【六川亨の日本サッカー見聞録】期待したい3位決定戦2018.07.12 20:00 Thu

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▽6月14日に始まったロシアW杯も約1ヶ月が過ぎ、残すは14日の3位決定戦ベルギー対イングランド、15日の決勝戦フランス対クロアチアの2試合のみとなった。今大会は優勝候補のドイツがグループステージで敗退しただけでなく、ブラジルやアルゼンチン、ポルトガル、スペインといった強豪国が早々と姿を消した。

▽彼らは試合によって好不調の波があり、ラウンド16は日本対ベルギー、準々決勝はブラジル対ベルギー、スウェーデン対イングランドを現地取材したが、正直な感想は「負けたくない試合運び」のため、正直なところちょっと退屈な試合だった。

▽ところが準決勝のフランス対ベルギー、クロアチア対イングランドは2試合とも“勝ちに行く”サッカーだったため、「やっとW杯らしい」スリリングな試合を楽しむことができた。もともとW杯は決勝戦も含めて勝負にこだわるため、見せ場の少ない試合になることが多い。過去の大会でも名勝負と言われる試合は準決勝が多かった。

▽それを裏付けるようにフランス対ベルギー、クロアチア対イングランドは、互いにヨーロッパのリーグ戦でチームメイトだったり対戦相手だったりしたため手の内を知っているだけに、オープンな打ち合いとなる時間帯もあり大いに楽しめた。

▽さて3位決定戦である。ベルギーは86年メキシコ大会でエリック・ゲレツやヤン・クーレマンスらを擁して初のベスト4進出を果たしたものの、フランスとの3位決定戦では両チームとも戦力を落としたことで“退屈”な試合の結果4位に終わった。そこで初の3位という最高成績を残すためにも14日はベストメンバーで闘って欲しいものだ。

▽対するイングランドは下馬評こそそれほど高くはなかったものの、独特のシステムで躍進を続け、90年イタリア大会の4位以来28年ぶりの3位決定戦にコマを進めた。当時のメンバーにはベテランGKピーター・シルトンを始め、ゲリー・リネカー、クリス・ワドル、ピーター・ベアズリー、デイビッド・プラット、ポール・ガスコインら錚々たるメンバーが揃っていたが、ロベルト・バッジョとサルバドール・スキラッチのゴールによりイタリアに1-2で敗れた。

▽しかし今大会はスピードスターのラヒーム・スターリングや、現在6ゴールで得点王候補筆頭のハリー・ケインら“今が旬”な選手が多いだけに、好ゲームが期待される。なによりもイングランドは、試合中に手を抜いたプレーをしないし、シミュレーションで故意に倒れて反則を誘ったり、露骨な時間稼ぎをしたりしない。プレミアリーグのファン・サポーターがそれを許さない伝統がある。

▽クロアチア戦の後半19分のことだ。ペナルティーエリア右でドリブル突破を仕掛けたスターリングは足を引っかけられて倒れたものの、PKをアピールすることなく倒れたままで折り返しのクロスを送ろうとした。これはGKスバシッチにカットされたが、彼のプレー1つをとっても“ジョンブル魂”を垣間見た気がした。

▽残念ながら彼らが歌う「ゴッド・セーブ・ザ・クイーン」のアンセムも、「フットボール・イズ・カミング・ホーム」(フットボールが母国に帰ってくる=優勝トロフィーが母国のものになる)も実現しなかった。

▽しかしイングランドのサポーターが野太い声でスタジアムを揺るがす雰囲気は、やはりひと味も二味も違う。ゴール裏に掲げられたサポーターの国旗には必ず自分の愛するクラブの名前が入っているのもイングランドならではだ。「自分はここにいるよ」というメッセージであり、「1人でも戦いに来た」という意思表示でもある(どちらかというとマイナーなクラブのサポーターの方が多い)。

▽そんな彼らの声援を受けることが予想されるだけに、今大会の3位決定戦は好勝負が期待できるのではないだろうか。そんな思いを抱いてサンクトペテルブルクに行くことにした。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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女性への不適切行為にJFAは素早い対応/六川亨の日本サッカー見聞録

▽今週水曜の7日、JFA(日本サッカー協会)はキリンチャレンジ杯で16日にベネズエ、20日にキルギスと対戦する日本代表23名を発表した。招集メンバーは10月のウルグアイ戦とほぼ同じで、試合中に胸部をボールが痛打し肺気腫となった長友佑都、J1リーグの試合中に相手選手の肘が顔面を強打し眼底骨折した小林悠がメンバーから外れた。 ▽代わりに招集されたのが、レフティーの左サイドバック山中亮輔(横浜FM)と、屈強なフィジカルから対人プレーに強さを発揮する鈴木優磨(鹿島)の2人だった。山中は25歳、鈴木は22歳と、選手として脂の乗り切った年代での選出だけに、どんなプレーを見せてくれるか楽しみである。 ▽そして今回の招集で明らかになったことがある。森保監督は海外組といえども試合に出ていない選手、今回では香川真司、武藤嘉紀、岡崎慎司らロシアW杯組のベテランを招集しないということだ。トップ下の候補が南野拓実しかいないことに不安を覚えるが、アジアカップは今回のメンバーが中心となって臨むことは間違いないだろう。 ▽当日は11月11日から21日にかけて、UAEで開催されるドバイカップU-21日本代表のメンバーも発表された。こちらはU-21世代の板倉滉(仙台)、小川航基(磐田)と、U-19世代の橋岡大樹(浦和)、田川亨介(鳥栖)に加え、U-17世代の久保建英(横浜FM)と3世代の混成チームだ。 ▽そしてA代表の横内昭展コーチがU-21代表の監督代行を務め、逆にA代表のコーチにU-19コーチの秋葉忠宏、U-16コーチの齋藤俊秀を起用したのは、森保監督がテーマに掲げる世代間の融合を意図してのことだろう。こうした試みは初めてのことなので、どのような成果と弊害が出てくるのか興味深い。 ▽さて、翌8日はJFAの定例理事会が開催され、先月31日に女性職員にハグなどの不適切な行為でリトルなでしこ(U-17日本女子代表)の監督を辞任した楠瀬直木監督に代わり、監督代行を務めていた池田太氏の正式な監督就任を承認した。 ▽あわせて監督責任として田嶋幸三会長、須原清貴専務理事、女子委員会の今井純子委員長、手塚貴子副委員長が役員報酬の10パーセントを3か月間、自主返納することを決めた。 ▽楠木氏の辞任はすでに11月1日で報道されていたが、最初は「強敵に勝ったり、W杯出場を決めたりしたら、思わず近くにいたら女性でもハグしてしまうだろう」と、ちょっと厳しい対応だなと思った。しかし詳細を聞くと、出張先の勤務時間中だったり、JFAハウス内での会議後だったりと、ハグする必要のない場面で同じ女性にハグしたという。 ▽これでは「お疲れ様という意味だった」という言い訳は通用しない。今回は不快に感じた女性職員が上司に相談したことで明らかになり、JFAの対応も素早かった。ここ1年、体操女子や柔道女子ではパワハラが明るみに出たり、8月のアジア大会ではバスケットボール選手の回春行為が明らかになったりした。 ▽バスケットボールの選手がわざわざ「JAPAN」のロゴが入った公式ウェアを着て繁華街に繰り出したことを不審に思うかもしれないが、アジアで開催される大会では「JAPAN」のロゴが入っていればアスリートだとすぐに分かるため、モテるのだ。そうした伝統を彼らは受け継いだのだと推測できる。 ▽そうした意味で、今回のJFAの対応は賞賛していい。他競技の不祥事を「他山の石」としたのだろう。被害女性は、最初の1回くらいはガマンしたのかもしれない。しかし2度目となると確信犯である。もしかしたら楠木氏も1回目のハグで何も抗議されなかったので、自分に好意を抱いていると勘違いしたのかもしれない。一般社会でもよくありそうな事例だが、スポーツ界に携わる関係者は、諺にも「李下に冠を正さず」とあるように、疑われる行為は慎むべきである。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.11.10 12:00 Sat
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レフェリーブリーフィング/六川亨の日本サッカー見聞録

▽11月1日、今年で第5回となるメディアを対象にしたレフェリーブリーフィングがJFAハウスで開催された。8月21日以来の開催となったが、この間にJクラブと審判委員会の意見交換会(レフェリーのジャッジの正当性をVTRでお互いに確認)は270試合ほどで、そのうち30%はレフェリーの判定が間違っていることが確認されたと、元国際主審の上川氏が報告した。 ▽今回のレフェリーブリーフィングではPK、オフサイド、ハンドリング、FKマネジメント、その他の5項目でVTRの映像をリプレイしながら解説した。ルヴァン杯の決勝、湘南vs横浜FMでは後半34分に湘南のペナルティーエリア内で松田がトラップミス。これをユン・イルロクが奪って突進しようとしたところ、松田の足が引っ掛かってユン・イルロクは倒れた。 ▽木村主審はノーホイッスルだったため、横浜Mの選手は主審を取り囲んで抗議。試合後のポステコグルー監督もPKだったと主張した。上川氏の解説によると、「18番の選手は振り向いただけにも見える。接触はあったが、倒れるほどのファウルか?」と疑問を呈し、木村主審のジャッジは正当だったことを認めた。 ▽難しかったのが、10月20日に行われた第30節の浦和vs鹿島(3-1で浦和の勝利)のプレーだ。鹿島の土居がペナルティーエリア右で浮き球のパスを受けて突進。それを後ろからマークする浦和の長澤が押し倒した。荒木主審はノーホイッスルだったが、長澤は土居に身体を入れられたため押しているが、土居も左手で背後の長澤のユニホームを引っ張っているように見える。 ▽「長澤と土居のプレーは、どちらのファウルか五分五分」と上川氏は語り、「例えVARでプレーを確認したとしても、どちらの反則か判断は難しい」とした上で、「サッカーの判定にはグレーな部分もある」と荒木主審のジャッジを支持した。 ▽こうしたグレーな判定は、もしもVARが導入されたら、最終的には「レフェリーの判断に任せる」(上川氏)しかないそうだ。 ▽J2千葉の試合では、明らかに主審は千葉の選手が手を高く上げてハンドした反則を見逃した。これについては、「他の選手同士が接触プレーの可能性があったため、レフェリーはそちらのプレーに注意が向いていた」(上川氏)ので、ハンドではなくクリアと思い、CKの判断を下したケースも紹介した。 ▽マラドーナの「神の手ゴール」ではないが、どんなに最新の機器が導入されたとしても、最終的にはレフェリーのジャッジが優先される。将来的にFIFA(国際サッカー連盟)はAIの導入も検討しているそうだが、やはりサッカーは人間味がないと味気ない。 ▽この意見交換会は、全てのJクラブが申し込んできているわけではなく、多いクラブと少ないクラブでばらつきがあるそうだ。具体的なクラブ名は明かさなかったが、これもまた各クラブの色が出ていると言えるのではないだろうか。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.11.02 13:30 Fri
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あまりに変則日程の今年の天皇杯/六川亨の日本サッカー見聞録

▽昨夜は韓国・水原で熱い戦いがあった。ACLの準決勝に進出している鹿島が第2戦を敵地で戦った。ホームの第1戦は水原に2点を先行されながら、後半の猛反撃からアディショナルタイムに内田篤人が決勝点を奪い3-2の大逆転勝利。このため敵地での第2戦はドロー以上で決勝戦に進出できる。 ▽しかし1点を先取しながら後半立て続けの失点で1-3と逆転を許す。ところが、ここから鹿島の反撃が始まった。まず後半19分に西大伍が、37分にはセルジーニョがゴールを決めて3-3の同点に追いつく。試合はこのまま終了し、鹿島が1勝1分けで水原を下して初の決勝戦進出を果たした。 ▽決勝戦は11月3日と10日で、対戦相手はイランのペルセポリス。第1戦は鹿島のホームだけに、まずはしっかり勝点3を手にしてアウェーに臨みたいものだ。 ▽といったところで本題に入ろう。「やはり無理なのかな」と思ったのが天皇杯である。チームのファン・サポーターでなければ、昨夜、天皇杯の準々決勝3試合が行われたことを知っているサッカーファンはどれだけいただろうか。かろうじてNHK-BS1で川崎F対山形戦が中継されたため、新聞の番組欄を見て気づいたファンもいたかもしれない。そんなレベルではないだろうか。 ▽観衆は、川崎F対山形戦が5356人、浦和対鳥栖戦が7867人、そして磐田対仙台戦が4068人だった。平日・水曜のナイターと言ってしまえばそれまでだが、なんとも寂しい数字である。 ▽そもそもの原因は、例年1月1日に決勝戦を行ってきた同大会が、来年は1月にUAEでアジア杯が開催される。このため大会そのものを前倒しして、1回戦を5月26、27日の土日曜にスタート。しかしJ1、J2勢の登場する2回戦から準々決勝までは水曜に試合が組まれた。 ▽元々今年はW杯イヤーのためJ1リーグは過密日程だ。さらに大雨の影響で中止となった試合があり、それのリスケジュールでJリーグも苦労した。加えて鹿島がACLで勝ち進むことによって、3回戦以降の日程は変則の繰り返しだった。 ▽そして、現在のところ準決勝(仙台対山形、浦和対鹿島と甲府の勝者)は12月16日(日)、決勝は12月24日(祝日)の予定だが、鹿島がACL決勝(11月3日と10日)で優勝し、なおかつ11月21日の天皇杯準々決勝の甲府戦で勝った場合は、準決勝を12月5日(水)、決勝を9日(日)に前倒しする。 ▽その理由は、12月12日からUAEで開催されるFIFAクラブW杯に鹿島が出場するからだ。そうしたメールがJFA(日本サッカー協会)から届いたのは昨夜の21時過ぎ。リリースを読んだから変更の可能性を理解できたが、一般のファン・サポーターにはどこまで認知されているのだろう。 ▽たび重なる日程の変更には、それなりの理由があるので理解できる。日程を調整している担当者も苦労したことだろう。だからこそ、JFAはテレビなどで天皇杯の試合があることを、数日前から告知する努力をするべきではないだろうか。 ▽DAZNは民放でJリーグの宣伝をしている。NHKが民放にコマーシャルを出すことはないだろうから、ここはやはりJFAが天皇杯の露出アップに努めるべきだ。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.10.25 13:30 Thu
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Jに波乱が少ない原因は?/六川亨の日本サッカーの歩み

▽先週末の日本サッカーは話題の多い一週間だった。まずインドネシアで開催されているU-19アジア選手権で、U-19日本代表はU-19北朝鮮に5-2と圧勝した。前半2点のリードも追いつかれる嫌な展開だったが、後半に入り久保建英が鮮やかな直接FKを決めて勝ち越すと、相手が疲れた終盤にも2点を加えて突き放した。 ▽先制点も久保の中央からのドリブル突破で生まれている。よくメッシと例えられるが、右サイドだけでなく、どこからでも攻撃を仕掛けられる久保のプレーはマラドーナに近いかもしれない。今日はタイと対戦するが、この試合に勝てば準々決勝進出が決まる。関塚技術委員長が「最強世代」と断言するチームだけに、来夏にポーランドで開催されるU-20W杯の出場権を是非とも獲得して欲しいところだ。 ▽オーストラリアでは、メルボルン・VでオーストラリアAリーグのデビューを飾った本田圭佑がヘッドで先制点を奪った。試合はメルボルン・Cに1-2と逆転負けを喫したが、現地での注目度は今後も高まることだろう。練習場は公園のようなところのためオープンなので、日本人ファンも大勢詰めかけてサインをもらっている映像を見た。 ▽さて国内に目を移すと、首位の川崎F(勝点60)が神戸に前半3点を奪われながら、後半の猛攻で5-3と逆転勝利を収めた。同日行われた広島対清水戦は広島が0-2で敗れたため、2位広島(勝点56)との勝点差は4。広島は1引き分けをはさんで4敗と失速気味のため、川崎Fがこのまま突っ走り、連覇を達成する可能性が高いのではないだろうか。 ▽混沌としているのが残留争いとACLの出場権を獲得できる3位争いだ。前節まで3位だった鹿島(勝点46)が浦和(勝点45)に1-3で敗れたため4位に転落。代わって3位に浮上したFC東京(勝点46)もC大阪(勝点44)に0-1で敗れ、3位に浮上も足踏み状態が続いている。 ▽第30節終了現在で、3位のFC東京から8位の清水(勝点43。4位鹿島46、5位浦和45、6位札幌45、7位C大阪44)まで6チームの勝点差は3しかないため、こちらは最終節まで激しいバトルが繰り広げられることだろう(札幌とC大阪、磐田は1試合、名古屋は2試合未消化)。 ▽かつてコラムで、スペインやドイツ、イタリア、イングランドら欧州のトップリーグは、毎年同じようなチームが優勝争いをして、ビッグクラブが下位チームに負けるジャイアントキリングは起こりにくいと書いた記憶がある。対するJリーグは、今シーズンも第12節で川崎Fは11位の浦和に負けたり、第25節では17位のG大阪に敗れたりした。 ▽こうした波乱の理由をFC東京の長谷川健太監督に聞いたことがある。すると長谷川監督は「まずJリーグは外国籍選手を3~4人しか使えませんが、ヨーロッパのトップリーグの外国人枠は実質無制限のようなものです。このため資金力のあるチームは優秀な外国籍選手をかき集めることができます」とビッグクラブが財政的なアドバンテージを生かしていることが圧倒的な戦力差につながっていると指摘。 ▽そして続けて「Jリーグは外国籍選手に加え、アジア枠で韓国やオーストラリア、タイなどの選手を獲得できますが、あとは日本人選手のクオリティーが勝負のカギを握ります。いまの順位がそれを反映しているのではないでしょうか。ただし、日本人選手のレベルにそう差はありません。日本代表や元代表といったいい選手は首都圏のビッグクラブにいる。そうなると外国籍選手の当たり外れ、チームにハマるかどうかで違ってくる。J1リーグも上位の顔ぶれ、下位の顔ぶれは毎年ほとんど変りません」とJ1の現状を分析した。 ▽確かに川崎Fは、今シーズン目玉となる補強は齋藤学だけ。それも故障で出遅れたが、それでも小林悠、大島僚太、車屋紳太郎、中村憲剛、大久保嘉人、家長昭博ら代表クラスの選手を揃え、円熟したパス主体のサッカーで勝点を積み重ねてきた。 ▽2位の広島は得点ランク首位タイのパトリックが牽引し、3位のFC東京は序盤戦でディエゴオリヴェイラが爆発するなど、外国籍選手がフィットした結果、優勝争いを演じることができた。終盤戦は対戦相手も外国人対策を講じた結果、両チームとも勝点を伸ばせないでいる。 ▽今週はルヴァン杯決勝のためJ1リーグは休みとなるが、ラスト4試合、どんなドラマが待っているのか楽しみだ。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.10.22 18:30 Mon
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南米勢がヨーロッパ化?/六川亨の日本サッカー見聞録

▽10月16日のキリンチャレンジ杯で日本はウルグアイを4-3で下した。前線の南野、中島、堂安らが躍動し、常に先手を奪う余裕の試合運びを見せた。3失点のうち2点目と3点目はいただけないが、ウルグアイのカウンターにもしっかりと対処し、森保監督の掲げる「全員攻撃、全員守備」での快勝だった。 ▽ドリブルで翻弄した中島のプレーを堪能したファンも多いだろうし、堂安のカットインからワンツーでのゴール、そして南野の神出鬼没な動きなど、これまで長らく代表を支えた本田、香川、岡崎らビッグ3の不在を補ってあまりある活躍だった。 ▽ただ、ウルグアイには正直物足りなさを感じた。スアレスこそ来日しなかったが、カバニ(パリSG)、ゴディン(A・マドリー)らロシアW杯のメンバー7人がスタメン出場するなど、ほぼベストメンバーに近い。タバレス監督は長旅の疲れや時差ボケを敗因にすることなく、素直に「勝利にふさわしいチーム。明確なチームができあがっている」と敗戦を受け入れていた。 ▽なぜ物足りなさを感じたのか。これまで日本は南米勢との対戦を苦手にしてきた。その理由の一因は「個の力」で強引に守備網を破られ失点してきたからだ。数的優位な状況にありながら、強引なドリブル突破や意表を突いたミドルシュートなど、想定外のプレーに苦しめられてきた。 ▽しかし今回来日したウルグアイには、「個の力」で突破を試みる選手は皆無だった。ボールを持ちすぎることなく、ていねいにパスをつないで攻撃を組み立てるスタイルは、南米というよりヨーロッパのサッカーに近かった。 ▽そして「こんな選手がいたの?」と、無名でも驚くようなプレーをする選手が、かつての南米勢にはいた。 ▽時代は変わり、インターネットやYouTuberの普及などで情報網が発達し、もはやダイヤの原石のようなサプライズを起こす選手は世界的にいなくなった。久保建英のように小学生の頃から海外のビッグクラブのリサーチによって、才能豊かな若手選手が発掘される時代でもある。 ▽と同時に、これは推測ではあるが、南米勢の主力選手のほとんどがヨーロッパのリーグでプレーすることで、代表チームのプレースタイルも次第にヨーロッパ化しているのではないだろうか。 ▽かつて1970年のメキシコW杯でブラジルは3度目の優勝を達成した。しかし4年後の西ドイツW杯では2次リーグでクライフ率いるオランダに完敗した。そこで78年のアルゼンチンW杯でコウチーニョ監督は、フィジカル重視のサッカーをブラジルに採用。するとファンやサポーターから猛反発を食らった。個人技を重視した華麗なサッカーがブラジルのスタイルだからだ。 ▽ブラジルは94年のアメリカW杯で34年ぶりに世界一になったが、ロマ-リオとべべ-トら2トップによるカウンター・スタイルに、ブラジル国民は82年スペインW杯でジーコらが見せたプレーこそセレソンだと懐かしんだ。 ▽そんなブラジルがW杯で4大会連続して決勝進出を逃した。ロシアW杯ではベスト8で敗退している。メッシを擁するアルゼンチンもロシアW杯ではベスト16で敗退した。もしも南米が南米でなくなっているとしたら、それはそれで寂しいことでもある。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.10.18 18:10 Thu
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