大迫は別格も後継者探しが急務/六川亨の日本サッカー見聞録
2019.01.25 21:40 Fri
アジアカップ2019UAEも残すは7試合。昨日の準々決勝では日本代表がベトナム代表を堂安律のPKによるゴールで下し、2大会ぶりのベスト4に進出した。試合は、今大会を象徴するような展開だった。
ベトナムはグループリーグD最終戦のイエメン代表戦での勝利で3位となり、決勝トーナメントに進出した。1回戦ではグループB首位のヨルダン代表を下し、地元開催となった2007年のアジアカップ以来となるベスト8に進出。その原動力は平均年齢23・25歳という若さにある。
豊富な運動量で日本を凌駕し、5BK、4MFの守備的な布陣ながら、インターセプトからのカウンターで日本を脅かした。日本が序盤に劣勢だったのは、タテパスからの速い攻撃を仕掛けたものの、前線でボールが収まらないのと、パスそのものが不正確だったからだ。ここら当たり、やはり北川航也の1トップでは荷が重いことと、まだまだ森保一監督の目指すスタイルは発展途上と言わざるを得ない。
前半24分には柴崎岳の左CKから吉田麻也がヘッドで先制点を決めたかに見えたが、準々決勝から導入されたVAR(ビデオ・アシスタントレフェリー)の判定により取り消されてしまった。VTRを見たら明らかにシュートしたボールが吉田の手に当たってからゴールに飛び込んだため、仕方のないジャッジだった。
それでも後半12分、4分前の堂安に対するタックルがVAR判定の結果、PKと認定されたのはラッキーだったと言える。主審がプレーを止め、ビデオを確認するまでに、ベトナムは選手交代をしているためプレーは続行中だったが、もしもその間にベトナムか日本がゴールを決めていたら、どのようにプレーを再開し、PKのジャッジはどうなったのかが気になるシーンでもあった。
「堂安や南野、原口、乾(貴士)らは距離が近くないとお互いの良さが生きない」とはNHKの解説者として現地を訪れている山本昌邦氏の指摘だが、やはり大迫は別格と言える。大迫がピッチに立つと、流れるようなパスワークが戻ったことがそれを証明しているだろう。
問題は、代えのきかない大迫のバックアッパーをどうするかで、それは今大会に限ったことではない。今大会のメンバーである北川と武藤嘉紀は、タテへの突破が魅力な選手で、大迫とはタイプが違う。森保監督の目指す「タテに速いサッカー」は、どうしても前線にポストプレーヤーが必要だ。
今大会なら、南野を1トップに、トップ下に乾を置くオプションも窮余の策として考えられるが(青山敏弘が負傷離脱しなければ、彼をボランチに、柴崎岳をトップ下という選択肢もあった)、大迫の代役捜しは急務でもある。
国内組では、負傷で辞退した小林悠、長身プレーヤーの杉本健勇らの候補がいるし、アンダー世代では磐田の小川航基、法政大学の上田綺世といったU-23日本代表の選手も候補となってくるだろう。
いずれにしても日本代表では1トップと左SBのバックアッパー探しが森保監督の次のミッションになることは間違いない。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
ベトナムはグループリーグD最終戦のイエメン代表戦での勝利で3位となり、決勝トーナメントに進出した。1回戦ではグループB首位のヨルダン代表を下し、地元開催となった2007年のアジアカップ以来となるベスト8に進出。その原動力は平均年齢23・25歳という若さにある。
前半24分には柴崎岳の左CKから吉田麻也がヘッドで先制点を決めたかに見えたが、準々決勝から導入されたVAR(ビデオ・アシスタントレフェリー)の判定により取り消されてしまった。VTRを見たら明らかにシュートしたボールが吉田の手に当たってからゴールに飛び込んだため、仕方のないジャッジだった。
それでも後半12分、4分前の堂安に対するタックルがVAR判定の結果、PKと認定されたのはラッキーだったと言える。主審がプレーを止め、ビデオを確認するまでに、ベトナムは選手交代をしているためプレーは続行中だったが、もしもその間にベトナムか日本がゴールを決めていたら、どのようにプレーを再開し、PKのジャッジはどうなったのかが気になるシーンでもあった。
ともかく、この1点で日本は楽になったが、この試合における一番の収穫は大迫勇也の復活に他ならない。マーカーを背負いながら確実にボールを収めて攻撃の起点になる。これまでなりを潜めていた堂安や南野拓実、原口元気らともワンタッチ、ツータッチのパス交換でベトナムゴールを脅かした。
「堂安や南野、原口、乾(貴士)らは距離が近くないとお互いの良さが生きない」とはNHKの解説者として現地を訪れている山本昌邦氏の指摘だが、やはり大迫は別格と言える。大迫がピッチに立つと、流れるようなパスワークが戻ったことがそれを証明しているだろう。
問題は、代えのきかない大迫のバックアッパーをどうするかで、それは今大会に限ったことではない。今大会のメンバーである北川と武藤嘉紀は、タテへの突破が魅力な選手で、大迫とはタイプが違う。森保監督の目指す「タテに速いサッカー」は、どうしても前線にポストプレーヤーが必要だ。
今大会なら、南野を1トップに、トップ下に乾を置くオプションも窮余の策として考えられるが(青山敏弘が負傷離脱しなければ、彼をボランチに、柴崎岳をトップ下という選択肢もあった)、大迫の代役捜しは急務でもある。
国内組では、負傷で辞退した小林悠、長身プレーヤーの杉本健勇らの候補がいるし、アンダー世代では磐田の小川航基、法政大学の上田綺世といったU-23日本代表の選手も候補となってくるだろう。
いずれにしても日本代表では1トップと左SBのバックアッパー探しが森保監督の次のミッションになることは間違いない。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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