【原ゆみこのマドリッド】わざわざ暴れに来ないでほしい…
2018.02.24 11:30 Sat
▽「もう人事じゃないわね」そんな風に私がおののいていたのは金曜日、UEFAの抽選会でアトレティコがヨーロッパリーグ16強対決で顔を合わすのがロコモティブ・モスクワに決まった時のことでした。いやあ、前日の32強対決2ndレグではビジャレアルとレアル・ソシエダが敗退。無事に次のラウンドに進めたのはアトレィコとアスレティックだけと、一挙に参加チームが半分になってしまったスペイン勢でしたけどね。翌日のEL関連報道は勝敗より、ビルバオに襲来したスパルタク・モスクワの準軍事的組織とまで言われるウルトラ(過激なファン)800人とアスレティックのウルトラ、そして警官隊800人の衝突についてばかりだったから。
▽実際、その日は試合の結果に関わらず、騒ぎが起こることを心配して、サン・マメス(アスレティックのホーム)側の小学校は休校。近隣のバル(スペインの喫茶店兼バー)も武器として利用されないよう、テラス席を撤去するなど、用心はしていたようですが、恐れていた通り、キックオフ前にはbengala(ベンガラ/発煙筒)やビール瓶が飛び交い、三方入り乱れて殴るわ蹴るわの乱闘状態に。途中、機動隊員の1人が心臓発作で命を落としたこともあり、懸念はロシアで開催される6月のW杯にまで広がっていましたが、名前こそ違えど、3月6日にワンダ・メトロポリターノを訪れるのも危険なフーリガンがいるモスクワのチーム。こちらは立地的にスタジアム周辺300メートル程が更地と、住宅や商業地区とは隔たりがあるものの、フレンテ・アトレティコも好戦的ですからねえ。今はただ、一般のファンが騒ぎに巻き込まれないことを祈るしかないんですが、果たしてどうなるんでしょうか。
▽まあ、その辺はまた試合が近づいたら話すことにして、今週のマドリッドでは月曜にヘタフェがセルタに3-0で快勝した試合に続き、水曜には昨年12月のクラブワールドカップで延期されていたレガネスとレアル・マドリーのミニダービーも開催。丁度、その日はCL16強対決1stレグ最後の2試合もあったため、時間をずらして午後6時45分からという、平日にしては早い始まりとなったんですが、1部2年目の弟分チームにとっては、兄貴分をブタルケに迎える試合は一大イベントですからね。正面ゲート前に止まったマドリーのチームバスとセルフィーを撮っているファンなども多く、当然ながらチケット完売でキックオフとなりましたっけ。
▽ちなみに試合の方は、ジダン監督にお休みをもらったクリスチアーノ・ロナウドが自身のインスタグラムに彼女のジョルジーナさんとプライベートジェットでお出かけの写真(https://www.instagram.com/p/Bfa_LA0FgJS/?hl=ja&taken-by=cristiano)を投稿。加えてベイルはベンチスタート、クロース、モドリッチ、マルセロも負傷中とあって、メンバー的には1月のコパ・デル・レイ準々決勝のような感じだったマドリーに対し、レガネスが前半6分、CKからの混戦で最後は倒れこんだブスティンサが地上スレスレでヘッドを押し込んで先制しているから、ビックリしたの何のって。ええ、コパではサンティアゴ・ベルナベウで1-2と勝利、逆転でマドリーから準決勝を奪い取った記憶もまだ新しいですからね。この先制点には寒風吹きすさぶ中、応援に駆けつけたファンも大いに期待を膨らませたんですが…。
▽当時とはマドリーBチーム、とりわけルーカス・バスケスとアセンシオの調子が段違いなのが致命的だったんですよ。そう、早くも11分にはカセミロのパスをルーカス・バスケスが決めて同点に持ち込んだ彼らは、29分には役割を逆転してカセミロが勝ち越しゴール。ただこれには、後でガリターノ監督も「No ayuda tener tantos partidos y tan pocos entrenamientos/ノー・テネール・アジュダ・テネール・タントス・パルティードス・イ・タン・ポコス・エントレナミエントス(これ程試合が多くて、練習回数が少ないのは助けにならない)」と言っていたように元々、週1ペースを想定して組まれたチームが年明けからの負荷に耐えられず、息切れしてしまったせいもあるんですけどね。
▽それももちろん、体力あっての話ですから、終盤にはディエゴ・リコがコバチッチをエリア内で倒してPKを献上。その頃にはベイルもピッチに入っていたんですが、「Siempre que no esta Cris, si no es Gareth soy yo, nos alternamos/シエンプレ・ケ・ノー・エスタ・クリス、シー・ノー・エス・ガレス・ソイ・ジョ、ノス・アルテルナモス(ロナウドがいなくてベイルじゃなかったら、ボクが担当。交代でやっている)」というセルヒオ・ラモスがキッカーに立ち、自身のマドリー公式戦550試合出場を祝うチーム3点目を決められてはもう、どうしようもありませんって(最終結果1-3)。
▽これで3試合連続の逆転勝利とあって、ジダン監督も「序盤の失点が集中力の欠如からなのは明白だが、firmaria que el rival marque uno y nosotros cuatro o cinco/フィルマリア・ケ・エル・リバル・マルケ・ウノ・イ・ノソトロス・クアトロ・オ・シンンコ(敵が1点を取って、ウチが4、5点取るならいい)」と言っていたように、おかげでバレンシアを追い越し、マドリーは3位に上昇。ただ、どうにも後味良く終われなかった選手が約2人いて、いや、それは試合後ブタルケのロッカールームでラモスが撮った記念写真(https://twitter.com/SergioRamos/status/966411958584053760)に当人たちだけが写ってなかったせいではありませんよ。
▽それは先日の大一番、CL16強対決PSG戦1stレグでも先発を外れ、早くもこの夏の放出まで噂され始めたベイルとラモスのPKが決まった後、ピッチに入ったもののプレー時間がたった26秒しかなかったセバージョス。いやあ、後者は前節のベティス戦で古巣のベニト・ビジャマリンを訪れた際にもファンから、「Comepipas/コメピパス(ひまわりの種を喰っている奴)」とか、「Chupabanquillo/チュパバンキージョ(ベンチ要員)」といった酷い野次を受けて心痛めていたこともあり、ジダン監督もこの試合ではとにかく、出してやらなければという思いが強すぎたんですかね。
▽おかげで時計を見るのを忘れたようで、金曜の記者会見では「Me senti muy mal y lo siento mucho/メ・センティ・ムイ・マル・イ・ロ・シエントー・ムーチョ(とても悪かったと思う。本当にすまない)」と選手に謝罪していたんですが、肝心のベイルの方は「大事な選手、100%でいてもらいたいだけ」と相変わらず、曖昧の域を出ず。要は3月6日のPSG戦2ndレグ前にケガをしてほしくないということのようですが、今季は永遠のライバルのMSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)時代が終わったのに続き、マドリーもBBC(同ベイル、ベンゼマ、ロナウド)時代が終焉を迎えつつあるんでしょうか。
▽まあ、それはまだ先の話とはいえ、リーガに関しては今でも2位のお隣さんとは勝ち点差7、首位バルサとは14もありますからね。いくらラモスが「Vamos a seguir luchando y metiendo presion en la Liga/バモス・ア・セギール・ルチャンドー・イ・メティエンドー・プレシオン・エン・ラ・リーガ(ウチは戦い続けてリーガ優勝戦線にプレッシャーをかけていく)」と張り切ろうとあまり現実味はないですし、それは土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からのアラベス戦でも同じ。
▽むしろ今季、4人目の指揮官となったアベラルド監督が大当たりして、現在、降格圏から勝ち点10離れた堂々15位を張っている相手に冷や汗をかかされることにならないようにと思うんですが、向こうは最近好調なFWムニルが出場停止に。マドリーでは木曜に親知らずを抜いたアセンシオの出場が危ぶまれていますが、ここ6試合で10得点挙げているロナウドが戻ってくるのは頼りになりますね。
▽一方、順位は13位と変わらないもの、これでリーガ3連敗となったレガネスは土曜に「Es una final para ellos y para nosotros/エス・ウナ・フィナル・パラ・ジョス・イ・パラ・ノソトロス(これは相手にとってもウチにとっても決勝のようなもの)」(ガリターノ監督)というラス・パルマス戦にブタルケで挑むんですが、向こうには先日、降格圏で苦しんでいるチームを残し、司令塔のジョナタン・ビエラが北京国安に移籍してしまうというショッキングな出来事も。でもねえ、実は2月28日まで開いている中国スーパーリーグの脅威はマドリッドのチームにも及んでいたんですよ。
▽というのも木曜にはもう1つの弟分、ヘタフェのカラが河南建業に引き抜かれたというニュースが入ったからで、ボルダラス監督によると、「Si por mi hubiera sido no habria salido/シー・ポル・ミー・ウビエラ・シードー・ノー・アブリア・サリードー(自分の判断だったら、決して出しはしなかったろう)。急なことで本人とも話してなくて、メッセージをもらっただけ」という電撃移籍だったようなんですけどね。大体がして、補強もできないこの時期、今季ほとんどの試合で先発を務めていた選手を放出して、残り3カ月以上をCB3人で賄うなんて、とても正気の沙汰とは思えませんでしたが、ヘタフェは選手のお給料も控えめですからね。今季で契約が終わる当人、緊縮予算でやりくりしているクラブ、それぞれ事情があったんでしょうが、それがまさかアトレティコにまで飛び火するとは!
▽いやあ、カラスコの大連一方への移籍交渉が進んでいるのは同クラブを買収したワンダグループとの絡みもあるものの、シメオネ監督の元、なかなか実力を開花できない当人が中国で一稼ぎした後、第2のパウリーニョ(バルサ)を狙っているとも考えられますけどね。ついでに冬の市場で移籍先が決まらなかったガイタンもどうかとクラブが勧めたところ、向こうはフェルナンド・トーレスを狙っているって、ちょっとお。いくら水曜の記者会見でシメオネ監督が「グリーズマンの残留を実現するためと同じだけの努力をトーレスについてもするつもりか」と尋ねられ、「No」と答えたからって、あまりに話が飛躍しすぎじゃない?
▽うーん、翌日のELコペンハーゲン2ndレグの後、新規オープンしたワンダの映画館のようなプレスコンファレンスルームでは、「El y yo desde nuestro lugar queremos lo mejor para el club/エル・イ・ジョ・デスデ・ヌエストロ・ルガール・ケレモス・ロ・メホール・パラ・エル・クルブ(彼も私もそれぞれの立場から、クラブにとって一番良いことを望んでいる)」(シメオネ監督)というフォローは一応、あったんですけどね。大方のマスコミはたとえ、この6月で終わるトーレスの契約を延長しないことに監督が決めていたとしても今、そんな発言をするのは大きな間違いだったんじゃないかという意見なんですが、まあそれはともかく。前夜のレガネスでの失敗に懲り、再び厳寒冬装備で私も向かったその試合ではつつがなくトーレスが先発。
▽何せこの対戦、1stレグでは1-4でアトレティコの圧勝。その割にはファンも結構、見に来てくれていたんですが、開始7分には、かつてセビージャで前人未踏のEL3連覇を達成したガメイロが威厳を見せて、エリア外からシュート。ここ3試合連続となるゴールを奪って呆気なく勝負がついてしまったため、後はラジオ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継も延々とトーレスやカラスコの話ばかりしているというオチだったんですけどね。スタンドからは「Ole, ole, ole, Cholo Simeone/オレ、チョロ・シメオネ」と「フェルナンド・トーレス、ロロロ」のカンティコ(節のついたシュプレヒコール)が同じぐらいの頻度で聞こえていましたっけ。
▽そのため、サポーターを分断する騒ぎになっていないことがわかり、私もホッとできたんですが、この日は1500人来ていたコペンハーゲンのファンも唯一、覚えてきたらしいスペイン語で「Puta Atletico!/プータ・アトレティコ」と試合中、繰り返すぐらいで、実に穏やかなもの。結局、チェルシー時代にはEL優勝経験もあるトーレスがゴールでアピールする機会もなく、1-0のまま試合は終わり、総合スコア5-1で勝ち抜けたアトレティコはELグループリーグでコペンハーゲンを抑え、首位突破。このラウンドではニースを破ったロコモティブと当たることになったんですが…言うまでもなく、心配は相手チームの実力ではなく、ロシア人ウルトラたちの振る舞いですよね。
▽そして今週末のアトレティコは日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からアウェイでセビージャ戦なんですが、何せ向こうはこの水曜、マンチェスター・ユナイテッドとの激戦をスコアレスドローで乗り切ったばかりですからね。その前日はチェルシーがスタンフォード・ブリッジでバルサと1-1で分け、両CL戦で元アトレティコのGK、デ・ヘアとクルトワが活躍していたのはともかく、現職のオブラクも3回目のサモラ(リーガで失点が最も少ないGKに与えられる賞)に向かってなく驀進中。ELではジエゴ・コスタやグリーズマンを温存と、楽することができた彼らがコパ準々決勝の敵を討つのに願ってもないチャンスかと。
▽ちなみに同じ日曜は正午(日本時間午後8時)からヘタフェもビジャレアル戦で、逆にこちらはオリンピック・リヨンに総合スコア1-4でEL敗退というショックを利用できそうですが、まあ勝負は時の運ですからね。前節セルタ戦でのホルヘ・モリーナ、アンヘルのFWコンビの活躍ぶりを見ると、柴崎岳選手の先発復帰があるかどうかも微妙ですが、今季の残り試合もだんだん少なくなってきましたし、途中出場でもいいので、何とかチームの勝利に貢献する働きを見せてもらいたいところです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
▽実際、その日は試合の結果に関わらず、騒ぎが起こることを心配して、サン・マメス(アスレティックのホーム)側の小学校は休校。近隣のバル(スペインの喫茶店兼バー)も武器として利用されないよう、テラス席を撤去するなど、用心はしていたようですが、恐れていた通り、キックオフ前にはbengala(ベンガラ/発煙筒)やビール瓶が飛び交い、三方入り乱れて殴るわ蹴るわの乱闘状態に。途中、機動隊員の1人が心臓発作で命を落としたこともあり、懸念はロシアで開催される6月のW杯にまで広がっていましたが、名前こそ違えど、3月6日にワンダ・メトロポリターノを訪れるのも危険なフーリガンがいるモスクワのチーム。こちらは立地的にスタジアム周辺300メートル程が更地と、住宅や商業地区とは隔たりがあるものの、フレンテ・アトレティコも好戦的ですからねえ。今はただ、一般のファンが騒ぎに巻き込まれないことを祈るしかないんですが、果たしてどうなるんでしょうか。
▽ちなみに試合の方は、ジダン監督にお休みをもらったクリスチアーノ・ロナウドが自身のインスタグラムに彼女のジョルジーナさんとプライベートジェットでお出かけの写真(https://www.instagram.com/p/Bfa_LA0FgJS/?hl=ja&taken-by=cristiano)を投稿。加えてベイルはベンチスタート、クロース、モドリッチ、マルセロも負傷中とあって、メンバー的には1月のコパ・デル・レイ準々決勝のような感じだったマドリーに対し、レガネスが前半6分、CKからの混戦で最後は倒れこんだブスティンサが地上スレスレでヘッドを押し込んで先制しているから、ビックリしたの何のって。ええ、コパではサンティアゴ・ベルナベウで1-2と勝利、逆転でマドリーから準決勝を奪い取った記憶もまだ新しいですからね。この先制点には寒風吹きすさぶ中、応援に駆けつけたファンも大いに期待を膨らませたんですが…。
▽当時とはマドリーBチーム、とりわけルーカス・バスケスとアセンシオの調子が段違いなのが致命的だったんですよ。そう、早くも11分にはカセミロのパスをルーカス・バスケスが決めて同点に持ち込んだ彼らは、29分には役割を逆転してカセミロが勝ち越しゴール。ただこれには、後でガリターノ監督も「No ayuda tener tantos partidos y tan pocos entrenamientos/ノー・テネール・アジュダ・テネール・タントス・パルティードス・イ・タン・ポコス・エントレナミエントス(これ程試合が多くて、練習回数が少ないのは助けにならない)」と言っていたように元々、週1ペースを想定して組まれたチームが年明けからの負荷に耐えられず、息切れしてしまったせいもあるんですけどね。
▽え、でも後半にはボービューが至近距離からのシュートをGKカシージャに弾かれてしまうなど、レガネスにも追いつくチャンスがあったんじゃないかって?まあ、そうだったんですが、当人も「ああいうのは運次第で、できるところに撃つだけだからね」と語っていたように、彼らには兄貴分のような決定力の高いFWがいないのが悲しいところ。この1年半、降格圏に落ちることなくやってこられたのはひたすら、「Hay que ser intensos, para defender major/アイ・ケ・セル・インエンソス、パラ・デフェンデール・メホール(より良く守るために激しくプレーしないといけない)」というガリターノ監督の信条を忠実に守ってきたおかげだったかと。
▽それももちろん、体力あっての話ですから、終盤にはディエゴ・リコがコバチッチをエリア内で倒してPKを献上。その頃にはベイルもピッチに入っていたんですが、「Siempre que no esta Cris, si no es Gareth soy yo, nos alternamos/シエンプレ・ケ・ノー・エスタ・クリス、シー・ノー・エス・ガレス・ソイ・ジョ、ノス・アルテルナモス(ロナウドがいなくてベイルじゃなかったら、ボクが担当。交代でやっている)」というセルヒオ・ラモスがキッカーに立ち、自身のマドリー公式戦550試合出場を祝うチーム3点目を決められてはもう、どうしようもありませんって(最終結果1-3)。
▽これで3試合連続の逆転勝利とあって、ジダン監督も「序盤の失点が集中力の欠如からなのは明白だが、firmaria que el rival marque uno y nosotros cuatro o cinco/フィルマリア・ケ・エル・リバル・マルケ・ウノ・イ・ノソトロス・クアトロ・オ・シンンコ(敵が1点を取って、ウチが4、5点取るならいい)」と言っていたように、おかげでバレンシアを追い越し、マドリーは3位に上昇。ただ、どうにも後味良く終われなかった選手が約2人いて、いや、それは試合後ブタルケのロッカールームでラモスが撮った記念写真(https://twitter.com/SergioRamos/status/966411958584053760)に当人たちだけが写ってなかったせいではありませんよ。
▽それは先日の大一番、CL16強対決PSG戦1stレグでも先発を外れ、早くもこの夏の放出まで噂され始めたベイルとラモスのPKが決まった後、ピッチに入ったもののプレー時間がたった26秒しかなかったセバージョス。いやあ、後者は前節のベティス戦で古巣のベニト・ビジャマリンを訪れた際にもファンから、「Comepipas/コメピパス(ひまわりの種を喰っている奴)」とか、「Chupabanquillo/チュパバンキージョ(ベンチ要員)」といった酷い野次を受けて心痛めていたこともあり、ジダン監督もこの試合ではとにかく、出してやらなければという思いが強すぎたんですかね。
▽おかげで時計を見るのを忘れたようで、金曜の記者会見では「Me senti muy mal y lo siento mucho/メ・センティ・ムイ・マル・イ・ロ・シエントー・ムーチョ(とても悪かったと思う。本当にすまない)」と選手に謝罪していたんですが、肝心のベイルの方は「大事な選手、100%でいてもらいたいだけ」と相変わらず、曖昧の域を出ず。要は3月6日のPSG戦2ndレグ前にケガをしてほしくないということのようですが、今季は永遠のライバルのMSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)時代が終わったのに続き、マドリーもBBC(同ベイル、ベンゼマ、ロナウド)時代が終焉を迎えつつあるんでしょうか。
▽まあ、それはまだ先の話とはいえ、リーガに関しては今でも2位のお隣さんとは勝ち点差7、首位バルサとは14もありますからね。いくらラモスが「Vamos a seguir luchando y metiendo presion en la Liga/バモス・ア・セギール・ルチャンドー・イ・メティエンドー・プレシオン・エン・ラ・リーガ(ウチは戦い続けてリーガ優勝戦線にプレッシャーをかけていく)」と張り切ろうとあまり現実味はないですし、それは土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からのアラベス戦でも同じ。
▽むしろ今季、4人目の指揮官となったアベラルド監督が大当たりして、現在、降格圏から勝ち点10離れた堂々15位を張っている相手に冷や汗をかかされることにならないようにと思うんですが、向こうは最近好調なFWムニルが出場停止に。マドリーでは木曜に親知らずを抜いたアセンシオの出場が危ぶまれていますが、ここ6試合で10得点挙げているロナウドが戻ってくるのは頼りになりますね。
▽一方、順位は13位と変わらないもの、これでリーガ3連敗となったレガネスは土曜に「Es una final para ellos y para nosotros/エス・ウナ・フィナル・パラ・ジョス・イ・パラ・ノソトロス(これは相手にとってもウチにとっても決勝のようなもの)」(ガリターノ監督)というラス・パルマス戦にブタルケで挑むんですが、向こうには先日、降格圏で苦しんでいるチームを残し、司令塔のジョナタン・ビエラが北京国安に移籍してしまうというショッキングな出来事も。でもねえ、実は2月28日まで開いている中国スーパーリーグの脅威はマドリッドのチームにも及んでいたんですよ。
▽というのも木曜にはもう1つの弟分、ヘタフェのカラが河南建業に引き抜かれたというニュースが入ったからで、ボルダラス監督によると、「Si por mi hubiera sido no habria salido/シー・ポル・ミー・ウビエラ・シードー・ノー・アブリア・サリードー(自分の判断だったら、決して出しはしなかったろう)。急なことで本人とも話してなくて、メッセージをもらっただけ」という電撃移籍だったようなんですけどね。大体がして、補強もできないこの時期、今季ほとんどの試合で先発を務めていた選手を放出して、残り3カ月以上をCB3人で賄うなんて、とても正気の沙汰とは思えませんでしたが、ヘタフェは選手のお給料も控えめですからね。今季で契約が終わる当人、緊縮予算でやりくりしているクラブ、それぞれ事情があったんでしょうが、それがまさかアトレティコにまで飛び火するとは!
▽いやあ、カラスコの大連一方への移籍交渉が進んでいるのは同クラブを買収したワンダグループとの絡みもあるものの、シメオネ監督の元、なかなか実力を開花できない当人が中国で一稼ぎした後、第2のパウリーニョ(バルサ)を狙っているとも考えられますけどね。ついでに冬の市場で移籍先が決まらなかったガイタンもどうかとクラブが勧めたところ、向こうはフェルナンド・トーレスを狙っているって、ちょっとお。いくら水曜の記者会見でシメオネ監督が「グリーズマンの残留を実現するためと同じだけの努力をトーレスについてもするつもりか」と尋ねられ、「No」と答えたからって、あまりに話が飛躍しすぎじゃない?
▽うーん、翌日のELコペンハーゲン2ndレグの後、新規オープンしたワンダの映画館のようなプレスコンファレンスルームでは、「El y yo desde nuestro lugar queremos lo mejor para el club/エル・イ・ジョ・デスデ・ヌエストロ・ルガール・ケレモス・ロ・メホール・パラ・エル・クルブ(彼も私もそれぞれの立場から、クラブにとって一番良いことを望んでいる)」(シメオネ監督)というフォローは一応、あったんですけどね。大方のマスコミはたとえ、この6月で終わるトーレスの契約を延長しないことに監督が決めていたとしても今、そんな発言をするのは大きな間違いだったんじゃないかという意見なんですが、まあそれはともかく。前夜のレガネスでの失敗に懲り、再び厳寒冬装備で私も向かったその試合ではつつがなくトーレスが先発。
▽何せこの対戦、1stレグでは1-4でアトレティコの圧勝。その割にはファンも結構、見に来てくれていたんですが、開始7分には、かつてセビージャで前人未踏のEL3連覇を達成したガメイロが威厳を見せて、エリア外からシュート。ここ3試合連続となるゴールを奪って呆気なく勝負がついてしまったため、後はラジオ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継も延々とトーレスやカラスコの話ばかりしているというオチだったんですけどね。スタンドからは「Ole, ole, ole, Cholo Simeone/オレ、チョロ・シメオネ」と「フェルナンド・トーレス、ロロロ」のカンティコ(節のついたシュプレヒコール)が同じぐらいの頻度で聞こえていましたっけ。
▽そのため、サポーターを分断する騒ぎになっていないことがわかり、私もホッとできたんですが、この日は1500人来ていたコペンハーゲンのファンも唯一、覚えてきたらしいスペイン語で「Puta Atletico!/プータ・アトレティコ」と試合中、繰り返すぐらいで、実に穏やかなもの。結局、チェルシー時代にはEL優勝経験もあるトーレスがゴールでアピールする機会もなく、1-0のまま試合は終わり、総合スコア5-1で勝ち抜けたアトレティコはELグループリーグでコペンハーゲンを抑え、首位突破。このラウンドではニースを破ったロコモティブと当たることになったんですが…言うまでもなく、心配は相手チームの実力ではなく、ロシア人ウルトラたちの振る舞いですよね。
▽そして今週末のアトレティコは日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からアウェイでセビージャ戦なんですが、何せ向こうはこの水曜、マンチェスター・ユナイテッドとの激戦をスコアレスドローで乗り切ったばかりですからね。その前日はチェルシーがスタンフォード・ブリッジでバルサと1-1で分け、両CL戦で元アトレティコのGK、デ・ヘアとクルトワが活躍していたのはともかく、現職のオブラクも3回目のサモラ(リーガで失点が最も少ないGKに与えられる賞)に向かってなく驀進中。ELではジエゴ・コスタやグリーズマンを温存と、楽することができた彼らがコパ準々決勝の敵を討つのに願ってもないチャンスかと。
▽ちなみに同じ日曜は正午(日本時間午後8時)からヘタフェもビジャレアル戦で、逆にこちらはオリンピック・リヨンに総合スコア1-4でEL敗退というショックを利用できそうですが、まあ勝負は時の運ですからね。前節セルタ戦でのホルヘ・モリーナ、アンヘルのFWコンビの活躍ぶりを見ると、柴崎岳選手の先発復帰があるかどうかも微妙ですが、今季の残り試合もだんだん少なくなってきましたし、途中出場でもいいので、何とかチームの勝利に貢献する働きを見せてもらいたいところです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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