FC東京の右SBに小川諒也?/六川亨の日本サッカーの歩み
2021.06.29 19:30 Tue
日本代表は左SB長友の後継者探しが急務だが、FC東京は右SBが人材難に陥っているようだ。6月27日に行われた大分戦では、6月の代表戦で長友の代わりに起用された小川が右SBにコンバートされ、後半2分には19年5月18日の札幌戦以来となるゴール(チームの3点目、小川自身にとってはJ1通算2点目)を決めた。
FC東京の右SBといえば、2016年の加入以来、室屋が主力を務めてきた。しかし昨シーズン途中にハノーファーに移籍。それを見越して東福岡高校から中村拓海を、昨シーズンは明治大から中村帆高を補強した。
しかし今シーズンの4月3日、第7節の名古屋戦で中村帆高は右膝半月板を損傷し、全治6ヶ月の重傷と診断された。そこで右SBは中村拓か清水からレンタルバックした岡崎が候補になるが、大分戦では小川がスタメン起用された。
その理由は後述するが、伏線は6月19日の横浜FC戦(1-0)にあった。この試合で中村拓がスタメンに起用されたものの、前半だけで小川と交代させられている。小川自身も過去に長谷川監督から右SBで起用されたこともあるだけに、違和感なく監督の采配に応えた。
1-0とリードした試合で指揮官は、終盤に疲れの見えた19歳の左SBバングーナガンデ佳史扶に変わり岡崎を右SBに投入し、小川を本来の左SBに戻す采配で逃げ切りに成功した。
こうして迎えた大分戦で、小川の右SBについて長谷川監督は「慶吾(東)との関係で、上手く立ち位置が被らないようにしてくれて、つなぎのところで上手くプレーしてくれた。(192センチの)長沢はしっかりと抑えないといけない。(小川は)ヘディングの強い選手なので、剛(渡辺)と連係して相手のストロングポイントに対応してくれた」と起用した理由を明かした。
中村拓もスピードのある突破が魅力ではあるが、空中戦やフィジカルコンタクトとなると小川や岡崎にはかなわないだろう。
小川自身のプレーについては、左利きのためタテへの突破は右足でクロスを送らなければならないため極力避けていた。そして「慶吾(東)さんになるべく幅を取ってもらい、自分は中に入っていく。中に入ることで慶吾さんがフリーになったり、攻撃の幅が広がったりしたと思う」と冷静に分析していた。
彼の言葉通り、前半45分の2点目は安部のパスを右サイドに開いていた東がワンタッチでクロス。その時に小川はペナルティエリア右でフリーになっていた。そして中央でディエゴ・オリベイラが滞空時間の長いヘディングシュートを決めた。
さらに3点目はバングーナガンデ佳史扶のクロスをGKが弾いたところ、右から詰めていた小川がボレーで決めたもの。プレーのイメージとしては川崎Fの山根を彷彿させる動きだった。
日本代表の右SBは浦和に移籍した酒井を筆頭に室屋、山根に加え五輪世代では橋岡もいる激戦区だ。そこに小川が加わるよりも、やはり本来の左SBで長友と競争できるパフォーマンスをJリーグで発揮してもらいたいと思う。
【文・六川亨】
FC東京の右SBといえば、2016年の加入以来、室屋が主力を務めてきた。しかし昨シーズン途中にハノーファーに移籍。それを見越して東福岡高校から中村拓海を、昨シーズンは明治大から中村帆高を補強した。
その理由は後述するが、伏線は6月19日の横浜FC戦(1-0)にあった。この試合で中村拓がスタメンに起用されたものの、前半だけで小川と交代させられている。小川自身も過去に長谷川監督から右SBで起用されたこともあるだけに、違和感なく監督の采配に応えた。
1-0とリードした試合で指揮官は、終盤に疲れの見えた19歳の左SBバングーナガンデ佳史扶に変わり岡崎を右SBに投入し、小川を本来の左SBに戻す采配で逃げ切りに成功した。
続く23日、水曜の徳島戦では右SBに明治大に在学中の岡庭をスタメン起用し、小川は本来の左SB、そして後半から岡庭に代えて岡崎という交代策で前半の1点を守り切った。
こうして迎えた大分戦で、小川の右SBについて長谷川監督は「慶吾(東)との関係で、上手く立ち位置が被らないようにしてくれて、つなぎのところで上手くプレーしてくれた。(192センチの)長沢はしっかりと抑えないといけない。(小川は)ヘディングの強い選手なので、剛(渡辺)と連係して相手のストロングポイントに対応してくれた」と起用した理由を明かした。
中村拓もスピードのある突破が魅力ではあるが、空中戦やフィジカルコンタクトとなると小川や岡崎にはかなわないだろう。
小川自身のプレーについては、左利きのためタテへの突破は右足でクロスを送らなければならないため極力避けていた。そして「慶吾(東)さんになるべく幅を取ってもらい、自分は中に入っていく。中に入ることで慶吾さんがフリーになったり、攻撃の幅が広がったりしたと思う」と冷静に分析していた。
彼の言葉通り、前半45分の2点目は安部のパスを右サイドに開いていた東がワンタッチでクロス。その時に小川はペナルティエリア右でフリーになっていた。そして中央でディエゴ・オリベイラが滞空時間の長いヘディングシュートを決めた。
さらに3点目はバングーナガンデ佳史扶のクロスをGKが弾いたところ、右から詰めていた小川がボレーで決めたもの。プレーのイメージとしては川崎Fの山根を彷彿させる動きだった。
日本代表の右SBは浦和に移籍した酒井を筆頭に室屋、山根に加え五輪世代では橋岡もいる激戦区だ。そこに小川が加わるよりも、やはり本来の左SBで長友と競争できるパフォーマンスをJリーグで発揮してもらいたいと思う。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた
|
関連ニュース