先のことを考えても仕方ない…/原ゆみこのマドリッド
2018.12.18 13:15 Tue
▽「自業自得はまさにこのこと」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、CL16強対決の組み合わせ抽選が終わった時のことでした。いやあ、そもそもグループリーグ最終節でクルブ・ブルージュ相手にゴールレスドローを演じ、1位突破の栄誉をドルトムントに譲って、2位通過となったアトレティコには強豪を避ける術は残されていなかったんですけどね。よって、相手が今季イタリア・セリアAで無敗の首位、ユベントスと決まった瞬間もクリスティアーノ・ロナウドやマンジュキッチを守備陣がしっかり抑えてくれればいいと思ったぐらいで、それがネイマールとムバッペ、アグエロとダビド・シルバ、もしくはレヴァンドフスキと名前が変わっても同じことだったんですが、お隣さんがアヤックス、バルサはオリンピック・リヨンという結果を見ると、運命の不公平さを感じてしまうのは私だけではなかった?
▽ただ1つだけ得したことがアトレティコにはあって、それはレアル・マドリーが2月13日にアウェイでの1stレグを迎えるのに比べ、ワンダ・メトロポリターノでの1stレグは20日になること。おかげで現在、左足小指の中足骨のボルト入れ替え手術をして、母国ブラジルでリハビリ生活を送っているジエゴ・コスタの復帰に更に1週間、余裕ができるからですが、加えて2月第2週にはコパ・デル・レイ準決勝1stレグもありますからね。もしそこまで残っていた場合、ミッドウィークに予定のない週を1つ挟んで挑めるのもラッキーかと。
▽だからって、アヤックスとユベントスでは準々決勝進出への難易度がまったく違うことは否めず、心の支えになるのはシメオネ監督の時代になってから、グループリーグで敗退して、ヨーロッパリーグに優勝した昨季以外、2013-14シーズンは決勝、14-15シーズンは準々決勝、15-16シーズンは再び決勝、16-17シーズンは準決勝で負けたのは全てお隣さん相手。逆に言うと、CLではマドリーと当たらない限り、アトレティコは勝てるという見方もできることですが、果たしてジンクスは繰り返す? どちらにしろ、まだ2カ月も先の話なので、今から悲観することもないって感じでしょうか。
▽そんなことはともかく、先週末のリーガのマドリッド勢の試合をお伝えしていくことにすると、一足早く金曜にセルタに挑んだレガネスはエル・ネシリが3度も絶好機に失敗してしまったことも祟り、バライードスで0-0の引き分けに。それでも16位は維持しましたし、彼らには年明け9日にサンティアゴ・ベルナベウでマドリーとのコパ16強対決1stレグが控えていますからね。昨季はそれこそ、その大先輩を破って準決勝まで進出したコパを楽しむためにも、今年最後の試合となるブタルケに2位のセビージャを迎える日曜の大一番で頑張って、ついでにリーガ上位を争っている兄貴分たちに恩を売っておくのもいいかもしれませんよ。
▽そして残りの4チームがプレーしたのが土曜だったんですが、まずは午後1時、ヘタフェがレアル・ソシエダを迎える試合を見るため、私はコリセウム・アルフォンソ・ペレスへ。着いてみると、この日はサプライズがあって、柴崎岳選手が先発に入っていたんですが、開始3分、「El chico esta trabajando bien, ha mejorado, esta interpretando bien/エル・チコ・エスタ・トラバハンドー・ビエン、ア・メホラード、デスタ・インテルプレタンドー・ビエン(彼はよく練習しているし、向上した。役目を上手く理解している)」という理由で、先日ヒザの靭帯を断裂、今季絶望となってしまったアマトの代わりとして抜擢したボルダラス監督の期待に早速、応えてくれます。
▽うーん、先週はアンヘル・トーレス会長がファンクラブの集いで「Me consta que quieren que dos equipos de Madrid bajen/メ・コンスタ・ケ・キエレン・ケ・ドス・エキポス・デ・マドリッド・バヘン(マドリッドの2クラブを降格させたがっていると聞いた)」とサッカー協会だか、リーガの陰謀説を口にして、物議を醸していたりもしたんですけどね。今の調子を見る限り、ユーロヘタ(かつてELに出場したヘタフェがこう呼ばれた)復活の方が近そうなのは喜ばしい限りかと。唯一、残念なのは「長い期間、選手がいなくなるのは嬉しくないが、そういう日程だからね」とボルダラス監督も嘆いてように、年明けから、おそらく1月いっぱいはアジアカップのため、日本代表に招集された柴崎選手がチームを離れてしまうことなんですが、それだけに当人も金曜のジローナ戦では今年最後のアピールをしておきたいのでは?
▽その試合後はメトロで北上、サンティアゴ・ベルナベウまで移動して、スタジアム近くのアルゼンチン系レストランでシェラスコ(焼肉)ランチをしながら、アトレティコのバジャドリー戦を見た私でしたが、周りはマドリーファンばかりでも観光客が多いせいか、意外と大丈夫なものです。それより、特に大したこともしていなかったアトレティコが前半17分にはグリーズマンのスルーパスをカリニッチがエリア内からシュート。これが先制点となり、ここ4試合で先発落ちしたクラブ・ブルージュ戦だけ、彼にゴールがなかったことを考えると、かの日のシメオネ監督の選手起用に納得いかなかったりもしたんですが、ハーフタイム間際にはもっと訳がわからない状況が発生することに。
▽ええ、それはグリーズマンのシュートがGKマシップにキャッチされた後、バジャドリーの攻撃陣がすでにアトレティコのエリアに近づいている時のことでした。ウンディアーノ・マジェンコ審判がプレーを止めたのは。遅まきながら、VAR(ビデオ審判)の指示がイヤホンに届いたようで、どうやらシュートの時にボールがCBオリバスの腕に当たったとされ、いきなりPKをもらえてしまったから、ビックリしたの何のって。これをグリーズマンが決め、先週はマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でも稽古していたフラメンコ風の踊りを披露。おかげで「よくあるゴールのお祝いだけど、se podia haber ido a hacer el baile un poco mas escorado, no en el punto de penalti/セ・ポディア・アベール・イドー・ア・アセール・エル・バイレ・ウン・ポコ・マス・エスコラードー、ノー・エン・エル・プント・デ・ペナルティ(もうちょっと端に行ってやれたはず。ペナルティマークの上じゃなくてね)」(ミチェル)とバジャドリーの選手に批判されたりもしていたんですが、前半で0-2のリードとなれば、もう安全圏って言っていいかと。
▽でも違ったんです! グリーズマンのダンスが敵の反骨精神に火をつけたか、後半開始直後のバジャドリーは目を瞠らんばかりの攻勢をかけて何度もCKを獲得。とうとう12分にはカレロのヘッドで1点を返すと、直後にフィリペ・ルイスが太もものケガでトーマスと交代となったのも悪影響しましたかね。せっかくこの日は中盤に戻れて張り切っていたサウールが再び左SBに回され、タスクリストの復習に気を取られていたせいかはわかりませんが、17分のCKでウナルのヘッドを足に当て、オウンゴールを献上しているんですから、どうしていいものやら。
▽え、それでも37分にはこちらもコケのCKから、ロドリとサビッチのシュートは敵DFに弾かれてしまったものの、最後に撃ったグリーズマンが決めて、スコアは2-3に。「tras el 2-2 mostramos fuerza para levantar un partido que cualquier otro equipo hubiera perdido/トラス・エル・ドス・ドス・モストラモス・フエルサ・パラ・レバンタール・ウン・パルティードー・ケ・クアルキエラ・オトロ・エキポ・ウビエラ・ペルディードー(2-2にされた後、他のどんなチームでも負けていただろう試合に勝つための強さをウチは見せた)」(シメオネ監督)のは素直に褒めてあげてもいいんじゃないかって? そうですね、何せ、このところのアトレティコは毎試合のようにケガから復帰してきた選手がまたケガするという悪循環。
▽この日もリュカ、ヒメネスに続いてフィリペ・ルイスが仕事納めとなってしまったため、せめて今季はリーガのアウェイ戦でまだ1勝だけという恥ずかしい記録を2勝に伸ばせたのは良かったんですけどね。「0-2として、nos metimos demasiado atras para aguantar/ノス・メティモス・デマシアドー・アトラス・パラ・アグアンタール(スコアを維持するため、必要以上に後ろに下がりすぎてしまった)」とこの日、ゴディンも反省していた、リードしたら即、後退という悪癖はいい加減、直した方がいいかと。ちなみにアトレティコの今年最後の試合は土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、ワンダでのエスパニョール戦。珍しくミッドウィークが空くため、練習も火曜まで2連休となったんですが、グリーズマンが趣味のNBA観戦のため、ニューヨークまで弾丸旅行というのにはちょっと、口がポッカリですよ。
▽そしていい気分で通りを渡ったサンティアゴ・ベルナベウにマドリーとラージョのミニダービーを見るため、足を運んだ私でしたが、こちらはヘタフェ戦とどうにも似たような展開だったかと。いえ、虎の子のエース、ラウール・デ・トーマスがマドリーからのレンタル移籍選手で出られないため、ミチェル監督はサイドアタッカーのエンバルバをCFに置くという苦肉の策を取らざるを得なかったんですけどね。前半12分、ルーカス・バスケスからラストパスをもらったベンゼマがゴールを入れた後、スコアは微動だにせず。もちろん、こんな状態に欲求不満に陥ったスタンドのファンはアセンシオが2度目のシュートチャンスに失敗した時など、pito(ピト/ブーイング)寸前だったんですが、先日のイスコの二の舞になる前に幸い(? )、打撲を受けた当人はセバージョスと交代することに。
▽その後、頼りの綱のベンゼマも接触プレーで足首を痛め、唯一、ベンチに残っていたヴィニシウスがトップを務めることになったマドリーでしたが、ラージョは「Al equipo no le falto ilusion, ganas y convencimiento sino futbol para superar al rival/アル・エキポ・ノーレ・ファルトー・イルシオン、ガナス・イ・コンベンシミエントー・シノ。フトボル・パラ・スペラル・アル・リバル(チームには夢も意欲も自信もあったが、敵を超えるサッカーに欠けていた)」(ミチェル監督)状態でしたからね。終盤、ようやくピッチに入ったFWアレグリアとベラスケスのダブルチャンスもGKクルトワの連続paradon(パラドン/スーパーセーブ)で事なきを得て、そのまま1-0で勝利することができましたっけ。
▽え、確かに最下位のウエスカとの前節に続いて、19位のラージョ相手にも1点しか取れないマドリーはパッとしないけど、それに対する文句があまり聞こえなかったのは、やっぱり試合後のミックスゾーンで身長199センチのクルトワが仁王立ち。「Simeone critica al Madrid para hacerse popular ante su afición/シメオネ・クリティカ・アル・マドリッド・パラ・アセールセ・ポプラル・アンテ・ス・アフィシオン(シメオネ監督はファンの人気を取るためにマドリーを批判するんだ)」とかつてアトレティコ時代に世話になった恩師に一言、物を申したことに世間の注目が集まってしまったからなんじゃないかって?
▽そうですね、どうやら彼はシメオネ監督に「今だったら、ウチの正GKにはなれない。オブラクの方が上」と言われたことや、FIFAベストGK賞をもらったのもマドリーに入団が決まったせいと決めつけられたことが不服だったようで、いえ、先日、バロンドール受賞にも「自分にとって一番だったのはグリーズマンとヴァラン」とケチをつけられたモドリッチが、母国のスポーツ紙で「2度、アトレティコに勝ったCL決勝を含めて、ボクらが成功するたび、マドリーにはある種の役得があるという、ファンが喜ぶ理屈を持ち出すのはズルいと思う」と反論していたのに便乗した感もなきにしもあらずなんですけどね。
▽でもだからって、何もこんな日にそんな話を始めなくても良かったんじゃないかというのが私の本音で、おかげでせっかくTVやラジオのインタビューの後、活字媒体マスコミのゾーンにクルトワが来てくれた時、折しも数時間前、クラブW杯で鹿島アントラーズがグアルダハラを破り、準決勝でマドリーと対戦することが決定。ベルギーのGKとして、夏のW杯16強対決で日本に3点も取られていた彼がどう挑むのか、訊くのをすっかり忘れてしまったじゃないですか。
▽そんなマドリーは日曜には全選手を連れてアブダビに移動、月曜には現地でトレニーングを開始していましたが、ラージョ戦で途中交代をしたベンゼマは回復したようで全体練習に参加しています。すぐにロッカールームに引っ込んでしまったアセンシオの方が重傷のようですが、まだCSKAモスクワ戦で足首を痛めたベイルも個人メニューでしたからね。かといって、そのCL消化試合のようにメンバーを落として負ける訳にはいかないソラーリ監督とあって、おそらくベンゼマ、ベイルの両輪を並べてくることになるかと思いますが、さて。そんなマドリーvs鹿島アントラーズ戦は水曜午後5時30分(日本時間翌午前1時30分)からキックオフ、2年前のクラブW杯決勝のように拮抗する試合になってくれるといいですね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
▽ただ1つだけ得したことがアトレティコにはあって、それはレアル・マドリーが2月13日にアウェイでの1stレグを迎えるのに比べ、ワンダ・メトロポリターノでの1stレグは20日になること。おかげで現在、左足小指の中足骨のボルト入れ替え手術をして、母国ブラジルでリハビリ生活を送っているジエゴ・コスタの復帰に更に1週間、余裕ができるからですが、加えて2月第2週にはコパ・デル・レイ準決勝1stレグもありますからね。もしそこまで残っていた場合、ミッドウィークに予定のない週を1つ挟んで挑めるのもラッキーかと。
▽そんなことはともかく、先週末のリーガのマドリッド勢の試合をお伝えしていくことにすると、一足早く金曜にセルタに挑んだレガネスはエル・ネシリが3度も絶好機に失敗してしまったことも祟り、バライードスで0-0の引き分けに。それでも16位は維持しましたし、彼らには年明け9日にサンティアゴ・ベルナベウでマドリーとのコパ16強対決1stレグが控えていますからね。昨季はそれこそ、その大先輩を破って準決勝まで進出したコパを楽しむためにも、今年最後の試合となるブタルケに2位のセビージャを迎える日曜の大一番で頑張って、ついでにリーガ上位を争っている兄貴分たちに恩を売っておくのもいいかもしれませんよ。
▽そして残りの4チームがプレーしたのが土曜だったんですが、まずは午後1時、ヘタフェがレアル・ソシエダを迎える試合を見るため、私はコリセウム・アルフォンソ・ペレスへ。着いてみると、この日はサプライズがあって、柴崎岳選手が先発に入っていたんですが、開始3分、「El chico esta trabajando bien, ha mejorado, esta interpretando bien/エル・チコ・エスタ・トラバハンドー・ビエン、ア・メホラード、デスタ・インテルプレタンドー・ビエン(彼はよく練習しているし、向上した。役目を上手く理解している)」という理由で、先日ヒザの靭帯を断裂、今季絶望となってしまったアマトの代わりとして抜擢したボルダラス監督の期待に早速、応えてくれます。
▽いえ、ホルヘ・モリーナのスルーパスはゴロサベルとGKモジャに邪魔され、自身でシュートすることはできなかったんですけどね。クリアされたボールをエリア外で拾ったモリーナが36才の落ち着きでvaselina(バセリーナ/ループシュート)を放ち、早々に先制点を取ってくれたから、有り難いじゃないですか。前線にサンドロ、ウィリアム・ホセ、フアンミ、そしてオヤルサバルとFWを4人も並べていたレアル・ソシエダは後半途中、バトンタッチしたヤヌザイ、バウティスタも火を噴かず、結局、そのまま1-0で負けてしまいましたが、この勝利で一時的にヘタフェは5位まで上昇(15節終了時には7位、でも6位と勝ち点1差)。
▽うーん、先週はアンヘル・トーレス会長がファンクラブの集いで「Me consta que quieren que dos equipos de Madrid bajen/メ・コンスタ・ケ・キエレン・ケ・ドス・エキポス・デ・マドリッド・バヘン(マドリッドの2クラブを降格させたがっていると聞いた)」とサッカー協会だか、リーガの陰謀説を口にして、物議を醸していたりもしたんですけどね。今の調子を見る限り、ユーロヘタ(かつてELに出場したヘタフェがこう呼ばれた)復活の方が近そうなのは喜ばしい限りかと。唯一、残念なのは「長い期間、選手がいなくなるのは嬉しくないが、そういう日程だからね」とボルダラス監督も嘆いてように、年明けから、おそらく1月いっぱいはアジアカップのため、日本代表に招集された柴崎選手がチームを離れてしまうことなんですが、それだけに当人も金曜のジローナ戦では今年最後のアピールをしておきたいのでは?
▽その試合後はメトロで北上、サンティアゴ・ベルナベウまで移動して、スタジアム近くのアルゼンチン系レストランでシェラスコ(焼肉)ランチをしながら、アトレティコのバジャドリー戦を見た私でしたが、周りはマドリーファンばかりでも観光客が多いせいか、意外と大丈夫なものです。それより、特に大したこともしていなかったアトレティコが前半17分にはグリーズマンのスルーパスをカリニッチがエリア内からシュート。これが先制点となり、ここ4試合で先発落ちしたクラブ・ブルージュ戦だけ、彼にゴールがなかったことを考えると、かの日のシメオネ監督の選手起用に納得いかなかったりもしたんですが、ハーフタイム間際にはもっと訳がわからない状況が発生することに。
▽ええ、それはグリーズマンのシュートがGKマシップにキャッチされた後、バジャドリーの攻撃陣がすでにアトレティコのエリアに近づいている時のことでした。ウンディアーノ・マジェンコ審判がプレーを止めたのは。遅まきながら、VAR(ビデオ審判)の指示がイヤホンに届いたようで、どうやらシュートの時にボールがCBオリバスの腕に当たったとされ、いきなりPKをもらえてしまったから、ビックリしたの何のって。これをグリーズマンが決め、先週はマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でも稽古していたフラメンコ風の踊りを披露。おかげで「よくあるゴールのお祝いだけど、se podia haber ido a hacer el baile un poco mas escorado, no en el punto de penalti/セ・ポディア・アベール・イドー・ア・アセール・エル・バイレ・ウン・ポコ・マス・エスコラードー、ノー・エン・エル・プント・デ・ペナルティ(もうちょっと端に行ってやれたはず。ペナルティマークの上じゃなくてね)」(ミチェル)とバジャドリーの選手に批判されたりもしていたんですが、前半で0-2のリードとなれば、もう安全圏って言っていいかと。
▽でも違ったんです! グリーズマンのダンスが敵の反骨精神に火をつけたか、後半開始直後のバジャドリーは目を瞠らんばかりの攻勢をかけて何度もCKを獲得。とうとう12分にはカレロのヘッドで1点を返すと、直後にフィリペ・ルイスが太もものケガでトーマスと交代となったのも悪影響しましたかね。せっかくこの日は中盤に戻れて張り切っていたサウールが再び左SBに回され、タスクリストの復習に気を取られていたせいかはわかりませんが、17分のCKでウナルのヘッドを足に当て、オウンゴールを献上しているんですから、どうしていいものやら。
▽え、それでも37分にはこちらもコケのCKから、ロドリとサビッチのシュートは敵DFに弾かれてしまったものの、最後に撃ったグリーズマンが決めて、スコアは2-3に。「tras el 2-2 mostramos fuerza para levantar un partido que cualquier otro equipo hubiera perdido/トラス・エル・ドス・ドス・モストラモス・フエルサ・パラ・レバンタール・ウン・パルティードー・ケ・クアルキエラ・オトロ・エキポ・ウビエラ・ペルディードー(2-2にされた後、他のどんなチームでも負けていただろう試合に勝つための強さをウチは見せた)」(シメオネ監督)のは素直に褒めてあげてもいいんじゃないかって? そうですね、何せ、このところのアトレティコは毎試合のようにケガから復帰してきた選手がまたケガするという悪循環。
▽この日もリュカ、ヒメネスに続いてフィリペ・ルイスが仕事納めとなってしまったため、せめて今季はリーガのアウェイ戦でまだ1勝だけという恥ずかしい記録を2勝に伸ばせたのは良かったんですけどね。「0-2として、nos metimos demasiado atras para aguantar/ノス・メティモス・デマシアドー・アトラス・パラ・アグアンタール(スコアを維持するため、必要以上に後ろに下がりすぎてしまった)」とこの日、ゴディンも反省していた、リードしたら即、後退という悪癖はいい加減、直した方がいいかと。ちなみにアトレティコの今年最後の試合は土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、ワンダでのエスパニョール戦。珍しくミッドウィークが空くため、練習も火曜まで2連休となったんですが、グリーズマンが趣味のNBA観戦のため、ニューヨークまで弾丸旅行というのにはちょっと、口がポッカリですよ。
▽そしていい気分で通りを渡ったサンティアゴ・ベルナベウにマドリーとラージョのミニダービーを見るため、足を運んだ私でしたが、こちらはヘタフェ戦とどうにも似たような展開だったかと。いえ、虎の子のエース、ラウール・デ・トーマスがマドリーからのレンタル移籍選手で出られないため、ミチェル監督はサイドアタッカーのエンバルバをCFに置くという苦肉の策を取らざるを得なかったんですけどね。前半12分、ルーカス・バスケスからラストパスをもらったベンゼマがゴールを入れた後、スコアは微動だにせず。もちろん、こんな状態に欲求不満に陥ったスタンドのファンはアセンシオが2度目のシュートチャンスに失敗した時など、pito(ピト/ブーイング)寸前だったんですが、先日のイスコの二の舞になる前に幸い(? )、打撲を受けた当人はセバージョスと交代することに。
▽その後、頼りの綱のベンゼマも接触プレーで足首を痛め、唯一、ベンチに残っていたヴィニシウスがトップを務めることになったマドリーでしたが、ラージョは「Al equipo no le falto ilusion, ganas y convencimiento sino futbol para superar al rival/アル・エキポ・ノーレ・ファルトー・イルシオン、ガナス・イ・コンベンシミエントー・シノ。フトボル・パラ・スペラル・アル・リバル(チームには夢も意欲も自信もあったが、敵を超えるサッカーに欠けていた)」(ミチェル監督)状態でしたからね。終盤、ようやくピッチに入ったFWアレグリアとベラスケスのダブルチャンスもGKクルトワの連続paradon(パラドン/スーパーセーブ)で事なきを得て、そのまま1-0で勝利することができましたっけ。
▽え、確かに最下位のウエスカとの前節に続いて、19位のラージョ相手にも1点しか取れないマドリーはパッとしないけど、それに対する文句があまり聞こえなかったのは、やっぱり試合後のミックスゾーンで身長199センチのクルトワが仁王立ち。「Simeone critica al Madrid para hacerse popular ante su afición/シメオネ・クリティカ・アル・マドリッド・パラ・アセールセ・ポプラル・アンテ・ス・アフィシオン(シメオネ監督はファンの人気を取るためにマドリーを批判するんだ)」とかつてアトレティコ時代に世話になった恩師に一言、物を申したことに世間の注目が集まってしまったからなんじゃないかって?
▽そうですね、どうやら彼はシメオネ監督に「今だったら、ウチの正GKにはなれない。オブラクの方が上」と言われたことや、FIFAベストGK賞をもらったのもマドリーに入団が決まったせいと決めつけられたことが不服だったようで、いえ、先日、バロンドール受賞にも「自分にとって一番だったのはグリーズマンとヴァラン」とケチをつけられたモドリッチが、母国のスポーツ紙で「2度、アトレティコに勝ったCL決勝を含めて、ボクらが成功するたび、マドリーにはある種の役得があるという、ファンが喜ぶ理屈を持ち出すのはズルいと思う」と反論していたのに便乗した感もなきにしもあらずなんですけどね。
▽でもだからって、何もこんな日にそんな話を始めなくても良かったんじゃないかというのが私の本音で、おかげでせっかくTVやラジオのインタビューの後、活字媒体マスコミのゾーンにクルトワが来てくれた時、折しも数時間前、クラブW杯で鹿島アントラーズがグアルダハラを破り、準決勝でマドリーと対戦することが決定。ベルギーのGKとして、夏のW杯16強対決で日本に3点も取られていた彼がどう挑むのか、訊くのをすっかり忘れてしまったじゃないですか。
▽そんなマドリーは日曜には全選手を連れてアブダビに移動、月曜には現地でトレニーングを開始していましたが、ラージョ戦で途中交代をしたベンゼマは回復したようで全体練習に参加しています。すぐにロッカールームに引っ込んでしまったアセンシオの方が重傷のようですが、まだCSKAモスクワ戦で足首を痛めたベイルも個人メニューでしたからね。かといって、そのCL消化試合のようにメンバーを落として負ける訳にはいかないソラーリ監督とあって、おそらくベンゼマ、ベイルの両輪を並べてくることになるかと思いますが、さて。そんなマドリーvs鹿島アントラーズ戦は水曜午後5時30分(日本時間翌午前1時30分)からキックオフ、2年前のクラブW杯決勝のように拮抗する試合になってくれるといいですね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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