【原ゆみこのマドリッド】今の強さを信じていいの?
2018.02.27 12:50 Tue
▽「最後はこの2人になったんだ」そんな風に私が頷いていたのは月曜の夕方、大連一方にカラスコとガイタンの移籍が正式に決まったという報をスポーツ紙のネット版で見つけた時のことでした。いやあ、前者については先週木曜のヨーロッパリーグ32強対決コペンハーゲン戦2ndレグ前から話が始まり、先発予定だった当人もベンチ入りもせず。代わって1月の市場で移籍が叶わなかったガイタンが途中出場したため、残留するんだと思っていたんですけどね。時期を同じくして、シメオネ監督の発言から、今期末で契約が終わるフェルナンド・トーレスの来季残留に疑問が持ち上がったため、こちらがカラスコと中国スーパーリーグにご一緒するんじゃないかと言われていたんですが、結局は落ち着くところに落ち着いたということ?
▽いえ、当日の午前中にはマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場を訪ね、チームメートに別れを告げたというカラスコとガイタンが抜けると、先月にはアウグストも北京人和に行っているため、アトレティコは残りのリーガとELをフィールドプレーヤー、たったの17人で戦わないといけないというのはちょっと、心配なんですけどね。シメオネ監督としては、専門のサイドアタッカーはビトロだけで十分。FWのコレアやグリーズマンも融通が利きますし、あとはコケ、サウール、トマスらの一応、本職はボランチながら、左右でもプレーできるカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)を使い回していけばいいというスタンスなんでしょうけど、やっぱり怖いのはケガや出場停止といったハプニングが重なった折かと。
▽まあ、それも今は問題になっていないため、思い悩んでも仕方ないんですが、とりあえず、マドリッド勢が先週末のリーガでどうだったか、順番にお伝えしていくことにすると。まずは土曜、午後4時15分からのレアル・マドリーvsアラベス戦のため、サンティアゴ・ベルナベウに向かった私でしたが、用心してツバ付きUVカット帽を持って行って大正解。まただんだん、日が伸びてきたため、この時間の正面スタンドは西日が直撃、5時半頃まで眩しくてピッチがよく見えないのはともかく、冬でもスペインならではの強い紫外線をずっと顔に浴びていたら、いくらベースに日焼け止めを塗るのが1年中デフォとはいえ、日本人女子にはたまったもんじゃありませんって。
▽そんなことはともかく、久々にBBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)が揃い踏み先発したその試合は前半15分頃までアクシデント続き。ええ、ふっと気づくとアラベスの選手が10人しかおらず、ペドラサがライン外で手首の治療中だったり、エルナン・ペレスがテオにぶつかられ、担架退場寸前になったり、マドリー側でもカルバハルやGKケイロル・ナバスが接触プレーで倒れていたりと、先行きが思いやられたんですが…ハーフタイムに入る直前、ようやく最初のゴールが生まれることに。17分にはエリア内からのシュートを撃つ際、足が滑って失敗、早速スタンドのpito(ピト/ブーイング)を浴びていたベンゼマがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で繋いだボールをロナウドが体を回しながら決めて、今年に入っての好調が持続しているところを証明してくれたから、頼もしいじゃないですか。
▽これで1-0とリードして後半を迎えたマドリーは再開直後、またしてもベンゼマのスルーパスからこの日は左サイドに入ったベイルが得点。更に16分にはロナウドが自身2点目を決めて、後でアラベスのアベラルド監督も「Hemos pillado al Madrid en su mejor momento/エモス・ピジャードー・アル・マドリッド・エン・ス・メホール・モメントー(マドリー最良の時期に当たってしまった)。ウチもベティスやレガネスにいい勝ち方をしていたんだが」と嘆いていたように、ほとんど勝負はついたんですが、何より意表を突いたのは残り2分、ベイルがラグアルディアにエリア内で倒されたゲットしたPKをロナウドが躊躇せず、ベンゼマに託したこと。
▽おまけにここで決めればハットトリック達成という場面でしたから、ここまでリーガで3得点と、天下のマドリーのCFとしてはあまりにゴール数が少ないため、批判の的になることが多いチームメートに華を持たせたのは当人の好感度アップに役立ったかも。その信頼に応え、ベンゼマがPKをしっかり決めてくれたため、最後は4-0という大勝で終わったマドリーでしたが、聞くとBBC3人が揃ってゴールを決めたのは2016年4月のヘタフェ戦以来のことだったとか。いえまあ、今のところ、リーガ首位との勝ち点差は14と大きいですし、この火曜午後8時(日本時間4時)からのエスパニョール戦、弟分をベルナベウに迎える土曜のヘタフェ戦にしてもこのところ、20ゴール挙げて5連勝と自慢の得点力が爆発している彼らですから、それ程、心配することはないと思うんですけどね。
▽そろそろ気にしないといけないのは来週に迫った、3月6日のCL32強対決PSG戦2ndレグので、1stレグでは3-1勝利という余裕のスコアながら、何せ、今季はタイトルゲットの最後の希望となっている大会ですからね。先発はBBCでいくのか、アラベス戦でもいいプレーを披露したルーカス・バスケスや親知らずを抜いたばかりでお休みしたアセンシオを入れるのか、ジダン監督も大いに迷うところかと。その間、マルセロ、クロース、モドリッチのケガ治るのを待ちながら、今週のリーガ2試合では適度にローテーションして、選手たちの様子を見ていくはずですが、さて。一方のPSGは週末のオリンピック・マルセイユ戦でネイマールが足首をネンザしたとはいうものの、決して油断はできませんよね。
▽そして続いてブタルケにラス・パルマスを迎えたレガネスはまだ、コパ・デル・レイ準決勝敗退から始まった不調から抜け出せないようで、得点のチャンスは何度か作ったものの、全てGKチチソラに阻まれてスコアレスドロー。いえ、まだ13位のままですし、この1ポイントで勝ち点30の節目に達したとあって、そこまで悲観したもんじゃないですけどね。ここ5試合白星のない彼らにとって気の毒なのは次節、水曜午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)にはワンダ・メトロポリターノに兄貴分を訪ねないといけないことで、いや何というか、先週末のアトティコは妙に強かったんですよ。
▽そう、翌日曜はまず、正午からビジャレアルvsヘタフェ戦がキックオフしたんですが、ネットで先発をチェックしたところ、ボルダラス監督もこの3試合あるミッドウィークリーガ開催週を乗り切るため、ローテーションしてみたんでしょうかね。ホルヘ・モリーナとアマトがベンチでレミと柴崎岳選手がスタメン入りしていたため、大急ぎで近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に駆けつける破目に。おかげで開始3分にウナルが決めたビジャレアルの先制点は見ることができなかったものの、35分にヘタフェに到来したチャンスには間に合いました。ええ、ジェネがハビ・フエゴにエリア内で倒され、PKが与えられたんですが、まさかアンヘルがGKアセンホに弾かれてしまうとは!
▽そのボールを柴崎選手が上げ、ジャウメ・コスタのクリアがハンドっぽかったのも見逃されたヘタフェは後半、頭からエースのホルヘ・モリーナを投入。その効果はすぐ現れて、3分にはそのモリーナがPKをゲットしたんですが、キッカーを務めたその当人もアセンホに弾かれてしまうって、もしやデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)、クルトワ(チェルシー)に続いて、恐るべしは元アトレティコのGK?結局、そのまま1-0で負けてしまい、前節快勝したセルタ戦での勢いを持続できなかったヘタフェですが、大丈夫。今週は水曜午後7時30分(日本時間3時30分)から、セードルフ新監督になってから、まだ1勝もしていない18位のデポルティボをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えますからね。この日はハーフで交代となった柴崎選手も今度こそ、チームに貢献する働きを披露して、土曜のマドリー戦出場に繋げてくれるといいんですが。
▽え、それでアトレティコが強いって一体、何が起きたのかって?いやあ、夜になって再び馴染みのバルに足を向けた私でしたが、キックオフから、セビージャにガンガン攻められているのを見て、最初はコパ準々決勝2ndレグのように開始28秒でゴールを入れられたらどうしようとビクビクするばかり。それでもこの日はピッチ入場時に真っ暗になり、照明塔が点滅する中、himno del centenario(イムノー・デル・センテナリオ/クラブ創設100周年の歌)がファンのアカペラで響き渡る独特なサンチェス・ピスファンの雰囲気に選手たちも免疫ができていたようで、モヤでなく、GKをオブラクが務めていたのも助けになったんでしょうかね。2分にはムリエルに至近距離から撃たれながら、しっかり弾いているって、やっぱり彼も近い将来、お隣さんかプレミアのビッグクラブに行ってしまうかも。
▽そんなアトレティコが守勢一辺倒だった試合の流れが変わったのは17分、右SBのヘスス・ナバスがふくらはぎを痛めてラユンに代わったことで、ええ、1月半ばのコパ準々決勝1stレグから、モンテッラ監督はほとんどローテーションをしていませんからね。力尽きるメンバーが出てきても仕方ないんですが、27分頃から始まった一連の出来事には困惑するばかり。だってえ、ラユンの入った敵エリア左側でラングレとボールを争っていたジエゴ・コスタにイエローカードが出たため、TVはそのシーンをリプレー、ああコスタが顔に肘打ちを喰らった恥ずかしいteatro(テアトロ/芝居)をしてひっくり返ったのがバレたのかとわかった直後、その当人がゴールを入れて喜んでいるんですよ。アトレティコは何か、マジックの類いでも使ったのかと、キョトンとしてしまったのはきっと私だけではないはず。
▽いえ、もちろんそんなことはなく、コスタがカードを受けた場所から、セビージャはFKでGKセルヒオ・リコに戻し、そこからエリア前にいたバネガにパスが出ただけなんですが、あらやだ。反省にも落ち込みにも無縁なのか、いきなりガッと詰めたコスタがボールを後ろから奪い、そのままエリア内に入ってシュート。見事に決まって先制って、ああ、だから、コパ2ndレグの時のようにこの人にはケガをしていてほしくないんですよ。これで気勢を上げたアトレティコは43分にもラングレがヘッドでクリアしたボールをグリーズマンが拾い、敵3人をすり抜けて右足を一閃。ゴール左上に決まった2点目を携えてロッカールームに戻ります。
▽そして奇跡は後半も続いて何と、5分にはセルヒオ・リコがコスタを倒したとして、リーガ20チーム中、唯一彼らだけが今季ここまで24試合、1度ももらえなかったペナルティをゲット。マルカ(スポーツ紙)の取材によると、どうやら金曜日の練習では他の選手たちが引き揚げた後、コスタとグリーズマンが第1キッカーを賭けて第3GKヴェルネルとPK対決したそうで、後者が勝って、その座を手にした時にはまさか、こんなに早くチャンスが巡ってくるとは思いもしなかったでしょうけどね。備えあれば憂いなしとはまさにこのこと。グリーズマンがネットを揺らし、とうとう3点差になったとなれば、大抵1-0とかで勝っているアトレティコ。私が大船に乗った気になったのも当然だったんですが…。
▽よっぽどコパ敗退が悔しかったんでしょうかね。止まらなかったんですよ、この日は。そう、後でシメオネ監督も「No es casualidad robar pelotas donde se robaron/ノー・エス・カスアリダッド・ロバール・ペロータス・ドンデ・セ・ロバロン(あの場所でボールを奪ったのは偶然じゃない)。相手がミスするようにプレスをかけてないと」と言っていた通り、攻撃体勢を解かなかったアトレティコは20分にもグリーズマンがメルカードのバックパスをカット。リコの前でコケに踵で送り、最近不調で叩かれ気味だったチームメートに4点目のゴールを贈ったかと思えば、いえ、次の自身のシュートはゴールポストに嫌われてしまったんですけどね。38分にはエリア内左奥からサウールの折り返しを受け、とうとうアトレティコで2度目のハットトリックを達成しているんですから、もうビックリ。
▽何せ相手は先日、CL32強対決1stレグでマンチェスター・ユナイテッドとも互角に戦ったセビージャですからね。さすがにその後、気が緩んでサラビアとノリートに2点を返されたのも2-5のスコアでは苦笑いで済む話ですが、3期連続のサモラ(リーガで失点が一番少ないGKに与えられる賞)を狙っているオブラクはイヤだったかも。ただ、ここまで頑張っても前日、バルサもジローナに6-1と大勝していたため、首位との2位アトレティコの勝ち点差7は縮まらず。確かに「Es dificil que el Barca pierda 3 o 4 partidos/エス・デフィシウ・ケ・エル・バルサ・ピエルダ・トレス・オ・クアトロ・パルティードス(バルサが3、4試合負けるのは難しい)」とコスタも言っていたんですが、いやいや。もしももしも、次のラス・パルマス戦に相手が負けて、アトレティコがレガネス戦に勝てば、日曜のカンプ・ノウでの勝ち点差は4。そこで打ち負かすことができれば、たったの1差ですから、あとはお隣さんに5月のクラシコ(伝統の一戦)で引き分けてもらえばいい?
▽まあそんなの所詮、調子のいい私の白日夢ですし、グリーズマンも「Sonamos con ganar todos los partidos y luego a ver que pasa/ソニャノス・コン・ガナール・トードス・ロス・パルティードス・イ・ルエゴ・ア・ベル・ケ・パサ(ボクらは残り試合全てに勝つことを夢見ていて、それからどうなるか見てみよう)」と言っていたぐらいですからね。正直、これまで2度しかバルサに勝ったことのないシメオネ監督が3勝目を挙げられるかも疑問ですが、相手にはジローナ戦でルイス・スアレスは失敗したものの、ジョルディ・アルバが故意に5枚目のイエローカードをもらい、次節で累積警告を済ませて直接対決に備えるなんて動きも。それだけ用心されているというのは、少しは自信を持っていいのかもしれませんが…いえ、 「el partido a partido/エル・パルティードー・ア・パルティードー(1試合1試合)」を忘れてはいけません。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
▽いえ、当日の午前中にはマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場を訪ね、チームメートに別れを告げたというカラスコとガイタンが抜けると、先月にはアウグストも北京人和に行っているため、アトレティコは残りのリーガとELをフィールドプレーヤー、たったの17人で戦わないといけないというのはちょっと、心配なんですけどね。シメオネ監督としては、専門のサイドアタッカーはビトロだけで十分。FWのコレアやグリーズマンも融通が利きますし、あとはコケ、サウール、トマスらの一応、本職はボランチながら、左右でもプレーできるカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)を使い回していけばいいというスタンスなんでしょうけど、やっぱり怖いのはケガや出場停止といったハプニングが重なった折かと。
▽そんなことはともかく、久々にBBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)が揃い踏み先発したその試合は前半15分頃までアクシデント続き。ええ、ふっと気づくとアラベスの選手が10人しかおらず、ペドラサがライン外で手首の治療中だったり、エルナン・ペレスがテオにぶつかられ、担架退場寸前になったり、マドリー側でもカルバハルやGKケイロル・ナバスが接触プレーで倒れていたりと、先行きが思いやられたんですが…ハーフタイムに入る直前、ようやく最初のゴールが生まれることに。17分にはエリア内からのシュートを撃つ際、足が滑って失敗、早速スタンドのpito(ピト/ブーイング)を浴びていたベンゼマがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で繋いだボールをロナウドが体を回しながら決めて、今年に入っての好調が持続しているところを証明してくれたから、頼もしいじゃないですか。
▽これで1-0とリードして後半を迎えたマドリーは再開直後、またしてもベンゼマのスルーパスからこの日は左サイドに入ったベイルが得点。更に16分にはロナウドが自身2点目を決めて、後でアラベスのアベラルド監督も「Hemos pillado al Madrid en su mejor momento/エモス・ピジャードー・アル・マドリッド・エン・ス・メホール・モメントー(マドリー最良の時期に当たってしまった)。ウチもベティスやレガネスにいい勝ち方をしていたんだが」と嘆いていたように、ほとんど勝負はついたんですが、何より意表を突いたのは残り2分、ベイルがラグアルディアにエリア内で倒されたゲットしたPKをロナウドが躊躇せず、ベンゼマに託したこと。
▽うーん、これについてはジダン監督など、「Cristiano ha tenido un detalle precioso con Benzema/クリスティアーノ・ア・テニードー・ウン・デタジェ・プレシオーソ・コン・ベンゼマ(ロナウドはベンゼマにいいプレゼントをした)。それがチームのムードの良さを示している」と言っていましたけどね。アラベスがまだ戦闘意欲を失っていなかった前半、ペドラサやアレクシスのシュートを弾き、後半のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)に繋げたGKケイロル・ナバスも「ボクらは驚らかなかったよ。クリスがどんな類いの人か知っているからね」と話していたものの、何せ、数年前には同僚のシャビ・アロンソやセルヒオ・ラモスから頼み込まれ、渋々譲っている姿も目撃されたロナウドですからね。
▽おまけにここで決めればハットトリック達成という場面でしたから、ここまでリーガで3得点と、天下のマドリーのCFとしてはあまりにゴール数が少ないため、批判の的になることが多いチームメートに華を持たせたのは当人の好感度アップに役立ったかも。その信頼に応え、ベンゼマがPKをしっかり決めてくれたため、最後は4-0という大勝で終わったマドリーでしたが、聞くとBBC3人が揃ってゴールを決めたのは2016年4月のヘタフェ戦以来のことだったとか。いえまあ、今のところ、リーガ首位との勝ち点差は14と大きいですし、この火曜午後8時(日本時間4時)からのエスパニョール戦、弟分をベルナベウに迎える土曜のヘタフェ戦にしてもこのところ、20ゴール挙げて5連勝と自慢の得点力が爆発している彼らですから、それ程、心配することはないと思うんですけどね。
▽そろそろ気にしないといけないのは来週に迫った、3月6日のCL32強対決PSG戦2ndレグので、1stレグでは3-1勝利という余裕のスコアながら、何せ、今季はタイトルゲットの最後の希望となっている大会ですからね。先発はBBCでいくのか、アラベス戦でもいいプレーを披露したルーカス・バスケスや親知らずを抜いたばかりでお休みしたアセンシオを入れるのか、ジダン監督も大いに迷うところかと。その間、マルセロ、クロース、モドリッチのケガ治るのを待ちながら、今週のリーガ2試合では適度にローテーションして、選手たちの様子を見ていくはずですが、さて。一方のPSGは週末のオリンピック・マルセイユ戦でネイマールが足首をネンザしたとはいうものの、決して油断はできませんよね。
▽そして続いてブタルケにラス・パルマスを迎えたレガネスはまだ、コパ・デル・レイ準決勝敗退から始まった不調から抜け出せないようで、得点のチャンスは何度か作ったものの、全てGKチチソラに阻まれてスコアレスドロー。いえ、まだ13位のままですし、この1ポイントで勝ち点30の節目に達したとあって、そこまで悲観したもんじゃないですけどね。ここ5試合白星のない彼らにとって気の毒なのは次節、水曜午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)にはワンダ・メトロポリターノに兄貴分を訪ねないといけないことで、いや何というか、先週末のアトティコは妙に強かったんですよ。
▽そう、翌日曜はまず、正午からビジャレアルvsヘタフェ戦がキックオフしたんですが、ネットで先発をチェックしたところ、ボルダラス監督もこの3試合あるミッドウィークリーガ開催週を乗り切るため、ローテーションしてみたんでしょうかね。ホルヘ・モリーナとアマトがベンチでレミと柴崎岳選手がスタメン入りしていたため、大急ぎで近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に駆けつける破目に。おかげで開始3分にウナルが決めたビジャレアルの先制点は見ることができなかったものの、35分にヘタフェに到来したチャンスには間に合いました。ええ、ジェネがハビ・フエゴにエリア内で倒され、PKが与えられたんですが、まさかアンヘルがGKアセンホに弾かれてしまうとは!
▽そのボールを柴崎選手が上げ、ジャウメ・コスタのクリアがハンドっぽかったのも見逃されたヘタフェは後半、頭からエースのホルヘ・モリーナを投入。その効果はすぐ現れて、3分にはそのモリーナがPKをゲットしたんですが、キッカーを務めたその当人もアセンホに弾かれてしまうって、もしやデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)、クルトワ(チェルシー)に続いて、恐るべしは元アトレティコのGK?結局、そのまま1-0で負けてしまい、前節快勝したセルタ戦での勢いを持続できなかったヘタフェですが、大丈夫。今週は水曜午後7時30分(日本時間3時30分)から、セードルフ新監督になってから、まだ1勝もしていない18位のデポルティボをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えますからね。この日はハーフで交代となった柴崎選手も今度こそ、チームに貢献する働きを披露して、土曜のマドリー戦出場に繋げてくれるといいんですが。
▽え、それでアトレティコが強いって一体、何が起きたのかって?いやあ、夜になって再び馴染みのバルに足を向けた私でしたが、キックオフから、セビージャにガンガン攻められているのを見て、最初はコパ準々決勝2ndレグのように開始28秒でゴールを入れられたらどうしようとビクビクするばかり。それでもこの日はピッチ入場時に真っ暗になり、照明塔が点滅する中、himno del centenario(イムノー・デル・センテナリオ/クラブ創設100周年の歌)がファンのアカペラで響き渡る独特なサンチェス・ピスファンの雰囲気に選手たちも免疫ができていたようで、モヤでなく、GKをオブラクが務めていたのも助けになったんでしょうかね。2分にはムリエルに至近距離から撃たれながら、しっかり弾いているって、やっぱり彼も近い将来、お隣さんかプレミアのビッグクラブに行ってしまうかも。
▽そんなアトレティコが守勢一辺倒だった試合の流れが変わったのは17分、右SBのヘスス・ナバスがふくらはぎを痛めてラユンに代わったことで、ええ、1月半ばのコパ準々決勝1stレグから、モンテッラ監督はほとんどローテーションをしていませんからね。力尽きるメンバーが出てきても仕方ないんですが、27分頃から始まった一連の出来事には困惑するばかり。だってえ、ラユンの入った敵エリア左側でラングレとボールを争っていたジエゴ・コスタにイエローカードが出たため、TVはそのシーンをリプレー、ああコスタが顔に肘打ちを喰らった恥ずかしいteatro(テアトロ/芝居)をしてひっくり返ったのがバレたのかとわかった直後、その当人がゴールを入れて喜んでいるんですよ。アトレティコは何か、マジックの類いでも使ったのかと、キョトンとしてしまったのはきっと私だけではないはず。
▽いえ、もちろんそんなことはなく、コスタがカードを受けた場所から、セビージャはFKでGKセルヒオ・リコに戻し、そこからエリア前にいたバネガにパスが出ただけなんですが、あらやだ。反省にも落ち込みにも無縁なのか、いきなりガッと詰めたコスタがボールを後ろから奪い、そのままエリア内に入ってシュート。見事に決まって先制って、ああ、だから、コパ2ndレグの時のようにこの人にはケガをしていてほしくないんですよ。これで気勢を上げたアトレティコは43分にもラングレがヘッドでクリアしたボールをグリーズマンが拾い、敵3人をすり抜けて右足を一閃。ゴール左上に決まった2点目を携えてロッカールームに戻ります。
▽そして奇跡は後半も続いて何と、5分にはセルヒオ・リコがコスタを倒したとして、リーガ20チーム中、唯一彼らだけが今季ここまで24試合、1度ももらえなかったペナルティをゲット。マルカ(スポーツ紙)の取材によると、どうやら金曜日の練習では他の選手たちが引き揚げた後、コスタとグリーズマンが第1キッカーを賭けて第3GKヴェルネルとPK対決したそうで、後者が勝って、その座を手にした時にはまさか、こんなに早くチャンスが巡ってくるとは思いもしなかったでしょうけどね。備えあれば憂いなしとはまさにこのこと。グリーズマンがネットを揺らし、とうとう3点差になったとなれば、大抵1-0とかで勝っているアトレティコ。私が大船に乗った気になったのも当然だったんですが…。
▽よっぽどコパ敗退が悔しかったんでしょうかね。止まらなかったんですよ、この日は。そう、後でシメオネ監督も「No es casualidad robar pelotas donde se robaron/ノー・エス・カスアリダッド・ロバール・ペロータス・ドンデ・セ・ロバロン(あの場所でボールを奪ったのは偶然じゃない)。相手がミスするようにプレスをかけてないと」と言っていた通り、攻撃体勢を解かなかったアトレティコは20分にもグリーズマンがメルカードのバックパスをカット。リコの前でコケに踵で送り、最近不調で叩かれ気味だったチームメートに4点目のゴールを贈ったかと思えば、いえ、次の自身のシュートはゴールポストに嫌われてしまったんですけどね。38分にはエリア内左奥からサウールの折り返しを受け、とうとうアトレティコで2度目のハットトリックを達成しているんですから、もうビックリ。
▽何せ相手は先日、CL32強対決1stレグでマンチェスター・ユナイテッドとも互角に戦ったセビージャですからね。さすがにその後、気が緩んでサラビアとノリートに2点を返されたのも2-5のスコアでは苦笑いで済む話ですが、3期連続のサモラ(リーガで失点が一番少ないGKに与えられる賞)を狙っているオブラクはイヤだったかも。ただ、ここまで頑張っても前日、バルサもジローナに6-1と大勝していたため、首位との2位アトレティコの勝ち点差7は縮まらず。確かに「Es dificil que el Barca pierda 3 o 4 partidos/エス・デフィシウ・ケ・エル・バルサ・ピエルダ・トレス・オ・クアトロ・パルティードス(バルサが3、4試合負けるのは難しい)」とコスタも言っていたんですが、いやいや。もしももしも、次のラス・パルマス戦に相手が負けて、アトレティコがレガネス戦に勝てば、日曜のカンプ・ノウでの勝ち点差は4。そこで打ち負かすことができれば、たったの1差ですから、あとはお隣さんに5月のクラシコ(伝統の一戦)で引き分けてもらえばいい?
▽まあそんなの所詮、調子のいい私の白日夢ですし、グリーズマンも「Sonamos con ganar todos los partidos y luego a ver que pasa/ソニャノス・コン・ガナール・トードス・ロス・パルティードス・イ・ルエゴ・ア・ベル・ケ・パサ(ボクらは残り試合全てに勝つことを夢見ていて、それからどうなるか見てみよう)」と言っていたぐらいですからね。正直、これまで2度しかバルサに勝ったことのないシメオネ監督が3勝目を挙げられるかも疑問ですが、相手にはジローナ戦でルイス・スアレスは失敗したものの、ジョルディ・アルバが故意に5枚目のイエローカードをもらい、次節で累積警告を済ませて直接対決に備えるなんて動きも。それだけ用心されているというのは、少しは自信を持っていいのかもしれませんが…いえ、 「el partido a partido/エル・パルティードー・ア・パルティードー(1試合1試合)」を忘れてはいけません。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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