クロップが語る生え抜き選手の重要性…「なぜリバプールで若手が育つのか?」の答え
2018.08.13 18:55 Mon
このインタビューは3都市にわたるレッズの8日間の米国ツアーの中ほどで行われた。このツアーはすべてが順調だったわけではない。シャーロットではドルトムントに負け、飛行機のトラブルでニュージャージー州への到着が遅れた。だが、アメリカ本土でクロップ率いるリバプールを間近に見られるだけでも、十分に素晴らしいことだ。
第1弾のインタビューではチャンピオンズリーグの決勝や選手獲得活動について語ってくれたクロップだが、第2弾となる今回は、リバプールの監督として大事な問題について聞いていこう。
リバプールでは、非常に才能ある若いサッカー選手が台頭しつつある。
プレミアリーグ開幕戦こそ、多くの新加入選手がスタメン入り、そしてベンチに入ったため、有望な若手選手のプレーが見ることはかなわなかったが、それが彼らの台頭を否定するわけではない。
このインタビューが行われた日の夜、マンチェスター・シティ戦に、ベン・ウッドバーンという18歳だが、すでにクラブやウェールズのフル代表で得点を挙げている選手がベンチ入りした。同じくベンチ入りしたラファエル・カマーチョは、フルバックでプレーするウィングで、他の選手とは違うプレーを見せてくれる。他にも、ナット・フィリップス、カオイムヒン・ケレハー、ドミニク・ソランケ、セイ・オジョ、マルコ・グルイッチといった期待の若手が、リバプールには目白押しなのだ。全員22歳以下で、クロップのもとで大いに成長している。
加えて今回の米国ツアーに参加していないが、トレント・アレクサンダー=アーノルドも若手の有望株の一人と言えよう。彼はこの夏、イングランド代表としてワールドカップに出ていたため、今回のツアーは見送っている。またチーム最年少の17歳、カーティス・ジョーンズは若き地元出身選手だ。ちなみにジョーンズは2001年、クロップがマインツで監督業を始めた年の生まれである。こんな話を聞いたら誰もが年を取ったと感じるに違いない。
■地元の選手たちがクラブを代表するチームに「信じられない! 2001年生まれだったのか!」と、クロップは微笑んだ。「だけど、素晴らしい選手だろ?」そう続けた。
リバプールの中心市街地出身のジョーンズは、物腰が柔らかく、自信に満ちた攻撃的ミッドフィルダーだ。すでに地元ではレッズのトップチームでも遜色ない活躍をしている。歩きぶりも堂々としていて、プレーにも光るものがある。チームメイトやスタッフ、クロップまでもが、ジョーンズの成長に目を見張っているのだ。
周知の通り、リバプールは地元出身の才能あふれる選手たちで歴史を築いてきたクラブだ。伝説のトミー・スミスからフィル・トンプソン、ジェイミー・キャラガーやスティーヴン・ジェラード、忘れちゃいけないテリー・マクダーモット、さらにロビー・ファウラーやスティーブ・マクマナマン、昔にさかのぼればイアン・キャラハンやクリス・ローラー、亡くなったロニー・モランまで、リバプール出身の選手たちが、イングランドサッカーにおける最も歴史あるクラブの一つに長く命を吹きこんできた。
アレクサンダー=アーノルドとジョーンズも彼らと同様に、今後何年にもわたって伝統を受け継いでいける才能の持ち主だと言えよう。地元の選手たちがクラブを代表してプレーすることは、クロップが心から望むことでもある。
「それがいい、それがいいんだ」と「このクラブには、それが重要なんだよ」
「チャンスがあるならやるべきだ。リバプールの人口はどれくらいだい? 50万? アイスランドは33万人だ。つまり、リバプールには国の代表が作れるくらいの人口がいるということさ」
「もちろん、多ければ多いほどいい。スティーヴィーやカラといった若手たちを成功させることができたのは、素晴らしかった。本当に最高だよ。カーティスもそうなるだろうね。まだまだ先は長いが、最初の兆候としてはとてもポジティブなものがあると思うよ。彼はいい選手だよ。とてもうまくやれる。すぐに分かるはずさ」
「リバプール出身であることは、常にちょっとしたプラスになるんだよ。ここに2人の選手がいて、能力は同じだけど、ひとりは標準語の英語を話し、もうひとりがリバプール方言を話すとしたら、リバプール方言を話すほうをチームに入れるよ。だって、我々はリバプールなんだから」
■若手とベテランとの融合クロップは、2015年10月にアンフィールドに来て以来、若手選手に、繰り返し信頼の情を示しチャンスを与えてきた。22歳以下の選手を13人もデビューさせてきたのである。
もちろん、全員がリバプールで成功できるわけではないだろう。すでにチームを去った選手もレンタルに出された選手もいる。25試合以上出場しているのは、アーノルドとソランケだけだ。加えて、多くの実績ある新戦力を加えたことで、より戦力を融合させる難易度は上がったと言えるだろう。
まさにクラブにとっては難題である。アカデミー出身選手たちへの信頼と、経験豊かなトップチームのバランスを取っていかないといけないからだ。リバプールは今シーズン、プレミアリーグやチャンピオンズリーグを戦っていかなければならず、経験ある選手たちの活躍を必要としていることは紛れもない事実だ。
それでもクロップは、若手の選手たちの台頭には心を躍らせている。難しさも認めながら、そのやりがいを嬉々として語る。
「もちろん、ワクワクしているよ。だけど、正直なところリバプールのようなクラブでは、若者たちはますます難しい立場に追いやられているんだ。選手を5000万か6000万で買うこともあれば、ユースチームからタダで上がってくる選手を使うこともある。ただ、若者には時間とプレーするチャンスが必要だね」
「U23のチームでプレーする、それは素晴らしいことだが、本人たちにとってはそれほど嬉しいことではない。だって1週間ずっとトップチームに帯同して、それからU23のチームに試合をしにいっても、更衣室はこのテーブルくらいの狭いところだし観客もいないんだよ。トップとU23では違いすぎるんだ」
「若手にはチャンスが必要だが、トレントはレンタルに出さなくても頭角を現した。すべての若手ができることではないが、いずれ結果が出るんだよ。若手に対しては、2年か3年にひとり出てくれば、素晴らしいことだ。大事なことだよ」
■メルウッド・トレーニング・グラウンドを離れることは「とてもよいこと」
ピッチの外でクラブに訪れる変化も、また大事だ。レッズはこの夏、アカデミーの活動とトップチームとを結合するため、市街地から数マイル離れたカークビーに拠点を移し、由緒あるメルウッド・トレーニング・グラウンドを離れる計画を発表した。この計画は、2020年に完了する予定だという。
クロップは「我々にとって、とてもよいことだ」と話し、その根拠を説明していく。
「確かに、メルウッドは本当に素晴らしい場所だ。歴史がある。私も大好きだよ。ただ問題は、トップとアカデミーが分かれていることだね。メルウッドからカークビーは遠くない。だが、近くもない。だからユースの試合をゆっくりと見ることができないんだ。メルウッドに1日10~12時間いれば、できるだけ多くのユースの試合を見ることができるだろう? ミーティングの合間に簡単に試合や練習を見にいくことだってできてしまう。選手たちのことをもっと早くから知ることができるね。私だけじゃなく、他のスタッフも」
「メルウッドは、今までは完璧な場所だった。だけど大きさからいってひとつのことしかできないんだ。新しい事務所が欲しかったら、新しいフロアを建設しなければならない。今はよくても、将来的には狭くなってしまうからね。だから新しい場所を作るんだよ」
「今度の場所は、マージーサイドのサッカーの本拠地になるだろう。このアカデミーを出た選手は、どのレベルにおいても輝かしいサッカー選手にならなければならない。それが目標だし、私は心から楽しみにしているよ」
「それにこの移転計画は、アカデミーにとってもいいことだ。U18の試合に行けば、どんな風かわかるだろう? 現地にいけばどういう場所か分かる。若手選手の助けになるものを建設するんだ」
「何かを築くことは、クラブの未来にとって常によいことさ。きっと素晴らしいものになると私は確信しているね。(レッズの共同オーナーの)マイク・ゴードンは、この計画に本当に熱心に取り組んでいる。きっと素晴らしいものになるよ」
クロップの目は、まぎれもなく輝いていた。クロップ監督と実行中の大きな計画が、アンフィールドの未来を非常に明るいものにしていることは確かであろう。
文=ニール・ジョーンズ/Neil Jones
提供:goal.com
第1弾のインタビューではチャンピオンズリーグの決勝や選手獲得活動について語ってくれたクロップだが、第2弾となる今回は、リバプールの監督として大事な問題について聞いていこう。
リバプールでは、非常に才能ある若いサッカー選手が台頭しつつある。
プレミアリーグ開幕戦こそ、多くの新加入選手がスタメン入り、そしてベンチに入ったため、有望な若手選手のプレーが見ることはかなわなかったが、それが彼らの台頭を否定するわけではない。
このインタビューが行われた日の夜、マンチェスター・シティ戦に、ベン・ウッドバーンという18歳だが、すでにクラブやウェールズのフル代表で得点を挙げている選手がベンチ入りした。同じくベンチ入りしたラファエル・カマーチョは、フルバックでプレーするウィングで、他の選手とは違うプレーを見せてくれる。他にも、ナット・フィリップス、カオイムヒン・ケレハー、ドミニク・ソランケ、セイ・オジョ、マルコ・グルイッチといった期待の若手が、リバプールには目白押しなのだ。全員22歳以下で、クロップのもとで大いに成長している。
加えて今回の米国ツアーに参加していないが、トレント・アレクサンダー=アーノルドも若手の有望株の一人と言えよう。彼はこの夏、イングランド代表としてワールドカップに出ていたため、今回のツアーは見送っている。またチーム最年少の17歳、カーティス・ジョーンズは若き地元出身選手だ。ちなみにジョーンズは2001年、クロップがマインツで監督業を始めた年の生まれである。こんな話を聞いたら誰もが年を取ったと感じるに違いない。
■地元の選手たちがクラブを代表するチームに「信じられない! 2001年生まれだったのか!」と、クロップは微笑んだ。「だけど、素晴らしい選手だろ?」そう続けた。
リバプールの中心市街地出身のジョーンズは、物腰が柔らかく、自信に満ちた攻撃的ミッドフィルダーだ。すでに地元ではレッズのトップチームでも遜色ない活躍をしている。歩きぶりも堂々としていて、プレーにも光るものがある。チームメイトやスタッフ、クロップまでもが、ジョーンズの成長に目を見張っているのだ。
周知の通り、リバプールは地元出身の才能あふれる選手たちで歴史を築いてきたクラブだ。伝説のトミー・スミスからフィル・トンプソン、ジェイミー・キャラガーやスティーヴン・ジェラード、忘れちゃいけないテリー・マクダーモット、さらにロビー・ファウラーやスティーブ・マクマナマン、昔にさかのぼればイアン・キャラハンやクリス・ローラー、亡くなったロニー・モランまで、リバプール出身の選手たちが、イングランドサッカーにおける最も歴史あるクラブの一つに長く命を吹きこんできた。
アレクサンダー=アーノルドとジョーンズも彼らと同様に、今後何年にもわたって伝統を受け継いでいける才能の持ち主だと言えよう。地元の選手たちがクラブを代表してプレーすることは、クロップが心から望むことでもある。
「それがいい、それがいいんだ」と「このクラブには、それが重要なんだよ」
「チャンスがあるならやるべきだ。リバプールの人口はどれくらいだい? 50万? アイスランドは33万人だ。つまり、リバプールには国の代表が作れるくらいの人口がいるということさ」
「もちろん、多ければ多いほどいい。スティーヴィーやカラといった若手たちを成功させることができたのは、素晴らしかった。本当に最高だよ。カーティスもそうなるだろうね。まだまだ先は長いが、最初の兆候としてはとてもポジティブなものがあると思うよ。彼はいい選手だよ。とてもうまくやれる。すぐに分かるはずさ」
「リバプール出身であることは、常にちょっとしたプラスになるんだよ。ここに2人の選手がいて、能力は同じだけど、ひとりは標準語の英語を話し、もうひとりがリバプール方言を話すとしたら、リバプール方言を話すほうをチームに入れるよ。だって、我々はリバプールなんだから」
■若手とベテランとの融合クロップは、2015年10月にアンフィールドに来て以来、若手選手に、繰り返し信頼の情を示しチャンスを与えてきた。22歳以下の選手を13人もデビューさせてきたのである。
もちろん、全員がリバプールで成功できるわけではないだろう。すでにチームを去った選手もレンタルに出された選手もいる。25試合以上出場しているのは、アーノルドとソランケだけだ。加えて、多くの実績ある新戦力を加えたことで、より戦力を融合させる難易度は上がったと言えるだろう。
まさにクラブにとっては難題である。アカデミー出身選手たちへの信頼と、経験豊かなトップチームのバランスを取っていかないといけないからだ。リバプールは今シーズン、プレミアリーグやチャンピオンズリーグを戦っていかなければならず、経験ある選手たちの活躍を必要としていることは紛れもない事実だ。
それでもクロップは、若手の選手たちの台頭には心を躍らせている。難しさも認めながら、そのやりがいを嬉々として語る。
「もちろん、ワクワクしているよ。だけど、正直なところリバプールのようなクラブでは、若者たちはますます難しい立場に追いやられているんだ。選手を5000万か6000万で買うこともあれば、ユースチームからタダで上がってくる選手を使うこともある。ただ、若者には時間とプレーするチャンスが必要だね」
「U23のチームでプレーする、それは素晴らしいことだが、本人たちにとってはそれほど嬉しいことではない。だって1週間ずっとトップチームに帯同して、それからU23のチームに試合をしにいっても、更衣室はこのテーブルくらいの狭いところだし観客もいないんだよ。トップとU23では違いすぎるんだ」
「若手にはチャンスが必要だが、トレントはレンタルに出さなくても頭角を現した。すべての若手ができることではないが、いずれ結果が出るんだよ。若手に対しては、2年か3年にひとり出てくれば、素晴らしいことだ。大事なことだよ」
■メルウッド・トレーニング・グラウンドを離れることは「とてもよいこと」
ピッチの外でクラブに訪れる変化も、また大事だ。レッズはこの夏、アカデミーの活動とトップチームとを結合するため、市街地から数マイル離れたカークビーに拠点を移し、由緒あるメルウッド・トレーニング・グラウンドを離れる計画を発表した。この計画は、2020年に完了する予定だという。
クロップは「我々にとって、とてもよいことだ」と話し、その根拠を説明していく。
「確かに、メルウッドは本当に素晴らしい場所だ。歴史がある。私も大好きだよ。ただ問題は、トップとアカデミーが分かれていることだね。メルウッドからカークビーは遠くない。だが、近くもない。だからユースの試合をゆっくりと見ることができないんだ。メルウッドに1日10~12時間いれば、できるだけ多くのユースの試合を見ることができるだろう? ミーティングの合間に簡単に試合や練習を見にいくことだってできてしまう。選手たちのことをもっと早くから知ることができるね。私だけじゃなく、他のスタッフも」
「メルウッドは、今までは完璧な場所だった。だけど大きさからいってひとつのことしかできないんだ。新しい事務所が欲しかったら、新しいフロアを建設しなければならない。今はよくても、将来的には狭くなってしまうからね。だから新しい場所を作るんだよ」
「今度の場所は、マージーサイドのサッカーの本拠地になるだろう。このアカデミーを出た選手は、どのレベルにおいても輝かしいサッカー選手にならなければならない。それが目標だし、私は心から楽しみにしているよ」
「それにこの移転計画は、アカデミーにとってもいいことだ。U18の試合に行けば、どんな風かわかるだろう? 現地にいけばどういう場所か分かる。若手選手の助けになるものを建設するんだ」
「何かを築くことは、クラブの未来にとって常によいことさ。きっと素晴らしいものになると私は確信しているね。(レッズの共同オーナーの)マイク・ゴードンは、この計画に本当に熱心に取り組んでいる。きっと素晴らしいものになるよ」
クロップの目は、まぎれもなく輝いていた。クロップ監督と実行中の大きな計画が、アンフィールドの未来を非常に明るいものにしていることは確かであろう。
文=ニール・ジョーンズ/Neil Jones
提供:goal.com
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