Vamos segundos y vamos a luchar hasta el final/バモス・セグンドス・イ・バモス・ア・ルチャール・アスタ・エル・フィナル(ボクらは2位で行くし、最後まで戦うよ)」と、言い訳とも諦めとも取れる台詞を口にしていましたけどね。大体がして、リーガはどのチームも38節プレーするのが義務ですし、来季のプレーオフなしCL出場権がもらえる2位と3位では実質的に何の違いもないとなれば、ラモスもカルバハルもグリースマンもイエローカードをもらわず、出場停止の選手がいないのは幸いとはいえ、この土曜のマドリーダービーがどんなにカフェインレスになってしまうことか。
▽まあ、その辺は月曜に通信社EFEに第1回スポーツ界リーダーシップ賞を贈られた席で、ゴディンが「ダービーには勝ち点3以上のものが懸かっている。勝つために全力を尽くすよ」と宣言。さらに「en el fútbol siempre puede pasar cualquier cosa/エン・エル・フトボル・シエンプレ・プエデ・パサール・クアルキエル・コーサ(サッカーでは常にどんなことも起こりうる)」と、リーガにも絶望していないこと態度を示してくれたため、私も極力、情報収集には努めますが、アトレティコがさっさと気持ちを切り替えて、今、一番に考えなければいけないのは水曜のCLベスト16、PSV戦1stレグ。何せ、相手はこのところ上り調子で、前節にはとうとうエールディビジの首位に立ちましたからね。
▽イングランドやイタリアのチームに比べ、楽勝と思われがちなオランダのチームですが、先日同様のケースでセルタとコパの準々決勝1stレグをアウェイで0-0と引き分け、2ndレグでまんまと2-3でやられてしまったことを決して忘れてはいけません。そんな中、嬉しい知らせは、1月のバルサ戦で左ヒザのじん帯を部分断裂していたアウグストが全快通知をもらったことで、こんな折ですから、ネコの手も借りたいということでしょうか。火曜にアイントホーヘンに発つ遠征隊のメンバーには彼も加わることに。相変わらず、カラスコ、チアゴ、トマスはまだリハビリ中と、攻撃陣にも変化はありませんが、水曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からの一戦では何とか、前日にアーセナル戦に挑むバルサに続いて、アトレティコもいい結果を出してくれるよう願うばかりです。

