【六川亨の日本サッカーの歩み】中島翔哉のカットインシュートの秘密
2018.03.20 13:00 Tue
▽日本代表は今日からベルギーへ移動して、マリ戦と(23日)とウクライナ戦(27日)に向けて合宿に入る。そこで凄いと感心したのは日刊スポーツ紙のY記者だ。先週のメンバー発表の際はポルトガルにいて、A代表初招集のポルティモネンセの中島翔哉に単独インタビューを敢行。さらにその後はキャンプ地のリエージュに入り、現地は極寒であるとレポートした。
▽Y記者は昨年のベルギー遠征の際も、試合後はドルトムントに赴き、招集外だった香川に単独インタビューを敢行している。会社や上司の理解あってのことだろうが、目のつけどころが違うと大いに勉強になった。
▽さて今週は、その中島について昔話を紹介しよう。彼の持ち味は左サイドから切れ味鋭いドリブルでカットインしてからのミドルシュートにある。2016年1月のリオ五輪予選を兼ねたAFC U-23選手権の準々決勝イラン戦ではニアとファーに鮮やかなシュートを突き刺した。
▽そんな中島は、Uー23日本代表はもちろんのこと、当時所属していたFC東京でも全体練習終了後、必ず居残ってシュート練習を繰り返していた。サッカーが好きで、好きでたまらない「少年」といった印象を誰もが持ったことだろう。
▽ニアへのインステップによる強シュート、右足インフロントに巻いてファーの上を狙ったシュートは中島の代名詞と言えるが、中島に話を聞いたところ「ゴールとGKの位置は確認して打っています」とのことだった。
▽そのことを不思議に思った川勝監督が大黒に聞いたところ、「シュートの際にGKは見ていません。感覚でゴールの位置がわかるので」という返答を聞いて納得したという。
▽J1クラスのGKになれば、FWの視線でシュートはどこを狙っているのか予想できるという。ところが大黒のようにGKやゴールの位置を確認しないで、視線を下に向けたままシュートを打たれると、体の近くに飛んできても反応が遅れてしまうそうだ。それが大黒の、ストライカーとしての本能的なプレーだったと川勝氏は驚いていた。
▽そして中島である。彼もまた、カットインからシュートまでの動作は流れるようで、キックフェイントを交えながらどのタイミングでシュートを打つのかGKは判断しづらい。そしてインパクトの瞬間はボールに集中している。川勝氏は大黒同様に中島のシュートは予測しにくいと、彼がまだ若い頃から高く評価していた。
▽そんな中島がマリ戦やウクライナ戦でゴールを決めるのか。ベルギーといえば「小便小僧」が有名だが、日本の「サッカー小僧」が世界へ羽ばたくのか、今から試合が楽しみでならない。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽Y記者は昨年のベルギー遠征の際も、試合後はドルトムントに赴き、招集外だった香川に単独インタビューを敢行している。会社や上司の理解あってのことだろうが、目のつけどころが違うと大いに勉強になった。
▽そんな中島は、Uー23日本代表はもちろんのこと、当時所属していたFC東京でも全体練習終了後、必ず居残ってシュート練習を繰り返していた。サッカーが好きで、好きでたまらない「少年」といった印象を誰もが持ったことだろう。
▽ニアへのインステップによる強シュート、右足インフロントに巻いてファーの上を狙ったシュートは中島の代名詞と言えるが、中島に話を聞いたところ「ゴールとGKの位置は確認して打っています」とのことだった。
▽ただ、インパクトの瞬間はボールを見ていることは一目瞭然だ。そんな中島のプレーについて、若い頃に彼を指導した東京Vの元川勝監督は、「大黒に似ている」と話していた。元日本代表FWで、現在は栃木でプレーしているが、大黒のシュートはGKの肩口や脇の下など、普通なら止められそうなシュートでも決まってしまう。
▽そのことを不思議に思った川勝監督が大黒に聞いたところ、「シュートの際にGKは見ていません。感覚でゴールの位置がわかるので」という返答を聞いて納得したという。
▽J1クラスのGKになれば、FWの視線でシュートはどこを狙っているのか予想できるという。ところが大黒のようにGKやゴールの位置を確認しないで、視線を下に向けたままシュートを打たれると、体の近くに飛んできても反応が遅れてしまうそうだ。それが大黒の、ストライカーとしての本能的なプレーだったと川勝氏は驚いていた。
▽そして中島である。彼もまた、カットインからシュートまでの動作は流れるようで、キックフェイントを交えながらどのタイミングでシュートを打つのかGKは判断しづらい。そしてインパクトの瞬間はボールに集中している。川勝氏は大黒同様に中島のシュートは予測しにくいと、彼がまだ若い頃から高く評価していた。
▽そんな中島がマリ戦やウクライナ戦でゴールを決めるのか。ベルギーといえば「小便小僧」が有名だが、日本の「サッカー小僧」が世界へ羽ばたくのか、今から試合が楽しみでならない。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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