【六川亨の日本サッカーの歩み】ポーランド戦のパス回しとロシアの勝利
2018.07.02 21:30 Mon
▽この原稿を書いているのは7月1日の午後20時近く。モスクワからロストフへの寝台列車の中だ。今日17時から始まったラウンド16のロシア対スペインは、ロシア人サポーターがiPadで観戦中だったので、客室にお邪魔して一緒に見させてもらった(ビールも奢ってくれた)。
▽FKからOGでスペインに先制を許すと、「仕方ない」といった表情で口数が少なくなる。彼らにしても、グループステージを通過すればスペインかポルトガルが待ち受けていただけに、あまり多くを期待していなかったのかもしれない。
▽さて本題である。日本対ポーランド戦の後半40分過ぎからの日本のパス回し。0-1で負けているにもかかわらず、2位セネガルがコロンビアにリードを許したため3位に転落し、日本が2位に浮上したから西野監督も指示したのだが、これについて賛否両論が出た。
▽それはそれで健全な証拠だと思う。グループステージ最終戦で前回優勝国のドイツを倒した韓国からすれば、溜飲を下げつつもグループステージで敗退しただけに、ベスト16に進んだライバル日本に対し「潔くない」と批判の意見が出るのは十分に予想できた。
▽他にも世界各国から賛否両論の意見が出た。例えば、大会のレギュレーションに従えば2位以内に入るのがグループステージの戦い方であり、日本が批判されるのは見当違いだという好意的な意見もあれば、W杯と日本の価値を貶める行為と非難する声もあった。
▽6人のメンバーを入れ替えた理由を西野監督は主力の疲労によるものと説明した。それは理解できる。しかし、宇佐美貴史は攻守とも貢献したシーンは皆無に近い。なぜ西野監督が選んだのか不思議でもある。酒井高徳は必死に酒井宏樹に攻撃のスペースを作ろうとしたが、慣れないポジションのためか効果はなかった。槙野智章はやはり守備に不安があり、すぐに手を使う癖は抜けていない。
▽西野監督は負傷の岡崎慎司に代え大迫勇也、宇佐美に代え乾貴士を投入した。残り1枚のカードは守備固めに長谷部誠を使ったが、例え香川真司か本田圭佑を起用しても、あのメンバーではゴールの匂いがまったく感じられなかった。
▽裏返せば、日本の選手層はかなり薄いことをポーランド戦では露呈した。だから、「あのメンバー」では1点のビハインドでもボールを回すしかなく、セネガルの失点と、ポーランドの消極的な試合運びという二重の幸運も日本に味方した。
▽もしも、日本がドローを目指して攻撃に出る、あるいはブーイングに怖じ気づいてロングキックに逃げる――実際、コロンビア戦やセネガル戦ではそうした時間帯もあったが――ことこそ恐れた。
▽なぜなら日本は、過去にW杯出場まであと数十秒と迫りながらカウンターを食らい、アディショナルタイム(当時はロスタイム)にCKから同点ゴールを許してW杯初出場を逃した苦い経験があるからだ。こうした過去を踏まえて、今回のポーランド戦の日本のプレーを解説した欧州や南米のメディアはない。そこまでは知る由もないだろうから、気にする必要もない。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽FKからOGでスペインに先制を許すと、「仕方ない」といった表情で口数が少なくなる。彼らにしても、グループステージを通過すればスペインかポルトガルが待ち受けていただけに、あまり多くを期待していなかったのかもしれない。
▽それはそれで健全な証拠だと思う。グループステージ最終戦で前回優勝国のドイツを倒した韓国からすれば、溜飲を下げつつもグループステージで敗退しただけに、ベスト16に進んだライバル日本に対し「潔くない」と批判の意見が出るのは十分に予想できた。
▽他にも世界各国から賛否両論の意見が出た。例えば、大会のレギュレーションに従えば2位以内に入るのがグループステージの戦い方であり、日本が批判されるのは見当違いだという好意的な意見もあれば、W杯と日本の価値を貶める行為と非難する声もあった。
▽個人的には、どちらも当てはまらないと思う。なぜなら、あのメンバーではポーランドからゴールを奪うことは不可能と思えたからだ。セネガルの失点は僥倖のようなもの。西野監督としては残り時間を耐えて、あとは運を天に任せるしか選択肢はなかっただろう。
▽6人のメンバーを入れ替えた理由を西野監督は主力の疲労によるものと説明した。それは理解できる。しかし、宇佐美貴史は攻守とも貢献したシーンは皆無に近い。なぜ西野監督が選んだのか不思議でもある。酒井高徳は必死に酒井宏樹に攻撃のスペースを作ろうとしたが、慣れないポジションのためか効果はなかった。槙野智章はやはり守備に不安があり、すぐに手を使う癖は抜けていない。
▽西野監督は負傷の岡崎慎司に代え大迫勇也、宇佐美に代え乾貴士を投入した。残り1枚のカードは守備固めに長谷部誠を使ったが、例え香川真司か本田圭佑を起用しても、あのメンバーではゴールの匂いがまったく感じられなかった。
▽裏返せば、日本の選手層はかなり薄いことをポーランド戦では露呈した。だから、「あのメンバー」では1点のビハインドでもボールを回すしかなく、セネガルの失点と、ポーランドの消極的な試合運びという二重の幸運も日本に味方した。
▽もしも、日本がドローを目指して攻撃に出る、あるいはブーイングに怖じ気づいてロングキックに逃げる――実際、コロンビア戦やセネガル戦ではそうした時間帯もあったが――ことこそ恐れた。
▽なぜなら日本は、過去にW杯出場まであと数十秒と迫りながらカウンターを食らい、アディショナルタイム(当時はロスタイム)にCKから同点ゴールを許してW杯初出場を逃した苦い経験があるからだ。こうした過去を踏まえて、今回のポーランド戦の日本のプレーを解説した欧州や南米のメディアはない。そこまでは知る由もないだろうから、気にする必要もない。
(C)Toru Rokukawa
▽といったところで、通路から歓声が上がり、大騒ぎしているようだ。通路に出てみると、ロシア人サポーターが重なり合うように、iPadのある客車に群がっている。どうやらロシアがスペインを下したようだ(1-1の延長からPK戦を4-3で下す)。ホストカントリーが勝ち上がれば、それだけ大会も盛り上がるので、今後の快進撃を期待したい。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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