【元川悦子の日本代表にこの選手を呼べ!】「なんで俺を呼ばへんのや」。ブラジル予備登録から4年。最後の追い上げ見せる23歳の点取屋・南野拓実2018.02.21 12:00 Wed

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▽15日のヨーロッパリーグ(EL)ラウンド16、レアル・ソシエダ戦。レッドブル・ザルツブルクは敵地・サンセバスチャンのエスタディオ・アノエタで1-2の劣勢を強いられたまま、90分を過ぎた。ギリギリまで追い込まれる中、アディショナルタイムが4分に差し掛かったところでミラクルが起きる。ペナルティエリア付近に上がったMFハイダラパスを受けた右サイドバックのライトナーが絶妙の折り返しを中央へ。そこに飛び込んで右足を振り抜いたのが背番号18・南野拓実だった。76分から投入されていた切り札はマルコ・ローズ監督の期待に応える値千金の同点弾をゲット。敵地での勝ち点1という大仕事をやってのけたのだ。

▽その南野が2014年ブラジルワールドカップ日本代表予備登録メンバーだったことを知っているサッカーファンは少なくないはずだ。当時まだセレッソ大阪所属の19歳だったが、アルベルト・ザッケローニ監督(現UAE代表監督)に非凡な才能を認められ、あと一歩で本大会に滑り込みそうだった。

▽最後の最後でメンバー外となった悔しさを胸に、南野は2015年1月にザルツブルクへ移籍。後半戦だけを戦った1シーズン目こそオーストリア・ブンデスリーガ3得点にとどまったが、15-16シーズンは10点、16-17シーズンは11点と2年連続2ケタ得点をマークする。その活躍ぶりだっただけに、今季は同じレッドブルがメインスポンサーを務めるドイツ・ブンデスリーガのライプツィヒへのステップアップが有力視されていた。

▽ところが、新天地への移籍が叶わなかったうえ、シーズン序盤に負傷。1カ月半にわたる長期離脱を強いられる。そのタイミングがちょうど2018年ロシアワールドカップ出場権を獲得した頃。新戦力テストの数少ない場となった昨年10月のニュージーランド(豊田)&ハイチ(横浜)2連戦、ブラジル(リール)&ベルギー(リエージュ)2連戦の日本代表招集も見送りとなり、ロシア行きの可能性がかなり低くなったと見られていた。

▽ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も2015年10月のイラン戦(テヘラン)で南野を呼び、残り2分でピッチに送り出したが、試したのはその1回だけ。「2~3年後には日本代表に定着しているだろう」という自身のコメントを忘れたかのように、彼の招集を見送り続けている。

▽同じリオ世代の久保裕也(ヘント)や浅野拓磨(シュツットガルト)が日本代表で存在感を高めてきたた2016年秋、ザルツブルクの練習場で取材に応じた南野は「『なんで俺を呼ばへんのや』という気持ちはすごくある。呼んでくれたら日本代表の力になれる自信はある」と語気を強めていた。甘いマスクにも関わらず、誰よりも負けず嫌いで、闘争心を前面に押し出すこの男は世界の大舞台でもタフに、そしてアグレッシブ戦える選手。それが冒頭のソシエダ戦でよく分かったはずだ。ハリルホジッチ監督のその一挙手一投足を目の当たりにしたのであれば、3月のマリ&ウクライナ(ともにリエージュ)2連戦で最後のアピールのチャンスを与えるべきではないだろうか。

▽南野の主戦場である右サイドのポジションはここまで久保と浅野がリードしているが、久保はヘントでトップ下を担っていて、右サイドでのプレーに少なからず戸惑いを覚えている様子だ。浅野に至っては2018年に入ってから一度もシュツットガルトで試合に出ていない。その代役として、2017年東アジアカップ(E-1選手権)で頭角を現した伊東純也(柏)が浮上。確かに新世代のスピードスターも乗りに乗ってはいるが、南野の国際経験値と決定力を見逃すのはもったいない。

▽それに加えて、南野には4年越しのワールドカップへの強い思いがある。95年1月生まれでありながら、98年フランスワールドカップの日本代表の戦いぶり、あるいは名勝負と言われたイングランドvsアルゼンチン、決勝のフランスvsブラジルなどのビデオを擦り切れるほど見て、脳裏に焼き付けているこの男にとって、ワールドカップというのはやはり特別なもの。ブラジル大会の時はまだ19歳でピッチに立てるという実感はなかっただろうが、3年間欧州で戦い抜いてきた今は違う。コロンビア、セネガル、ポーランドといった相手と対峙しても、冷静に自分自身の力を発揮できるはずだ。

▽南野が最後の最後にロシアへ滑り込むためには、ソシエダ戦を皮切りに、今季終盤戦に爆発的なパフォーマンスを見せ、目覚ましい結果を残すこと。それしかボスニア人指揮官の心を動かす術はない。イングランドやドイツでプレーしている選手より所属リーグの格が低いことを自覚して、そのマイナス面を感じさせないほどの強烈なインパクトを残せば、風向きは変わってくるかもしれない。

▽ここからが南野の最後の勝負だ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。

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【2022年カタールへ期待の選手②】ロシア出番なしの中で感じた「個のレベルアップの必要性」。リベンジを期す4年後/遠藤航

▽フランスがクロアチアを下して2度目の優勝を飾った2018年ロシアワールドカップ決勝から3日。約2カ月間中断されていた2018年J1が再開され、浦和レッズは名古屋グランパスをホーム・埼玉スタジアムに迎えた。この一戦で大いなる輝きを放ったのが、日本代表の一員としてロシアに参戦しながら出番なしに終わった遠藤航だった。 ▽3-4-3の右DFに陣取った背番号6はマウリシオ、槙野智章と連携しながら元ブラジル代表FWジョーを確実にマーク。まず守備の仕事をしっかりとやり切った。そして前半40分、柏木陽介の左CKに鋭く反応し、ゴール正面で相手に競り勝ってヘディングシュートを決め、チームに大きな先制点をもたらすことに成功する。 ▽浦和はその後1点を返されたものの、後半もしっかりとした守備組織を構築し続ける。そういう中で槙野の2点目が生まれ、勝利に大きく近づいた後半33分、再び遠藤航の決定力が炸裂する。1点目と同じ柏木からの左CKに対して今度はニアサイドに侵入。相手のマークを振り切って1試合2ゴールをマークし、3-1の勝利の原動力となったのだ。 ▽「1点目はどっちかというと陽介さんのキックに合わせて自分が動いた形。2点目は僕主導というか、あのニアの部分はチームとして狙いがあった。その1本前に陽介さんが蹴って前に引っかかったところがあったんで、もう1回来るからってイメージをしていた。しっかりいいボールを蹴ってくれたんで、うまく決められましたね」と本人もしてやったりの表情を浮かべていた。 ▽ロシアワールドカップでは総得点の約4割がリスタートから生まれた。現代サッカーにおけるセットプレーの重要性がより一層高まったことが実証された。そういう意味でも遠藤のようにリスタートから得点できる選手は今後の日本代表に必要不可欠と言っていい。今回は出番なしに終わったものの、4年後の2022年カタールワールドカップは何としてもピッチに立ちたいという強い思いが今、彼の中にはあるはずだ。 ▽「ロシアで試合に出れてれば自分の世界も少しは変わったのかなと思うけど、やっぱりワールドカップに行くのと行かないのでは大きく違った。それは確かです。日本には相手を上回る組織力があると思ったし、実際、グループリーグでそれを体現していた。 ▽ただ、ベルギー戦の最後のカウンターでやられた場面では『個の部分』を強く感じました。試合の最後の最後であれだけのスプリントができるっていうのは日本には足りないところだし、世界との差なのかもしれない。あのカウンターに自分の見えきたものが集約された感がある。やっぱり個を伸ばせば、組織力も上がる。最終的にはそこかなと。4年後のメンバーがどうなるか分かんないけど、やっていくことは整理されてると思いますね」と遠藤は神妙な面持ちで語っていた。 ▽リスタートの得点力という強みを前面に押し出すことは代表生き残りのためにも重要だ。ただ、その前段階として、どのポジションで勝負していくかをある程度、ハッキリさせなければいけないところはあるだろう。ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督体制ではボランチ、西野朗監督体制では右サイドバックとして位置づけられてきた遠藤だが、浦和では3バックの右や中央を担うことが多い。そのユーリティリティ性は大きな魅力なのだが、代表ではどっちつかずになってしまいがちだ。現に同じような位置づけだった酒井高徳(HSV)が「代表ではどの役割をやっても自分の中で納得いく仕事ができなかった」と語り、27歳の若さで一線を退く決断をしている。遠藤には、2つ年上の先輩が歩んだ軌跡をいい教訓にしてほしいのだ。 ▽さしあたって、近未来の代表の中で人材不足が顕著なのは、ボランチとサイドバックだ。ボランチは絶対的柱だった長谷部誠(フランクフルト)が代表引退を表明。今後は柴崎岳(ヘタフェ)が軸を担うと見られるが、守備的な遠藤がパートナーになれる可能性は少なくない。サイドバックにしても酒井高徳が去った今、酒井宏樹(マルセイユ)と長友佑都(ガラタサライ)をサポートできる人材がいなくなってしまう。新体制になれば遠藤と同じリオデジャネイロ五輪世代の室屋成(FC東京)らの抜擢が有力されるものの、彼にも実績はほどんどない。遠藤がそこに割って入り、徐々に出場機会を増やしていくことは十分、考えられるシナリオなのだ。 ▽そうやって代表で何らかのスペシャリティを見出し、強固な立場を築いていくことが、4年後のカタールでのリベンジにつながる。リオ世代でずっとキャプテンを務めてきた通り、彼の人間力と統率力は全く問題ない。次の代表を森保一率いようが、別の指揮官が就任しようがその評価は不変のはずだ。20代前半以下の世代にはなかなかそういう信頼のおける人物が見当たらないだけに、この男の存在価値は大きい。それをまずは浦和でしっかりと示し続け、日本代表にとって必要不可欠な人間だと認めさせること。ロシアでピッチに立てなかった遠藤航の逆襲はそこから始まる。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2018.07.21 13:00 Sat
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【2022年カタールへ期待の選手①】吉田麻也とともにファルカオ、ニアン、ルカク封じに奔走。次世代の日本の守備の要へ/昌子源

▽わずか10秒足らずの電光石火のカウンターからナセル・シャドリ(WBA)の逆転弾が決まり、直後にタイムアップの笛が空しく鳴り響いた瞬間、日本代表スタメン最年少であり、唯一の国内組として奮闘した昌子源(鹿島)がピッチに倒れ込んで号泣した。時間が経っても立ち上がれず、長友佑都(ガラタサライ)に抱きかかえられるように起き上がったが、それほどまでに8強の壁を破れなかった悔しさを誰よりも強く感じていたのだろう。 ▽「相手のすごいカウンターってこういうのかなと。僕の全速力で追いかけたけど、追いつけないスピードっていうか、加速していくし、スピードが落ちることなく、気付けば僕らのゴール前にいるしね。最後のスライディングも僕やったし、なんで追いつけんのやろっていう悔しさと…。なんか不甲斐なかったですね、いろいろと」と背番号3を背負って、吉田麻也(サウサンプトン)とともにロメル・ルカク(マンチェスター・ユナイテッド)封じに全身全霊を注いだ男は、最後の砦になり切れなかったことを悔やんだ。 ▽それでも今回の2018ロシアワールドカップで昌子が果たした役割は大いに目を引くものがあった。大会前の予想では、吉田の相棒は槙野智章(浦和)だと見られていたが、最後のテストマッチだった6月12日のパラグアイ戦(インスブルック)での安定感あるパフォーマンスが西野朗監督の琴線に触れ、13日にベースキャンプ地・カザン入りしてからはずっとレギュラー組に入っていたという。 ▽迎えた19日の初戦・コロンビア戦(サランスク)。背番号3に課せられた仕事は相手エースFWラダメル・ファルカオ(モナコ)封じ。開始早々の3分に相手に退場者が出て、香川真司(ドルトムント)のPKで1点をリードするという追い風が吹いたことも大きかったが、昌子はファルカオに徹底マークを見せ、仕事らしい仕事をさせない。その冷静さと落ち着きはワールドカップ初参戦とは思えないほどだった。ファン・フェルナンド・キンテーロ(リーベル・プレート)に直接FKを決められ、無失点試合ができなかったことはチームとして悔やまれるところだったが、昌子の守備は高評価を与えられるべきものだった。 ▽「『国内組唯一』とか『俺がJリーグを背負ってる』というのは全くなかった。むしろワールドカップ出場を決めたオーストラリア戦(2017年8月=埼玉)の方が緊張しましたね。今回はそれに比べたらそんなに緊張することなく落ち着いてやれたかな」と本人は大舞台にめっぽう強い自分に胸を張った。 ▽首尾よく初戦で勝ち点3を得た日本は、続く24日のセネガル戦(エカテリンブルク)でも勝ち点1を手に入れる。この試合も2度のリードを許す苦戦を余儀なくされたが、乾貴士(ベティス)と本田圭佑(パチューカ)が同点弾を決めるという劇的な展開だった。昌子の今大会2度目の大仕事はエムバイェ・ニアン(トリノ)封じ。体格的に大きく下回るだけに体をぶつけ、相手の自由を奪うことに徹する。今大会はVAR判定が導入されているから、不用意に手を使ったり、体当たりをするようなことがあれば、即座にPKやレッドカードの対象になりかねない。細心の注意を払いながら相手エースFWの失点を許さなかったことで、彼の地位は確固たるものになった。 ▽28日の3戦目・ポーランド戦(ボルゴグラード)は先輩・槙野に先発の座を譲ったが、何とか2位通過したことで、待望の決勝トーナメントの舞台に立つことができた。その相手・ベルギーはFIFAランキング3位の優勝候補に挙げられる強豪。ルカク筆頭に、エデン・アザール(チェルシー)、ケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)らイングランド・プレミアリーグで華々しい活躍を見せるタレント集団だ。前日会見に出席したアザールは「もうブラジル戦のことを考えているのではないか?」と問われて「日本に勝てるかどうか分からない」と謙虚な物言いを見せたが、本音の部分では「昨年11月の親善試合(ブルージュ)でアッサリ倒した相手に負けるはずがない」という余裕が見て取れた。 ▽そんな彼らの鼻をへし折ることが日本に求められたが、前半から一方的に押し込まれる。そこで体を張ったのが吉田と昌子。彼らのルカク封じは確かに見る者の心を打った。「僕のルカク選手のイメージは、とてつもないところにあった。それで実際にやってみて、その通りかそれ以下だった方が楽じゃないですか。でもルカク選手はイメージと同等、もしくは上に来たから、すごいいっぱいいっぱいでしたね」と背番号3は述懐したが、それでも結果的にルカクにゴールを許していない。そこは誇れる点だろう。 ▽ただ、日本としては4試合7失点。守備陣としてはその現実を受け止めなければならない。「日本を守れる男になりたい」と昌子は痛感したというが、だったら本当にそういう存在になってもらうしかない。今大会を最後に長谷部と本田という10年以上、代表で戦ってきたベテランが去り、吉田を中心とした新たな陣容で4年後に向かっていくことになるが、昌子が担う仕事も少なくない。これからは「スタメン最年少」ではなく、「日本の大黒柱の1人」としてチームを引っ張らなければならない。それを強く自覚して、彼にはさらなる高みを目指してほしい。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2018.07.07 19:00 Sat
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【ロシア注目選手②】「半端ない男」の真の実力が試されるセネガル戦。2戦連発で日本を16強へ導けるか?/大迫勇也

▽「(香川真司=ドルトムントがPKを取る起点となるプレーは)個人的に決めたかったけど、あそこでDFに勝てたことは4年間ドイツでやってきた積み重ねだと思います。2点目はホントに夢だった。ワールドカップのゴールを取れた嬉しさはあります」 ▽19日の2018年ロシアワールドカップ初戦・コロンビア戦(サランスク)で2得点に絡んだ大迫勇也(ブレーメン)は心からの安堵感をのぞかせた。4年前の2018年ブラジルワールドカップでは初戦・コートジボワール戦(レシフェ)と第2戦・ギリシャ戦(ナタル)に続けて先発しながら世界の高い壁に阻まれた。その失望感と悔しさを糧に4年間力を蓄えてきただけに、あまり普段は感情を表に出さない彼も思わず喜びが前面に出た。 ▽そもそも大迫が今回のロシアワールドカップへの挑戦権を得たのは、2016年11月の最終予選・サウジアラビア戦(埼玉)で圧倒的な存在感を示したからだった。2015年のヴァイッド・ハリルホジッチ監督就任当初は代表に呼ばれていた彼だが、格下・シンガポールにまさかのスコアレスドローを余儀なくされた6月の2次予選初戦の後、1年5カ月も日の丸をつける機会から遠ざかった。 ▽前指揮官は1トップ要員として岡崎慎司(レスター)、浅野拓磨(シュツットガルト)、武藤嘉紀(マインツ)らを次々と起用。2016年10月のオーストラリア戦(メルボルン)では本田圭佑(パチューカ)をトライするほど、これという人材が見つけられずに苦しんでいた。が、ドイツ・ブンデスリーガ1部で地道に自己研鑽に励んでいた大迫はその誰よりもボールが収まり、前線で起点を作れる。タテに速い攻撃を志向したハリル監督にとって、時間を作れる大迫の存在はすぐさま必要不可欠となり、最終予選終盤も、その後のテストマッチでも絶対的1トップに君臨し続けた。 ▽だが、その大迫も西野朗監督体制では他のFWと横一線の立場に置かれた。そういう環境の変化と2度目のワールドカップを前にした重圧もあったのか、5月21日の国内合宿からしばらくの間は「今はまだ話したくない」とメディアに口を閉ざし続けた。5月30日のガーナ戦(日産)を経て、オーストリア・ゼーフェルト合宿に入った直後も「試合があるんで、そこでしっかりとチームとしてやるべきことを見せればいいと思います。何を言っても説得力がないし、納得してもらえないと思うから、ホントにピッチの中でやるだけだから」と手短にコメントして日々のトレーニングに集中した。もともと饒舌なタイプではなかったが、そこまで外部をシャットアウトするのは初めて。大迫の中では「ロシアで結果を残すことが全て」という悲壮な決意があったのだろう。 ▽その覚悟がコロンビア戦で見事に結実し、背番号15は4年前とは別人のような勇敢なパフォーマンスを示した。8日のスイス戦(ルガーノ)ではハイプレスに行き過ぎて前半35分過ぎにエネルギー切れになり、負傷もあって早々とベンチに下がったが、今回は最後までペースダウンすることはなかった。90分間の走行距離は8・6kmしかなかったが、スプリント回数の38回は原口元気(ハノーファー)の56回、乾貴士(ベティス)の48回、長友佑都(ガラタサライ)の45回に続く数字。大迫がどれだけ前から献身的にプレスをしていたか、機を見てゴール前に走っていたかが、このデータからよく分かるはずだ。 ▽コロンビア戦での大活躍によって、日本国内では2009年高校サッカー選手権で対戦相手の滝川第二の主将が語った「大迫半端ないって」という名言が再び沸騰しているという。大迫勇也の知名度も一気に上がり、本田、岡崎、香川の「ビッグ3」に迫る勢いとも言われている。この過熱感を一時的なもので終わらないためにも、24日のセネガル戦(エカテリンブルク)でも継続的にインパクトを残すことが肝要だ。日本は過去5回のワールドカップのうち、2002年日韓、2010年南アフリカの2大会でベスト16入りしているが、そのいずれも3戦目に突破が決まった。仮に今回2戦目で勝ち上がりが決まるようなら偉業に他ならないし、今後の戦いを考えても非常に有利になる。それを決めるゴールを大迫が奪ったとしたら、この男の存在は未来永劫、人々に語り継がれるようになるはずだ。 ▽「今はストライカーとしていい感覚を持っていますし、みんなの雰囲気もすごくいいんでね、ロッカールームに帰ったら笑顔が見れたことですごくジーンと来ましたし、まだまだ試合は続くんで、頑張っていきます」とコロンビア戦後にしみじみと語った大迫。その感動を次も、またその次も味わえたら最高だ。その方向へとチームをけん引するのは、もはや「ビッグ3」ではない。そういう強い自覚を胸に、大迫勇也は日本の絶対的点取り屋への道をひた走るべきだ。さしあたって次戦では、カリドゥ・クリバリ(ナポリ)とサリフ・サネ(ハノーファー)の両センターバックがコントロールするセネガル守備陣の綻びを虎視眈々と突くプレーが求められる。それを泥臭く粘り強く実行して、2戦連続ゴールをもぎ取ってほしいものである。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2018.06.23 17:00 Sat
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【ロシア注目選手①】究極のポリバレントプレーヤー。3バックでも4バックでも力強く西野ジャパンを支える/原口元気

▽5月31日に2018年ロシアワールドカップ最終登録メンバー23人が決まり、2日から直前合宿地であるオーストリア・ゼーフェルトで調整している日本代表。ドイツ国境に近い現地は標高1200mの高地で、ノルディック複合の渡部暁斗(北野建設)が平昌五輪銀メダル獲得前にワールドカップ3連覇を果たした縁起のいい場所でもある。 ▽ただ、代表が現地入りしてからは天気の変化が目まぐるしい。晴れ間がのぞく日中は25度前後の暑さになるが、連日のように雷雨に見舞われ、夕方以降は気温が15度以下に急降下する。寒暖差が大きいだけに、調整に失敗するとロシア本番に支障が出かねない。香川真司(ドルトムント)は「海より山の方がいいですね。静かで集中できるし」と話していたが、この環境をプラスに活用していくことが突貫工事を迫られている今の日本代表にとっては重要だろう。 ▽西野朗監督は5月30日のガーナ戦(日産)でトライした[3-4-3]の新布陣と、これまでの4バックをベースとしたフォーメーションを併用すべく練習に励んでいる。「監督が言っていたのは、4枚は積み上げてきた部分があるし、すぐに立ち返れるから、3枚をできるようにするということ」と原口元気(デュッセルドルフ)が話すように、戦い方の幅を広げるべく鋭意奮闘中だ。2週間足らずの準備期間でこうしたアプローチはリスキーだが、それをやり切るには選手たちの高度な柔軟性と適応力が強く求められてくる。1人何役もこなせる原口のような存在がキーマンになるのは間違いないだろう。 ▽実際、原口のカメレオンぶりは凄まじいものがある。[3-4-3]システムで右ウイングバックと右シャドウをこなしたと思いきや、4日の紅白戦では[4-2-3-1]の右MFでプレー。3本目の途中にはダイナミックなドリブル突破から豪快な一撃を決めている。ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督時代には左MFやボランチ、右サイドバックでも使われ、ヘルタでも1トップに入ったことがあるほど。そのマルチぶりは危機に瀕するチームにとって本当に頼もしい。 ▽「自分はどこでもできるとは思ってる。4枚の前(2列目)は一番得意だし、やりたいと思ってるけど、自分のよさは『やれ』と言えわれたことをやり切れたり、求められてることを深く表現してできること。そこは僕の強みだし、しっかり表現できたらいい」と本人も自信をのぞかせる。 ▽4月の監督交代によって、本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)、香川の「ビッグ3」らザックジャパン時代の中心選手が形になった今回のチームだが、ワールドカップ初参戦のフレッシュなメンバーが奮起しなければ、ミラクルは起こせない。2016年9月のタイ戦(バンコク)を手始めに、10月のUAE(埼玉)・オーストラリア(メルボルン)、11月のサウジアラビア(埼玉)と最終予選4戦連続ゴールの日本新記録を樹立した原口はその筆頭だろう。 ▽この大活躍の後、彼は所属していたヘルタ・ベルリンで移籍騒動に巻き込まれ、ドイツでの出場機会が激減。「試合に出ていない選手は呼ばない」というハリル前監督の方針もあり、代表でも厳しい立場に追い込まれた。ロシア切符を手にした昨年8月のオーストラリア戦(埼玉)でも乾貴士(エイバル)にスタメンの座を奪われる事態に直面。本人も焦りをにじませた。 ▽しかしながら、今年1月のドイツ・ブンデス2部・デュッセルドルフ移籍によって再び出番を勝ち取り、復調のきっかけをつかんだ。2月2日のザントハウゼン戦での脳震盪という予期せぬアクシデントにも見舞われ、一時は起き上がることも、携帯を見ることも禁止される状態に陥ったが、ともと誰よりもタフで負けん気の強い男は奇跡的な回復を遂げ1カ月でピッチに戻ってきた。この苦しみもロシアへの思いを深める大きな原動力になったはずだ。 ▽代表でのゴールはすでに1年半も遠ざかっているが、ゼーフェルト合宿での一挙手一投足を見ると、鋭い得点感覚が戻りつつある印象だ。直近には8日のスイス戦(ルガーノ)、12日のパラグアイ戦(インスブルック)という2つのテストマッチも控えている。指揮官はそこでも3バックと4バックを目まぐるしく変え、原口のポジションも頻繁に入れ替えると見られる。そこで自身の役割を深く考えすぎず、自然体を貫き、伸び伸びとプレーできれば、ゴールという結果はきっとついてくるだろう。 ▽今年に入ってからの日本代表は、3試合の総得点がわずか2。今回落選した中島翔哉(ポルティモネンセ)が3月のマリ戦(リエージュ)で奪った1点と、ウクライナ戦(同)で槙野智章(浦和)がリスタートから決めたゴールしかない。だからこそ、前線のアタッカー陣は目に見える数字が強く求められる。最終予選序盤戦をけん引した男に託される期待は非常に大きい。原口が停滞感を打ち破ってくれれば、西野ジャパンにも光が差し込む。どうしても守備やハードワークに時間を割かれがちではあるが、一発のチャンスに集中して枠を捉えること。そこに集中して、日本の救世主になってほしいものだ。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2018.06.08 23:30 Fri
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【元川悦子の日本代表にこの選手を呼べ!】今季ブンデス出場機会大幅減もW杯では何かをやりそうな予感。2002年の稲本を目指せ! 浅野拓磨

▽2018年ロシアワールドカップ本大会に挑む日本代表の直前合宿が21日からスタート。初日は欧州組10人が参加する形で西野朗新監督率いる新生ジャパンが船出した。 ▽3度目の本大会出場を目指す本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター・シティ)ら実績ある面々に交じって、2016年リオデジャネイロ五輪世代の浅野拓磨(ハノーファー)が精力的な走りを見せていた。 ▽今季の浅野はドイツ・ブンデスリーガ1部で15試合出場(うち先発7試合)という低調な結果に終わった。その数字も全てシーズン前半のもので、2018年に入ってからはリーグ戦出場ゼロ。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が指揮を執っていた3月のマリ・ウクライナ2連戦(リエージュ)はクラブでの実情を理由にメンバーからも外された。 ▽だが、西野監督は爆発的スピードと推進力を誇る快足FWを「必要な存在」だと捉え、あえて抜擢に踏み切った。 ▽「ここで代表に入ることができなかったら、アピールする場がそもそもないという考え方だった。チャンスを与えてもらった分、僕は持っているものをこの期間で出すだけかなと。今年に入ってアピールは1つもできていないので、クラブでできなかったことを全部出し切る感じですかね」と浅野は初練習後に力強くコメントしていた。 ▽今回の代表は彼や井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)のように所属クラブで出番を得られなかった選手、香川真司(ドルトムント)や岡崎のようにケガの不安を抱えている選手も招集されていて、選考自体を否定的に見る向きも根強い。 ▽浅野が入るであろう右FWも、今季ベルギー1部で11得点を挙げた久保裕也(ヘント)やオランダ1部で9得点の堂安律(フローニンヘン)、Jリーグで活躍中のスピードスター・伊東純也(柏レイソル)がリスト外になったこともあって、「なぜ試合に出ていない浅野なのか」という声は聞こえてくる。 ▽そこを本人も認識したうえで、「自分のプレーを出せる自信はありますし、ゴールという結果を残せる自信もある。そんなにコンディションが悪いとも思ってないです」と改めて語気を強めたのだ。そう発言した以上、今の浅野がやるべきなのはゴールに直結する仕事。そこに集中するしかないのだ。予選突破を決めた昨年8月31日のオーストラリア戦(埼玉)で先制弾を挙げたように、30日のガーナ戦(日産)でその再現を見せ、さらにロシア本番でも抜群のスピードで世界一線級の相手をかく乱することができれば、彼の選出に誰もが納得するはずだ。 ▽過去のワールドカップでも、大会直前に何らかの問題を抱えながら活躍した選手はいる。その筆頭が2002年日韓ワールドカップで2ゴールを挙げた稲本潤一(北海道コンサドーレ札幌)だ。当時所属のアーセナルで1年間公式戦出場から遠ざかっていた彼は初戦・ベルギー戦(埼玉)と第2戦・ロシア戦(横浜)で連発。一躍、時の人となった。その稲本と同じアーセン・ヴェンゲル監督に才能を買われ、アーセナルに引っ張られた浅野としては、偉大な先輩と同じ道を歩みたいところだ。 ▽「短期決戦のワールドカップは何も考えない『野性児タイプ』の方が意外と活躍できたりする傾向が大きい」と2010年南アフリカワールドカップ16強戦士の松井大輔(横浜FC)も冗談交じりに語ったことがあったが、確かに当時の稲本も、今の浅野もそのカテゴリーに属する。1つ1つのことを深く考える繊細さと緻密さは、時としてプレーの足かせになってしまうが、大胆不敵なスピードスターの浅野にその心配はなさそうだ。むしろ半年間試合に出ていない分、「ロシアで思い切り暴れまわってやる」といい意味で割り切って走り回れるのではないか。それが浅野の魅力でもある。 ▽今回からサンフレッチェ広島時代の恩師・森保一コーチも代表スタッフ入り。彼にはよりやりやすい環境が用意されたと言ってもいい。 ▽「森保さんも僕への理解は他の指導者より多いと思いますし、僕も森保さんに対する信頼は強い。代表というピッチで一緒にやれるのは、僕にとってすごく大きなプラスかなと思います」と本人も広島時代に積み上げてきたものを積極的に活用して、虎視眈々と生き残りを図っていくつもりだ。 ▽いずれにしても、FW陣で圧倒的なスピードと裏への飛び出しの鋭さを前面に押し出せるのは浅野だけ。そこは足元の技術に優れた本田や香川真司(ドルトムント)、ポリバレント型の宇佐美貴史や原口元気(ともにデュッセルドルフ)らとの違いだ。彼にしかない武器を日本躍進のためにどうやって有効活用するのか。そこにフォーカスして、浅野にはまずガーナ戦までの期間をしっかりと過ごし、23人滑り込みを果たしてほしいものだ。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2018.05.28 14:00 Mon
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