【J1クラブ通信簿】56得点56失点…ポステコグルー戦術は諸刃の剣も来季は真剣に化けるか《横浜F・マリノス》
2018.12.15 18:00 Sat
▽優勝争いから残留争いまで手に汗を握る接戦、熱戦が続いた2018シーズンの明治安田生命J1リーグ。超ワールドサッカー編集部は、J1全18クラブの通信簿(トピックやチームMVP、補強成功度、総合評価)をお届けする。第7弾は12位の横浜F・マリノスを総括!
◆シーズン振り返り
▽自身が得意とする[4-3-3]の布陣を当てはめて、左右の両サイドバックが高い位置をとりながら攻撃に関与するポゼッションサッカーを展開。狙い通り、横浜FMは多くの試合で相手の支配率を上回り試合の主導権を握っているように見えた。しかし、支配率とは裏腹に勝率はなかなか上がらなかった。ロシア・ワールドカップによる中断前の第15節終了時点では4勝5分け6敗で13位に位置。3-0で勝利した第11節の鹿島アントラーズ戦や、5点を奪った第15節のV・ファーレン長崎戦など勝つときは派手に勝つのだが、負けた時の散り方も良くなかった。そんなシーズンを表しているのが、ワールドカップ明けの第16節からの4試合(※第18節清水エスパルス戦は代風の影響により延期)。第16節のベガルタ仙台戦でクラブ最多タイ及びリーグ史上2位タイとなる大量8得点で勝利したかに思えば、その後は3連敗。この4試合で横浜FMは13失点を喫している。
▽その原因はやはり“超”が付くほどの攻撃的スタイルにあった。最終ラインからボールを繋ぐポゼッション志向のスタイルを貫いた横浜FMだが、そのビルドアップ中に捕まるとそのケアができていなかった。とりわけ、GK飯倉大樹までもがゴールを離れて非常に高い位置でポゼッションに参加することもあったため、その隙を突かれてロングシュートで失点することもしばしば。セットプレーの守備時での対応も褒められるものではなかった。
▽そんな中、ワールドカップによる中断期間中に守備の要だったDFミロシュ・デゲネクがツルヴェナ・ズヴェズタに移籍したため、急遽、DFドゥシャンとDFチアゴ・マルチンスを補強。また、8月半ばからDF中澤佑二がヒザのケガで長期離脱が余儀なくされたため、新加入の2人が後半戦の守備の中心だった。ポステコグルー監督はその頃に3バックを試みたが、数試合で元の布陣に戻した。シーズン終盤にかけて守備が安定し失点は減ったが、同時にその攻撃力も鳴りを潜めた。
◆MVP
DF山中亮輔(25)
明治安田生命J1リーグ32試合出場(先発31試合)/4得点8アシスト
▽そして山中の活躍はクラブを飛び出して日本へ。横浜FMでの活躍から11月に日本代表に初選出され同20日のキルギス戦でデビュー。初スタメンに加え、開始間もなく初ゴールを奪って見せた。もちろんそのゴールは左足から生まれたもの。8月にトルコのバシャクシェヒルからオファーがあったという山中。その左足は日本の宝になるに違いない。
◆補強成功度《C》※最低E~最高S
▽開幕前にポステコグルー監督の意向もあり、韓国代表のFWユン・イルロクやFW大津祐樹、FWオリヴィエ・ブマルなどアタッカーの補強に力を入れた横浜FM。それまで攻撃を牽引してきた齋藤学が川崎Fへ移籍したため、ユン・イルロクやブマルらウインガーに期待が集まったものの、ほとんど結果を残すことは出来なかった。
▽それよりも、前述したように夏の間に獲得したドゥシャンやチアゴ・マルチンスらDFの活躍が目立った。彼らはシーズン途中の加入ながらすぐにレギュラーの座を掴み、前者はリーグ戦14試合、後者は13試合に出場し、後半戦のチームの守りを支えた。
◆総合評価《D》※最低E~最高S
▽しかし、ポステゴグルー監督はそんな周囲の雑音を気にせず、自身の信念を貫き通した。結果としてそれは56得点56失点という諸刃の剣ではあったが、歯車がかみ合った時の攻撃力は圧巻だった。前述の山中やMF天野純が結果を残し、日本代表に選ばれたのはこのスタイルがあったからではないだろうか。今季レンタルバックしたFW仲川輝人はリーグ戦9得点の活躍、FW伊藤翔はキャリアハイの公式戦17得点をマークし監督の期待に応えた。
▽順位上、横浜FMに対する評価は低いものではあるが、来季に向けた期待は大きい。ポステコグルー監督は続投に意欲的とのうわさもあるが来季はどうなるのだろうか。シーズン終盤には安定した守備も見せていただけに、熟練度を高められればもっと面白いトリコロールに生まれ変わることができそうだ。
◆シーズン振り返り
(c) J.LEAGUE PHOTOS
▽今季の横浜FMは攻守で明暗分かれる成績となった。開幕前、トリコロールのクラブには新たにアンジェ・ポステコグルー監督が就任。かつてオーストラリア代表を史上初のアジアカップ制覇に導いたギリシャ生まれのオーストラリア人指揮官は攻撃的サッカーを掲げ、チームの改革に着手。昨シーズンにリーグ屈指の堅守を誇ったチームの色をガラリと変えていった。▽その原因はやはり“超”が付くほどの攻撃的スタイルにあった。最終ラインからボールを繋ぐポゼッション志向のスタイルを貫いた横浜FMだが、そのビルドアップ中に捕まるとそのケアができていなかった。とりわけ、GK飯倉大樹までもがゴールを離れて非常に高い位置でポゼッションに参加することもあったため、その隙を突かれてロングシュートで失点することもしばしば。セットプレーの守備時での対応も褒められるものではなかった。
▽そんな中、ワールドカップによる中断期間中に守備の要だったDFミロシュ・デゲネクがツルヴェナ・ズヴェズタに移籍したため、急遽、DFドゥシャンとDFチアゴ・マルチンスを補強。また、8月半ばからDF中澤佑二がヒザのケガで長期離脱が余儀なくされたため、新加入の2人が後半戦の守備の中心だった。ポステコグルー監督はその頃に3バックを試みたが、数試合で元の布陣に戻した。シーズン終盤にかけて守備が安定し失点は減ったが、同時にその攻撃力も鳴りを潜めた。
▽結局、横浜FMは12勝5分け17敗という成績で12位フィニッシュ。最後の最後まで残留争いに巻き込まれる不満の残るシーズンを送った。また、YBCルヴァンカップでは決勝に進み湘南ベルマーレとのダービー戦を戦ったが0-1で敗戦。17年ぶりの優勝とはならなかった。なお、リーグ戦では56得点と、優勝した川崎フロンターレに次ぐ2位タイの記録を残した一方で、失点も56とリーグワースト3位という、ある意味今季の横浜FMを象徴する数字となった。
◆MVP
DF山中亮輔(25)
明治安田生命J1リーグ32試合出場(先発31試合)/4得点8アシスト
(c) J.LEAGUE PHOTOS
▽今シーズンは山中にとって飛躍の年になった。横浜FMで2年目を迎えた左サイドバックはポステコグルー監督の下、偽サイドバックとして注目を集めた。運動量もさることながら、監督にも認められた左足の精度は横浜FMの一つの武器だった。特にその左足から放たれるキャノン砲は脚光を浴び、リーグ開幕節のセレッソ大阪戦でいきなり炸裂した。また、その精度はFKにも生かされ、今季はリーグ戦で4ゴール8アシストの成績を収めた。▽そして山中の活躍はクラブを飛び出して日本へ。横浜FMでの活躍から11月に日本代表に初選出され同20日のキルギス戦でデビュー。初スタメンに加え、開始間もなく初ゴールを奪って見せた。もちろんそのゴールは左足から生まれたもの。8月にトルコのバシャクシェヒルからオファーがあったという山中。その左足は日本の宝になるに違いない。
◆補強成功度《C》※最低E~最高S
(c) J.LEAGUE PHOTOS
▽開幕前にポステコグルー監督の意向もあり、韓国代表のFWユン・イルロクやFW大津祐樹、FWオリヴィエ・ブマルなどアタッカーの補強に力を入れた横浜FM。それまで攻撃を牽引してきた齋藤学が川崎Fへ移籍したため、ユン・イルロクやブマルらウインガーに期待が集まったものの、ほとんど結果を残すことは出来なかった。
▽それよりも、前述したように夏の間に獲得したドゥシャンやチアゴ・マルチンスらDFの活躍が目立った。彼らはシーズン途中の加入ながらすぐにレギュラーの座を掴み、前者はリーグ戦14試合、後者は13試合に出場し、後半戦のチームの守りを支えた。
◆総合評価《D》※最低E~最高S
(c) J.LEAGUE PHOTOS
▽昨シーズン5位だったことを考えれば今季の目標はベスト4以内だったはず。それを踏まえると12位という成績は大きく期待外れに終わったことは否定できないし、昨季確立した堅守速攻スタイルを簡単に手放したことは愚策だったとも思える。結果だけ見れば、エリク・モンバエルツ前監督を続投させ、慣れ親しんだディフェンシブサッカーを継続していた方がよりいい成績で終えられたかもしれない。▽しかし、ポステゴグルー監督はそんな周囲の雑音を気にせず、自身の信念を貫き通した。結果としてそれは56得点56失点という諸刃の剣ではあったが、歯車がかみ合った時の攻撃力は圧巻だった。前述の山中やMF天野純が結果を残し、日本代表に選ばれたのはこのスタイルがあったからではないだろうか。今季レンタルバックしたFW仲川輝人はリーグ戦9得点の活躍、FW伊藤翔はキャリアハイの公式戦17得点をマークし監督の期待に応えた。
▽順位上、横浜FMに対する評価は低いものではあるが、来季に向けた期待は大きい。ポステコグルー監督は続投に意欲的とのうわさもあるが来季はどうなるのだろうか。シーズン終盤には安定した守備も見せていただけに、熟練度を高められればもっと面白いトリコロールに生まれ変わることができそうだ。
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