【元川悦子の日本代表にこの選手を呼べ!】未来の日本を担う188㎝の大型DF。ベルギー移籍の動向次第でロシア滑り込みも? 冨安健洋2018.01.10 12:00 Wed

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「世界的に有名な選手になりたいですし、もちろんA代表に行って中心としてやりたい気持ちもあります。そのためにも海外にはできるだけ早く行きたい。しっかりステップを踏んで上のレベルに上がっていきたいです」

▽昨年5月のU-20ワールドカップ(韓国)直前、近未来の日本代表を担うと目される188㎝の大型センターバック・冨安健洋(当時福岡、現シントトロイデン)は大いなる野心を口にしていた。

▽当時18歳の彼はU-20日本代表の主力として韓国に赴き、中山雄太(柏)とともに最終ラインを力強く統率。ベスト16入りの原動力となった。しかし、日本はラウンド16で最終的に準優勝するベネズエラに延長の末、0-1で敗れてしまう。悔しいことにその失点に絡んだ冨安は「苦い経験を忘れることなく今後に生かさないといけない」と自らに言い聞かせ、自己研鑽に励み続けた。

▽その努力は昨季のアビスパ福岡でのJ2・35試合出場という目覚ましい働きにつながったが、第1目標だったJ1昇格は果たせなかった。それでも個人として前々から希望していた海外移籍の道は開けた。彼は今月からベルギー1部のシントトロイデンへ赴くことが決定。フィジカル色の強い異国のリーグで、より一層の高みを目指せる状況になったのだ。

▽かつて吉田麻也(サウサンプトン)がオランダ1部のVVVフェンロで欧州での一歩を踏み出し、2012年ロンドン五輪での活躍を機にイングランド・プレミアリーグへステップアップしたように、高さの部分で外国人選手に引けを取らない冨安には10歳年上の先輩と同じようなキャリアを積み重ねられる可能性がある。現時点ではスピードや強さなど足りない部分は少なくないが、鋭い戦術眼、冷静沈着な1つ1つの対応、メンタル的な落ち着きといった強みがある。こうした長所は19歳時点の吉田を上回っているかもしれない。

▽非凡な能力の一端は、2016年リオデジャネイロ五輪直前のU-23ブラジル代表とのテストマッチでも如実に表れた。出場時間は25分足らずだったが、ネイマール(PSG)やガブリエル・ジェズス(マンチェスターC)らを擁する攻撃陣に物怖じすることなく真っ向からぶつかり、攻守両面で持ち味を出したことで、評価を一気に上げた。ベルギーにはネイマールのような爆発的な速さ、ジェズスのようなパワフルさを備えた選手が少なくないだけに、そういう面々と常日頃から対峙してスピードや当たりの強さに慣れていけば、早い時期にA代表でプレーできるメドが立つこともあり得るのだ。

▽今のヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表センターバック陣を見ると、吉田を筆頭に、昨年後半から存在感を高めている槙野智章(ケルン)、2014年ブラジルワールドカップ経験者の森重真人(FC東京)、2018年ロシアワールドカップ最終予選終盤に出ていた昌子源(鹿島)、昨年12月の東アジアカップ(E-1選手権)でAマッチデビューを飾った植田直通(鹿島)、三浦弦太(G大阪)らがロシア行きの候補者。けれども、吉田と槙野以外は不安要素が少なくない。森重はケガで昨シーズンの大半を棒に振り、残る半年間でどこまで本来のパフォーマンスを取り戻せるか分からないし、昌子もE-1選手権・韓国戦で評価を大きく落とす結果となった。植田と三浦は代表経験値が乏しく、ワールドカップで戦えるかどうかは全くの未知数。そういう意味では、冨安とほとんど条件的には変わらないことになる。

▽仮に冨安が新天地・シントトロイデンで瞬く間にセンターバックの定位置を確保し、ある程度の仕事ができることを実証すれば、ハリルホジッチ監督も一気に若武者の抜擢に踏み切るのではないだろうか。指揮官は1~2月は日本に戻らず、欧州視察に回るというから、そこで冨安が琴線に触れれば、サプライズ選出も起こり得るのだ。

▽近未来の日本サッカー界を考えても、吉田の後継者たる存在をそろそろ作っておく必要がある。「日本はセンターバックの人材不足が大きな問題。そこを何とかしないといけない」と吉田も常日頃から危機感を口にしているほどだ。188㎝の長身と賢さを誇る冨安が風穴を開けてくれれば、今後に光が見えてくる。むしろ、そうなってもらわなければ困ると言っても過言ではない。

「ベルギーに行ってから、守備の駆け引きの部分など積極的に仕掛けるディフェンスで、ボールが入る前にどれだけ優位に立てるかを意識したい。吸収と改善を繰り返しながらしっかりと成長し、まずは試合に出られるように頑張りたい」と本人も欧州挑戦に向けて強い意気込みを口にした。その言葉通り、屈強なフィジカル誇る外国人FWと互角に渡り合う駆け引きや攻撃的守備を短期間で身に着けてくれれば、ロシアに手が届くかもしれない。日本中に驚きを与えるような急成長を19歳の大型DFには大いに期待したいものだ。
【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。

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【2022年カタールへ期待の選手①】吉田麻也とともにファルカオ、ニアン、ルカク封じに奔走。次世代の日本の守備の要へ/昌子源

▽わずか10秒足らずの電光石火のカウンターからナセル・シャドリ(WBA)の逆転弾が決まり、直後にタイムアップの笛が空しく鳴り響いた瞬間、日本代表スタメン最年少であり、唯一の国内組として奮闘した昌子源(鹿島)がピッチに倒れ込んで号泣した。時間が経っても立ち上がれず、長友佑都(ガラタサライ)に抱きかかえられるように起き上がったが、それほどまでに8強の壁を破れなかった悔しさを誰よりも強く感じていたのだろう。 ▽「相手のすごいカウンターってこういうのかなと。僕の全速力で追いかけたけど、追いつけないスピードっていうか、加速していくし、スピードが落ちることなく、気付けば僕らのゴール前にいるしね。最後のスライディングも僕やったし、なんで追いつけんのやろっていう悔しさと…。なんか不甲斐なかったですね、いろいろと」と背番号3を背負って、吉田麻也(サウサンプトン)とともにロメル・ルカク(マンチェスター・ユナイテッド)封じに全身全霊を注いだ男は、最後の砦になり切れなかったことを悔やんだ。 ▽それでも今回の2018ロシアワールドカップで昌子が果たした役割は大いに目を引くものがあった。大会前の予想では、吉田の相棒は槙野智章(浦和)だと見られていたが、最後のテストマッチだった6月12日のパラグアイ戦(インスブルック)での安定感あるパフォーマンスが西野朗監督の琴線に触れ、13日にベースキャンプ地・カザン入りしてからはずっとレギュラー組に入っていたという。 ▽迎えた19日の初戦・コロンビア戦(サランスク)。背番号3に課せられた仕事は相手エースFWラダメル・ファルカオ(モナコ)封じ。開始早々の3分に相手に退場者が出て、香川真司(ドルトムント)のPKで1点をリードするという追い風が吹いたことも大きかったが、昌子はファルカオに徹底マークを見せ、仕事らしい仕事をさせない。その冷静さと落ち着きはワールドカップ初参戦とは思えないほどだった。ファン・フェルナンド・キンテーロ(リーベル・プレート)に直接FKを決められ、無失点試合ができなかったことはチームとして悔やまれるところだったが、昌子の守備は高評価を与えられるべきものだった。 ▽「『国内組唯一』とか『俺がJリーグを背負ってる』というのは全くなかった。むしろワールドカップ出場を決めたオーストラリア戦(2017年8月=埼玉)の方が緊張しましたね。今回はそれに比べたらそんなに緊張することなく落ち着いてやれたかな」と本人は大舞台にめっぽう強い自分に胸を張った。 ▽首尾よく初戦で勝ち点3を得た日本は、続く24日のセネガル戦(エカテリンブルク)でも勝ち点1を手に入れる。この試合も2度のリードを許す苦戦を余儀なくされたが、乾貴士(ベティス)と本田圭佑(パチューカ)が同点弾を決めるという劇的な展開だった。昌子の今大会2度目の大仕事はエムバイェ・ニアン(トリノ)封じ。体格的に大きく下回るだけに体をぶつけ、相手の自由を奪うことに徹する。今大会はVAR判定が導入されているから、不用意に手を使ったり、体当たりをするようなことがあれば、即座にPKやレッドカードの対象になりかねない。細心の注意を払いながら相手エースFWの失点を許さなかったことで、彼の地位は確固たるものになった。 ▽28日の3戦目・ポーランド戦(ボルゴグラード)は先輩・槙野に先発の座を譲ったが、何とか2位通過したことで、待望の決勝トーナメントの舞台に立つことができた。その相手・ベルギーはFIFAランキング3位の優勝候補に挙げられる強豪。ルカク筆頭に、エデン・アザール(チェルシー)、ケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)らイングランド・プレミアリーグで華々しい活躍を見せるタレント集団だ。前日会見に出席したアザールは「もうブラジル戦のことを考えているのではないか?」と問われて「日本に勝てるかどうか分からない」と謙虚な物言いを見せたが、本音の部分では「昨年11月の親善試合(ブルージュ)でアッサリ倒した相手に負けるはずがない」という余裕が見て取れた。 ▽そんな彼らの鼻をへし折ることが日本に求められたが、前半から一方的に押し込まれる。そこで体を張ったのが吉田と昌子。彼らのルカク封じは確かに見る者の心を打った。「僕のルカク選手のイメージは、とてつもないところにあった。それで実際にやってみて、その通りかそれ以下だった方が楽じゃないですか。でもルカク選手はイメージと同等、もしくは上に来たから、すごいいっぱいいっぱいでしたね」と背番号3は述懐したが、それでも結果的にルカクにゴールを許していない。そこは誇れる点だろう。 ▽ただ、日本としては4試合7失点。守備陣としてはその現実を受け止めなければならない。「日本を守れる男になりたい」と昌子は痛感したというが、だったら本当にそういう存在になってもらうしかない。今大会を最後に長谷部と本田という10年以上、代表で戦ってきたベテランが去り、吉田を中心とした新たな陣容で4年後に向かっていくことになるが、昌子が担う仕事も少なくない。これからは「スタメン最年少」ではなく、「日本の大黒柱の1人」としてチームを引っ張らなければならない。それを強く自覚して、彼にはさらなる高みを目指してほしい。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2018.07.07 19:00 Sat
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【ロシア注目選手②】「半端ない男」の真の実力が試されるセネガル戦。2戦連発で日本を16強へ導けるか?/大迫勇也

▽「(香川真司=ドルトムントがPKを取る起点となるプレーは)個人的に決めたかったけど、あそこでDFに勝てたことは4年間ドイツでやってきた積み重ねだと思います。2点目はホントに夢だった。ワールドカップのゴールを取れた嬉しさはあります」 ▽19日の2018年ロシアワールドカップ初戦・コロンビア戦(サランスク)で2得点に絡んだ大迫勇也(ブレーメン)は心からの安堵感をのぞかせた。4年前の2018年ブラジルワールドカップでは初戦・コートジボワール戦(レシフェ)と第2戦・ギリシャ戦(ナタル)に続けて先発しながら世界の高い壁に阻まれた。その失望感と悔しさを糧に4年間力を蓄えてきただけに、あまり普段は感情を表に出さない彼も思わず喜びが前面に出た。 ▽そもそも大迫が今回のロシアワールドカップへの挑戦権を得たのは、2016年11月の最終予選・サウジアラビア戦(埼玉)で圧倒的な存在感を示したからだった。2015年のヴァイッド・ハリルホジッチ監督就任当初は代表に呼ばれていた彼だが、格下・シンガポールにまさかのスコアレスドローを余儀なくされた6月の2次予選初戦の後、1年5カ月も日の丸をつける機会から遠ざかった。 ▽前指揮官は1トップ要員として岡崎慎司(レスター)、浅野拓磨(シュツットガルト)、武藤嘉紀(マインツ)らを次々と起用。2016年10月のオーストラリア戦(メルボルン)では本田圭佑(パチューカ)をトライするほど、これという人材が見つけられずに苦しんでいた。が、ドイツ・ブンデスリーガ1部で地道に自己研鑽に励んでいた大迫はその誰よりもボールが収まり、前線で起点を作れる。タテに速い攻撃を志向したハリル監督にとって、時間を作れる大迫の存在はすぐさま必要不可欠となり、最終予選終盤も、その後のテストマッチでも絶対的1トップに君臨し続けた。 ▽だが、その大迫も西野朗監督体制では他のFWと横一線の立場に置かれた。そういう環境の変化と2度目のワールドカップを前にした重圧もあったのか、5月21日の国内合宿からしばらくの間は「今はまだ話したくない」とメディアに口を閉ざし続けた。5月30日のガーナ戦(日産)を経て、オーストリア・ゼーフェルト合宿に入った直後も「試合があるんで、そこでしっかりとチームとしてやるべきことを見せればいいと思います。何を言っても説得力がないし、納得してもらえないと思うから、ホントにピッチの中でやるだけだから」と手短にコメントして日々のトレーニングに集中した。もともと饒舌なタイプではなかったが、そこまで外部をシャットアウトするのは初めて。大迫の中では「ロシアで結果を残すことが全て」という悲壮な決意があったのだろう。 ▽その覚悟がコロンビア戦で見事に結実し、背番号15は4年前とは別人のような勇敢なパフォーマンスを示した。8日のスイス戦(ルガーノ)ではハイプレスに行き過ぎて前半35分過ぎにエネルギー切れになり、負傷もあって早々とベンチに下がったが、今回は最後までペースダウンすることはなかった。90分間の走行距離は8・6kmしかなかったが、スプリント回数の38回は原口元気(ハノーファー)の56回、乾貴士(ベティス)の48回、長友佑都(ガラタサライ)の45回に続く数字。大迫がどれだけ前から献身的にプレスをしていたか、機を見てゴール前に走っていたかが、このデータからよく分かるはずだ。 ▽コロンビア戦での大活躍によって、日本国内では2009年高校サッカー選手権で対戦相手の滝川第二の主将が語った「大迫半端ないって」という名言が再び沸騰しているという。大迫勇也の知名度も一気に上がり、本田、岡崎、香川の「ビッグ3」に迫る勢いとも言われている。この過熱感を一時的なもので終わらないためにも、24日のセネガル戦(エカテリンブルク)でも継続的にインパクトを残すことが肝要だ。日本は過去5回のワールドカップのうち、2002年日韓、2010年南アフリカの2大会でベスト16入りしているが、そのいずれも3戦目に突破が決まった。仮に今回2戦目で勝ち上がりが決まるようなら偉業に他ならないし、今後の戦いを考えても非常に有利になる。それを決めるゴールを大迫が奪ったとしたら、この男の存在は未来永劫、人々に語り継がれるようになるはずだ。 ▽「今はストライカーとしていい感覚を持っていますし、みんなの雰囲気もすごくいいんでね、ロッカールームに帰ったら笑顔が見れたことですごくジーンと来ましたし、まだまだ試合は続くんで、頑張っていきます」とコロンビア戦後にしみじみと語った大迫。その感動を次も、またその次も味わえたら最高だ。その方向へとチームをけん引するのは、もはや「ビッグ3」ではない。そういう強い自覚を胸に、大迫勇也は日本の絶対的点取り屋への道をひた走るべきだ。さしあたって次戦では、カリドゥ・クリバリ(ナポリ)とサリフ・サネ(ハノーファー)の両センターバックがコントロールするセネガル守備陣の綻びを虎視眈々と突くプレーが求められる。それを泥臭く粘り強く実行して、2戦連続ゴールをもぎ取ってほしいものである。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2018.06.23 17:00 Sat
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【ロシア注目選手①】究極のポリバレントプレーヤー。3バックでも4バックでも力強く西野ジャパンを支える/原口元気

▽5月31日に2018年ロシアワールドカップ最終登録メンバー23人が決まり、2日から直前合宿地であるオーストリア・ゼーフェルトで調整している日本代表。ドイツ国境に近い現地は標高1200mの高地で、ノルディック複合の渡部暁斗(北野建設)が平昌五輪銀メダル獲得前にワールドカップ3連覇を果たした縁起のいい場所でもある。 ▽ただ、代表が現地入りしてからは天気の変化が目まぐるしい。晴れ間がのぞく日中は25度前後の暑さになるが、連日のように雷雨に見舞われ、夕方以降は気温が15度以下に急降下する。寒暖差が大きいだけに、調整に失敗するとロシア本番に支障が出かねない。香川真司(ドルトムント)は「海より山の方がいいですね。静かで集中できるし」と話していたが、この環境をプラスに活用していくことが突貫工事を迫られている今の日本代表にとっては重要だろう。 ▽西野朗監督は5月30日のガーナ戦(日産)でトライした[3-4-3]の新布陣と、これまでの4バックをベースとしたフォーメーションを併用すべく練習に励んでいる。「監督が言っていたのは、4枚は積み上げてきた部分があるし、すぐに立ち返れるから、3枚をできるようにするということ」と原口元気(デュッセルドルフ)が話すように、戦い方の幅を広げるべく鋭意奮闘中だ。2週間足らずの準備期間でこうしたアプローチはリスキーだが、それをやり切るには選手たちの高度な柔軟性と適応力が強く求められてくる。1人何役もこなせる原口のような存在がキーマンになるのは間違いないだろう。 ▽実際、原口のカメレオンぶりは凄まじいものがある。[3-4-3]システムで右ウイングバックと右シャドウをこなしたと思いきや、4日の紅白戦では[4-2-3-1]の右MFでプレー。3本目の途中にはダイナミックなドリブル突破から豪快な一撃を決めている。ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督時代には左MFやボランチ、右サイドバックでも使われ、ヘルタでも1トップに入ったことがあるほど。そのマルチぶりは危機に瀕するチームにとって本当に頼もしい。 ▽「自分はどこでもできるとは思ってる。4枚の前(2列目)は一番得意だし、やりたいと思ってるけど、自分のよさは『やれ』と言えわれたことをやり切れたり、求められてることを深く表現してできること。そこは僕の強みだし、しっかり表現できたらいい」と本人も自信をのぞかせる。 ▽4月の監督交代によって、本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)、香川の「ビッグ3」らザックジャパン時代の中心選手が形になった今回のチームだが、ワールドカップ初参戦のフレッシュなメンバーが奮起しなければ、ミラクルは起こせない。2016年9月のタイ戦(バンコク)を手始めに、10月のUAE(埼玉)・オーストラリア(メルボルン)、11月のサウジアラビア(埼玉)と最終予選4戦連続ゴールの日本新記録を樹立した原口はその筆頭だろう。 ▽この大活躍の後、彼は所属していたヘルタ・ベルリンで移籍騒動に巻き込まれ、ドイツでの出場機会が激減。「試合に出ていない選手は呼ばない」というハリル前監督の方針もあり、代表でも厳しい立場に追い込まれた。ロシア切符を手にした昨年8月のオーストラリア戦(埼玉)でも乾貴士(エイバル)にスタメンの座を奪われる事態に直面。本人も焦りをにじませた。 ▽しかしながら、今年1月のドイツ・ブンデス2部・デュッセルドルフ移籍によって再び出番を勝ち取り、復調のきっかけをつかんだ。2月2日のザントハウゼン戦での脳震盪という予期せぬアクシデントにも見舞われ、一時は起き上がることも、携帯を見ることも禁止される状態に陥ったが、ともと誰よりもタフで負けん気の強い男は奇跡的な回復を遂げ1カ月でピッチに戻ってきた。この苦しみもロシアへの思いを深める大きな原動力になったはずだ。 ▽代表でのゴールはすでに1年半も遠ざかっているが、ゼーフェルト合宿での一挙手一投足を見ると、鋭い得点感覚が戻りつつある印象だ。直近には8日のスイス戦(ルガーノ)、12日のパラグアイ戦(インスブルック)という2つのテストマッチも控えている。指揮官はそこでも3バックと4バックを目まぐるしく変え、原口のポジションも頻繁に入れ替えると見られる。そこで自身の役割を深く考えすぎず、自然体を貫き、伸び伸びとプレーできれば、ゴールという結果はきっとついてくるだろう。 ▽今年に入ってからの日本代表は、3試合の総得点がわずか2。今回落選した中島翔哉(ポルティモネンセ)が3月のマリ戦(リエージュ)で奪った1点と、ウクライナ戦(同)で槙野智章(浦和)がリスタートから決めたゴールしかない。だからこそ、前線のアタッカー陣は目に見える数字が強く求められる。最終予選序盤戦をけん引した男に託される期待は非常に大きい。原口が停滞感を打ち破ってくれれば、西野ジャパンにも光が差し込む。どうしても守備やハードワークに時間を割かれがちではあるが、一発のチャンスに集中して枠を捉えること。そこに集中して、日本の救世主になってほしいものだ。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2018.06.08 23:30 Fri
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【元川悦子の日本代表にこの選手を呼べ!】今季ブンデス出場機会大幅減もW杯では何かをやりそうな予感。2002年の稲本を目指せ! 浅野拓磨

▽2018年ロシアワールドカップ本大会に挑む日本代表の直前合宿が21日からスタート。初日は欧州組10人が参加する形で西野朗新監督率いる新生ジャパンが船出した。 ▽3度目の本大会出場を目指す本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター・シティ)ら実績ある面々に交じって、2016年リオデジャネイロ五輪世代の浅野拓磨(ハノーファー)が精力的な走りを見せていた。 ▽今季の浅野はドイツ・ブンデスリーガ1部で15試合出場(うち先発7試合)という低調な結果に終わった。その数字も全てシーズン前半のもので、2018年に入ってからはリーグ戦出場ゼロ。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が指揮を執っていた3月のマリ・ウクライナ2連戦(リエージュ)はクラブでの実情を理由にメンバーからも外された。 ▽だが、西野監督は爆発的スピードと推進力を誇る快足FWを「必要な存在」だと捉え、あえて抜擢に踏み切った。 ▽「ここで代表に入ることができなかったら、アピールする場がそもそもないという考え方だった。チャンスを与えてもらった分、僕は持っているものをこの期間で出すだけかなと。今年に入ってアピールは1つもできていないので、クラブでできなかったことを全部出し切る感じですかね」と浅野は初練習後に力強くコメントしていた。 ▽今回の代表は彼や井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)のように所属クラブで出番を得られなかった選手、香川真司(ドルトムント)や岡崎のようにケガの不安を抱えている選手も招集されていて、選考自体を否定的に見る向きも根強い。 ▽浅野が入るであろう右FWも、今季ベルギー1部で11得点を挙げた久保裕也(ヘント)やオランダ1部で9得点の堂安律(フローニンヘン)、Jリーグで活躍中のスピードスター・伊東純也(柏レイソル)がリスト外になったこともあって、「なぜ試合に出ていない浅野なのか」という声は聞こえてくる。 ▽そこを本人も認識したうえで、「自分のプレーを出せる自信はありますし、ゴールという結果を残せる自信もある。そんなにコンディションが悪いとも思ってないです」と改めて語気を強めたのだ。そう発言した以上、今の浅野がやるべきなのはゴールに直結する仕事。そこに集中するしかないのだ。予選突破を決めた昨年8月31日のオーストラリア戦(埼玉)で先制弾を挙げたように、30日のガーナ戦(日産)でその再現を見せ、さらにロシア本番でも抜群のスピードで世界一線級の相手をかく乱することができれば、彼の選出に誰もが納得するはずだ。 ▽過去のワールドカップでも、大会直前に何らかの問題を抱えながら活躍した選手はいる。その筆頭が2002年日韓ワールドカップで2ゴールを挙げた稲本潤一(北海道コンサドーレ札幌)だ。当時所属のアーセナルで1年間公式戦出場から遠ざかっていた彼は初戦・ベルギー戦(埼玉)と第2戦・ロシア戦(横浜)で連発。一躍、時の人となった。その稲本と同じアーセン・ヴェンゲル監督に才能を買われ、アーセナルに引っ張られた浅野としては、偉大な先輩と同じ道を歩みたいところだ。 ▽「短期決戦のワールドカップは何も考えない『野性児タイプ』の方が意外と活躍できたりする傾向が大きい」と2010年南アフリカワールドカップ16強戦士の松井大輔(横浜FC)も冗談交じりに語ったことがあったが、確かに当時の稲本も、今の浅野もそのカテゴリーに属する。1つ1つのことを深く考える繊細さと緻密さは、時としてプレーの足かせになってしまうが、大胆不敵なスピードスターの浅野にその心配はなさそうだ。むしろ半年間試合に出ていない分、「ロシアで思い切り暴れまわってやる」といい意味で割り切って走り回れるのではないか。それが浅野の魅力でもある。 ▽今回からサンフレッチェ広島時代の恩師・森保一コーチも代表スタッフ入り。彼にはよりやりやすい環境が用意されたと言ってもいい。 ▽「森保さんも僕への理解は他の指導者より多いと思いますし、僕も森保さんに対する信頼は強い。代表というピッチで一緒にやれるのは、僕にとってすごく大きなプラスかなと思います」と本人も広島時代に積み上げてきたものを積極的に活用して、虎視眈々と生き残りを図っていくつもりだ。 ▽いずれにしても、FW陣で圧倒的なスピードと裏への飛び出しの鋭さを前面に押し出せるのは浅野だけ。そこは足元の技術に優れた本田や香川真司(ドルトムント)、ポリバレント型の宇佐美貴史や原口元気(ともにデュッセルドルフ)らとの違いだ。彼にしかない武器を日本躍進のためにどうやって有効活用するのか。そこにフォーカスして、浅野にはまずガーナ戦までの期間をしっかりと過ごし、23人滑り込みを果たしてほしいものだ。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2018.05.28 14:00 Mon
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【元川悦子の日本代表にこの選手を呼べ!】3年のスペイン2部経験はロシアで生きる。日に日に高まる吉田のパートナーに推す声 鈴木大輔

▽6月の2018年ロシア・ワールドカップに挑む日本代表の新たな指揮官に西野朗監督が就任してから約1カ月。新監督はヴァイッド・ハリルホジッチ前監督時代の主力メンバーの現状をチェックすると同時に、新たな武器になりそうな選手を洗い出しているという。 ▽4月下旬から赴いた欧州視察では、3月のマリ・ウクライナ2連戦(リエージュ)で選出から漏れた井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)や浅野拓磨(シュツットガルト)のところにも足を運び、コンディションをチェック。5月21日から東京近郊で行う直前合宿に呼ぶ意向を示しているようだ。 ▽5月14日にはFIFA(国際サッカー連盟)に提出する予備登録35人が明らかになる。そこに入っていなければ、ロシア行きのチャンス自体が潰えるわけだが、西野監督にどうしても手元に呼んでほしい選手が1人いる。それはスペイン2部のヒムナスティック・タラゴナでプレーするセンターバック・鈴木大輔。10代の頃から年代別代表の守備陣を担い、2012年ロンドン五輪でも吉田麻也(サウサンプトン)とコンビを組んで日本の4強入りの原動力になったDFである。 ▽そもそも鈴木はロンドン五輪直後に日本代表入りしていい存在だった。が、当時のアルベルト・ザッケローニ監督は今野泰幸(ガンバ大阪)を重用。吉田と長くコンビを組ませた。しかし、2013年6月のコンフェデレーションズカップ(ブラジル)で日本守備陣が3試合合計で大量9失点を喫すると、突如としてバックアップ探しに乗り出す。そこで目をつけたのは、森重真人(FC東京)。鈴木も2013年8月の東アジアカップ(韓国)に呼ばれたが、森重と栗原勇蔵(横浜F・マリノス)の下という位置づけにとどまった。 ▽その後も「鈴木は有力なセンターバック候補の1人」と言われ続けながら、代表定着は叶わず、2014年ブラジルワールドカップも逃した。清武弘嗣や山口蛍(ともにセレッソ大阪)らロンドン五輪メンバーの何人かが世界舞台に立つ姿を目の当たりにした鈴木は、自分に足りないものを求め続け、2016年2月に海外行きを決断する。2部と言えども、スペインリーグは世界屈指のレベル。そこに身を投じることで、自分に足りなかった泥臭い守備を学び、球際や寄せの部分に磨きをかけ、ここまでやってきたのだ。 ▽目下、日本代表のセンターバック候補者は、最終ラインの柱である吉田とハリルホジッチ監督の下で大きく成長した槙野智章(浦和レッズ)、最終予選途中までレギュラーだった森重、最終予選終盤に先発の座をつかんだ昌子源(鹿島アントラーズ)、日本人離れした高さと強さがウリの植田直通(鹿島)の5人。吉田に関しては、西野監督が真っ先に訪問したほど重要な存在ではあるが、彼のパートナーは依然として定まっていない。 ▽3月2連戦では槙野のリーダーシップが大いに光ったが、今季の浦和でのパフォーマンスを見る限りでは不安定な部分も垣間見える。森重も今季頭から復帰してはいるものの、代表でレギュラーを張っていた頃のような安定感は示せていない。鹿島の2人もチーム状態が悪いこともあるのか、ちょっとしたスキを作る場面が見られる。昌子に関してはケガも抱えていて、欠場を余儀なくされることも少なくない。つまり現段階で、4人の中で絶対的な選手はいないのだ。 ▽そういう状況だけに、鈴木を加えて競争を煽るのは、1つの有効のアイディアではないか。柏レイソル時代の鈴木は多少なりとも甘さが感じられたが、今では言葉の通じない異国で堂々と周囲に指示を出せるほどのタフさを身に着けたという。スペインの屈強なDFをリスタート時に封じたり、技術の高いアタッカーと1対1で徹底マークすることも多かったはず。その経験値はやはり海外にいるからこそ、得られたものに違いない。それはロシアの大舞台でも生かされる。彼自身も困難な環境で磨いた部身を日本のために発揮できるのなら感無量に違いない。 ▽もっと言えば、鈴木がハリルホジッチ前監督にここまで呼ばれなかった理由もこれまでハッキリしなかった。181㎝という身長が引っかかったのかもしれないが、彼が高さがない分を経験値でカバーできる選手であれば、代表入りは全く問題ないはずだ。 ▽西野監督も鈴木と同じスペイン2部の井手口のことを気にかけ、ドイツ2部でプレーする原口元気や宇佐美貴史(ともにデュッセルドルフ)のところにも足を運んだというから、新指揮官は欧州2部リーグ所属選手でも特に支障はないと考えている様子。鈴木の抜擢があってもおかしくはない。今回の予備登録メンバーに彼を加える意向はあるのか否かは非常に興味深い点と言っていい。 ▽いずれにしても、28歳になった鈴木大輔がどこまで戦えるDFになったのかはぜひ見てみたいところ。まずは21日から東京近郊で始まる直前合宿に呼んで、彼が真価を示すチャンスを与えてほしいものである。<hr>【元川悦子】長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。 2018.05.11 11:00 Fri
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