【原ゆみこのマドリッド】相手がマドリーじゃなきゃ勝てる…
2018.05.19 21:30 Sat
▽「男女合同どころか、全チーム出て来るって!?」そんな風に私が呆気に取られていたのは金曜日、ネプトゥーノの噴水前に組まれた祝勝イベント用舞台を眺めながら、アトレティコがヨーロッパリーグのトロフィーと共に到着するのを待っていた時のことでした。いやあ、予想通り、リーガ1部2連覇を果たした女子チームは男子と2台、オープンデッキバスを連ね、マドリッド市庁舎、大聖堂、マドリッド州庁舎を回るパレードをしていたんですけどね。どうやら今季のカンテラ(ユース組織)は非常に出来が良かったようで、全てのカテゴリーで優勝。そこで小さな子供たちから順に男女、計10チーム程が次々、舞台に上がり、すでにかなり集まっていたファンの前でお祝いって、これって完全に男子トップチームに便乗していない?
▽まあ、祝勝イベントのことはまた後で報告しますが、そのアトレティコのEL決勝があった水曜はまず午前中、コリセウム・アルフォンソ・ペレスまで私は足を運ぶことに。いえ、練習はすでに前節、セビージャがベティスと引き分けたせいで、来季のEL予選出場権をもらえる7位になれないことが確定。今週末土曜の最終節はアウェイで降格チームのマラガとの消化試合のヘタフェだというのに何故か、puerta cerrada(プエルタ・セラーダ/非公開)のセッションだったため、練習は見ることができなかったんですけどね。おかげで数人いた日本人ファンたちもスタジアムのロビーで柴崎岳選手が着替えて出て来るのを待っているしかなかったのは気の毒だったんですが、その日の私の目的はボルダラス監督の契約延長発表記者会見。
▽非公式にはしばらく前から確定済みになっていたものの、リーガの結末がついたため、ようやく2年間の延長が発表されたんですが、スポーツディレクターのプラナス氏と一緒に現れたボルダラス監督は1部再昇格後の初シーズンを「La temporada es de sobresaliente, le daría un 9'5/ラ・テンポラーダ・エス・デ・ソブレサリエンテ、レ・ダリア・ウン・ヌエベ・コンマ・シンコ(今季の成績は最優秀、9.5点をつけたいね)」と評価。先日、兄貴分のアトレティコとのミニダービーの後などはやはりヨーロッパの夢が消えてしまったため、ご機嫌斜めだったんでしょうね。日本人記者から出た柴崎選手に関しての質問を「今はチームのことを話したい」と一蹴していたものの、この日は「人としてのレベルではとても満足している」と答えてくれました。
▽ただ、「Futbolísticamente nos hubiera gustado que rendimiento fuera mayor/フットボリスティカメンテ・ノス・ウビエラ・グスタードー・ケ・レンディミエントー・フエラ・マジョール(サッカー的にはもっと大きなパフォーマンスがあった方が良かった)」そうで、うーん、確かに最近は出番も多くありませんでしたからね。もちろん、「だが簡単ではない。彼だけでなく、世界最高のリーガ1部にデビューした皆に起こったことだ」とフォローしてくれていましたが、翌日、シーズン終了を告げるチーム全員揃っての教会への献花を終えたヘタフェのプレーを見られるのも土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からのマラガ戦が最後。これで彼らもバケーション入りですから、せめてピッチで柴崎選手の雄姿を見られるといいんですが…。
▽え、開始3分にはパイエのスルーパスからジェルマンにフリーでシュートを撃たれたり、酒井宏樹選手の負傷中、レギュラーになったサールにも狙われたりと、序盤のアトレティコは相手の勢いに押され、パスが3回も続かない恐ろしい有様じゃなかったかって?いやあ、私も開会セレモニー中にオリンピック・マルセイユのサポーターが陣取るゴール裏席がbengala(ベンガラ/発煙筒)で赤く燃え上がり、ピッチまで白く煙に覆われて、お隣さんとPSGのCL16強対戦2ndレグのパルク・デ・プランス化しているのには閉口したんですけどね。まさか、そのせいでボールが見えにくかったなんて言い訳はしなくても、彼らにはよくあることだったため、ハラハラしつつも視界が良くなるのを待っていたところ…。
▽何と前半21分、アトレティコが先制点を取ってしまったんですよ!キッカケを作ってくれたのはマルセイユのアンギッサで、GKマンダンダから受けたパスを自陣エリアから近い場所で逃してしまったから、さあ大変。詰めていたガビが戻したボールをグリーズマンが持ち込み、どうやら相手が顔馴染みだったのが吉と出たんでしょうか。「彼はボクが右側に蹴ると予想して動いた。フランス代表の練習ではいつもそっちへ撃っているから。それで試合前、自分に言ったんだ。もし1対1になったら、反対に蹴ってやろうって。Y funcionó bien/イ・フンシオノ・ビエン(おかげで上手くいったよ)」と当人も後で言っていた通り、見事にゴールを決めてしまったとなれば、ワンダで応援していたファンたちもどんなに喜んだことか。
▽いやあ、これにはルディ・ガルシア監督も「ウチのミスから失点した。アトレティコのようなチームにこういう失敗をすると高くつく」と嘆いていたんですが、32分には更なる不幸がマルセイユを襲うことに。いえ、チームの入場時に当人がサッカー界の迷信を無視して、勝ち取る前のトロフィーに触れてしまったせいだとは思いませんけどね。体調が100%でなかった司令塔のパイエがふくらはぎを痛め、代表チームメートのグリーズマンに慰められながら、早々にマキシム・ロペスと交代って、もしや2014年のCL決勝でジエゴ・コスタが10分ともたなかったアトレティコと似た目が敵に出ている?
▽実際、マルセイユの選手たちの士気にそれが影響を与えたのもあったか、0-1のまま後半に入った彼らは、うーん、ミス続きでイエローカードももらってしまい、エミレーツ・スタジアムの二の舞を懸念されたヴルサリコがシメオネ監督と”モノ"・ブルゴス第2監督の事前の打ち合わせ通り、フアンフランに代わったおかげもあったんですかね。いきなり「相手のレベルが上がった」(ルディ・ガルシア監督)という変身を見せ、4分にはサウールの奪ったボールを「El sábado me dio el a mí una asistencia y hoy me ha tocado a mí/エル・サバドー・メ・ディオ・エル・ア・ミー・ウナ・アシステンシア・イ・オイ・メ・ア・トカードー・ア・ミ(土曜は彼がボクにアシストしてくれて、今日は自分に回った)」というコケが繋ぐと、またしてもグリーズマンが今度はマンダンダの頭上を越えるシュートで2点目をゲット。
▽いやあ、そのヘタフェ戦だって、0-1で勝っていたアトレティコですし、ゴールには”San/サン(聖)”オブラクもいたので、この時には「敵のミスに乗じただけ」とか、後々言われないで済むと私もホッとしたものでしたけどね。それでも35分にはミトログルのヘッドがゴールポストを直撃なんてこともあったため、助かった面もあったんですが、まさか44分にはまたコケがラストパスを送り、ガビが3点目まで取ってくれるとは一体、誰に予想できたでしょう!
▽ええ、これにはCAS(スポーツ仲裁裁判所)がベンチ入り禁止処分の一時停止措置を却下。結局、準決勝アーセナル戦2ndレグ同様、1人観戦したパルク・オリンピック・リヨンのパルコ(貴賓席)でシメオネ監督も安心できたに違いませんって。何せ、「Perdimos una faltando dos minutos, otra en penales y nos volvimos a levantar/ペルディモス・ウナ・ファルタンドー・ドス・ミヌートス、オトラ・エン・ペナレス・イ・ノス・ボルビモス・ア・レバンタール(ウチは残り2分で、もう1つはPK戦で負けたが、再び立ち上がった)」(シメオネ監督)という、2014年、2016年CL決勝でお隣さんに連敗して以来の決勝でしたからね。相手はマドリーではないとて、点は沢山取っておくにこしたことありませんって。
▽するとこの直後、ベンチの方へ走って行ったグリーズマンがフェルナンド・トーレスを出すように”モノ”・ブルゴス第2監督に進言。ちょっと前にはコレアをトーマスに代え、守備固めに入っていたアトレティコでしたが、おかげで3人目の交代選手として、今季限りでチームを去ることを発表したエル・ニーニョ(子供/トーレスの愛称)がピッチに入ることができたのは、本当に良かったかと。彼が心から敬愛するチームもそのまま0-3で勝利して、キャプテンのガビと一緒にアトレティコで自身、初めて獲得したトロフィーを掲げられるなんて、もしや今季、CLをグループリーグで敗退。めぼしいライバルが少ないELに河岸を変えられたのはラッキーだった?
▽実際、アゼルバイジャンのカラバフに2戦連続引き分けて、決勝トーナメント進出が厳しくなった際など、「今はELなんてクソみたいなもんだ」と吐き捨てていたガビも、「Ahora me tengo que tragar mis palabras/アオラ・メ・テンゴ・ケ・トラガル・ミス・パラブラス(今は自分の言ったことを飲み込まないとね)」と苦笑いしていましたしね。ピッチでのお祝いではトーレスがスタンドのファンのところまで行ってメガフォンを握り、「Te quiero Atleticoc lo lo lo lo/テ・キエロ・アトレティ・ロ・ロ・ロ(アトレティコ、好きだよ)」と定番カンティコ(メロディーのついたシュプレヒコール)を歌っている珍しい姿なども見られましたし、何よりワンダや帰りのメトロ(地下鉄)でのファンのうかれようときたら。ええ、タイトル獲得に勝る喜びはないというのを私も心底、実感できましたっけ。
▽え、シメオネ監督は「Hay situaciones que le acercan a querer seguir con nosotros/アイ・シトゥアシネス・ケ・レ・アセルカン・ア・ケレール・セギール・コン・ノソトロス(私たちと一緒に続ける方に近づける状況はある)。彼がアトレティコで決勝を戦うのは3度目でうち2回優勝している。もっと財力のあるチームとウチはサッカー的にそれ程、離れている訳ではない」と言っていたものの、この決勝でMVPにもなったグリーズマンが残留するのか、出るのかは明らかにならなかったんだろうって?そうですね、ネプトゥーノでの祝賀イベントでもリュカが音頭をとって、「Giezmann quedate!/グリースマン・ケダテ(グリーズマン、残って!)」と詰めかけた5万人のファンも合唱してくれたんですけどね。
▽肝心の当人が「No es momento de hablar del future/ノー・エス・モメントーデ・アブラール・デル・フトゥロ(今は自分の未来を話す時じゃない)」とはぐらかしてばかりだったため、相変わらず、バルサへの移籍があるのかは不明。うーん、ヒル・マリン筆頭株主も「全てが彼中心に回るアトレティコで歴史を作るか、歴史の一部にはなれないクラブに行くのか、それはグリーズマンの気持ち次第」と言っていたように、あちらに行って出番もあまりなく、今は故郷のトルコでプレーしているアルダ・トゥランの例などは気に留めておいた方がいいかと。
▽あのネイマールでさえ、メッシがいる限り、自分はナンバーワンにはなれないと悟ってPSGへ移ったのは周知の事実ですからね。あ、そうそう、同じ金曜にはバルデベバス(バラハス空港)の練習場でセッション後、決起バーベキュー大会を開催。クリスチアーノ・ロナウドやカルバハルも回復し、最後の総合リハーサルとなる土曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からのリーガ最終節、ビジャレアル戦のためではなく、来週土曜のCL決勝に向けて士気を高めていたマドリーがキエフでリバプールを破り、優勝を果たした暁には8月15日のUEFAスーパーカップでアトレティコと対戦することに。
▽正直、すでにプレミアリーグが終わり、今週はマルベジャ(スペイン南部のビーチリゾート)で合宿をしているリバプールと当たった方がアトレティコには勝算はあるかと思いますが、クラブもバルサを上回る年棒2500ユーロ(約33億円)のオファーをグリーズマンに出したと聞いていますしね。その結果を見て、本当に今のチームはEL優勝止まりのレベルなのか、いつかはお隣さんを破ってCL優勝できるのか、検討してみるっていうのもいい手かもしれませんよ。
▽そして祝賀イベントでは女子チームが舞台に立った後、待望の男子チームメンバーが1人1人名前を呼ばれて登場。ネプトゥーノ像にガビ、ゴディン、コケの3キャプテンと一緒にbufanda(ブファンダ/マフラー)を巻き付けに上がり、とうとう宿願を果たしたトーレスがスピーチの際、涙に声を詰まらせていたのには私も心を動かされましたが、実は彼にはもう1つ、お別れの舞台が。それはこの日曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からのエイバル戦で、一応、勝ち点1を取って、マドリーより上の2位でリーガを終わるというチームの目標もありますけどね。ワンダ・メトロポリターノがこれまでずっとアトレティコのアイドルでいてくれたトーレスに感謝を示し、盛大に送り出してくれるのは間違いないかと。
▽その一方で弟分のレガネスは土曜にベティスとの最終戦なんですが、こちらは4年間、2部Bから1部の高みまでチームを引き上げてくれたガリターノ監督とキャプテン、マントバーニがブタルケのファンとお別れすることに。いやあ、日曜ラストのバルサvsレアル・ソシエダ戦でもカンプ・ノウで最後となるプレーを披露するイニエスタへの送別モザイクが予定されていますし、どうやらこの週末はそこここで感動的なラストゲームが見られそうですね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
女子に続いてアトレティコ男子のバスが煙に包まれて会場入り
アトレティコの選手たちがバスの上ではしゃいでいる
本当にはしゃいでいる
カンテラのチームも舞台に上がる
▽非公式にはしばらく前から確定済みになっていたものの、リーガの結末がついたため、ようやく2年間の延長が発表されたんですが、スポーツディレクターのプラナス氏と一緒に現れたボルダラス監督は1部再昇格後の初シーズンを「La temporada es de sobresaliente, le daría un 9'5/ラ・テンポラーダ・エス・デ・ソブレサリエンテ、レ・ダリア・ウン・ヌエベ・コンマ・シンコ(今季の成績は最優秀、9.5点をつけたいね)」と評価。先日、兄貴分のアトレティコとのミニダービーの後などはやはりヨーロッパの夢が消えてしまったため、ご機嫌斜めだったんでしょうね。日本人記者から出た柴崎選手に関しての質問を「今はチームのことを話したい」と一蹴していたものの、この日は「人としてのレベルではとても満足している」と答えてくれました。
▽ただ、「Futbolísticamente nos hubiera gustado que rendimiento fuera mayor/フットボリスティカメンテ・ノス・ウビエラ・グスタードー・ケ・レンディミエントー・フエラ・マジョール(サッカー的にはもっと大きなパフォーマンスがあった方が良かった)」そうで、うーん、確かに最近は出番も多くありませんでしたからね。もちろん、「だが簡単ではない。彼だけでなく、世界最高のリーガ1部にデビューした皆に起こったことだ」とフォローしてくれていましたが、翌日、シーズン終了を告げるチーム全員揃っての教会への献花を終えたヘタフェのプレーを見られるのも土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からのマラガ戦が最後。これで彼らもバケーション入りですから、せめてピッチで柴崎選手の雄姿を見られるといいんですが…。
▽そして夕方にはEL決勝のパブリック・ビューイングが行われるワンダ・メトロポリターノに向かった私でしたが、グラウンドには3方のスタンドに向けて5台の大型スクリーンが設置されていたものの、何と記者席の前にはないという逆境に遭遇。正面スタンドの両脇にある電光スコアボードで見る破目になった上、キックオフまでは場内を埋める、2万5000人のアトレティコファンが盛り上がる様子ばかり映っていたため、本当に観戦できるのか不安になったものでしたが、大丈夫。普段通り、スピーカーでラインアップが発表された後、いよいよリヨンからの中継が始まりました!
▽え、開始3分にはパイエのスルーパスからジェルマンにフリーでシュートを撃たれたり、酒井宏樹選手の負傷中、レギュラーになったサールにも狙われたりと、序盤のアトレティコは相手の勢いに押され、パスが3回も続かない恐ろしい有様じゃなかったかって?いやあ、私も開会セレモニー中にオリンピック・マルセイユのサポーターが陣取るゴール裏席がbengala(ベンガラ/発煙筒)で赤く燃え上がり、ピッチまで白く煙に覆われて、お隣さんとPSGのCL16強対戦2ndレグのパルク・デ・プランス化しているのには閉口したんですけどね。まさか、そのせいでボールが見えにくかったなんて言い訳はしなくても、彼らにはよくあることだったため、ハラハラしつつも視界が良くなるのを待っていたところ…。
▽何と前半21分、アトレティコが先制点を取ってしまったんですよ!キッカケを作ってくれたのはマルセイユのアンギッサで、GKマンダンダから受けたパスを自陣エリアから近い場所で逃してしまったから、さあ大変。詰めていたガビが戻したボールをグリーズマンが持ち込み、どうやら相手が顔馴染みだったのが吉と出たんでしょうか。「彼はボクが右側に蹴ると予想して動いた。フランス代表の練習ではいつもそっちへ撃っているから。それで試合前、自分に言ったんだ。もし1対1になったら、反対に蹴ってやろうって。Y funcionó bien/イ・フンシオノ・ビエン(おかげで上手くいったよ)」と当人も後で言っていた通り、見事にゴールを決めてしまったとなれば、ワンダで応援していたファンたちもどんなに喜んだことか。
▽いやあ、これにはルディ・ガルシア監督も「ウチのミスから失点した。アトレティコのようなチームにこういう失敗をすると高くつく」と嘆いていたんですが、32分には更なる不幸がマルセイユを襲うことに。いえ、チームの入場時に当人がサッカー界の迷信を無視して、勝ち取る前のトロフィーに触れてしまったせいだとは思いませんけどね。体調が100%でなかった司令塔のパイエがふくらはぎを痛め、代表チームメートのグリーズマンに慰められながら、早々にマキシム・ロペスと交代って、もしや2014年のCL決勝でジエゴ・コスタが10分ともたなかったアトレティコと似た目が敵に出ている?
▽実際、マルセイユの選手たちの士気にそれが影響を与えたのもあったか、0-1のまま後半に入った彼らは、うーん、ミス続きでイエローカードももらってしまい、エミレーツ・スタジアムの二の舞を懸念されたヴルサリコがシメオネ監督と”モノ"・ブルゴス第2監督の事前の打ち合わせ通り、フアンフランに代わったおかげもあったんですかね。いきなり「相手のレベルが上がった」(ルディ・ガルシア監督)という変身を見せ、4分にはサウールの奪ったボールを「El sábado me dio el a mí una asistencia y hoy me ha tocado a mí/エル・サバドー・メ・ディオ・エル・ア・ミー・ウナ・アシステンシア・イ・オイ・メ・ア・トカードー・ア・ミ(土曜は彼がボクにアシストしてくれて、今日は自分に回った)」というコケが繋ぐと、またしてもグリーズマンが今度はマンダンダの頭上を越えるシュートで2点目をゲット。
▽いやあ、そのヘタフェ戦だって、0-1で勝っていたアトレティコですし、ゴールには”San/サン(聖)”オブラクもいたので、この時には「敵のミスに乗じただけ」とか、後々言われないで済むと私もホッとしたものでしたけどね。それでも35分にはミトログルのヘッドがゴールポストを直撃なんてこともあったため、助かった面もあったんですが、まさか44分にはまたコケがラストパスを送り、ガビが3点目まで取ってくれるとは一体、誰に予想できたでしょう!
▽ええ、これにはCAS(スポーツ仲裁裁判所)がベンチ入り禁止処分の一時停止措置を却下。結局、準決勝アーセナル戦2ndレグ同様、1人観戦したパルク・オリンピック・リヨンのパルコ(貴賓席)でシメオネ監督も安心できたに違いませんって。何せ、「Perdimos una faltando dos minutos, otra en penales y nos volvimos a levantar/ペルディモス・ウナ・ファルタンドー・ドス・ミヌートス、オトラ・エン・ペナレス・イ・ノス・ボルビモス・ア・レバンタール(ウチは残り2分で、もう1つはPK戦で負けたが、再び立ち上がった)」(シメオネ監督)という、2014年、2016年CL決勝でお隣さんに連敗して以来の決勝でしたからね。相手はマドリーではないとて、点は沢山取っておくにこしたことありませんって。
▽するとこの直後、ベンチの方へ走って行ったグリーズマンがフェルナンド・トーレスを出すように”モノ”・ブルゴス第2監督に進言。ちょっと前にはコレアをトーマスに代え、守備固めに入っていたアトレティコでしたが、おかげで3人目の交代選手として、今季限りでチームを去ることを発表したエル・ニーニョ(子供/トーレスの愛称)がピッチに入ることができたのは、本当に良かったかと。彼が心から敬愛するチームもそのまま0-3で勝利して、キャプテンのガビと一緒にアトレティコで自身、初めて獲得したトロフィーを掲げられるなんて、もしや今季、CLをグループリーグで敗退。めぼしいライバルが少ないELに河岸を変えられたのはラッキーだった?
▽実際、アゼルバイジャンのカラバフに2戦連続引き分けて、決勝トーナメント進出が厳しくなった際など、「今はELなんてクソみたいなもんだ」と吐き捨てていたガビも、「Ahora me tengo que tragar mis palabras/アオラ・メ・テンゴ・ケ・トラガル・ミス・パラブラス(今は自分の言ったことを飲み込まないとね)」と苦笑いしていましたしね。ピッチでのお祝いではトーレスがスタンドのファンのところまで行ってメガフォンを握り、「Te quiero Atleticoc lo lo lo lo/テ・キエロ・アトレティ・ロ・ロ・ロ(アトレティコ、好きだよ)」と定番カンティコ(メロディーのついたシュプレヒコール)を歌っている珍しい姿なども見られましたし、何よりワンダや帰りのメトロ(地下鉄)でのファンのうかれようときたら。ええ、タイトル獲得に勝る喜びはないというのを私も心底、実感できましたっけ。
▽え、シメオネ監督は「Hay situaciones que le acercan a querer seguir con nosotros/アイ・シトゥアシネス・ケ・レ・アセルカン・ア・ケレール・セギール・コン・ノソトロス(私たちと一緒に続ける方に近づける状況はある)。彼がアトレティコで決勝を戦うのは3度目でうち2回優勝している。もっと財力のあるチームとウチはサッカー的にそれ程、離れている訳ではない」と言っていたものの、この決勝でMVPにもなったグリーズマンが残留するのか、出るのかは明らかにならなかったんだろうって?そうですね、ネプトゥーノでの祝賀イベントでもリュカが音頭をとって、「Giezmann quedate!/グリースマン・ケダテ(グリーズマン、残って!)」と詰めかけた5万人のファンも合唱してくれたんですけどね。
▽肝心の当人が「No es momento de hablar del future/ノー・エス・モメントーデ・アブラール・デル・フトゥロ(今は自分の未来を話す時じゃない)」とはぐらかしてばかりだったため、相変わらず、バルサへの移籍があるのかは不明。うーん、ヒル・マリン筆頭株主も「全てが彼中心に回るアトレティコで歴史を作るか、歴史の一部にはなれないクラブに行くのか、それはグリーズマンの気持ち次第」と言っていたように、あちらに行って出番もあまりなく、今は故郷のトルコでプレーしているアルダ・トゥランの例などは気に留めておいた方がいいかと。
▽あのネイマールでさえ、メッシがいる限り、自分はナンバーワンにはなれないと悟ってPSGへ移ったのは周知の事実ですからね。あ、そうそう、同じ金曜にはバルデベバス(バラハス空港)の練習場でセッション後、決起バーベキュー大会を開催。クリスチアーノ・ロナウドやカルバハルも回復し、最後の総合リハーサルとなる土曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からのリーガ最終節、ビジャレアル戦のためではなく、来週土曜のCL決勝に向けて士気を高めていたマドリーがキエフでリバプールを破り、優勝を果たした暁には8月15日のUEFAスーパーカップでアトレティコと対戦することに。
▽正直、すでにプレミアリーグが終わり、今週はマルベジャ(スペイン南部のビーチリゾート)で合宿をしているリバプールと当たった方がアトレティコには勝算はあるかと思いますが、クラブもバルサを上回る年棒2500ユーロ(約33億円)のオファーをグリーズマンに出したと聞いていますしね。その結果を見て、本当に今のチームはEL優勝止まりのレベルなのか、いつかはお隣さんを破ってCL優勝できるのか、検討してみるっていうのもいい手かもしれませんよ。
トーレスにとっては初めてのアトレティコ凱旋だ
ガビ、コケ、ゴディン、トーレスがマフラーを像に巻き付ける
▽そして祝賀イベントでは女子チームが舞台に立った後、待望の男子チームメンバーが1人1人名前を呼ばれて登場。ネプトゥーノ像にガビ、ゴディン、コケの3キャプテンと一緒にbufanda(ブファンダ/マフラー)を巻き付けに上がり、とうとう宿願を果たしたトーレスがスピーチの際、涙に声を詰まらせていたのには私も心を動かされましたが、実は彼にはもう1つ、お別れの舞台が。それはこの日曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からのエイバル戦で、一応、勝ち点1を取って、マドリーより上の2位でリーガを終わるというチームの目標もありますけどね。ワンダ・メトロポリターノがこれまでずっとアトレティコのアイドルでいてくれたトーレスに感謝を示し、盛大に送り出してくれるのは間違いないかと。
祝賀イベントは最後は男女一緒にクライマックスを迎えた
▽その一方で弟分のレガネスは土曜にベティスとの最終戦なんですが、こちらは4年間、2部Bから1部の高みまでチームを引き上げてくれたガリターノ監督とキャプテン、マントバーニがブタルケのファンとお別れすることに。いやあ、日曜ラストのバルサvsレアル・ソシエダ戦でもカンプ・ノウで最後となるプレーを披露するイニエスタへの送別モザイクが予定されていますし、どうやらこの週末はそこここで感動的なラストゲームが見られそうですね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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