【六川亨の日本サッカー見聞録】森保代表監督誕生の懸念材料
2018.07.27 13:00 Fri
▽毎月第3木曜はJFA(日本サッカー協会)の定例理事会が開催される。7月26日は、次期日本代表の監督が理事会で承認される可能性が高いとあって、JFAハウスには昼過ぎから多くの記者・カメラマン、そしてTVクルーが詰めかけた。
▽ところがJFAに着いてみると広報が1枚のペーパーを配っている。そこには午後6時30分から都内のホテルで「SAMURAI BLUE(日本代表)新監督 就任記者会見のご案内」とあり、6時からは田嶋会長と関塚技術委員長による経緯説明を行うとあった。
▽ホテルの大会場を確保している周到な用意に比べ、メディアへのリリースが当日の午後というアンバランス。そのことを広報に確認すると、「ホテルのバンケットは押さえてありましたが、今日の理事会で新監督が承認されなければ会見もありません。理事会の決定を受け、急きょ会見の案内を出した次第です」とのことだった。
▽すでにスポーツ紙の報道などから森保監督の誕生は規定路線かと思われたが、手順に則っての代表監督の選定。さすがの田嶋会長も、ハリルホジッチ監督を解任して西野監督を誕生させた剛腕から一転、JFAのルールに従って新監督の誕生に漕ぎつけたようだ。
▽そんな森保監督誕生で注目されたのが、東京五輪の監督と日本代表の監督を兼任するか否かだ。結論から言うと、東京五輪でのメダル獲得とカタールW杯への出場という二兎を追うことになった。森保監督自身「身体は一つしかない」ということで、これからフル代表と五輪代表のスタッフ選びに着手しつつ、田嶋会長から託された「世代交代と各年代間の融合」に着手することになる。
▽しかし日本人監督なら、ロシアW杯後に代表からの引退を表明した長谷部や本田らのように、代表チームの若返りは急務だし、各世代間の融合というリクエストにも“忖度”することができる。ここらあたり、人当たりのソフトな森保監督は適任者だろう。
▽今後はフル代表に五輪代表から選手を引き上げつつ、五輪代表にはアンダーカテゴリーから選手を抜擢して日本代表の若返りと、世代間の融合を図るプランを森保監督は明言した。ただし、懸念材料がないわけではない。
▽来月の14日からはインドネシアでアジア大会がスタートする。日本は東京五輪を見据えて21歳以下の代表で臨むが、もしも勝ち進めば3位決定戦と決勝は9月1日、その前の準決勝は8月29日だ。一方フル代表は9月7日と11日にチリとコスタリカと対戦する。恐らく8月31日のJ1リーグ終了後の9月1日に代表選手の招集がかかるが、アジア大会で勝ち進めば勝ち進むほど日程は重複する。
▽加えて海外組の乾と武藤は新天地に移り、香川にもトルコ行きの噂がある。移籍した選手はレギュラー獲得のためにテストマッチでは呼びにくいという事情もある。そして年明けにはUAEでのアジア杯が控えている。代表を取り巻くスケジュールは目白押しだ。いきなり難問に直面する森保ジャパンがどう乗り切れるのか。
▽過密スケジュールが予想される森保監督の船出は前途多難と思える。そして彼しか選択肢がなかったのではないかと疑りたくなり、日本サッカー界の人材不足が浮き彫りになった新監督誕生の一夜でもあった。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽ところがJFAに着いてみると広報が1枚のペーパーを配っている。そこには午後6時30分から都内のホテルで「SAMURAI BLUE(日本代表)新監督 就任記者会見のご案内」とあり、6時からは田嶋会長と関塚技術委員長による経緯説明を行うとあった。
▽すでにスポーツ紙の報道などから森保監督の誕生は規定路線かと思われたが、手順に則っての代表監督の選定。さすがの田嶋会長も、ハリルホジッチ監督を解任して西野監督を誕生させた剛腕から一転、JFAのルールに従って新監督の誕生に漕ぎつけたようだ。
▽そんな森保監督誕生で注目されたのが、東京五輪の監督と日本代表の監督を兼任するか否かだ。結論から言うと、東京五輪でのメダル獲得とカタールW杯への出場という二兎を追うことになった。森保監督自身「身体は一つしかない」ということで、これからフル代表と五輪代表のスタッフ選びに着手しつつ、田嶋会長から託された「世代交代と各年代間の融合」に着手することになる。
▽その意味では、日本人監督は適任だろう。なぜなら外国人監督は、育成よりも実績を残すことを優先させる傾向が強いからだ。ハリルホジッチ前監督は、その点若返りを狙ったものの結果として「コミュニケーション不足」を指摘されて解任された。本来なら西野技術委員長がフォローすべきだったが、監督就任後の記者会見でもわかるように「弁舌爽やかなタイプ」ではない。そこに両者の不幸があったと思う。
▽しかし日本人監督なら、ロシアW杯後に代表からの引退を表明した長谷部や本田らのように、代表チームの若返りは急務だし、各世代間の融合というリクエストにも“忖度”することができる。ここらあたり、人当たりのソフトな森保監督は適任者だろう。
▽今後はフル代表に五輪代表から選手を引き上げつつ、五輪代表にはアンダーカテゴリーから選手を抜擢して日本代表の若返りと、世代間の融合を図るプランを森保監督は明言した。ただし、懸念材料がないわけではない。
▽来月の14日からはインドネシアでアジア大会がスタートする。日本は東京五輪を見据えて21歳以下の代表で臨むが、もしも勝ち進めば3位決定戦と決勝は9月1日、その前の準決勝は8月29日だ。一方フル代表は9月7日と11日にチリとコスタリカと対戦する。恐らく8月31日のJ1リーグ終了後の9月1日に代表選手の招集がかかるが、アジア大会で勝ち進めば勝ち進むほど日程は重複する。
▽加えて海外組の乾と武藤は新天地に移り、香川にもトルコ行きの噂がある。移籍した選手はレギュラー獲得のためにテストマッチでは呼びにくいという事情もある。そして年明けにはUAEでのアジア杯が控えている。代表を取り巻くスケジュールは目白押しだ。いきなり難問に直面する森保ジャパンがどう乗り切れるのか。
▽過密スケジュールが予想される森保監督の船出は前途多難と思える。そして彼しか選択肢がなかったのではないかと疑りたくなり、日本サッカー界の人材不足が浮き彫りになった新監督誕生の一夜でもあった。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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