【六川亨の日本サッカー見聞録】VARの問題点2018.03.02 13:00 Fri

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▽昨シーズンからスタートしたレフェリングカンファレンス。今年の第1回目は2月22日にメディア向けのブリーフィングが行われた。記者に対して、いつものようにテスト形式で昨シーズンに問題のあったジャッジを検証しつつ今シーズンの傾向を解説した。

▽ただ、今シーズンの傾向に対し、ジャッジに特段の変更点は報告されなかった。一番の変更点はビデオ判定の導入=VARだが、こちらはFIFAの決定待ち。小川委員長は「おそらくロシアW杯で採用されるだろうが、運営に関しては待つしかない」とし、経費面での負担と人材育成の難しさに顔をしかめていた。

▽改めて説明すると、VARは「ゴールが決まったかどうか」、「PKに値するプレーがあったかどうか」、「退場(レッドカード)に値するプレーだったか」、「警告、退場を主審が提示した選手に誤りがなかったどうか」の4つのプレーに限定され、最終決断は主審がビデオを見てジャッジする。

▽そこで問題になると小川審判委員長が話したのは、どのシーンが検証するか判断するVARの担当者の眼力だ。昨年11月、日本代表の海外遠征で、ブラジル戦では吉田のファウルからPKと判定されて日本は失点した。

▽小川審判委員長は、「仕事として関わっていると、何かを見つけなければいけないという心理に陥る危険がある」と危惧していた。実際、その通りだろう。新しいシステムの担当者としては、「成果を出す」ためにはプレーの検証を主審に報告するのが仕事になる。しかしながら、そのためにプレーは数分間中断されることになる。そのタイムラグは取材している我々だけでなく、ファン・サポーターも興ざめすることは間違いない。90分間の試合中にVARで何度も中断されたら、選手たちの闘志も下がる懸念がある。

▽様々な問題をはらむ可能性のあるVARシステム。果たしてロシアW杯ではどのような運営と結果になるのか。こちらは大会後の検証に委ねるしかないが、個人的にはかつてフランツ・ベッケンバウアーが、1966年イングランドW杯決勝(イングランド対西ドイツ)でジェフ・ハーストのシュートが決まっていたかどうかや、1986年メキシコW杯(アルゼンチン対イングランド)のディエゴ・マラドーナの「神の手ゴール」を例に出し、「誤審があったからこそ論議を呼び、長く記憶に残る」というコメントを支持したい。

▽話が横道にそれてしまったが、昨シーズンを振り返って、審判委員会は全クラブの選手に対して2~3の要望を出した。こちらは来週のコラムで紹介させていただきたい。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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【六川亨の日本サッカー見聞録】アジア大会パキスタン戦に見る「対応力」の欠如

▽インドネシアのジャカルタで開催されているサッカーのアジア大会。日本は14日の初戦でネパールを1-0で下すと、16日はパキスタンに4-0で勝って決勝トーナメント進出が確定した。ただし、チームとしてまとまった練習ができずに臨んだ大会とはいえ、2試合を通じて早くも明らかになった課題がある。それは引いて守られた相手をいかに崩すのか――フル代表がアジアでの戦いで苦戦を強いられるのと同じ課題でもあった。 ▽日本に限らず、アジアのレベルは年々アップしている。このため、実力的に劣るネパールやパキスタンといえども10-0で勝てるような時代ではない。とはいえパキスタン戦の前半のように、相手が“普通のサッカー"をすればスペースも生まれるだけに技術の差でゴールを重ねることができた。 ▽しかし、ネパール戦は相手が6BKで守備を固めてくると、なかなかこじ開けられない。同じことは16日のパキスタン戦の後半も当てはまり、日本は横パスやバックパスをつなぐだけで、ほとんど効果的な攻撃を仕掛けることはできなかった。 ▽ゴール前に人数を割いて守備を固める相手に対し有効な攻撃方法は次の4つが上げられる。ロングやミドルで相手を引き出す。ドリブルで仕掛けて数的優位な状況を作る。空中戦ならゴール前を固めていても人数に関係なく勝負できる。FKやCKなどセットプレーを有効活用する(PKを獲得できれば最高)、といったところだろう。 ▽ただし、ロングやミドルはそのリバウンドから、そしてドリブル突破はこぼれ球からカウンターを食らうリスクもある。このため常にリスクマネジメントを考慮しておかなければならない。 ▽そしてヤング・ジャパンはパキスタン戦の後半でどのような選択をしたかというと、ロングやミドルシュートは皆無。前田(松本)や旗手(順天堂大)といった快足FWはいるものの、ドリブル突破を仕掛けられるドリブラーは今大会に招集されていない。そして空中戦を仕掛けることもなければ、セットプレーにも工夫がなかった。 ▽その象徴が、後半のCKだ。2度ほどショートコーナーを選択したものの、相手に詰められると最後はバックラインまで戻し、パス回しのためのパスに終始していた。森保監督は今大会に限らず「目標はベスト4」をどの大会でも掲げると宣言した。試合間のインターバルが短い大会のため、そして4-0とリードしたので体力の消耗とケガを避ける意味でパス回しを選択したのであれば文句はつけない。 ▽しかし、ネパール戦から大幅にメンバーを変更したのは、連戦を考慮してターンオーバー制を採用したのと同時に、森保監督は多くの選手をテストしたかったのではないだろうか。だとすれば、攻撃に工夫の見られない、消極的なパス回しに終始した後半は消化不良の45分だったと言える。 ▽テレビのアナウンサーはしきりに森保監督が目指す「対応力」を強調していた。そこで改めてショートコーナーを取り上げたい。なぜヤング・ジャパンはショートコーナーを選択したのか。パキスタンが制空権を握っているのなら理解できるが、実際は日本と互角か日本が上回っていた。ならばGKの出られないライナー性のクロスを入れるとか、ニアでワンクッション入れるなど工夫はいくらでもあったはず。対戦相手に応じて戦略を変えることこと「対応力」ではないだろうか。 ▽年齢的に年下で、いきなり集まってぶっつけ本番という状況ではあるが、実力的に差があるのは明白なため、それを言い訳にはできない。改めて「対応力」のなさ、守りを固められると打つ手がなくなる日本の現実を見せつけられたアジア大会の2試合だった。願わくば、試合を重ねることで成長して欲しいものだ。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.08.17 15:00 Fri
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【六川亨の日本サッカー見聞録】鼎談で一致したロシアW杯での西野ジャパンの評価

▽今週初めのこと、ある新聞社の企画でロシアW杯を振り返り、ドイツS級ライセンスを持つS氏と、元ワールドサッカー誌編集長のN君と鼎談した。優勝したフランスはもちろんのこと、日本代表の戦いぶりや森保ジャパンの今後など、話は多岐に渡った。 ▽そこで日本代表に関しては、次の点で意見が一致した。日本が勝ったのは10人が相手のコロンビアだけで、11人で戦った残り3試合は2分け1敗とけして好成績ではないこと。ポーランド戦は残り10分をボール回しに終始したことがクローズアップされたが、そもそもグループリーグの突破が決まっていないのに、なぜポーランド戦はスタメンを6人も入れ替えたのか西野監督の采配に疑問が残ること。そしてポーランド戦で起用された宇佐美、酒井高、槙野は力量不足だったし、ケガを抱えている岡崎をスタメンで使うリスクを考慮しなかったこと。 ▽ポーランド戦で時間稼ぎをしたのに、なぜベルギー戦のCKを本田は簡単に蹴ってしまったのか。その際に吉田と昌子のCB2人がゴール前に上がったが、足の遅い吉田はともかく、なぜ昌子を最終ラインに残しておかなかったのか。ベンチはリスクマネジメントを怠ったのではないかということ。 ▽そして最終的に、これらの疑問をJFA(日本サッカー協会)技術委員会は総括することなく、「世代交代」や「オールジャパン」、「ジャパンズウェイ」と耳に心地よい言葉でロシアW杯の結果を自分たちの都合の良いように解釈し、森保ジャパンを規定路線として五輪監督のみならず日本代表の監督にも選んだことなど、かなり批判的な意見で一致した。 ▽これらの意見は他のメディアでも散見されたが、「南米勢からアジア勢初勝利」やベルギー戦での善戦により、南アW杯(パラグアイ戦はPK戦のためドローとカウントし2勝1分け1敗)の成績を下回っているにもかかわらず、西野ジャパンはその健闘を讃えられたことで深く検証されることはなかった。 ▽さらに大会全体の傾向としてポゼッションサッカーよりカウンター主体のチームが勝ち上がったこと、セットプレーからの得点が多いという結果を日本は4年後のカタールW杯にどうつなげていくのかという検証もなされていない。 ▽そして指導者の育成に関しては、S氏から「サッカー協会が費用を負担して、協会と提携しているドイツやスペインの代表チームに、将来の代表監督候補を2年間くらい帯同させるなど育てる努力をするべき。JリーグはJリーグで同じようにバイエルンやバルセロナなどクラブへのパイプを通じて指導者を送り出して育成した方がいい」という建設的な意見も出た。 ▽日本の指導者が海外で研修したのは1979年まで遡る。五輪のメダリストを対象にナショナルコーチを育成しようとした日本体育協会の助成を受け、将来の代表監督と目されていたメキシコ五輪銅メダリストの森孝慈(2011年7月17日没)が西ドイツへ留学。ボルシアMGや1FCケルンの監督を務め、奥寺をケルンに加入させたヘネス・バイスバイラーや、「トータル・フットボールの生みの親」であるリヌス・ミケルスらの指導を受けた。 ▽当初は2年の研修予定だったが、当時の代表監督だった渡辺氏が病で倒れたため1年前倒しで帰国し代表監督に就任。85年のメキシコW杯アジア予選では最終予選まで勝ち進んだものの韓国に敗れてW杯初出場はならなかった。 ▽それ以来、JFAが日本人指導者をヨーロッパへ派遣した例はない。個人的に私費でヨーロッパに渡り、指導者として研修を積んだ人々は多いものの、彼らが日本代表の各カテゴリーで指導者として起用された例も聞いたことはない。彼らが街のクラブで結果を残したら、J3やJ2クラブに引き上げる。そんな環境が日本でも整うようになればいいというのも3人の一致した意見だった。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.08.09 18:30 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】日本サッカー殿堂で感じる疑問

▽毎年恒例となっている「日本サッカー殿堂」入りの2名が投票の結果、加藤久氏とラモス瑠偉氏に決まった。そして特別選考としてメキシコ五輪の日本代表チームの掲額も発表された。式典は9月10日にJFAハウスで開催される。 ▽この「殿堂入り」、殿堂委員会が60歳以上で日本サッカー界に貢献したプレーヤーを対象に候補者名簿(7名)を作成し、サッカー関係者などの有識者による投票で、得票率75%以上が掲額対象となる。投票方法は1人2票の記名投票で、満票は123票。昨年も加藤久氏とラモス瑠偉氏が上位の得票だったが、得票率75%に満たないため殿堂入りは見送られた経緯がある。 ▽今年の候補者は加藤久氏とラモス瑠偉氏の他に、碓井博行氏(元日立)、前田秀樹氏(元古河)、松木安太郎氏(元読売クラブ)、吉田弘氏(元古河)、金田喜稔氏(元日産)の7名だった。松木氏や金田氏はテレビの解説などで馴染みもあるだろうが、その他の碓井氏、前田氏、吉田氏はオールドファンでないとピンとこないだろう。 ▽加藤久氏とラモス瑠偉氏は1993年に誕生したJリーグでもプレーしていたため、知名度は他の候補とは比較にならないだけに、得票率が高かったのは当然と言える。それにしても毎年書いてきたと思うが、この日本サッカー殿堂、今年で15回目を迎えるが、候補者が尻すぼみになっている印象が拭えない。 ▽たとえば今回は受賞できなかった碓井氏や前田氏も、日本代表の一員として「暗黒の80年代」を支えた名プレーヤーである。しかし得票率が低かったり、受賞を逃したりすれば候補から外されてしまう。同じようなことは過去にも例があり、今回特別選考で選ばれたメキシコ五輪の日本代表チームも、杉山氏や釜本氏ら個人としても殿堂入りしている選手がいる一方、同じ銅メダル組でも個人選考の対象外となった選手もいた。 ▽そんな彼らを救済する制度はいまのところない。「名誉職なのだから目くじらを立てる必要はない」と言われればそれまでだが、「片手落ち」の印象が強いのは僕だけだろうか。個人的には第1回から投票委員の末席に加えてもらっているが、11名以内の殿堂委員がどのようにして候補者を選定しているのか、その過程も不透明なままだ(細かい規約はあるけれど)。 ▽このままでは身内だけの表彰式になりかねないし、殿堂委員会の委員長(任期2年)は理事会で選出されるとはいえ、慣例的に元JFA会長(現在は大仁邦彌氏)が務めることになっている。このため「元会長の天下りポスト」と批判されても仕方ないだろう。 ▽日本サッカーの功労者に光を当てることは悪いことではない。しかし、候補者は選手に偏りすぎているきらいがある。指導者をはじめ、もっと広い視野で日本のサッカーに貢献した人にスポットライトを当てて欲しいものである。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.08.02 22:25 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】森保代表監督誕生の懸念材料

▽毎月第3木曜はJFA(日本サッカー協会)の定例理事会が開催される。7月26日は、次期日本代表の監督が理事会で承認される可能性が高いとあって、JFAハウスには昼過ぎから多くの記者・カメラマン、そしてTVクルーが詰めかけた。 ▽ところがJFAに着いてみると広報が1枚のペーパーを配っている。そこには午後6時30分から都内のホテルで「SAMURAI BLUE(日本代表)新監督 就任記者会見のご案内」とあり、6時からは田嶋会長と関塚技術委員長による経緯説明を行うとあった。 ▽ホテルの大会場を確保している周到な用意に比べ、メディアへのリリースが当日の午後というアンバランス。そのことを広報に確認すると、「ホテルのバンケットは押さえてありましたが、今日の理事会で新監督が承認されなければ会見もありません。理事会の決定を受け、急きょ会見の案内を出した次第です」とのことだった。 ▽すでにスポーツ紙の報道などから森保監督の誕生は規定路線かと思われたが、手順に則っての代表監督の選定。さすがの田嶋会長も、ハリルホジッチ監督を解任して西野監督を誕生させた剛腕から一転、JFAのルールに従って新監督の誕生に漕ぎつけたようだ。 ▽そんな森保監督誕生で注目されたのが、東京五輪の監督と日本代表の監督を兼任するか否かだ。結論から言うと、東京五輪でのメダル獲得とカタールW杯への出場という二兎を追うことになった。森保監督自身「身体は一つしかない」ということで、これからフル代表と五輪代表のスタッフ選びに着手しつつ、田嶋会長から託された「世代交代と各年代間の融合」に着手することになる。 ▽その意味では、日本人監督は適任だろう。なぜなら外国人監督は、育成よりも実績を残すことを優先させる傾向が強いからだ。ハリルホジッチ前監督は、その点若返りを狙ったものの結果として「コミュニケーション不足」を指摘されて解任された。本来なら西野技術委員長がフォローすべきだったが、監督就任後の記者会見でもわかるように「弁舌爽やかなタイプ」ではない。そこに両者の不幸があったと思う。 ▽しかし日本人監督なら、ロシアW杯後に代表からの引退を表明した長谷部や本田らのように、代表チームの若返りは急務だし、各世代間の融合というリクエストにも“忖度”することができる。ここらあたり、人当たりのソフトな森保監督は適任者だろう。 ▽今後はフル代表に五輪代表から選手を引き上げつつ、五輪代表にはアンダーカテゴリーから選手を抜擢して日本代表の若返りと、世代間の融合を図るプランを森保監督は明言した。ただし、懸念材料がないわけではない。 ▽来月の14日からはインドネシアでアジア大会がスタートする。日本は東京五輪を見据えて21歳以下の代表で臨むが、もしも勝ち進めば3位決定戦と決勝は9月1日、その前の準決勝は8月29日だ。一方フル代表は9月7日と11日にチリとコスタリカと対戦する。恐らく8月31日のJ1リーグ終了後の9月1日に代表選手の招集がかかるが、アジア大会で勝ち進めば勝ち進むほど日程は重複する。 ▽加えて海外組の乾と武藤は新天地に移り、香川にもトルコ行きの噂がある。移籍した選手はレギュラー獲得のためにテストマッチでは呼びにくいという事情もある。そして年明けにはUAEでのアジア杯が控えている。代表を取り巻くスケジュールは目白押しだ。いきなり難問に直面する森保ジャパンがどう乗り切れるのか。 ▽過密スケジュールが予想される森保監督の船出は前途多難と思える。そして彼しか選択肢がなかったのではないかと疑りたくなり、日本サッカー界の人材不足が浮き彫りになった新監督誕生の一夜でもあった。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.07.27 13:00 Fri
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【六川亨の日本サッカー見聞録】似ているイングランドと日本

▽約6週間ぶりに戻った自室は、定期購読している新聞に加え、W杯期間中に執筆した雑誌や新聞、コメントを出した掲載紙誌と郵便物で足の踏み場もなかった(もともと本や雑誌で足の踏み場は少ないが)。 ▽気は進まないものの、自分で整理しなくては片付かない。今日20日はJFA(日本サッカー協会)の技術委員会が14時から開かれて、次期日本代表監督の方向性が示されるかもしれない。取材しなければと思いつつ、そちらは知人の記者に託し、まずは請求書など郵便物の整理から手をつけた。 ▽18時前から始まった関塚技術委員長の説明によると、この日の技術委員会では「候補は森保氏か外国人か一本化されていないものの、結論は関塚委員長に一任すること」で決まったという。当の関塚委員長は記者からの質問に対し、いつもの柔和な笑顔で「答えられません」と繰り返したそうだ。 ▽今後は7月23日のJFA常務理事会と、26日の理事会の承認を得て新監督の誕生となる。恐らく森保氏が五輪代表と日本代表の監督を兼務することになるだろう。日本代表のコーチ陣らの組閣はそれ以降となる。 ▽不思議なのは、これまで代表スタッフとして活動を共にしてきた手倉森氏の名前が、新監督人事の際にいっさいマスコミに出なかったことだ。リオ五輪の監督であり、ロシアW杯でヘッドコーチ的な役割も務めた。西野監督が退任を表明したため、そのキャリアから手倉森氏が日本代表と五輪代表の総監督的な立場になってもおかしくないところだが、彼の名前が新聞紙上に出たことは一度もない。 ▽ここらあたり、何かあるのではないかと疑いたくなるのがジャーナリストの性分でもある。 ▽といったところで、今回は月曜コラムの続き――決勝戦レビューや大会総評の予定だったが、3位決定戦のベルギー対イングランド戦で書き残したことがあるので、今一度お付き合い願いたい。 ▽試合は月曜のコラムでも書いたように、ベルギーの完勝だった。GKクルトワ、CBコンパニー、ボランチにヴィツェル、CFルカクとタテのラインに核となる選手を配し、さらにE・アザールやデ・ブライネらワールドクラスの選手が攻撃陣をリードする。穴がないだけでなく、控えの選手層も充実した完成度の高いチームだった。 ▽それに対しイングランドは、空中戦に強いCBストーンズ、スピードが魅力のスターリング、精度の高い右足クロスを持つトリッピアーら好選手はいたものの、チーム全体として小粒感は否めない。その一番の原因は、イングランドには攻撃陣をリードするデ・ブライネや、チャンスメイクと同時にゴールも決められるE・アザールのような“決定的な仕事”のできる選手がいなかったからだ。このためイングランドはベスト4に進んだものの、“平凡なチーム”という印象を受けてしまった。 ▽その原因は、もちろん彼らにあるわけではない。エントリーメンバー23人は全員がスパーズやマンチェスター・U、マンチェスター・C、チェルシー、リバプールといったプレミアリーグの強豪チームでレギュラーとして活躍している。 ▽だが、その一方でベルギーの選手の所属チームを見ると、イングランド戦のスタメン11人のうちヴィツェル(天津権健)、ムニエ(PSG)、ティーレマンス(モナコ)以外の8人は前述したプレミアリーグを主戦場としている。 ▽GKを含め3バックのDF陣と前線の攻撃陣3人はいずれもスパーズやマンチェスター・U、マンチェスター・C、チェルシーの主力である。そしてプレミアリーグで“外人部隊”として活躍しているのはベルギーの選手だけではない。優勝したフランスではGKロリス(スパーズ)、決勝戦でゴールを決めたポグバ(マンチェスター・U)、今大会はノーゴールに終わったもののポストプレーで貢献したFWジルーとボランチのカンテ(チェルシー)に加え、他の強豪国もプレミアリーグでプレーする主力選手は多い。 ▽その結果、彼らがイングランドの選手からポジションを奪っている、あるいは若手選手の台頭を妨げている可能性は高い。攻守に決定的な仕事をする、もしくは創造性に富んだプレーをするポジションは外国人頼りのため、自国の選手がなかなか育たないジレンマを抱えているのがイングランドではないだろうか。 ▽翻って日本である。コロンビア戦でのプレーで川島は批判の的となった。さりとてW杯は初出場となる東口や中村にゴールマウスを任せられるかどうかは正直心許ない(その後の川島は好プレーも見せた)。CBも槙野はポーランド戦で余計なファウルからイエローカードをもらうなど安定感に欠ける。川島に限らず、吉田の後継者探しは日本にとって急務である。 ▽GKやCBは慢性的な人材不足であり、近年はそれを外国人選手、とりわけ韓国人選手で補っているのが実情だ。身長が求められるポジションだけに仕方のない面もある。Jリーグは近い将来、外国人枠の撤廃を視野に入れているとも聞く。しかしイングランドではないが、主要なポジションを外国人に頼っていると自国選手の育成に弊害が出ないとも限らない。 ▽幸いなことにJリーグはダ・ゾーンのおかげで潤沢な資金を手にした。とはいえ資金規模はプレミアリーグと比較にならないし、クラブの投資額も限られる。このため、そう簡単に“外国人天国”にはならないだろう。とはいえ、日本はGKやCBの後継者に安堵できる状況ではない。 ▽そんな堂々巡りの議論を頭の中で繰り返しながら、不手際を感じつつ試合後のセレモニーを見た、サンクトペテルブルクでの3位決定戦だった。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.07.21 13:00 Sat
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