GKが凄いとこうなる…/原ゆみこのマドリッド
2018.10.02 15:30 Tue
▽「何だか一番、得したのはセビージャみたい」そんな風に私が呟いていたのは月曜日、スポーツ紙などでは”Una semana magnifica/ウナ・セマーナ・マグニフィカ(偉大な1週間)”と、ここ3試合で首位との差を勝ち点7から2に縮めたアトレレティコが称えられていたものの、週明けの順位表では1つ下がって4位に。代わりに3連勝したセビージャがバルサ、レアル・マドリーと勝ち点差1となり、3位に喰い込んでいるのを見た時のことでした。いやあ、まだリーガは30節以上あるため、現時点でその程度の差に大した意味がないことはわかっているんですけどね。
▽もちろんミッドウィークのレアル・マドリー戦での圧巻3-0勝利を含め、3試合で計12点。5位からや躍進したマチン監督のチームが勢いに乗っていることを否定する気もありませんが、とにかく羨ましいのは両エース、アンドレ・シウバとベン・イェデルがどちらも当たっていること。とりわけ先週末は戦前、あれだけ有利と言われながら、結局、スコアレスで終わったアトレレティコのマドリーダービーを見た後だけに、7試合での得点が16と、セビージャが彼らの倍、マドリーよりも4本多いゴールを入れているというのはもしや、この先の脅威となるかもしれない?
▽まあ、そんなことはともかく、7節のマドリッド勢のリーガがどうだったか、お伝えしていくことにすると。いやあ、木曜にヘタフェがアラベスと1-1で引き分け、6節最後の試合が終わった翌日、金曜にはもうラージョがエスパニョール戦で先陣を切っているんですから、まったく忙しいったらありません。そのエスタディオ・バジェカスの試合では前半6分、意表を突いて、ラウール・デ・トーマスがエリア外からシュートを決め、ようやく昇格後、初のホーム勝利を見られるかと、スタンドのファンも湧いたんですけどね。喜んでいられたのは15分程のことで、19分にはエルモーソのシュートをGKアルベルトが弾いたものの、ゴール前に詰めていたボルハ・イグレシアスに蹴り込まれ、1-1の同点に。更にハーフタイム直前にもアドビンクラに当たったボールがグラネロの前に落ち、勝ち越し点を奪われてしまうんですから、困ったもんじゃありませんか。
▽それでも後半開始直後にはアドビンクラがディダクにエリア内で倒され、カクタがPKを決めて再びイーブンに戻したラージョだったんですが、それ以降、スコアは動かず。確かに後半の彼らは積極的に攻めていて、ミチェル監督も「Creo que los rayistas se pueden ir descontentos con el resultado, no con el rendimiento/クレオ・ケ・ロス・ラジスタス・セ・プエデン・イル・デスコンテントス・コン・エル・レスルタードー、ノー・コン・エル・レンディミエントー(ラージョファンは結果には不満足だったかもしれないが、パフォーマンスは違う)」と胸を張っていたんですけどね。スタンド閉鎖のせいで延期したアスレティック戦の分があるとはいえ、6試合で勝ち点5だけというのはちょっと寂しいですよねえ。
▽そして土曜にはいよいよ、マドリーダービーがサンティアゴ・ベルナベウで開催されたんですが、いやあ、ピッチで先日、モドリッチ、クルトワ、セルヒオ・ラモス、ヴァラン、マルセロがロンドンで受賞したFIFA個人賞のトロフィーを披露して、まさかキックオフ前から、お隣さんがマウンティングしてくるとは!夏のW杯MVPから、UEFA最優秀選手賞、FIFAベストまでモドリッチに連取され、残るチャンスはバロンドールだけになっているグリーズマンなど、内心、あまり良い気持ちはしなかったんじゃないかと思いますが、大丈夫。前半のアトレティコは[4-3-3]のシステムで始めマドリーに対し、中盤での数的優位を生かすことに。
▽後半は太ももに違和感を覚えたベイルがセバージョスと交代。「creo que mi salida le ha dado otro aire al equipo/クレオ・ケ・ミ・サリーダ・レ・ア・ダードー・オトロ・アイレ・アウ・エキポ(自分が出場して、チームに別の空気を与えたと思う)」と当人も言っていた通り、俄然、マドリーの方が活発になったんですが、最大のピンチにオブラクが3シーズン連続サモラ(リーガで一番失点率が低いGK与えられる賞)はダテでないことを証明してくれたんです! そう、20分にアセンシオに1対1で迫られながら、paradon(パラドン/スーパーセーブ)で窮地を脱したんですが、何せ、彼は母国、スロベニアがW杯に出られなかったため、世界の注目する大舞台で実力を披露する機会がありませんでしたからね。
▽おかげでUEFAやFIFAの賞とも無縁になっているんですが、この日はもう一人、マドリー攻撃陣の前に立ちはだかったディフェンダーが。それはヒメネスで、いえ、彼もダービー前には「En un partido de este estilo tiene que jugar mucho la cabeza/エン・ウン・パルティードー・デ・エステ・エスティーロ・ティエネ・ケ・フガール・ムーチョ・ラ・カベッサ(こういうスタイルの試合では頭を沢山、使ってプレーしないといけない)」と言っていたんですけどね。まさに有言実行、敵のクロスを9度も頭で弾き返す活躍で、ゴディンが自陣でアセンシオにパスを出してしまった際にも全力疾走。ボールをカットして、ウルグアイ代表先輩のミスをカバーしてくれたんですが、そのおかげもあって、最後までアトレティコは失点せずに済むことに。
▽結果、スコアレスドローの痛み分けで終わった両者だったものの、これでサンティアゴ・ベルナベウでのリーガ戦で6年連続無敗とし、1940年代にバレンシアが作った記録に並んだアトレティコのファンには、いえ、私も含め、それ以前、ダービーでは開始1分に先制しようが、相手に退場者が出ようが、絶対に勝てなかった不遇の14年間を覚えている世代にしてみれば、負けなくて良かったという安堵感もあったんですけどね。やはりマドリーファンにはもどかしかったようで、ロペテギ監督がマリアーノを使わず、残り4分、最後の交代枠では「El partido pedia velocidad/エル・パルティードーペディア・ベロシダッド(試合にはスピードが必要だった)」(ロペテギ監督)という理由でベンゼマに代わり、18歳のヴィニシウスをデビューさせた時など、スタンドからはpito(ピト/ブイング)が飛ぶ始末。
▽おまけにマドリー選手たちからも「Oblak ha tardado un minuto en sacar de puerta/オブラク・ア・タルダードー・ウン・ミヌート・エン・サカール・デ・プエルタ(オブラクはゴールキックに1分もかけていた)」(セバージョス)とか、「開始1分から時間稼ぎして、引き分け狙いのチーム相手に勝つのは難しい」(カルバハル)なんて文句も出ていたんですが、いやいや。だったら、前半、コケのクロスがエリア内でカゼミロの腕を直撃しながら、VAR(ビデオ審判)判定すらなかったことなんて、まさに「Que quieren que les diga.../ケ・キエレン・ケ・レス・ディガ(何を言ってほしいのやら…)」(シメオネ監督)という事態だったかと。
▽だって、先週末のリーガだけでもエイバルvsセビージャ戦でヘスス・ナバスのクロスが腕に当たったコテがペナルティを取られていたり、ビジャレアルvsバジャドリー戦でもフネス・モリのヘッドがキコの腕に触れ、こちらはVARでPKという似た事例がありながら、カゼミロのハンドだけ、不可抗力として、お咎めを免れているんですよ。この点に関しては、クラブも審判委員会にVARの使用基準を問う書簡を出していましたが、今回のダービーではラモスがコレアの顔にcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞ったのがイエローカードに留まったり、終盤は空中戦でカリニッチをド突いたのが2枚目にならなかったりと、どちらのケースもレッドカード案件だったにも関わらず、VAR判定がなかったのは何故?
▽まあ、シメオネ監督も「前半のチャンスを考えると残念だが、後半を見たところ…Creo que el empate es justo/クレオ・ケ・エル・エンパテ・エス・フストー(引き分けは妥当だと思う)」と言っていましたし、ハンドの抗議を主審に流されたコケも「Hoy ha sido el dia de los porteros/オイ・ア・シードー・エル・ディア・デ・ロス・ポルテーロス(今日はGKの日だった)」と認めていた通り、私もあの2度の絶好機を止められては勝てなくても仕方ないという気がしますけどね。実際、その日の前の時間帯ではバルサがカンプ・ノウでアスレティックと1-1で引き分け。ここ3試合連続して勝ち点を落としてくれたため、マドリーも同じ勝ち点で2位のまま、アトレティコも勝ち点差2で変わらずと、セビージャ以外に漁夫の利を与えることもなかったのは良かったかと。10月末のクラシコ(伝統の一戦)まで、リーガはこんな感じで競り合いが続くんじゃないでしょうかね。
▽それより今週はCL第2節の方に注目で、早くも日曜午後には火曜のCSKAモスクワ戦に備え、マドリーがロシアに移動。セビージャ戦でふくらはぎを痛めたマルセロ、先週、急性盲腸炎で手術したイスコ、そしてケガではなかったものの、大事を取ったベイルが遠征に参加していないんですが、意外だったのはロペテギ監督がラモスをお留守番にしたこと。いえ、ダービーでサウールに頭をぶつけ、眉の上を縫ったのは関係ないんですけどね。ここまで出ずっぱりだったことを考えての休養のようですが、そうなると、センターバックをヴァランとナチョにして、カンテラーノ(RMカスティージャの選手)のレギュイロンを左サイドバックとして使うか、バジェホが中に入って、ナチョがマルセロの代理を務めるか、とにかくマルチDFのナチョは1人しかいないため、ロペテギ監督も考えどころ。
▽折しも会場となるルジニキ・スタジアムがこの夏、スペインがベスト16でロシアに延長、PK戦の末、敗退した悲劇の舞台とあって、いえ、大会直前に代表監督を解任されたロペテギ監督はいいんですけどね。その時、ロシアのゴールを守っていたアキンフェエフと顔を合わせないといけないアセンシオやナチョ、カルバハル、ルーカス・バスケスらにとってはトラウマが残っているかもしれませんが、ここは同スタジアムでフランス代表の優勝を決めたヴァランを信頼。いくらリーガでここ2試合、ノーゴールが続いているマドリーとはいえ、実力的に後れを取るようなことはないはずですが、とりあえず火曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのキックオフを楽しみに待つことにしましょうか。
▽そしてCL第2節ではワンダ・メトロポリターノにクラブ・ブルージュを迎えるアトレティコはというと、アリアスがダービー前に全快通知をもらったため、ケガ人はサビッチだけになったはずだったんですけどね。どうやら、ヒザの負傷から戻ったビトロがまだ本調子ではなかったようで、今週は試合に出ず、スペシャルメニューでリハビリを続けるよう。他はもう、少数精鋭のチームですから、先発に少々、変更はあってもプレーする選手は同じです。何せ、昨季はグループ最弱と言われたアゼルバイジャンのカラバフと2分けして、3位で敗退してしまった彼らですからね。CL決勝がワンダで開催されることもありますし、いくら初戦でモナコに快勝して今季は好スタートを切ったとはいえ、決して油断をしないで挑んでもらいたいところです。
▽え、兄貴分たちがリーガの上位争いを続ける一方で、だんだん心配になってきた弟分チームもあるんだろうって? そうですね、実は日曜にベティス戦だったレガネスが終了間際にロレンにゴールを許し、1-0で負け、ミッドウィークのバルサ戦勝利で離れていた最下位にまた戻ってしまったんですよ。おまけにこの土曜には18位のラージョと降格圏内ミニダービーで骨肉の争いを繰り広げないといけないのは何とも皮肉。
▽いえ、月曜に前半にマキシ・ゴメスのゴールで先制されながら、後半に途中出場のマタが嬉しい1部初ゴールを決めて、アウェイでセルタと1-1で引き分けたヘタフェは順位も9位と安定していますけどね。土曜のレバンテ戦に向けてはここ2試合、連続して招集リスト入りできなかった柴崎岳選手が戻って来られるかどうかぐらいなんですが、さて。せっかくマドリッド勢1部5チームになってすぐ、3シーズン前のヘタフェとラージョのみたいにダブル降格なんて悲しい結末だけは避けたいですよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
▽もちろんミッドウィークのレアル・マドリー戦での圧巻3-0勝利を含め、3試合で計12点。5位からや躍進したマチン監督のチームが勢いに乗っていることを否定する気もありませんが、とにかく羨ましいのは両エース、アンドレ・シウバとベン・イェデルがどちらも当たっていること。とりわけ先週末は戦前、あれだけ有利と言われながら、結局、スコアレスで終わったアトレレティコのマドリーダービーを見た後だけに、7試合での得点が16と、セビージャが彼らの倍、マドリーよりも4本多いゴールを入れているというのはもしや、この先の脅威となるかもしれない?
▽それでも後半開始直後にはアドビンクラがディダクにエリア内で倒され、カクタがPKを決めて再びイーブンに戻したラージョだったんですが、それ以降、スコアは動かず。確かに後半の彼らは積極的に攻めていて、ミチェル監督も「Creo que los rayistas se pueden ir descontentos con el resultado, no con el rendimiento/クレオ・ケ・ロス・ラジスタス・セ・プエデン・イル・デスコンテントス・コン・エル・レスルタードー、ノー・コン・エル・レンディミエントー(ラージョファンは結果には不満足だったかもしれないが、パフォーマンスは違う)」と胸を張っていたんですけどね。スタンド閉鎖のせいで延期したアスレティック戦の分があるとはいえ、6試合で勝ち点5だけというのはちょっと寂しいですよねえ。
▽そして土曜にはいよいよ、マドリーダービーがサンティアゴ・ベルナベウで開催されたんですが、いやあ、ピッチで先日、モドリッチ、クルトワ、セルヒオ・ラモス、ヴァラン、マルセロがロンドンで受賞したFIFA個人賞のトロフィーを披露して、まさかキックオフ前から、お隣さんがマウンティングしてくるとは!夏のW杯MVPから、UEFA最優秀選手賞、FIFAベストまでモドリッチに連取され、残るチャンスはバロンドールだけになっているグリーズマンなど、内心、あまり良い気持ちはしなかったんじゃないかと思いますが、大丈夫。前半のアトレティコは[4-3-3]のシステムで始めマドリーに対し、中盤での数的優位を生かすことに。
▽でもねえ、早くも7分にはコケのスルーパスからグリーズマンが独走、エリア内でGKと1対1になったんですが、クルトワが顔でそのシュートを阻止。似たようなシーンは36分にも繰り返されて、今度はグリーズマンのスルーパスでジエゴ・コスタが突進したんですが、彼も手で弾かれてしまっては一体、どうしたらいいって言うのでしょう。この2つの神セーブには、シメオネ監督に「クルトワは今のアトレティコでは正GKになれない。ヤンの方が上」と信頼されているオブラクも動揺したか、ハーフタイム間際にはゴールキックをエリア内にいたアセンシオに贈るという珍しいミスを犯したりもしたんですが、幸い、相手のシュートはストライクコース。試合は0-0のままで折り返します。
▽後半は太ももに違和感を覚えたベイルがセバージョスと交代。「creo que mi salida le ha dado otro aire al equipo/クレオ・ケ・ミ・サリーダ・レ・ア・ダードー・オトロ・アイレ・アウ・エキポ(自分が出場して、チームに別の空気を与えたと思う)」と当人も言っていた通り、俄然、マドリーの方が活発になったんですが、最大のピンチにオブラクが3シーズン連続サモラ(リーガで一番失点率が低いGK与えられる賞)はダテでないことを証明してくれたんです! そう、20分にアセンシオに1対1で迫られながら、paradon(パラドン/スーパーセーブ)で窮地を脱したんですが、何せ、彼は母国、スロベニアがW杯に出られなかったため、世界の注目する大舞台で実力を披露する機会がありませんでしたからね。
▽おかげでUEFAやFIFAの賞とも無縁になっているんですが、この日はもう一人、マドリー攻撃陣の前に立ちはだかったディフェンダーが。それはヒメネスで、いえ、彼もダービー前には「En un partido de este estilo tiene que jugar mucho la cabeza/エン・ウン・パルティードー・デ・エステ・エスティーロ・ティエネ・ケ・フガール・ムーチョ・ラ・カベッサ(こういうスタイルの試合では頭を沢山、使ってプレーしないといけない)」と言っていたんですけどね。まさに有言実行、敵のクロスを9度も頭で弾き返す活躍で、ゴディンが自陣でアセンシオにパスを出してしまった際にも全力疾走。ボールをカットして、ウルグアイ代表先輩のミスをカバーしてくれたんですが、そのおかげもあって、最後までアトレティコは失点せずに済むことに。
▽結果、スコアレスドローの痛み分けで終わった両者だったものの、これでサンティアゴ・ベルナベウでのリーガ戦で6年連続無敗とし、1940年代にバレンシアが作った記録に並んだアトレティコのファンには、いえ、私も含め、それ以前、ダービーでは開始1分に先制しようが、相手に退場者が出ようが、絶対に勝てなかった不遇の14年間を覚えている世代にしてみれば、負けなくて良かったという安堵感もあったんですけどね。やはりマドリーファンにはもどかしかったようで、ロペテギ監督がマリアーノを使わず、残り4分、最後の交代枠では「El partido pedia velocidad/エル・パルティードーペディア・ベロシダッド(試合にはスピードが必要だった)」(ロペテギ監督)という理由でベンゼマに代わり、18歳のヴィニシウスをデビューさせた時など、スタンドからはpito(ピト/ブイング)が飛ぶ始末。
▽おまけにマドリー選手たちからも「Oblak ha tardado un minuto en sacar de puerta/オブラク・ア・タルダードー・ウン・ミヌート・エン・サカール・デ・プエルタ(オブラクはゴールキックに1分もかけていた)」(セバージョス)とか、「開始1分から時間稼ぎして、引き分け狙いのチーム相手に勝つのは難しい」(カルバハル)なんて文句も出ていたんですが、いやいや。だったら、前半、コケのクロスがエリア内でカゼミロの腕を直撃しながら、VAR(ビデオ審判)判定すらなかったことなんて、まさに「Que quieren que les diga.../ケ・キエレン・ケ・レス・ディガ(何を言ってほしいのやら…)」(シメオネ監督)という事態だったかと。
▽だって、先週末のリーガだけでもエイバルvsセビージャ戦でヘスス・ナバスのクロスが腕に当たったコテがペナルティを取られていたり、ビジャレアルvsバジャドリー戦でもフネス・モリのヘッドがキコの腕に触れ、こちらはVARでPKという似た事例がありながら、カゼミロのハンドだけ、不可抗力として、お咎めを免れているんですよ。この点に関しては、クラブも審判委員会にVARの使用基準を問う書簡を出していましたが、今回のダービーではラモスがコレアの顔にcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞ったのがイエローカードに留まったり、終盤は空中戦でカリニッチをド突いたのが2枚目にならなかったりと、どちらのケースもレッドカード案件だったにも関わらず、VAR判定がなかったのは何故?
▽まあ、シメオネ監督も「前半のチャンスを考えると残念だが、後半を見たところ…Creo que el empate es justo/クレオ・ケ・エル・エンパテ・エス・フストー(引き分けは妥当だと思う)」と言っていましたし、ハンドの抗議を主審に流されたコケも「Hoy ha sido el dia de los porteros/オイ・ア・シードー・エル・ディア・デ・ロス・ポルテーロス(今日はGKの日だった)」と認めていた通り、私もあの2度の絶好機を止められては勝てなくても仕方ないという気がしますけどね。実際、その日の前の時間帯ではバルサがカンプ・ノウでアスレティックと1-1で引き分け。ここ3試合連続して勝ち点を落としてくれたため、マドリーも同じ勝ち点で2位のまま、アトレティコも勝ち点差2で変わらずと、セビージャ以外に漁夫の利を与えることもなかったのは良かったかと。10月末のクラシコ(伝統の一戦)まで、リーガはこんな感じで競り合いが続くんじゃないでしょうかね。
▽それより今週はCL第2節の方に注目で、早くも日曜午後には火曜のCSKAモスクワ戦に備え、マドリーがロシアに移動。セビージャ戦でふくらはぎを痛めたマルセロ、先週、急性盲腸炎で手術したイスコ、そしてケガではなかったものの、大事を取ったベイルが遠征に参加していないんですが、意外だったのはロペテギ監督がラモスをお留守番にしたこと。いえ、ダービーでサウールに頭をぶつけ、眉の上を縫ったのは関係ないんですけどね。ここまで出ずっぱりだったことを考えての休養のようですが、そうなると、センターバックをヴァランとナチョにして、カンテラーノ(RMカスティージャの選手)のレギュイロンを左サイドバックとして使うか、バジェホが中に入って、ナチョがマルセロの代理を務めるか、とにかくマルチDFのナチョは1人しかいないため、ロペテギ監督も考えどころ。
▽折しも会場となるルジニキ・スタジアムがこの夏、スペインがベスト16でロシアに延長、PK戦の末、敗退した悲劇の舞台とあって、いえ、大会直前に代表監督を解任されたロペテギ監督はいいんですけどね。その時、ロシアのゴールを守っていたアキンフェエフと顔を合わせないといけないアセンシオやナチョ、カルバハル、ルーカス・バスケスらにとってはトラウマが残っているかもしれませんが、ここは同スタジアムでフランス代表の優勝を決めたヴァランを信頼。いくらリーガでここ2試合、ノーゴールが続いているマドリーとはいえ、実力的に後れを取るようなことはないはずですが、とりあえず火曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのキックオフを楽しみに待つことにしましょうか。
▽そしてCL第2節ではワンダ・メトロポリターノにクラブ・ブルージュを迎えるアトレティコはというと、アリアスがダービー前に全快通知をもらったため、ケガ人はサビッチだけになったはずだったんですけどね。どうやら、ヒザの負傷から戻ったビトロがまだ本調子ではなかったようで、今週は試合に出ず、スペシャルメニューでリハビリを続けるよう。他はもう、少数精鋭のチームですから、先発に少々、変更はあってもプレーする選手は同じです。何せ、昨季はグループ最弱と言われたアゼルバイジャンのカラバフと2分けして、3位で敗退してしまった彼らですからね。CL決勝がワンダで開催されることもありますし、いくら初戦でモナコに快勝して今季は好スタートを切ったとはいえ、決して油断をしないで挑んでもらいたいところです。
▽え、兄貴分たちがリーガの上位争いを続ける一方で、だんだん心配になってきた弟分チームもあるんだろうって? そうですね、実は日曜にベティス戦だったレガネスが終了間際にロレンにゴールを許し、1-0で負け、ミッドウィークのバルサ戦勝利で離れていた最下位にまた戻ってしまったんですよ。おまけにこの土曜には18位のラージョと降格圏内ミニダービーで骨肉の争いを繰り広げないといけないのは何とも皮肉。
▽いえ、月曜に前半にマキシ・ゴメスのゴールで先制されながら、後半に途中出場のマタが嬉しい1部初ゴールを決めて、アウェイでセルタと1-1で引き分けたヘタフェは順位も9位と安定していますけどね。土曜のレバンテ戦に向けてはここ2試合、連続して招集リスト入りできなかった柴崎岳選手が戻って来られるかどうかぐらいなんですが、さて。せっかくマドリッド勢1部5チームになってすぐ、3シーズン前のヘタフェとラージョのみたいにダブル降格なんて悲しい結末だけは避けたいですよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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