【2022年カタールへ期待の選手⑧】U-20W杯出場権獲得の後はACL決勝、常勝軍団の若きアタッカーは世界を目指す/安部裕葵(鹿島アントラーズ/MF)
2018.10.31 22:20 Wed
▽28日にジャカルタで行われた2018年AFC・U-19選手権(インドネシア)準々決勝。影山雅永監督率いるU-19日本代表は6万人超の大観衆が押し寄せた完全アウェー、しかも視界がおぼつかない豪雨という壮絶な環境の中、2-0で勝利。2大会連続で世界切符を手にした。
▽エースナンバー10をつけるテクニシャン・安部裕葵(鹿島アントラーズ)も大一番に先発出場。[4-4-2]の左ワイドに陣取り、攻守両面で渡って献身的なプレーを見せた。この日ばかりは相手2~3人に囲まれてボールを失うピンチに何度か見舞われ、持ち前の創造性やアイディアを発揮する回数が少なかったものの、「行けるところまで行く」という強い闘争心は後半19分にベンチに退くまで失われることはなかった。
▽「このゲームはホントに我慢勝負になるから、スキがあったら得点を狙うつもりで行こうとハーフタイムにみんなで話し合った。最悪、1-0でもいいから集中してやろうと意思統一しました。あれだけの大歓声でカウンター1本でも雰囲気に飲み込まれちゃいそうな感じだったけど、そうならないように耐えられたのはよかった」とチーム随一のイケメンアタッカーは心底、安堵した様子を見せていた。
▽この試合では30mミドルシュートで先制弾を叩き出した東俊希(サンフレッチェ広島ユース)や2点目に絡んだ久保建英(横浜F・マリノス)、宮代大聖(川崎フロンターレU-18)らに主役の座を譲ることになった安部だが、今年6月のロシア・カザン遠征ではただ1人、2018年ロシア・ワールドカップに挑んでいた日本代表側の一員として紅白戦を戦ったほど、周囲から高く評価を受けている。ルーキーイヤーだった2017年からJ1・13試合出場1得点という実績を残し、今季もJだけでなくAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の大舞台で戦ってきた経験値は同世代の中でも頭抜けている。そこは本人も大いに自信を持っている点。常勝軍団の一員として小笠原満男や内田篤人から帝王学を引き継いだ風格が19歳にして色濃く表れている。
▽「安部君と話してると、小笠原選手や内田選手と話してるような錯覚を受ける? ああ、ホントですか(笑)。鹿島に入ったことで身に着いたものもありますけど、そういうもの(落ち着き)は高校時代から少しはあったと思うんで。平常心を保つ秘訣は何も考えないこと。試合中も試合前も試合後も。何かを想像することで、自分の理想と現実との比較(乖離)が起きて、メンタルの乱れにつながると思う。何も想像や予想しないことで、そういったメンタルの乱れは防げるんじゃないですかね」といった口ぶりはまだ10代の若者と思えない冷静さだ。そこまで熟慮しながら1つ1つのプレーを選択しているあたりが、大物の予感を漂わせるのだ。
▽そんな安部だが、もう1人の偉大なプレーヤーからも影響を受けている。それは中学時代に指導を受けたことがある本田圭佑(メルボルン・ビクトリー)。彼が通っていたのが、本田が経営に携わっているソルティーログループのS.T.フットボールクラブという縁で、類まれなチャンスを得たのだという。
▽影山ジャパンがAFC・U-19選手権でアジア連覇を目指すためにも、この若武者の存在は必要不可欠と見られていた。しかし、11月3日に鹿島がACL決勝・ペルセポリス戦(ホーム)に参戦することになり、最終的にクラブに戻ることが決定。常勝軍団の一員としてACL制覇という一大タイトルに挑むことになった。
▽ACLでイランの強豪・ペルセポリスを倒すことができれば、12月のFIFAクラブワールドカップ(FCWC=UAE)参戦が現実になる。2年前の2016年日本大会で鹿島は開催国枠として出場し、ファイナルに進出。レアル・マドリーをあと一歩のところまで追いつめている。そこで異彩を放った柴崎岳(ヘタフェ)はスペインへステップアップし、ロシアの大舞台で主役として輝いた。現在も鹿島の守備の要に君臨する昌子源も同様だ。そのチャンスを安部がつかめれば、世界への道も一気に開けるかもしれない。
▽本田、小笠原、内田というのは揃って欧州でプレーしてきた面々だ。そういう先輩たちに最大限の敬意を払う19歳のアタッカーが海外移籍を夢見ないはずがない。2020年東京五輪、2022年カタールワールドカップを本気で狙おうと思うなら、年末のFCWC、来年のU-20ワールドカップ(ポーランド)と出られる国際大会は全て出た方がいい。そうなるように安部は自らの持てる力の全てを出し切ることが肝要だ。
▽「ゴールがチームのためになるのは分かっているけど、そういうのは運やタイミングが必要になる。それ以上に必ずできるのは、走ることだったり、声を出して戦うこと。それは100%やれる自信はある」という泥臭さとガムシャラさを遺憾なく発揮し、彼にはACL決勝で大仕事を見せてほしいものだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
▽エースナンバー10をつけるテクニシャン・安部裕葵(鹿島アントラーズ)も大一番に先発出場。[4-4-2]の左ワイドに陣取り、攻守両面で渡って献身的なプレーを見せた。この日ばかりは相手2~3人に囲まれてボールを失うピンチに何度か見舞われ、持ち前の創造性やアイディアを発揮する回数が少なかったものの、「行けるところまで行く」という強い闘争心は後半19分にベンチに退くまで失われることはなかった。
▽この試合では30mミドルシュートで先制弾を叩き出した東俊希(サンフレッチェ広島ユース)や2点目に絡んだ久保建英(横浜F・マリノス)、宮代大聖(川崎フロンターレU-18)らに主役の座を譲ることになった安部だが、今年6月のロシア・カザン遠征ではただ1人、2018年ロシア・ワールドカップに挑んでいた日本代表側の一員として紅白戦を戦ったほど、周囲から高く評価を受けている。ルーキーイヤーだった2017年からJ1・13試合出場1得点という実績を残し、今季もJだけでなくAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の大舞台で戦ってきた経験値は同世代の中でも頭抜けている。そこは本人も大いに自信を持っている点。常勝軍団の一員として小笠原満男や内田篤人から帝王学を引き継いだ風格が19歳にして色濃く表れている。
▽「安部君と話してると、小笠原選手や内田選手と話してるような錯覚を受ける? ああ、ホントですか(笑)。鹿島に入ったことで身に着いたものもありますけど、そういうもの(落ち着き)は高校時代から少しはあったと思うんで。平常心を保つ秘訣は何も考えないこと。試合中も試合前も試合後も。何かを想像することで、自分の理想と現実との比較(乖離)が起きて、メンタルの乱れにつながると思う。何も想像や予想しないことで、そういったメンタルの乱れは防げるんじゃないですかね」といった口ぶりはまだ10代の若者と思えない冷静さだ。そこまで熟慮しながら1つ1つのプレーを選択しているあたりが、大物の予感を漂わせるのだ。
▽そんな安部だが、もう1人の偉大なプレーヤーからも影響を受けている。それは中学時代に指導を受けたことがある本田圭佑(メルボルン・ビクトリー)。彼が通っていたのが、本田が経営に携わっているソルティーログループのS.T.フットボールクラブという縁で、類まれなチャンスを得たのだという。
▽「僕が中2から中3に上がる時に、本田さんがプロデュースするソルティーロが僕の通っていた清瀬のクラブを買い取った。本田さんも練習に来てくれました。彼は日本で物凄く成功している選手の1人。そういう人が身近にいたことは自分の強みになるし、励みにもなる」と安部はカザン遠征の際、目を輝かせていた。どんな時も物怖じせず、堂々とした立ち振る舞いができるのも、ワールドカップ3大会連続4得点の偉業を成し遂げた男の薫陶を受けたことが大きいのかもしれない。そういう意味でも、U-19の背番号10は期待値が非常に高いのだ。
▽影山ジャパンがAFC・U-19選手権でアジア連覇を目指すためにも、この若武者の存在は必要不可欠と見られていた。しかし、11月3日に鹿島がACL決勝・ペルセポリス戦(ホーム)に参戦することになり、最終的にクラブに戻ることが決定。常勝軍団の一員としてACL制覇という一大タイトルに挑むことになった。
▽ACLでイランの強豪・ペルセポリスを倒すことができれば、12月のFIFAクラブワールドカップ(FCWC=UAE)参戦が現実になる。2年前の2016年日本大会で鹿島は開催国枠として出場し、ファイナルに進出。レアル・マドリーをあと一歩のところまで追いつめている。そこで異彩を放った柴崎岳(ヘタフェ)はスペインへステップアップし、ロシアの大舞台で主役として輝いた。現在も鹿島の守備の要に君臨する昌子源も同様だ。そのチャンスを安部がつかめれば、世界への道も一気に開けるかもしれない。
▽本田、小笠原、内田というのは揃って欧州でプレーしてきた面々だ。そういう先輩たちに最大限の敬意を払う19歳のアタッカーが海外移籍を夢見ないはずがない。2020年東京五輪、2022年カタールワールドカップを本気で狙おうと思うなら、年末のFCWC、来年のU-20ワールドカップ(ポーランド)と出られる国際大会は全て出た方がいい。そうなるように安部は自らの持てる力の全てを出し切ることが肝要だ。
▽「ゴールがチームのためになるのは分かっているけど、そういうのは運やタイミングが必要になる。それ以上に必ずできるのは、走ることだったり、声を出して戦うこと。それは100%やれる自信はある」という泥臭さとガムシャラさを遺憾なく発揮し、彼にはACL決勝で大仕事を見せてほしいものだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。
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