【六川亨の日本サッカー見聞録】高校選手権と高円宮杯決勝に見る試合展開の違い
2018.01.04 18:45 Thu
▽明けまして、おめでとうございます。今日4日が仕事始めの方も多いでしょう。本年もよろしくお願いいたします。
▽といったところで、第96回全国高校選手権はベスト8が出揃った。大会の印象については決勝戦後のコラムに譲るとして、選手権の1、2回戦を取材して感じたのが、昨年12月17日に開催された高円宮杯U-18決勝との違いだった。
▽FC東京対神戸の試合は、前半に神戸が2点をリードした。ハーフタイムにFC東京の佐藤監督は「みんなの思いが強すぎて、体が動いていない」と指示し、「精神的に差し込まれてもったいなかった」と会見で振り返った。
▽そこでFC東京は、ハーフタイムに2人の選手が交代したものの、後半も前半と同じようにパスをつなぐポゼッション・サッカーを貫き同点に追いつくと、延長戦で神戸を振り切り初の日本1に輝いた。最後まで自分たちの、FC東京のサッカーで優勝したことは見事だった。
▽ただ、観戦していて正直なところ歯がゆさも感じた。2点のビハインドで迎えた後半なのだから、なぜもっと攻撃の圧力を強めないのか、積極的に攻撃を仕掛けないのか。前半と同じような試合展開にもどかしさを感じた。プレミアリーグとはいえ決勝戦は一発勝負。トーナメントの戦い方をしていいはずなのに、リーグ戦のような戦い方は、攻撃の変化に乏しい日本代表やJリーグの試合を見ているようだった。
▽高校サッカーは、プレミアやプリンスのリーグ戦以外、インターハイと選手権の予選、本大会はいずれも一発勝負。そういう戦い方に監督も選手も慣れているとも言える。劣勢に立たされたチームは必死に反撃する。だからこそ、見ている観客に感動を与えられるのではないだろうか。
▽昨年末に取材した田嶋JFA(日本サッカー協会)会長も、自身が先頭に立って「切磋琢磨した試合をやろう」とプレミアリーグやプリンスリーグを立ち上げた。しかし近年は「慣れてくると1試合1試合、クオリティよりも最後のこの試合に勝ちさえすればいいというような試合展開になり、ファイトがない試合になる」と苦言を呈し、変革を口にしていた。
▽どちらがいいのかという問題ではなく、育成とは何なのか、日本サッカー全体が取り組まなければいけない課題でもある。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽といったところで、第96回全国高校選手権はベスト8が出揃った。大会の印象については決勝戦後のコラムに譲るとして、選手権の1、2回戦を取材して感じたのが、昨年12月17日に開催された高円宮杯U-18決勝との違いだった。
▽そこでFC東京は、ハーフタイムに2人の選手が交代したものの、後半も前半と同じようにパスをつなぐポゼッション・サッカーを貫き同点に追いつくと、延長戦で神戸を振り切り初の日本1に輝いた。最後まで自分たちの、FC東京のサッカーで優勝したことは見事だった。
▽ただ、観戦していて正直なところ歯がゆさも感じた。2点のビハインドで迎えた後半なのだから、なぜもっと攻撃の圧力を強めないのか、積極的に攻撃を仕掛けないのか。前半と同じような試合展開にもどかしさを感じた。プレミアリーグとはいえ決勝戦は一発勝負。トーナメントの戦い方をしていいはずなのに、リーグ戦のような戦い方は、攻撃の変化に乏しい日本代表やJリーグの試合を見ているようだった。
▽それに比べ、高校選手権では3回戦の明秀日立対大阪桐蔭戦で、リードを許した明秀日立の萬場監督は、後半10分に3人同時に選手交代を敢行。システムも4バックから3バックに変えて攻撃的なサッカーから後半21分に1-1の同点に追いつくと、再び4バックに戻し、PK戦で初のベスト8進出を果たした。
▽高校サッカーは、プレミアやプリンスのリーグ戦以外、インターハイと選手権の予選、本大会はいずれも一発勝負。そういう戦い方に監督も選手も慣れているとも言える。劣勢に立たされたチームは必死に反撃する。だからこそ、見ている観客に感動を与えられるのではないだろうか。
▽昨年末に取材した田嶋JFA(日本サッカー協会)会長も、自身が先頭に立って「切磋琢磨した試合をやろう」とプレミアリーグやプリンスリーグを立ち上げた。しかし近年は「慣れてくると1試合1試合、クオリティよりも最後のこの試合に勝ちさえすればいいというような試合展開になり、ファイトがない試合になる」と苦言を呈し、変革を口にしていた。
▽どちらがいいのかという問題ではなく、育成とは何なのか、日本サッカー全体が取り組まなければいけない課題でもある。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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