森保ジャパンのチーム作りの基本コンセプト/六川亨の日本サッカーの歩み
2019.01.31 22:50 Thu
アジアカップも残すは日本対カタールの決勝戦を残すのみとなった。1月31日に決戦の舞台となるザイード・スポーツシティ・スタジアムで行われた前日会見には森保一監督とキャプテンの吉田麻也が出席し、日本はもちろん現地UAEや対戦相手であるカタールの記者からの質問を受けた。
ここまで森保ジャパンは6試合を戦い、準決勝のイラン戦こそ3-0で快勝したが、それ以外は1点差という僅差の試合を粘り強く戦い勝利に結びつけてきた。
試合前と試合後の森保監督は、記者から質問が出ないせいもあるが、選手交代の理由をはじめ、選手個々について言及することは一度もなかった。オマーン戦後にホテル中庭で行った日本人プレスとの囲み会見でも、長友佑都や大迫勇也ら経験値の高い選手が若手選手に対し、「もっと自分を出せ」といったニュアンスのアドバイスについても、次のように答えた。
「選手それぞれでキャラクターは違いますし、その選手がどういう形で力を発揮するのか、選手個々で違うと思うで。ただ、ガムシャラにやっているのは皮膚感覚でわかりますし、キャリアを重ねた先輩たちのアドバイスに刺激しあっていると思います」と若手選手に無理強いすることはしなかった。
そんな森保監督が試合前後の会見で繰り返したのが、「しっかりと準備をする」、「最善のトライ」、「全力を尽くす」といった言葉だった。森保サッカーの“キーワード”と言えるかもしれないが、これだけでは抽象的なためイメージもわきにくい。
「選手はボールを握って攻めること(=遅攻)、速く攻めること(=カウンター)、守備ではプレッシャーをかけて守ること(=前線からの守備)、ガマンするところはガマンして(=リトリートして守備ブロックを作る)流れを持ってくることを学びながら、ここまで来ることができました。明日の試合も選手は対応力と修正力を持って、集中を切らさずやってくれると思う」
これが森保サッカーの目指すスタイルであり、だからこそ選手個々のプレーのディテールを指摘しても意味のないことがわかり、これまでのコメントが抽象的だった理由がストンと腑に落ちた。
と同時に、これは凄いことだとも思った。「対応力」や「修正力」は個人の判断によるところが大きいし、チームとしても必要になる。しかし実践するには時間がかかるだろう。クラブチームならいざ知らず、集散を繰り返す代表チームでそれが可能なのかどうか。それは歴代の代表監督が頭を悩ませてきた難問でもある。
それを森保監督は1ヶ月という限られた期間ながら、確実に遂行して結果を残してきた。明日の決勝の結果はどちらに転んでも、森保監督のチーム作りは着々と進み、冨安健洋や堂安律ら若手選手は貴重な経験を積んだことは間違いない。
3月のキリンチャレンジ杯で森保監督はどんな選手を招集するのか。いまから楽しみな森保ジャパンでもある。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
ここまで森保ジャパンは6試合を戦い、準決勝のイラン戦こそ3-0で快勝したが、それ以外は1点差という僅差の試合を粘り強く戦い勝利に結びつけてきた。
「選手それぞれでキャラクターは違いますし、その選手がどういう形で力を発揮するのか、選手個々で違うと思うで。ただ、ガムシャラにやっているのは皮膚感覚でわかりますし、キャリアを重ねた先輩たちのアドバイスに刺激しあっていると思います」と若手選手に無理強いすることはしなかった。
そんな森保監督が試合前後の会見で繰り返したのが、「しっかりと準備をする」、「最善のトライ」、「全力を尽くす」といった言葉だった。森保サッカーの“キーワード”と言えるかもしれないが、これだけでは抽象的なためイメージもわきにくい。
ところがカタール戦に向けて日本の強みを聞かれたところ、その答えに森保サッカーのエッセンスがあったので紹介しよう。質問は、カタールがアルサッドの選手を中心に国内組が主力で、監督にも継続性がある。そんなチームに対して日本のアドバンテージを森保監督は簡潔に説明した。
「選手はボールを握って攻めること(=遅攻)、速く攻めること(=カウンター)、守備ではプレッシャーをかけて守ること(=前線からの守備)、ガマンするところはガマンして(=リトリートして守備ブロックを作る)流れを持ってくることを学びながら、ここまで来ることができました。明日の試合も選手は対応力と修正力を持って、集中を切らさずやってくれると思う」
これが森保サッカーの目指すスタイルであり、だからこそ選手個々のプレーのディテールを指摘しても意味のないことがわかり、これまでのコメントが抽象的だった理由がストンと腑に落ちた。
と同時に、これは凄いことだとも思った。「対応力」や「修正力」は個人の判断によるところが大きいし、チームとしても必要になる。しかし実践するには時間がかかるだろう。クラブチームならいざ知らず、集散を繰り返す代表チームでそれが可能なのかどうか。それは歴代の代表監督が頭を悩ませてきた難問でもある。
それを森保監督は1ヶ月という限られた期間ながら、確実に遂行して結果を残してきた。明日の決勝の結果はどちらに転んでも、森保監督のチーム作りは着々と進み、冨安健洋や堂安律ら若手選手は貴重な経験を積んだことは間違いない。
3月のキリンチャレンジ杯で森保監督はどんな選手を招集するのか。いまから楽しみな森保ジャパンでもある。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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