【2022年カタールへ期待の選手⑩】ルーキーイヤーの今季劇的成長を遂げた中盤のダイナモ。日本代表でもボランチの軸に?/守田英正(川崎フロンターレ/MF)
2018.11.30 23:00 Fri
▽真冬の寒さの中、3万7000人超の大観衆が詰めかけた東京・味の素スタジアムで24日に行われた2018年J1第33節のFC東京vs川崎フロンターレ戦。前半のうちに知念慶の先制点でリードしていたJ1王者・川崎Fが勝負を決めたのは後半5分の2点目だった。
▽GKチョン・ソンリョンの縦パスを低い位置で受けた守田英正が反転しながら家長昭博に絶妙のボールを通し、エウシーニョと中村憲剛がワンツー。エウシーニョが折り返したところに知念が詰め、そのこぼれ球を長谷川竜也が頭で押し込む形だった。この理想的なカウンターは守田が家長に出した時点で勝負ありだったと言っても過言ではない。今季流通経済大学から加入したルーキーとは思えない中盤のダイナモの成長を色濃く感じさせるシーンだった。
▽「結構タテタテのパスだったんで、僕も角度はなかったですけど、相手が僕に食いついてくるのが1回目に首を振った時に見えたんで、アキ君と憲剛さんがいて、2人とも出せる状況だったんですけど、アキ君の方が角度があったんで出しました。そんな技をいつ身に着けた? どうですかね。普段、憲剛さんや(大島)僚太君がやってることを見よう見まねでやってるだけなんで、自ずとイメージが湧く感じですね」
▽背番号25は淡々とコメントしていたが、川崎FというJ1連覇を果たした絶対王者のチームで自己研鑽していることは非常に大きな意味を持つ。もともと「ボール奪取職人」という色合いの強かった守田が、中村憲剛や家長、大島ら高度な技術と戦術眼を備えた面々と共演することで、自分に足りないものを補えるからだ。「ウチは『隙あらば行く』ってプレーを常に目指しているチーム。そういうビジョンと頭を養うのはホントに日々の積み重ねしかない」と中村憲剛も神妙な面持ちで話したが、この環境にいられることを守田自身が大いに感謝しているはず。むしろ川崎Fにいなければ、森保一監督率いる日本代表に抜擢されることもなかっただろう。
▽9月シリーズは山口蛍(セレッソ大阪)のケガによる追加招集はあったが、11月シリーズは青山敏弘(サンフレッチェ広島)の右ひざ負傷で空いた1枠に確実に滑り込み、堂々と選出された。16日のベネズエラ戦(大分)は目下、ボランチのファーストチョイスである柴崎岳(ヘタフェ)と遠藤航(シント=トロイデン)がスタメン出場したが、守田も20日のキルギス戦(豊田)でインパクトを残すことに成功した。とりわけ際立ったのが、後半28分の大迫勇也(ブレーメン)の3点目の場面。鋭い縦パスを前線に供給し、北川航也(清水エスパルス)から大迫へとつながった。そういった気の利いたプレーができるようになった守田を森保監督も高く評価しているはず。青山の状態次第ではあるが、1月の2019年アジアカップ(UAE)のメンバー滑り込みも現実味を帯びてきたと言っていい。
▽「代表には代表のスタイルがあるから、そのスタイルに合わない選手だと評価されてしまうと、こっちでいいプレーをしていても絶対にメンバーに入らない。自分から代表のスタイルに合わせていくことを意識しないといけない。最初は知らないところからのスタートでしたけど、徐々に慣れてきましたし、こっちでやるいいプレーを残しつつ、スピード感や判断の部分で変えなきゃいけないところもある。そうやって代表でやった経験は川崎Fでも生きてると思います。憲剛さんみたいに何でもできる存在になりたいですね。ただ、『起用貧乏』みたいな感じになってしまうのもいけないので、何か自分に確立したものを持てるようにしていきたい」と守田は単なるボール奪取職人で終わるつもりはない。
▽今の代表ボランチの構成を見ると、非凡な攻撃センスを備えたロシア・ワールドカップ組の柴崎、守備のアグレッシブさが武器の遠藤と三竿健斗(鹿島アントラーズ)という構成で、中間的な選手が少ない。遠藤もベルギー移籍で確実にゲームメーク力をアップさせているし、三竿も鹿島でのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇によってスケールアップを果たしている。
▽「今のレベルで『誰にも負けない』って言えるものはまだない。『僕と言ったらこれ』というのを周りから認めてもらえるようにならないといけないし、特徴を出していかないといけない」と本人も語気を強める。球際の強さやボール奪取力のレベルを上げ、攻撃の起点になれるようなパス出し、展開力も備えていけば、「オールラウンドな中盤のダイナモ」という位置づけになれるかもしれない。中村憲剛を筆頭にいい先輩の長所や強みを最大限吸収して、「オリジナルの守田英正」を作るべく、努力を続けてほしいものだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
▽GKチョン・ソンリョンの縦パスを低い位置で受けた守田英正が反転しながら家長昭博に絶妙のボールを通し、エウシーニョと中村憲剛がワンツー。エウシーニョが折り返したところに知念が詰め、そのこぼれ球を長谷川竜也が頭で押し込む形だった。この理想的なカウンターは守田が家長に出した時点で勝負ありだったと言っても過言ではない。今季流通経済大学から加入したルーキーとは思えない中盤のダイナモの成長を色濃く感じさせるシーンだった。
▽「結構タテタテのパスだったんで、僕も角度はなかったですけど、相手が僕に食いついてくるのが1回目に首を振った時に見えたんで、アキ君と憲剛さんがいて、2人とも出せる状況だったんですけど、アキ君の方が角度があったんで出しました。そんな技をいつ身に着けた? どうですかね。普段、憲剛さんや(大島)僚太君がやってることを見よう見まねでやってるだけなんで、自ずとイメージが湧く感じですね」
▽9月シリーズは山口蛍(セレッソ大阪)のケガによる追加招集はあったが、11月シリーズは青山敏弘(サンフレッチェ広島)の右ひざ負傷で空いた1枠に確実に滑り込み、堂々と選出された。16日のベネズエラ戦(大分)は目下、ボランチのファーストチョイスである柴崎岳(ヘタフェ)と遠藤航(シント=トロイデン)がスタメン出場したが、守田も20日のキルギス戦(豊田)でインパクトを残すことに成功した。とりわけ際立ったのが、後半28分の大迫勇也(ブレーメン)の3点目の場面。鋭い縦パスを前線に供給し、北川航也(清水エスパルス)から大迫へとつながった。そういった気の利いたプレーができるようになった守田を森保監督も高く評価しているはず。青山の状態次第ではあるが、1月の2019年アジアカップ(UAE)のメンバー滑り込みも現実味を帯びてきたと言っていい。
▽「代表には代表のスタイルがあるから、そのスタイルに合わない選手だと評価されてしまうと、こっちでいいプレーをしていても絶対にメンバーに入らない。自分から代表のスタイルに合わせていくことを意識しないといけない。最初は知らないところからのスタートでしたけど、徐々に慣れてきましたし、こっちでやるいいプレーを残しつつ、スピード感や判断の部分で変えなきゃいけないところもある。そうやって代表でやった経験は川崎Fでも生きてると思います。憲剛さんみたいに何でもできる存在になりたいですね。ただ、『起用貧乏』みたいな感じになってしまうのもいけないので、何か自分に確立したものを持てるようにしていきたい」と守田は単なるボール奪取職人で終わるつもりはない。
▽今の代表ボランチの構成を見ると、非凡な攻撃センスを備えたロシア・ワールドカップ組の柴崎、守備のアグレッシブさが武器の遠藤と三竿健斗(鹿島アントラーズ)という構成で、中間的な選手が少ない。遠藤もベルギー移籍で確実にゲームメーク力をアップさせているし、三竿も鹿島でのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇によってスケールアップを果たしている。
▽ただ、守田にはJ1王者・川崎Fで自分を磨けるという強みがある。この1年間でこれだけ目覚ましい進化を遂げたのだから、まだまだ大きく変貌できる。大阪・高槻市の中体連から金光大阪高校を経て、流経大に進んだ経歴を見ても、まだまだ洗練されていないセンスや戦術眼というものが多々あるはずだ。そこはJクラブ育ちの遠藤や三竿とは異なる部分。10代の頃からスター街道を歩んできた柴崎とも違うだろう。こういう遅咲きの選手が25歳を過ぎてブレイクするケースは少なくないだけに、ここからどうなるかが興味深いところだ。
▽「今のレベルで『誰にも負けない』って言えるものはまだない。『僕と言ったらこれ』というのを周りから認めてもらえるようにならないといけないし、特徴を出していかないといけない」と本人も語気を強める。球際の強さやボール奪取力のレベルを上げ、攻撃の起点になれるようなパス出し、展開力も備えていけば、「オールラウンドな中盤のダイナモ」という位置づけになれるかもしれない。中村憲剛を筆頭にいい先輩の長所や強みを最大限吸収して、「オリジナルの守田英正」を作るべく、努力を続けてほしいものだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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