苦境でこそ輝きを! マドリーの救世主足り得る“バロンドーラー”モドリッチ/編集部コラム
2018.12.04 21:00 Tue
▽2018年のバロンドールに、レアル・マドリーに所属するクロアチア代表MFルカ・モドリッチが輝いた。圧倒的な“数字”を残してきたユベントスFWクリスティアーノ・ロナウド、バルセロナFWリオネル・メッシの独占を崩したのは、昨シーズンの公式戦43試合で2ゴール8アシストの成績だったゲームメーカーだ。
▽モドリッチは、入団直後に行われたスーペルコパ第2戦バルセロナ戦でデビューを果たす。クラシコという大舞台で83分から途中投入され、早速初タイトルを獲得した。
▽しかし、恐れずに記述するのであれば、加入当初のモドリッチのプレーに違和感を感じたことを覚えている。モウリーニョ監督の下、世界屈指のカウンターを磨きに磨いていたマドリーの中で、モドリッチはボールプレーを重視。美しいスキルに感嘆させられる一方で、周囲とのズレが懸念された。
▽だが、結果から見ればその心配は杞憂に終わっている。スペイン『マルカ』の読者投票による「2012-13シーズン最悪の補強」に選ばれたモドリッチは、その後も自らの美学を決して変えず。失意後の2013-14シーズンに始まったカルロ・アンチェロッティ政権でレギュラーを奪取すると、その年のチャンピオンズリーグ(CL)決勝アトレティコ・マドリー戦では、0-1のビハインドで迎えた後半アディショナルタイムにCKからセルヒオ・ラモスの得点をアシスト。延長戦に持ち込み、4-1での“ラ・デシマ”(10度目の欧州制覇)達成に導いた。
▽このキャリアの中で最も驚くべき点は、モドリッチが自らの志向するプレーを変えていないということだ。各国のスター選手が目まぐるしく入れ替わるマドリーでは、あのC・ロナウドでさえ、得点に特化する形に自らを作り変えた。2007年のバロンドーラーであり、主役としてプレーしてきたカカは、ポテンシャルを十分に発揮することができずにクラブを去った。
▽しかしながら、モドリッチは周囲にリズムを伝播させ、加入当初に感じさせた違和感を消して見せた。マドリーというクラブで、これほど背番号10に相応しい仕事をする人物は稀有な存在だ。
◆W杯奮闘の代償
▽しかし、注目の幕開けを迎えた今シーズン、マドリーは低迷。リーガエスパニョーラ第14節終了時点で7勝2分け5敗と戦績は凄惨そのものであり、方々で指摘されている通りジネディーヌ・ジダン監督とC・ロナウドの退団が重なったことは大きな原因だろう。
▽だが、それだけでなく主力選手たちのパフォーマンスが昨シーズンから落ちているのも確かだ。世間からの称賛を浴びるモドリッチも例外ではない。極上のプレーは鳴りを潜め、とりわけ守備面で例年のような奮闘はみられず、W杯の疲労を残していることがありありと見て取れる。
◆困難な時こそ輝きを
「キャリアを通して、難しい仕事や困難に直面しても努力を続けていくことが才能を発揮する土台になっている」
「僕には好きなフレーズがある。『最高なことは決して簡単にできない』という言葉さ。僕がこうやって全てを勝ち取るために、簡単なことは何もなかった」
▽モドリッチがバロンドールの授賞式で発した言葉だ。プロキャリアの中で、モドリッチにとって今シーズンのマドリーほど苦しい時があっただろうか。
▽一選手の力でチーム全体に変化をもたらすことは、とても困難だ。だが、突出した技術を持ちながらも味方のために汗をかけるモドリッチだけが、周囲の質を引っ張り上げられる存在かもしれない。そして、それは既にマドリーで、クロアチア代表で目にした光景だ。サッカー界全体に新たなサイクルをもたらしたこの小柄な選手に、今後も期待せずにはいられない。
《超ワールドサッカー編集部・上村迪助》
PR
◆哲学を貫くレアル・マドリーのNo.10Getty Images
▽トッテナムで名声を高めていたモドリッチがマドリーに入団したのは、2012年夏の移籍市場が閉まる直前のこと。前年に4シーズンぶりのリーガエスパニョーラ制覇を成し遂げていたジョゼ・モウリーニョ監督(現マンチェスター・ユナイテッド)の、3年目のシーズンだ。▽しかし、恐れずに記述するのであれば、加入当初のモドリッチのプレーに違和感を感じたことを覚えている。モウリーニョ監督の下、世界屈指のカウンターを磨きに磨いていたマドリーの中で、モドリッチはボールプレーを重視。美しいスキルに感嘆させられる一方で、周囲とのズレが懸念された。
▽だが、結果から見ればその心配は杞憂に終わっている。スペイン『マルカ』の読者投票による「2012-13シーズン最悪の補強」に選ばれたモドリッチは、その後も自らの美学を決して変えず。失意後の2013-14シーズンに始まったカルロ・アンチェロッティ政権でレギュラーを奪取すると、その年のチャンピオンズリーグ(CL)決勝アトレティコ・マドリー戦では、0-1のビハインドで迎えた後半アディショナルタイムにCKからセルヒオ・ラモスの得点をアシスト。延長戦に持ち込み、4-1での“ラ・デシマ”(10度目の欧州制覇)達成に導いた。
▽その後もモドリッチの快進撃は続き、2015-16シーズンからのジネディーヌ・ジダン政権では前人未到のCL3連覇を経験。今となっては“レアル・マドリーの心臓”と評されており、比較できない程に重要な選手となっている。
▽このキャリアの中で最も驚くべき点は、モドリッチが自らの志向するプレーを変えていないということだ。各国のスター選手が目まぐるしく入れ替わるマドリーでは、あのC・ロナウドでさえ、得点に特化する形に自らを作り変えた。2007年のバロンドーラーであり、主役としてプレーしてきたカカは、ポテンシャルを十分に発揮することができずにクラブを去った。
▽しかしながら、モドリッチは周囲にリズムを伝播させ、加入当初に感じさせた違和感を消して見せた。マドリーというクラブで、これほど背番号10に相応しい仕事をする人物は稀有な存在だ。
◆W杯奮闘の代償
Getty Images
▽今年のロシア・ワールドカップ(W杯)にクロアチア代表として参戦したモドリッチは、獅子奮迅の活躍を披露し、母国をファイナルに導いた。多くのタレントを擁するフランス代表に敗れて優勝には手が届かなかったものの、ゴールデンボール(W杯MVP)に輝いている。さらに、モドリッチはバロンドールのみならず、UEFA欧州最優秀選手賞、FIFA最優秀選手賞といったあらゆる個人賞を総なめ。現代最高のMFとしての名を欲しいままにしている。▽しかし、注目の幕開けを迎えた今シーズン、マドリーは低迷。リーガエスパニョーラ第14節終了時点で7勝2分け5敗と戦績は凄惨そのものであり、方々で指摘されている通りジネディーヌ・ジダン監督とC・ロナウドの退団が重なったことは大きな原因だろう。
▽だが、それだけでなく主力選手たちのパフォーマンスが昨シーズンから落ちているのも確かだ。世間からの称賛を浴びるモドリッチも例外ではない。極上のプレーは鳴りを潜め、とりわけ守備面で例年のような奮闘はみられず、W杯の疲労を残していることがありありと見て取れる。
◆困難な時こそ輝きを
Getty Images
▽もちろん、補強を怠ったフロントが選手以上に批判に晒されるのは当然のことだ。それでも、苦しければ苦しい試合でこそ輝きを放ってきたモドリッチの、復調を期待せずにはいられない。「キャリアを通して、難しい仕事や困難に直面しても努力を続けていくことが才能を発揮する土台になっている」
「僕には好きなフレーズがある。『最高なことは決して簡単にできない』という言葉さ。僕がこうやって全てを勝ち取るために、簡単なことは何もなかった」
▽モドリッチがバロンドールの授賞式で発した言葉だ。プロキャリアの中で、モドリッチにとって今シーズンのマドリーほど苦しい時があっただろうか。
▽一選手の力でチーム全体に変化をもたらすことは、とても困難だ。だが、突出した技術を持ちながらも味方のために汗をかけるモドリッチだけが、周囲の質を引っ張り上げられる存在かもしれない。そして、それは既にマドリーで、クロアチア代表で目にした光景だ。サッカー界全体に新たなサイクルをもたらしたこの小柄な選手に、今後も期待せずにはいられない。
《超ワールドサッカー編集部・上村迪助》
PR
|
関連ニュース