【編集部コラム】チームになれないアルゼンチン、不安要素が本大会で露呈
2018.06.22 15:00 Fri
▽世界最高のプレーヤーの1人であるFWリオネル・メッシを擁するアルゼンチン代表。4年前の前回大会で準優勝に終わり、雪辱を晴らすために臨んだ今大会だが、グループステージでの敗退危機が迫っている。
▽メッシにとっても最後のワールドカップとなる可能性が高い今大会。優勝候補にも挙げられていたアルゼンチンの低迷はどこに要因があるのだろうか。
◆チームになれないアルゼンチン
▽メッシはリーガエスパニョーラで33ゴール、アグエロはプレミアリーグで21ゴール、イグアインはセリエAで16ゴール、ディバラは同じくセリエAで22ゴールを記録。FW4人のリーグ戦でのゴール数を合計すると、92ゴールを記録しているが、アルゼンチン代表としてはここまで機能していない。初戦のアイスランド代表戦は、1トップにアグエロ、トップ下にメッシを配置。2戦目となったクロアチア代表戦は、3トップの中央にアグエロ、右にメッシを配置していた。
▽初戦のアイスランド代表戦は、FWセルヒオ・アグエロのゴールで先制するも、FWアルフレッド・フィンボガソンにゴールを許して同点に。その後はボールを握る展開が続いたが、崩すには至らなかった。メッシに対しての警戒心はアイスランドも高く、常に2人以上で見る状況に。メッシにボールが入ると、すぐさま距離を詰めてボールを奪いに来ていた。
▽チームとしての完成度の低さは南米予選から続いており、ワールドカップ出場すら危うかったアルゼンチン。予選ではチームを窮地から救ったメッシが、本大会でも力を発揮できるのかがカギとなるだろう。
◆絶対的ではなくなった中盤の仕事人
▽エルネスト・バルベルデ監督からの信頼を得られなくなった様に、かつてのマスチェラーノの姿は薄れつつある。4年前、準決勝のオランダ戦では、獅子奮迅の活躍でチームを決勝に導いた。ボールホルダーへの寄せや危機察知能力の高さを見せつけ、マン・オブ・ザ・マッチ級の活躍を見せていた。
▽今大会も守備面で持ち味を発揮しているが、4年前ほどの迫力も無い。また、攻撃面で前線を後方から支援する動きは少なく、ボールを保持している時間でも、攻撃的なプレーはできていない。もちろん、そこを求められる選手ではないが、今のアルゼンチンの戦い方に置いては、流れを寸断してしまう可能性もある。4年前はチームでも突出した存在だったが、ここまではその力を見せては居ない。
◆信頼し切れない守護神
▽強豪国の中でも、とりわけ守護神にワールドクラスの選手が居ないことが悩みの種となっていたアルゼンチン代表。破壊力抜群の攻撃陣とは裏腹に、GK受難は続いている。代わりにゴールを守るのは36歳のベテランGKウィルフレッド・カバジェロだ。現在はチェルシーに所属し、かつてはボカ・ジュニアーズやマラガ、マンチェスター・シティなどにも所属していた。
▽クラブレベルでの経験はあるカバジェロだが、アルゼンチン代表キャップはわずかに「5」。初出場は、今年3月のイタリア代表との国際親善試合だった。アルゼンチン代表として招集外になることも多かったカバジェロだが、急きょ正守護神となり、ワールドカップデビューもアイスランド戦で果たした。しかし、いくらベテランといえども、不安定さは拭えなかった。
▽アイスランド戦では、後方からのビルドアップに参加した際にミスキックから決定機を与える事態に。ここは難を逃れたが、フィンボガソンのゴールに繋がる流れでも、プレーの不安定さを露呈。クロスへの対応などには終始不安が残った。
▽そして迎えたクロアチア戦。FWアンテ・レビッチの先制点のシーンは、明らかなミスだった。ゴールレスで迎えた後半、ここからという時にバックパスを受けると、チップキックで味方にパスを出そうとしてミス。短くなったボールを、レビッチにダイレクトボレーで叩き込まれた。
▽今大会はGKが良くも悪くもフィーチャーされている大会。名手がらしくないミスを犯したりもしているが、アルゼンチンとしては悩みどころだろう。
◆サンパオリのチームコントロール
▽2017年にアルゼンチン代表監督に就任。しかし、南米予選でも苦戦が続き、チームとしての完成形を見つけられないまま時間が経過。ワールドカップ出場を決めても、チームの完成度は上がっていなかった。
▽絶対的なエースであるメッシを軸に攻撃を組み立てたい意図は見られるが、周りの選手のコントロールや組み合わせに確固たるものがなく、メッシ個人に依存する形から抜け出すことができなかった。この2試合を見ても、メッシ、アグエロ、MFマクシミリアーノ・メサの3人以外は、前線の組み合わせを変えている。「チームが彼に合っていない」とクロアチア戦後に語った様に、現段階でも模索している状況だ。
▽「ディバラとメッシの共存は不可能」という発言も以前はしていたが、能力の高い選手が揃っているだけに、化学反応が起こり得る可能性はある。チリ代表のようなチーム作りは不可能だが、絶対に勝たなくてはいけないナイジェリア代表との第3戦では、思い切った決断も必要となるはずだ。名将がここぞで打つ手に、アルゼンチンの命運は託されている。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
▽メッシにとっても最後のワールドカップとなる可能性が高い今大会。優勝候補にも挙げられていたアルゼンチンの低迷はどこに要因があるのだろうか。
Getty Images
▽2試合で1得点、4失点。アルゼンチンの守備がトップレベルで高いとは言えないが、攻撃力は世界でもトップクラスだ。前線の陣容を見ても、メッシを筆頭に、FWセルヒオ・アグエロ、FWゴンサロ・イグアイン、FWパウロ・ディバラと各クラブでエースとして活躍する選手たちが揃っている。▽メッシはリーガエスパニョーラで33ゴール、アグエロはプレミアリーグで21ゴール、イグアインはセリエAで16ゴール、ディバラは同じくセリエAで22ゴールを記録。FW4人のリーグ戦でのゴール数を合計すると、92ゴールを記録しているが、アルゼンチン代表としてはここまで機能していない。初戦のアイスランド代表戦は、1トップにアグエロ、トップ下にメッシを配置。2戦目となったクロアチア代表戦は、3トップの中央にアグエロ、右にメッシを配置していた。
▽初戦のアイスランド代表戦は、FWセルヒオ・アグエロのゴールで先制するも、FWアルフレッド・フィンボガソンにゴールを許して同点に。その後はボールを握る展開が続いたが、崩すには至らなかった。メッシに対しての警戒心はアイスランドも高く、常に2人以上で見る状況に。メッシにボールが入ると、すぐさま距離を詰めてボールを奪いに来ていた。
▽クロアチア戦は、アイスランド戦ほどではなかったものの、今度は連携面の悪さを見せた。システム、選手を初戦からイジったものの、攻撃はアグエロ、メッシへの依存が高く、クロアチアは2人を抑える守備に。良い形でボールに絡むことなく、決定機もそれほど作れずに0-3で敗れた。
▽チームとしての完成度の低さは南米予選から続いており、ワールドカップ出場すら危うかったアルゼンチン。予選ではチームを窮地から救ったメッシが、本大会でも力を発揮できるのかがカギとなるだろう。
◆絶対的ではなくなった中盤の仕事人
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▽さらに、守備面でも4年前とは異なる部分がある。それは、MFハビエル・マスチェラーノの働きだ。34歳となったマスチェラーノは、長年主軸としてプレーしたバルセロナを冬に退団。中国の河北華夏へと活躍の場を移した。▽エルネスト・バルベルデ監督からの信頼を得られなくなった様に、かつてのマスチェラーノの姿は薄れつつある。4年前、準決勝のオランダ戦では、獅子奮迅の活躍でチームを決勝に導いた。ボールホルダーへの寄せや危機察知能力の高さを見せつけ、マン・オブ・ザ・マッチ級の活躍を見せていた。
▽今大会も守備面で持ち味を発揮しているが、4年前ほどの迫力も無い。また、攻撃面で前線を後方から支援する動きは少なく、ボールを保持している時間でも、攻撃的なプレーはできていない。もちろん、そこを求められる選手ではないが、今のアルゼンチンの戦い方に置いては、流れを寸断してしまう可能性もある。4年前はチームでも突出した存在だったが、ここまではその力を見せては居ない。
◆信頼し切れない守護神
Getty Images
▽そして大きな問題点の1には、チームを最後尾で支えるはずの守護神の存在もある。今大会直前に、正守護神だったGKセルヒオ・ロメロが負傷。メンバー外になる緊急事態が起きてしまった。▽強豪国の中でも、とりわけ守護神にワールドクラスの選手が居ないことが悩みの種となっていたアルゼンチン代表。破壊力抜群の攻撃陣とは裏腹に、GK受難は続いている。代わりにゴールを守るのは36歳のベテランGKウィルフレッド・カバジェロだ。現在はチェルシーに所属し、かつてはボカ・ジュニアーズやマラガ、マンチェスター・シティなどにも所属していた。
▽クラブレベルでの経験はあるカバジェロだが、アルゼンチン代表キャップはわずかに「5」。初出場は、今年3月のイタリア代表との国際親善試合だった。アルゼンチン代表として招集外になることも多かったカバジェロだが、急きょ正守護神となり、ワールドカップデビューもアイスランド戦で果たした。しかし、いくらベテランといえども、不安定さは拭えなかった。
▽アイスランド戦では、後方からのビルドアップに参加した際にミスキックから決定機を与える事態に。ここは難を逃れたが、フィンボガソンのゴールに繋がる流れでも、プレーの不安定さを露呈。クロスへの対応などには終始不安が残った。
▽そして迎えたクロアチア戦。FWアンテ・レビッチの先制点のシーンは、明らかなミスだった。ゴールレスで迎えた後半、ここからという時にバックパスを受けると、チップキックで味方にパスを出そうとしてミス。短くなったボールを、レビッチにダイレクトボレーで叩き込まれた。
▽今大会はGKが良くも悪くもフィーチャーされている大会。名手がらしくないミスを犯したりもしているが、アルゼンチンとしては悩みどころだろう。
◆サンパオリのチームコントロール
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▽南米屈指の名将として知られるホルヘ・サンパオリ監督だが、アルゼンチン代表をコントロールすることはここまでできていない。チリ代表ではコパ・アメリカを連覇するなど、輝かしい成績を残し、強豪揃いの南米においても特色を持ったチームを作り上げた。▽2017年にアルゼンチン代表監督に就任。しかし、南米予選でも苦戦が続き、チームとしての完成形を見つけられないまま時間が経過。ワールドカップ出場を決めても、チームの完成度は上がっていなかった。
▽絶対的なエースであるメッシを軸に攻撃を組み立てたい意図は見られるが、周りの選手のコントロールや組み合わせに確固たるものがなく、メッシ個人に依存する形から抜け出すことができなかった。この2試合を見ても、メッシ、アグエロ、MFマクシミリアーノ・メサの3人以外は、前線の組み合わせを変えている。「チームが彼に合っていない」とクロアチア戦後に語った様に、現段階でも模索している状況だ。
▽「ディバラとメッシの共存は不可能」という発言も以前はしていたが、能力の高い選手が揃っているだけに、化学反応が起こり得る可能性はある。チリ代表のようなチーム作りは不可能だが、絶対に勝たなくてはいけないナイジェリア代表との第3戦では、思い切った決断も必要となるはずだ。名将がここぞで打つ手に、アルゼンチンの命運は託されている。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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