【2022年カタールへ期待の選手㉚】10月のモンゴル・タジキスタン戦はあえてJリーグ最高のベテラン点取屋抜擢を推す!/興梠慎三(浦和レッズ/FW)
2019.09.28 13:45 Sat
日本代表の絶対的1トップ・大迫勇也(ブレーメン)が今月18日の練習中に太ももを負傷。全治4〜6週間と診断された。これで10月の2022年カタール・ワールドカップアジア2次予選・モンゴル(埼玉)&タジキスタン(ドゥシャンベ)2連戦の欠場は決定。場合によっては11月のキルギス戦(ビシュケク)も復帰できない可能性がある。
森保一監督率いる新生ジャパン発足後、攻撃陣をけん引してきたのは間違いなく大迫だ。世間の注目は堂安律(PSV)、南野拓実(ザルツブルク)、中島翔哉(ポルト)の2列目トリオや18歳の久保建英(マジョルカ)に集まりがちだが、彼らが機能するのも大迫が最前線でしっかりとボールを収め、緩急をつけ、若いアタッカー陣を巧みにコントロールしているから。その大黒柱不在となれば、いくら2次予選といっても日本が苦戦する可能性も否定できないのだ。
実際、アルベルト・ザッケローニ監督時代の日本代表も、2014年ブラジル・ワールドカップアジア2次予選スタート直前に本田圭佑が負傷。エース不在で挑むことになったが、やはり初戦の北朝鮮戦から苦戦を強いられた。本田の代役探しにザック監督も奔走し、最終的には中村憲剛(川崎フロンターレ)で落ち着いたものの、序盤戦はチームが機能せず四苦八苦した。今回も同様の事態に陥らないとは限らない。指揮官も大迫の代役探しに躍起になっているはずだ。
9月のミャンマー戦(ヤンゴン)に招集した鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)や永井謙佑(FC東京)は10月シリーズの有力候補だし、南野の1トップ起用、スペインで新たなキャリアを踏み出した岡崎慎司(ウエスカ)の再招集も考えられるが、今、改めて推したいのが、33歳のストライカー・興梠慎三(浦和レッズ)だ。J1・15位に沈みながらも、浦和をAFCチャンピオンズリーグ(ACL)4強へけん引しているのは、紛れもなくこのベテランに他ならない。これまでも「代表にはあまり興味がない」と何度か言っていた本人は招集を断るだろうし、若返りを第一に掲げる森保監督も呼ばないかもしれないが、あえて今、彼にクローズアップしてほしいのである。
鹿島アントラーズに在籍していた2012年からJ1・7シーズン連続2ケタゴールを達成し、今季もすでに11得点と日本人最高スコアラーに君臨する彼の決定力は申し分ない。17日のACL準々決勝・上海上港戦の先制弾にしても、左サイドの関根貴大のクロスに合わせていったん敵の背後に回り、視野から外れて再び前に出て絶妙のタイミングでヘッドを決めるという職人芸を見せた。ゴールパターンも頭に左右両足と多彩で、背後に抜けるのも横に開いてスペースを見つけるのも得意だ。さらに前線でタメを作ったり、起点となったりという大迫が得意としている仕事は問題なくこなせる。スピードやパワーでは鈴木武蔵や永井謙佑に劣るかもしれないが、これだけ八面六臂の働きをしてくれるFWを使わない手はない。
加えて言うと、彼には2016年リオ・デ・ジャネイロ五輪にオーバーエージで参戦した経験もある。あの大会で勝ちきれず、一時は燃え尽き症候群に陥ったというが、代表の重みと誇り、やりがいは大いに感じただろう。今回、「A代表で力を貸してほしい」と言われたら、首を横に振ることはないはず。33歳になり、ストライカーとして円熟味を増した今こそ、興梠慎三に活躍してほしいのだ。
10月2日と23日にACL準決勝・広州恒大戦があり、J1と天皇杯も入ってくるため、両足に負傷を抱えている彼には厳しいスケジュールかもしれない。それを乗り切れるだけのタフなメンタリティが興梠にはある。ACLの後も「左足に力が入んないし、右足は足首がいたいし、もういつ交代しようかと思ったよ。ケガがなかなか治んないよね」と苦渋の表情を浮かべながらも、90分フル稼働し、キャプテンとしてチームを力強く引っ張り続けた。その責任感は鹿島時代の興梠にはなかったもの。やはり30代になって、自分の立ち位置をよく理解しながら戦えるようになったのだろう。仮に代表に呼ばれたとしても、同じように全身全霊を込めてプレーしてくれるはずだ。
Jの舞台とはいえ、これだけ光り輝くスーパーなFWがいるのだから、森保監督もしっかりとした判断を下すべき。今、ベストな選手を使うのが代表の本来の姿。そこに立ち返って、大迫の代役にこの男をピックアップしてくれることを強く願いたい。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
森保一監督率いる新生ジャパン発足後、攻撃陣をけん引してきたのは間違いなく大迫だ。世間の注目は堂安律(PSV)、南野拓実(ザルツブルク)、中島翔哉(ポルト)の2列目トリオや18歳の久保建英(マジョルカ)に集まりがちだが、彼らが機能するのも大迫が最前線でしっかりとボールを収め、緩急をつけ、若いアタッカー陣を巧みにコントロールしているから。その大黒柱不在となれば、いくら2次予選といっても日本が苦戦する可能性も否定できないのだ。
9月のミャンマー戦(ヤンゴン)に招集した鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)や永井謙佑(FC東京)は10月シリーズの有力候補だし、南野の1トップ起用、スペインで新たなキャリアを踏み出した岡崎慎司(ウエスカ)の再招集も考えられるが、今、改めて推したいのが、33歳のストライカー・興梠慎三(浦和レッズ)だ。J1・15位に沈みながらも、浦和をAFCチャンピオンズリーグ(ACL)4強へけん引しているのは、紛れもなくこのベテランに他ならない。これまでも「代表にはあまり興味がない」と何度か言っていた本人は招集を断るだろうし、若返りを第一に掲げる森保監督も呼ばないかもしれないが、あえて今、彼にクローズアップしてほしいのである。
鹿島アントラーズに在籍していた2012年からJ1・7シーズン連続2ケタゴールを達成し、今季もすでに11得点と日本人最高スコアラーに君臨する彼の決定力は申し分ない。17日のACL準々決勝・上海上港戦の先制弾にしても、左サイドの関根貴大のクロスに合わせていったん敵の背後に回り、視野から外れて再び前に出て絶妙のタイミングでヘッドを決めるという職人芸を見せた。ゴールパターンも頭に左右両足と多彩で、背後に抜けるのも横に開いてスペースを見つけるのも得意だ。さらに前線でタメを作ったり、起点となったりという大迫が得意としている仕事は問題なくこなせる。スピードやパワーでは鈴木武蔵や永井謙佑に劣るかもしれないが、これだけ八面六臂の働きをしてくれるFWを使わない手はない。
森保監督は世代交代を掲げてこの1年間、チーム作りをしてきたが、1月のアジアカップ(UAE)で秘蔵っ子の塩谷司(アル・アイン)を抜擢し、6月のコパアメリカ(ブラジル)で川島永嗣(ストラスブール)と岡崎をダブル選出したように、ここ一番の時にはベテランの力を重要視する傾向が強い。興梠は川島や岡崎のようにワールドカップ出場経験があるわけではないし、過去の予選もほとんど戦っていないが、ACL制覇やFIFAクラブ・ワールドカップに参戦していて、国際舞台に立っていないわけではない。
加えて言うと、彼には2016年リオ・デ・ジャネイロ五輪にオーバーエージで参戦した経験もある。あの大会で勝ちきれず、一時は燃え尽き症候群に陥ったというが、代表の重みと誇り、やりがいは大いに感じただろう。今回、「A代表で力を貸してほしい」と言われたら、首を横に振ることはないはず。33歳になり、ストライカーとして円熟味を増した今こそ、興梠慎三に活躍してほしいのだ。
10月2日と23日にACL準決勝・広州恒大戦があり、J1と天皇杯も入ってくるため、両足に負傷を抱えている彼には厳しいスケジュールかもしれない。それを乗り切れるだけのタフなメンタリティが興梠にはある。ACLの後も「左足に力が入んないし、右足は足首がいたいし、もういつ交代しようかと思ったよ。ケガがなかなか治んないよね」と苦渋の表情を浮かべながらも、90分フル稼働し、キャプテンとしてチームを力強く引っ張り続けた。その責任感は鹿島時代の興梠にはなかったもの。やはり30代になって、自分の立ち位置をよく理解しながら戦えるようになったのだろう。仮に代表に呼ばれたとしても、同じように全身全霊を込めてプレーしてくれるはずだ。
Jの舞台とはいえ、これだけ光り輝くスーパーなFWがいるのだから、森保監督もしっかりとした判断を下すべき。今、ベストな選手を使うのが代表の本来の姿。そこに立ち返って、大迫の代役にこの男をピックアップしてくれることを強く願いたい。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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