【原ゆみこのマドリッド】リーガが終わった…
2018.05.22 12:50 Tue
▽「吉兆明暗分けたわね」そんな風に私が呟いていたのは月曜日、スペイン代表W杯向け最終メンバーを聞いた時のことでした。というのもロペテギ監督が最後に告げた名前はジエゴ・コスタで、モラタが選に漏れたからですが、実は去年の夏、コンテ監督に見限られ、前者がアトレティコに復帰したのと入れ替わりにレアル・マドリーからチェルシーに移籍したのが後者。まさか、BBC(ベイル、ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドの頭文字)の控えでいるより、プレーする可能性があるだろうと踏んで河岸を変えた彼が48試合15得点でも呼んでもらえないとは!
▽いえ、シーズン中は背中を痛めていた時期もあったとかで、チェルシーで主力になれなかったのは当人の責任ばかりではないんですけどね。プレミアリーグで5位に終わり、来季はCLではなく、ヨーロッパリーグに参加する彼らが唯一、今季獲得したタイトルは土曜にマンチェスター・ユナイテッドを1-0で破ったFAカップだけだったんですが、その決勝ですら、残り1分に時間稼ぎとしての出場に留まったのが致命的だった?
▽一方、コスタにはクラブに課されたFIFA処分のせいで今年になるまでプレーできなかったというハンディキャップがありながら、シーズン後半戦で挽回。ゴール数は7本と思ったより伸びなかったものの、「nos aporta ese punto de competitividad, de agresividad/ノス・アポルタ・エセ・プント・デ・コンペティティビダッド、デ・アグレシビダッド(競争力とアグレッシブさという点でチームに貢献してくれる)」(ロペテギ監督)と期待され、何とかロドリゴ(バレンシア)とイアゴ・アスパス(セルタ)と並んでリストに滑り込めたのはラッキーだったかと。
▽その他、条件はコスタと同じながら、アトレティコに適応するのに時間がかかってしまったビトロ、ドルトムントからベティスに移籍して出場機会を増やしたものの、遅きに失したバルトラ、オドリオソラ(レアル・ソシエダ)の成長と元々、中盤は人材豊富なせいで空きがなかったセルジ・ロベルト(バルセロナ)らが落選の主だったところですが、レアル・マドリーからは最多の6人(セルヒオ・ラモス、カルバハル、ナチョ、イスコ、アセンシオ、ルーカス・バスケス)、アトレティコからは3人(コケ、サウール、コスタ)がリスト入り(https://twitter.Com/sefutbol/status/998520371547602944)。となれば、今回のロシア大会もマドリッド勢を応援する私にとって、かなり見応えがありそうですが、まあスペイン代表については来週月曜、ラス・ロサス(マドリッド近郊)にあるサッカー協会施設での合宿が始まってから、イロイロお伝えしていくことにしますね。
▽とりあえず、先週末のリーガ最終節はどうだったかというと、何せすでに優勝はバルサ、CL、EL出場権も降格チームも決まっていましたからね。勝敗的にはほとんど意味がないものだったんですが、土曜のブタルケでは弟分のレガネスが予想外の根性を見せてくれることに。ええ、前半19分にはキャンベルのゴールでベティスに先制された上、23分にディエゴ・リコをイエローカード2枚で失ったんですが、やっぱり選手たちもこれまで5年間、2部Bから1部の高みまで引き上げたチームを去るガリターノ監督とキャプテンのマントバーニの花道を飾ってあげたかったんですかね。
▽ちなみにクラブから契約延長のオファーはあったものの、「今が退団する時だと感じた。Buscaremos algo diferente(ブルカレモス・アルゴ・ディフェレンテ(何か違うことを探すつもりだ))」と断ったガリターノ監督にはソシエダやセルタなどから、ラブコールを送られているようですが、現時点ではまだ決まっておらず。うーん、確かに2年連続、降格圏ギリギリ17位ながら、余裕のある1部残留を達成したとはいえ、予算の限られているレガネスでもっと上を目指すのは難しいですからね。当人もすでに55歳とあって、新しいことにチャレンジする時間は限られているのに気がついたのかもしれません。
▽そしてレガネス(マドリッド近郊)から、私がバスとメトロ(地下鉄)を乗り継いで帰宅する間にもう1つの弟分、ヘタフェのマラガ戦は終わってしまったんですが、何よりの朗報は、いえ、柴崎岳選手が先発して後半37分までプレー、チームの勝利に貢献できたのも喜ばしかったんですけどね。相手のマラガはすでに最下位での降格済みとはいえ、なかなか点を取れなかった彼らがチャンスを得たのは後半29分。それもPKだったため、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況アナウンサーも「これは喜んでいいものやら」と複雑な心中を吐露していたんですが、この日はレミが蹴ってついに成功したんですよ!
▽だって、今季は7回もPKを決められず、おかげでセビージャと争った7位のEL出場権を逃してしまったヘタフェですからね。これで悪い流れに歯止めをかけて、来季は自信をもってPKに立ち向かえるかと。ちなみにこの0-1の勝利で8位を確定して、翌日からチームはバケーションに入ったんですが、例外はモロッコ代表W杯メンバーに招集されているファジルと日本代表のプレリストに入っている柴崎選手。ボルダラス監督を始め、去年は昇格プレーオフを戦い抜き、20チームで一番夏休みが短かったヘタフェとあって、きっと今頃は皆、ビーチなどを満喫しているんじゃないでしょうか。
▽そして自宅に荷物を置く暇もあらば、土曜最後の試合となったビジャレアルvsマドリー戦を見るため、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に向かった私でしたが、さすがCL決勝まであと1週間となると、ジダン監督も総合リハーサルをしない訳にはいきません。いえ、ケイロル・ナバスはお留守番、カシージャをベンチに置いて、息子のルカを先発GKで使ったのは「Faltaba él por jugar/ファルタバ・エル・ポル・フガール(彼だけが出場していなかった)」(ジダン監督)と、今季まだスタメンデビューしていなかった選手だったからで、別にキエフでプレーすることを想定してではないんですけどね。他は捻挫の治ったクリスティアーノ・ロナウドを筆頭にベイル、イスコ、クロース、モドリッチ、カゼミロ、カルバハル、ヴァラン、ラモス、マルセロと、リバプールとの決勝スタメンと言ってもまったくおかしくなかったかと。
▽その甲斐あって、前半11分にはモドリッチからパスをもらい、敵をかわしながらシュートに持ち込んだベイルが先制点、32分にもマルセロのクロスをC・ロナウドがヘッドで決めて2点をリードしたマドリーなんですが、まずかったのは、「en la segunda gestionamos pensando en la final/エン・ラ・セグンダ・パルテ・ヘスティオナモス・ペンサンドー・エン・ラ・フィナル(後半、ウチは決勝を考えて調整してしまった)」(ジダン監督)こと。ええ、選手たちだって今更ながら、負傷するのはイヤですからね。リズムが落ちたところを敵に突かれ、C・ロナウドとモドリッチが温存された後、26分にはロジェールに見事なリーガ初ゴールを撃ち込まれると、40分にはカスティジェホにGKルカがかわされて、とうとう、同点にされてしまうとは締まりのない今季の彼らのリーガそのものだったかと。
▽え、最後は2-2の引き分けで終わり、マドリーは3位が確定、翌日にエイバルを迎えるアトレティコが2位となったため、結果を気にせず、フェルナンド・トーレス送別イベントに専念できるようになったのはラッキーだったんじゃないかって?そうですね、折しも彼らは先週水曜にELで優勝。4年ぶりのタイトル獲得だったため、天気の良い日曜午後のワンダ・メトロポリターノは試合前から、お祭り気分のファンたちで大賑わいに。とりわけトーレスのサッカー人生を写真50枚でつづった展示やお別れセレモニーで贈呈される巨大ユニフォームにメッセージを書くのに長蛇の列ができていましたが、いやあ、そこはアトレティコ。ヘマをするのは選手たちだけじゃないんです!
▽いえ、試合の方はエイバルの選手たちが作ってくれたpasillo(パシージョ/チャンピオンを迎える花道)を通ってチームが入場。キャプテンマークを託されたトーレスが、34分にキケ・ガルシアに奪われた先制点を42分、ガビが自陣から出したパスをコレアが追い、エリア内でもらって同点ゴールを決めたり、後半15分にもコスタのアシストで勝ち越しゴールという夢に描いたような展開だったんですけどね。その2点目が丁度、応援団の陣取る側だったため、コスタが復帰して最初のヘタフェ戦でゴールを挙げた時同様、スタンドまで行って、ファンにもみくちゃにされたため、トーレスも同じくイエローカードをもらってしまうなんてこともあったんですが、それは2枚目ではなかったため、まあいいです。
▽もちろん後半18分にリュカが2枚目のイエローカードで退場になってしまったことも、おかげで次の試合でバルサ最後のプレーをしたイニエスタのように拍手の中、トーレスが途中交代できなくなってしまったという点では間が悪かったんですけどね。何が最悪だったかというと、コレアとコケに代え、コスタと一緒にピッチに入った時、グリーズマンがスタンドからpito(ピト/ブーイング)を浴びせられてしまったんですよ。だってえ、いくら年がら年中、移籍の噂が絶えないとはいえ、彼は数日前、リヨンでEL優勝を果たしたオリンピック・マルセイユ戦で2ゴールを挙げた大殊勲者ですよ。
▽さすがにこれには私も呆れてしまったんですが、この時、すぐ機転を利かせてくれたのはシメオネ監督。ベンチにいたゴディンを応援団のいるスタンドまで走らせ、「Animadle, que se queda/アニマッドレ、ケ・セ・ケダ(残留するように励ましてやってくれ)」と要請したとか、その試合前にグリーズマンがチームメートに残留意志を表明したことを打ち明けたとか、諸説ありますけどね。幸いそれにスタンドも反応。グリーズマンの応援歌が最大ボリュームで合唱されたため、アトレティコの甘いも酸いも経験しているトーレスに「Aquí no te vamos a reprochar nada. Aquí te vamos a necesitar de verdad/アキー・ノー・テ・バモス・ア・レプロチャール・ナーダ。アキー・テ・バモス・ア・ネセシタール・デ・ベルダッド(ここじゃ何についても君を批判しない。このチームは本当に君が必要なんだ)」と慰められ(https://twitter.Com/eldiadespues/status/998664177102327808)、一時は涙ぐみかけていた当人も無事に試合を終えることができましたっけ。
▽まあ、この件がグリーズマンの将来にどう影響するかはまだ不明なんですが、ひとまず試合の話を終わらすことにすると、24分にペーニャにエリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決められた後、弟分のように10人で逆転できなかったアトレティコは2-2で引き分け。タイムアップの笛が鳴った後は即、お別れセレモニーに突入です。
▽ええ、チーム全員がサインした額入りのユニフォーム、スタジアム前の地面に埋め込まれている100試合以上出場した選手のプレートのレプリカなど、様々な記念品をもらい、ファンのメッセージが入った巨大ユニフォームの前でスピーチしたトーレスの「Nunca he necesitado ganar títulos para sentirme el jugador más querido del mundo/ヌンカ・エ・ネセシタードー・ガナール・ティトゥロス・パラ・センティールメ・エル・フガドール・マス・ケリードー・デル・ムンド(世界一、愛されている選手と感じるのにタイトルが必要だったことは1度もなかった)」という言葉には私もうるっとしかけた1人だったんですけどね。
▽2007年にリバプールに移籍してから8年、2015年1月に彼が戻って来た時、ビセンテ・カルデロンに4万5000人が詰めかけたり、この日も長いセレモニーの間、6万人の観衆は1人も帰らず。おかげで私など、エイバルのメンディリバル監督がベンチ入りしなかった乾貴士選手について、「水曜の練習で打撲を受け、翌日のセッションは最後までできなかった。太ももに大きな内出血がある。何のケガがわからないのだから、W杯参加にも影響があるかもしれない」と発言した記者会見を見逃した程だったんですが、これだけトーレスがファンに変わらず好かれているのは何より、自分を育ててくれたクラブに対して不誠実なことを1度も言わなかったから。
▽そこはグリーズマンも見習っていいかと思いますが、ええ、スペインのサポーターはお隣さんにしろ、すぐに不満をブーイングで表現してしまうため、当人が火曜からフランス代表合宿に合流する際、軽薄な言動には要注意。結論が残留にしろ、移籍にしろ、慎んだ方が後あと、イヤな気分を味あわなくて済むんじゃないでしょうか。ちなみに試合後、ワンダ内で慰労会を開いたアトレティコにはまだ1つ、お勤めが残っていて、それは火曜にナイジェリアで行われる親善試合。同国代表と手合わせするため、サモラ(リーガ1失点率が低いGKに与えられる賞)を3年連続獲得したオブラクを始め、W杯に行かないフアンフラン、トーマス、ガビ、ビトロ、コレア、ガメイロ、そしてトーレスが多数のカンテラーノ(アトレティコBの選手)たちと機上の人になっていますが…こちらもバケーション入りは秒読みですね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
▽いえ、シーズン中は背中を痛めていた時期もあったとかで、チェルシーで主力になれなかったのは当人の責任ばかりではないんですけどね。プレミアリーグで5位に終わり、来季はCLではなく、ヨーロッパリーグに参加する彼らが唯一、今季獲得したタイトルは土曜にマンチェスター・ユナイテッドを1-0で破ったFAカップだけだったんですが、その決勝ですら、残り1分に時間稼ぎとしての出場に留まったのが致命的だった?
▽その他、条件はコスタと同じながら、アトレティコに適応するのに時間がかかってしまったビトロ、ドルトムントからベティスに移籍して出場機会を増やしたものの、遅きに失したバルトラ、オドリオソラ(レアル・ソシエダ)の成長と元々、中盤は人材豊富なせいで空きがなかったセルジ・ロベルト(バルセロナ)らが落選の主だったところですが、レアル・マドリーからは最多の6人(セルヒオ・ラモス、カルバハル、ナチョ、イスコ、アセンシオ、ルーカス・バスケス)、アトレティコからは3人(コケ、サウール、コスタ)がリスト入り(https://twitter.Com/sefutbol/status/998520371547602944)。となれば、今回のロシア大会もマドリッド勢を応援する私にとって、かなり見応えがありそうですが、まあスペイン代表については来週月曜、ラス・ロサス(マドリッド近郊)にあるサッカー協会施設での合宿が始まってから、イロイロお伝えしていくことにしますね。
▽とりあえず、先週末のリーガ最終節はどうだったかというと、何せすでに優勝はバルサ、CL、EL出場権も降格チームも決まっていましたからね。勝敗的にはほとんど意味がないものだったんですが、土曜のブタルケでは弟分のレガネスが予想外の根性を見せてくれることに。ええ、前半19分にはキャンベルのゴールでベティスに先制された上、23分にディエゴ・リコをイエローカード2枚で失ったんですが、やっぱり選手たちもこれまで5年間、2部Bから1部の高みまで引き上げたチームを去るガリターノ監督とキャプテンのマントバーニの花道を飾ってあげたかったんですかね。
▽27分にはCKから、相手のミスを突いてシオバスが同点ゴールを奪うと、後半18分にはゲレロのアシストでナランホが勝ち越し点をゲット。30分にはサナブリアのヘッドで並ばれてしまったものの、その3分後にはアムラバトのシュートが敵DFに当たって入るラッキーなゴールでとうとう、3-2のremontada(レモンターダ/逆転劇)を果たしてしまったから、功労者2人のお別れ試合を見ようとスタンドを満員にしたファンがどんなに喜んだことか。おかげでまだ負傷の癒えていないマントバーニも43分にピッチに入ることができましたしね。試合後はチーム全員でガリターノ監督と彼を胴上げ、昨季の初1部残留祝い程の派手さはなかったものの、心温まるセレモニーを見ることができましたっけ。
▽ちなみにクラブから契約延長のオファーはあったものの、「今が退団する時だと感じた。Buscaremos algo diferente(ブルカレモス・アルゴ・ディフェレンテ(何か違うことを探すつもりだ))」と断ったガリターノ監督にはソシエダやセルタなどから、ラブコールを送られているようですが、現時点ではまだ決まっておらず。うーん、確かに2年連続、降格圏ギリギリ17位ながら、余裕のある1部残留を達成したとはいえ、予算の限られているレガネスでもっと上を目指すのは難しいですからね。当人もすでに55歳とあって、新しいことにチャレンジする時間は限られているのに気がついたのかもしれません。
▽そしてレガネス(マドリッド近郊)から、私がバスとメトロ(地下鉄)を乗り継いで帰宅する間にもう1つの弟分、ヘタフェのマラガ戦は終わってしまったんですが、何よりの朗報は、いえ、柴崎岳選手が先発して後半37分までプレー、チームの勝利に貢献できたのも喜ばしかったんですけどね。相手のマラガはすでに最下位での降格済みとはいえ、なかなか点を取れなかった彼らがチャンスを得たのは後半29分。それもPKだったため、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況アナウンサーも「これは喜んでいいものやら」と複雑な心中を吐露していたんですが、この日はレミが蹴ってついに成功したんですよ!
▽だって、今季は7回もPKを決められず、おかげでセビージャと争った7位のEL出場権を逃してしまったヘタフェですからね。これで悪い流れに歯止めをかけて、来季は自信をもってPKに立ち向かえるかと。ちなみにこの0-1の勝利で8位を確定して、翌日からチームはバケーションに入ったんですが、例外はモロッコ代表W杯メンバーに招集されているファジルと日本代表のプレリストに入っている柴崎選手。ボルダラス監督を始め、去年は昇格プレーオフを戦い抜き、20チームで一番夏休みが短かったヘタフェとあって、きっと今頃は皆、ビーチなどを満喫しているんじゃないでしょうか。
▽そして自宅に荷物を置く暇もあらば、土曜最後の試合となったビジャレアルvsマドリー戦を見るため、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に向かった私でしたが、さすがCL決勝まであと1週間となると、ジダン監督も総合リハーサルをしない訳にはいきません。いえ、ケイロル・ナバスはお留守番、カシージャをベンチに置いて、息子のルカを先発GKで使ったのは「Faltaba él por jugar/ファルタバ・エル・ポル・フガール(彼だけが出場していなかった)」(ジダン監督)と、今季まだスタメンデビューしていなかった選手だったからで、別にキエフでプレーすることを想定してではないんですけどね。他は捻挫の治ったクリスティアーノ・ロナウドを筆頭にベイル、イスコ、クロース、モドリッチ、カゼミロ、カルバハル、ヴァラン、ラモス、マルセロと、リバプールとの決勝スタメンと言ってもまったくおかしくなかったかと。
▽その甲斐あって、前半11分にはモドリッチからパスをもらい、敵をかわしながらシュートに持ち込んだベイルが先制点、32分にもマルセロのクロスをC・ロナウドがヘッドで決めて2点をリードしたマドリーなんですが、まずかったのは、「en la segunda gestionamos pensando en la final/エン・ラ・セグンダ・パルテ・ヘスティオナモス・ペンサンドー・エン・ラ・フィナル(後半、ウチは決勝を考えて調整してしまった)」(ジダン監督)こと。ええ、選手たちだって今更ながら、負傷するのはイヤですからね。リズムが落ちたところを敵に突かれ、C・ロナウドとモドリッチが温存された後、26分にはロジェールに見事なリーガ初ゴールを撃ち込まれると、40分にはカスティジェホにGKルカがかわされて、とうとう、同点にされてしまうとは締まりのない今季の彼らのリーガそのものだったかと。
▽え、最後は2-2の引き分けで終わり、マドリーは3位が確定、翌日にエイバルを迎えるアトレティコが2位となったため、結果を気にせず、フェルナンド・トーレス送別イベントに専念できるようになったのはラッキーだったんじゃないかって?そうですね、折しも彼らは先週水曜にELで優勝。4年ぶりのタイトル獲得だったため、天気の良い日曜午後のワンダ・メトロポリターノは試合前から、お祭り気分のファンたちで大賑わいに。とりわけトーレスのサッカー人生を写真50枚でつづった展示やお別れセレモニーで贈呈される巨大ユニフォームにメッセージを書くのに長蛇の列ができていましたが、いやあ、そこはアトレティコ。ヘマをするのは選手たちだけじゃないんです!
▽いえ、試合の方はエイバルの選手たちが作ってくれたpasillo(パシージョ/チャンピオンを迎える花道)を通ってチームが入場。キャプテンマークを託されたトーレスが、34分にキケ・ガルシアに奪われた先制点を42分、ガビが自陣から出したパスをコレアが追い、エリア内でもらって同点ゴールを決めたり、後半15分にもコスタのアシストで勝ち越しゴールという夢に描いたような展開だったんですけどね。その2点目が丁度、応援団の陣取る側だったため、コスタが復帰して最初のヘタフェ戦でゴールを挙げた時同様、スタンドまで行って、ファンにもみくちゃにされたため、トーレスも同じくイエローカードをもらってしまうなんてこともあったんですが、それは2枚目ではなかったため、まあいいです。
▽もちろん後半18分にリュカが2枚目のイエローカードで退場になってしまったことも、おかげで次の試合でバルサ最後のプレーをしたイニエスタのように拍手の中、トーレスが途中交代できなくなってしまったという点では間が悪かったんですけどね。何が最悪だったかというと、コレアとコケに代え、コスタと一緒にピッチに入った時、グリーズマンがスタンドからpito(ピト/ブーイング)を浴びせられてしまったんですよ。だってえ、いくら年がら年中、移籍の噂が絶えないとはいえ、彼は数日前、リヨンでEL優勝を果たしたオリンピック・マルセイユ戦で2ゴールを挙げた大殊勲者ですよ。
▽さすがにこれには私も呆れてしまったんですが、この時、すぐ機転を利かせてくれたのはシメオネ監督。ベンチにいたゴディンを応援団のいるスタンドまで走らせ、「Animadle, que se queda/アニマッドレ、ケ・セ・ケダ(残留するように励ましてやってくれ)」と要請したとか、その試合前にグリーズマンがチームメートに残留意志を表明したことを打ち明けたとか、諸説ありますけどね。幸いそれにスタンドも反応。グリーズマンの応援歌が最大ボリュームで合唱されたため、アトレティコの甘いも酸いも経験しているトーレスに「Aquí no te vamos a reprochar nada. Aquí te vamos a necesitar de verdad/アキー・ノー・テ・バモス・ア・レプロチャール・ナーダ。アキー・テ・バモス・ア・ネセシタール・デ・ベルダッド(ここじゃ何についても君を批判しない。このチームは本当に君が必要なんだ)」と慰められ(https://twitter.Com/eldiadespues/status/998664177102327808)、一時は涙ぐみかけていた当人も無事に試合を終えることができましたっけ。
▽まあ、この件がグリーズマンの将来にどう影響するかはまだ不明なんですが、ひとまず試合の話を終わらすことにすると、24分にペーニャにエリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決められた後、弟分のように10人で逆転できなかったアトレティコは2-2で引き分け。タイムアップの笛が鳴った後は即、お別れセレモニーに突入です。
▽ええ、チーム全員がサインした額入りのユニフォーム、スタジアム前の地面に埋め込まれている100試合以上出場した選手のプレートのレプリカなど、様々な記念品をもらい、ファンのメッセージが入った巨大ユニフォームの前でスピーチしたトーレスの「Nunca he necesitado ganar títulos para sentirme el jugador más querido del mundo/ヌンカ・エ・ネセシタードー・ガナール・ティトゥロス・パラ・センティールメ・エル・フガドール・マス・ケリードー・デル・ムンド(世界一、愛されている選手と感じるのにタイトルが必要だったことは1度もなかった)」という言葉には私もうるっとしかけた1人だったんですけどね。
▽2007年にリバプールに移籍してから8年、2015年1月に彼が戻って来た時、ビセンテ・カルデロンに4万5000人が詰めかけたり、この日も長いセレモニーの間、6万人の観衆は1人も帰らず。おかげで私など、エイバルのメンディリバル監督がベンチ入りしなかった乾貴士選手について、「水曜の練習で打撲を受け、翌日のセッションは最後までできなかった。太ももに大きな内出血がある。何のケガがわからないのだから、W杯参加にも影響があるかもしれない」と発言した記者会見を見逃した程だったんですが、これだけトーレスがファンに変わらず好かれているのは何より、自分を育ててくれたクラブに対して不誠実なことを1度も言わなかったから。
▽そこはグリーズマンも見習っていいかと思いますが、ええ、スペインのサポーターはお隣さんにしろ、すぐに不満をブーイングで表現してしまうため、当人が火曜からフランス代表合宿に合流する際、軽薄な言動には要注意。結論が残留にしろ、移籍にしろ、慎んだ方が後あと、イヤな気分を味あわなくて済むんじゃないでしょうか。ちなみに試合後、ワンダ内で慰労会を開いたアトレティコにはまだ1つ、お勤めが残っていて、それは火曜にナイジェリアで行われる親善試合。同国代表と手合わせするため、サモラ(リーガ1失点率が低いGKに与えられる賞)を3年連続獲得したオブラクを始め、W杯に行かないフアンフラン、トーマス、ガビ、ビトロ、コレア、ガメイロ、そしてトーレスが多数のカンテラーノ(アトレティコBの選手)たちと機上の人になっていますが…こちらもバケーション入りは秒読みですね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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