あと3つ、過去最高へ復興への思いを胸に尚志が挑むベスト4《全国高校サッカー選手権》

2019.01.05 12:00 Sat
©超ワールドサッカー
平成最後の全国高校サッカー選手権大会もベスト8が決定した。

今大会も全国から強豪校が多く出場した大会だったが、ベスト8に残った顔ぶれを見ると優勝経験がある学校は2校。前々回大会の第95回大会(2016年度)で優勝した青森山田高校(青森県)と、現在は大宮アルディージャでプレーするFW大前元紀を擁した第86回大会(2007年度)に優勝した流通経済大学柏高校(千葉県)のみだ。
8校中6校が初優勝を目指すこととなる今大会。その中でも強い想いをもって臨んでいる学校がある。それが、福島県代表の尚志高校だ。
(C)CWS Brains,LTD.

「がんばろーぜ、がんばろーぜ、尚志高校」。試合前、選手たちが手を繋ぎ、円陣を組んでこう歌いながらジャンプする。同じ目標に向かって、チームが1つになり、士気を上げる儀式だ。

福島県代表として5年連続10回目の出場となった尚志。これまでの最高位はベスト4だ。そのベスト4の結果を残したのは第90回大会(2011年度)、未曾有の被害を生んだ東日本大震災の年に開催された大会だ。

当時は準決勝で日本代表FW浅野拓磨(ハノーファー)を擁した四日市中央工業高校(三重県)に1-6と大敗。創部からチームを率いる仲村浩二監督は、現在のチームを「震災後初めてこういった状況になっている」とコメントした。
2018年のチームはJFA U-18サッカープレミアリーグの参入を争うまでに成長。そして、JFAアカデミー福島U-18、横浜F・マリノスユースを倒し、見事に2019年のプレミアリーグ参入を決めた。そのチームのテーマは、「頼らない」サッカーだ。

今大会の尚志は、U-17日本代表のFW染野唯月や突破力が売りのFW加瀬直輝、そして左足から高精度のキックを繰り出すDF沼田皇海(すかい)らタレントが揃っている。しかし、そんなタレントに依存することなく、監督の言葉通り分厚い選手層で勝ち上がってきた。

初戦の神村学園高校(鹿児島県)は前半をゴールレスで終えると、後半早々に投入されたMF伊藤綾汰が55分にゴール。しかし、後半アディショナルタイムにDF隈元聖也に直接FKを決められてしまい、PK戦にもつれ込む。しかし、仲村監督は同点に追いつかれた後にGKを鈴木康洋へと交代。その鈴木は、神村学園の2人目のシュートをストップ。チームに勝利をもたらせた。
(C)CWS Brains,LTD.

2回戦は、初戦で0-4と快勝を飾った優勝候補の一角であり、前回大会の1回戦で敗れた東福岡高校(福岡県)を相手に0-2と勝利。守備陣は強力な東福岡攻撃陣を抑え、攻撃面では前後半に1点ずつを奪い、見事前年のリベンジを達成した。

そして3回戦は、前回王者の前橋育英高校(群馬県)が相手。優勝候補との対戦が続いたものの、0-0で迎えた後半に沼田が直接FKを沈めて先制。さらに加藤の突破から染野が落ち着いて流し込んでリードを広げ、1-2で勝利した。
(C)CWS Brains,LTD.

試合後、チームについて聞かれた仲村監督は「誰に頼ることないチーム」とコメント。これまでの得点者が全て違うこともさながら、前半から選手を交代させたり、後半の選手交代で流れを掴んでいることからも、チームとして11人以上の力を持っていることを示している。
(C)CWS Brains,LTD.

また、指揮官と選手の信頼も厚い。0-1で迎えた51分、サイドでクロスボールのルーズボールを加藤が拾うと、仲村監督は「行け」と仕掛けることをベンチから指示。その言葉通り、加藤がドリブルを仕掛けDFをかわし、最後は染野が落ち着いてゴールを決めた。このシーンについては、「『行けという言葉が聞こえた』と言ってました」と仲村監督が明かし、加藤が監督の言葉に背中を押されて貴重な追加点を生み出したと言えるだろう。チームとしての信頼があることがうかがえた。
(C)CWS Brains,LTD.

東日本大震災から7年半が経過。尚志がベスト4の結果を残してから、丸7年を迎えようとしている中、2018年は福島県にとっては大きな転機となった。最も大きなものは、震災以降営業を停止していたJヴィレッジ(福島県双葉郡)が営業を再開したこと。かつては日本代表のトレーニングキャンプでも使用されたナショナルトレーニングセンターが、2018年7月28日に7年4カ月ぶりに営業を再開した。

尚志は、2018年10月に行われたJヴィレッジ営業再開後初となる国際大会に出場。そして、そのJヴィレッジに尚志は感謝している。「2018年はJヴィレッジが復活した。素晴らしい施設、そして天然芝で私たちは好き勝手にやらせて貰った」と仲村監督が語った。
(C)CWS Brains,LTD.

福島県にとって復興のシンボルとなるJヴィレッジが復活。そして、震災の翌年に行われた選手権でベスト4の結果を残した尚志が、今大会でその記録に追いつき、追い越そうとしている。「全部が決勝戦」と語る仲村監督。その仲村監督が1つのチームとして作り上げた尚志が、一戦必勝で挑む頂点まではあと「3」つだ。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
関連ニュース

U-19日本代表FW高岡伶颯がトライアウト詐欺に? インテルとの面会でミラノ入りも、何も行われずと現地報道

U-19日本代表のFW高岡伶颯(17/日章学園高校)がトライアウト詐欺に遭っていたようだ。 U-17日本代表として、2023年のU-17ワールドカップではグループステージで3試合連続ゴールを記録するなど結果を残した高岡。Jリーグクラブのトレーニングに参加するなど、将来が期待されるストライカーだ。 そんな中、インテルの専門メディアであるイタリア『Interlive.it』によると、高岡はミラノに滞在していたとのこと。インテルと面会し、トライアウトを受ける予定だったという。 超高校級の選手であり、将来的には日本代表でのプレーも期待される逸材が故に、早くから目をつけられていてもおかしくはない。 しかし、どうやらこの話は幻だったとのこと。『Interlive.it』によると、インテルとの会談はおろか、トライアウトなど存在しないことが判明したという。 高岡らは自費でイタリアまでやってきており、仲介した代理店への返金を求めているとのこと。完全な詐欺に遭ってしまったという。 <span class="paragraph-title">【動画】U-17W杯で高岡伶颯が決めた圧巻ゴール</span> <span data-other-div="movie"></span> <script>var video_id ="mjSXE_4zDDM";var video_start = 202;</script><div style="text-align:center;"><div id="player"></div></div><script src="https://web.ultra-soccer.jp/js/youtube_autoplay.js"></script> 2024.04.07 22:22 Sun

U-17日本高校サッカー選抜が発表! 鹿島、大宮、川崎FのユースとJ-VILLAGE CUPで対戦

日本サッカー協会(JFA)は12日、U-17日本高校サッカー選抜のメンバーを発表した。 高校2年生以下で組まれているチーム。14日から18日にかけてJヴィレッジにて行われる第6回J-VILLAGE CUP U18に出場する。 本大会では、鹿島アントラーズユース、大宮アルディージャU18、川崎フロンターレU-18と対戦。旭川実業高校の富居徹雄監督がチームを率いる。 メンバーには、第102回全国高校サッカー選手権大会にも出場し、ベスト4に勝ち残った市立船橋高校のGKギマラエス・ニコラスやFW久保原心優、同じくベスト4入りを果たした堀越高校のDF森奏、ベスト8の昌平高校のGK佐々木智太郎、MF大谷湊斗などが選出されている。 ◆U-17日本高校サッカー選抜 GK 佐々木智太郎(昌平高校/2年) ギマラエス・ニコラス(市立船橋高校/2年) 早川ウワブライト(日本体育大学柏高校/2年) DF 山田佳(前橋育英高校/2年) 谷口輝(西武台高校/2年) 森奏(堀越高校/2年) 岡崎礼暉(関東第一高校/2年) 山本圭晋(帝京長岡高校/2年) 鈴木悠仁(神村学園高校/2年) MF 笹修大(札幌大谷高校/2年) 大内完介(尚志高校/2年) 平林尊琉(前橋育英高校/1年) 大谷湊斗(昌平高校/2年) 柚木創(流通経済大学付属柏高校/2年) 木村有磨(履正社高校/2年) 嶋本悠大(大津高校/2年) 新垣陽盛(神村学園高校/2年) 福島和毅(神村学園高校/1年) FW 清水彪雅(旭川実業高校/2年) オノノジュ慶吏(前橋育英高校/2年) 久保原心優(市立船橋高校/2年) 宮地陸翔(京都橘高校/2年) 大石脩斗(鹿児島城西高校/1年) 2024.03.12 17:25 Tue

日本高校選抜が終盤の京都橘・池戸柊宇のヘッドで神戸U-18に勝利! 2018年以来6年ぶりの勝利

17日、NEXT GENERATION MATCHのヴィッセル神戸U-18vs日本高校選抜が国立競技場で行われ、0-1で日本高校選抜が勝利した。 2023シーズンのJ1王者であるヴィッセル神戸の下部組織と、高校選抜の一戦。40分ハーフで行われた試合は、神戸U-18ペースで進んでいく。 神戸は左サイドのFW森田皇翔、右サイドのFW大西湊太が積極的に仕掛けてペースを握り、急造チームである日本高校選抜を手玉に取るコンビネーションを見せていく。 17分にはFKを獲得すると、左サイドから濱﨑健斗がクロス。これをファーで合わせにいくが、GKが詰めて対応する。 日本高校選抜は19分にチャンス。左サイドからのグラウンダーのクロスを芝田玲(青森山田)がダイレクトシュートもGK正面。ゴールとはならない。 その後は互いに攻め合う展開となるも決定機は訪れず。それでも37分、日本高校選抜は芝田がドリブルを仕掛けて右に展開。これを松田悠世(桐光学園)が折り返しニアで芝田が合わせにいくが、わずかに届かない。 前半をゴールレスで終えた中、神戸U-18は大西を下げて瀬口大翔を投入。日本高校選抜は、GK鈴木将永(青森山田)、長準喜(昌平)に代えて、GK平塚仁(岡山学芸館)、MF杉本英誉(青森山田)を投入する。 後半は日本高校選抜のペースで進んでいくが、最初のチャンスは神戸U-18。50分に渡辺隼斗がカットインからシュートを放つが、GKがセーブする。 さらに53分、カウンターから濱﨑が独走。このままシュートに行くが、小泉佳絃(青森山田)が懸命に戻ってシュートブロック。ゴールを許さない。 日本高校選抜は56分に網代陽勇(尚志)を下げて、高岡伶颯(日章学園)を投入。神戸U-18は62分に森田を下げて藤本陸玖を投入、日本高校選抜は63分に松田、市川和弥(尚志)を下げて、北藤朔(神戸広陵学園)、布施克真(日大藤沢)を起用する。 ゴールが生まれない中、互いに選手交代で流れを変えに行くと、終盤は日本高校選抜が押し込んでいくことに。73分には杉本が右サイドからカットインして左足シュート。枠を捉えるがこれは途中出場のGK吉岡耕佑がセーブ。ここで日本高校選抜は芝田を下げて太田隼剛(市立船橋)を起用すると、その太田が左CKからクロス。ファーサイドに飛んだボールを池戸柊宇(京都橘)が打点の高いヘッドで叩き込み先制。そのまま逃げ切り、日本高校選抜が6年ぶりに勝利を収めた。 ヴィッセル神戸U-18 0-1 日本高校選抜 【得点者】 0-1:76分 池戸柊宇(日本高校選抜) 2024.02.17 12:35 Sat

日本高校サッカー選抜メンバーが発表! ヴィッセル神戸U-18と「NEXT GENERATION MATCH」で対戦

日本サッカー協会(JFA)は9日、FUJIFILM SUPER CUP 2024 の「NEXT GENERATION MATCH」に臨む日本高校サッカー選抜のメンバーを発表した。 日本高校サッカー選抜は、候補メンバーで1月20日から23日まで選考合宿を実施していた。 今回のメンバーには、第102回全国高校サッカー選手権大会で優勝した青森山田からGK鈴木将永、DF小泉佳絃、DF山本虎、MF杉本英誉、MF芝田玲の5名が選出。また、準優勝の近江からは選ばれていない。 その他、2年生では神村学園のU-17日本代表MF名和田我空、日大藤沢高校のDF布施克真、日章学園のFW高岡伶颯の3名が選出されている。 チームは17日にヴィッセル神戸U-18と対戦。また、2月27日から3月2日まで行われる第38回デンソーカップチャレンジサッカー 福島大会にも同じメンバーで挑む。 ◆日本高校サッカー選抜メンバー GK 鈴木将永(青森山田高校/3年) 雨野颯真(前橋育英高校/3年) 平塚仁(岡山学芸館高校/3年) DF 小泉佳絃(青森山田高校/3年) 山本虎(青森山田高校/3年) 渡辺優空(尚志高校/3年) 市川和弥(尚志高校/3年) 塩川桜道(流通経済大柏高校/3年) 布施克真(日大藤沢高校/2年) 野田隼太郎(藤枝東高校/3年) 池戸柊宇(京都橘高校/3年) MF 杉本英誉(青森山田高校/3年) 芝田玲(青森山田高校/3年) 神田拓人(尚志高校/3年) ⾧準喜(昌平高校/3年) 太田隼剛(市立船橋高校/3年) 松田悠世(桐光学園高校/3年) 北藤朔(神戸弘陵高校/3年) 名和田我空(神村学園高等部/2年) FW 網代陽勇(尚志高校/3年) 小田晄平(昌平高校/3年) 宮下拓弥(桐光学園高校/3年) 高岡伶颯(日章学園高校/2年) 2024.02.09 21:40 Fri

U-17日本高校サッカー選抜候補メンバーが発表! 青森山田DF小沼蒼珠や市船GKギマラエス・ニコラスら

日本サッカー協会(JFA)は18日、U-17日本高校サッカー選抜候補のメンバーを発表した。 U-17日本高校サッカー選抜候補は、20日から23日まで選考合宿を実施。合宿中には、日本体育大学、東京国際大学、日本高校選抜とのトレーニングマッチが予定されている。 今回のメンバーは2年生が中心で1年生も6名が招集。第102回全国高校サッカー選手権大会で優勝した青森山田から左サイドバックの主軸だったDF小沼蒼珠、ベスト4入りに貢献した市立船橋のGKギマラエス・ニコラス、2回戦で敗退ながら2試合で2得点を奪った前橋育英のFWオノノジュ慶吏などが選出されている。 ◆U-17日本高校サッカー選抜候補メンバー GK 藤間広希(矢板中央高校/2年) 佐々木智太郎(昌平高校/2年) ギマラエス・ニコラス(市立船橋高校/2年) 早川ウワブライト(日体大柏高校/2年) 松本優星(国見高校/2年) DF 小沼蒼珠(青森山田高校/2年) 山田佳(前橋育英高校/2年) 上原悠都(昌平高校/2年) 谷口輝(西武台高校/2年) 富樫龍暉(流通経済大柏高校/2年) 森奏(堀越高校/2年) 田中玲音(東京実業高校/2年) 岡崎礼暉(関東第一高校/2年) 杉野太一(桐光学園高校/2年) 山本圭晋(帝京⾧岡高校/2年) 江頭瀬南(佐賀東高校/2年) 田中佑磨(佐賀東高校/2年) 五嶋夏生(大津高校/2年) 鈴木悠仁(神村学園高等部/2年) MF 澁谷陽(旭川実業高校/2年) 笹修大(札幌大谷高校/2年) 大内完介(尚志高校/2年) 平林尊琉(前橋育英高校/1年) 大谷湊斗(昌平高校/2年) 山口豪太(昌平高校/1年) ⾧璃喜(昌平高校/1年) 柚木創(流通経済大柏高校/2年) 木村有磨(履正社高校/2年) ⾧村星波(瀬戸内高校/2年) 坂田幸大(大社高校/1年) 嶋本悠大(大津高校/2年) 大成健人(神村学園高等部/2年) 新垣陽盛(神村学園高等部/2年) 福島和毅(神村学園高等部/1年) FW 清水彪雅(旭川実業高校/2年) 矢崎レイス(尚志高校/2年) オノノジュ慶吏(前橋育英高校/2年) 久保原心優(市立船橋高校/2年) 宮地陸翔(京都橘高校/2年) 日高元(神村学園高等部/1年) 大石脩斗(鹿児島城西高校/1年) 2024.01.18 19:25 Thu
NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly