【J1クラブ通信簿】2年連続無冠、ブーイングに包まれながら長谷川体制終焉《ガンバ大阪》
2017.12.08 22:20 Fri
▽歴史が動き、シーズンが閉幕した2017明治安田生命J1リーグ。最終節まで優勝争い、残留争いが繰り広げられ、最後まで目が離せない白熱したシーズンとなった。
▽「DAZN」マネーにより、シーズンの成績で今後のクラブ強化に大きな影響を及ぼすこととなった2017シーズン。超ワールドサッカー編集部は、J1全18クラブを総括。トピックやチームMVP、補強成功度、総合評価で振り返る。第9弾は長谷川体制のラストイヤーを10位でフィニッシュしたガンバ大阪を総括する。
◆シーズン振り返り
【主なトピック】
●U-20日本代表MF堂安律が今夏、フローニンヘンに期限付き移籍
●主力に故障者続出
●FWアデミウソンが絶不調
●シーズン途中に長谷川健太監督の今季退任を発表
●クラブワースト記録を連発
●2012年以来の二桁順位で終了
▽ホーム最終戦でのサポーターの大ブーイングが長谷川体制ラストイヤーの評価を物語る。最終成績は11勝10分け13敗(勝ち点43)の10位。2013年に長谷川健太監督が就任以降、2014年に国内三冠(J1、天皇杯、Jリーグカップ)を達成するなど、毎年のように終盤のタイトル争いに絡んできた“西の雄”だったが、今年は2012年以来の2桁順位に終わり、一時代の終焉を告げるシーズンとなった。
▽序盤戦こそ苦手の春先を乗り越え、一時は首位に立つなど4位でターンしたが、後半戦によもやの大ブレーキ。成長をチームの結果に還元しつつあったMF堂安律の途中退団や、守備の要として出色ぶりが際立ったDFファビオら主力の相次ぐ故障離脱、FWアデミウソンの絶不調といった数々のエクスキューズがあるにせよ、クラブのブランド力や歴史、総タイトル数を鑑みても、あまりにも酷すぎた。
▽後半戦の獲得勝ち点数は、総合順位で最下位の大宮アルディージャと並び18チーム中最低の11ポイント。9月の長谷川監督退任発表後は、「公式戦13試合未勝利」、「リーグ戦10試合未勝利」、「リーグ戦19試合連続失点」とクラブワースト記録を連発。結果的に、クラブ上層部のシーズン中盤での監督交代発表という決断は、“早過ぎた”と言わざるを得ない。チーム全体で迷走ぶりを極めた。
明治安田生命J1リーグ30試合出場(先発29試合)/4得点
▽チームが混迷を極めた中、個人として煌々と輝き続けたのがMF井手口陽介だ。今シーズンから背番号8を背負った21歳の怪物は、30試合に出場して4ゴールをマーク。序盤こそ負傷離脱した時期もあったが、無尽蔵のスタミナと攻守の積極性を武器に、G大阪でMF遠藤保仁とMF今野泰幸による聖域を奪っただけでなく、代表でも「欠かせない選手」に成長を遂げた。その結果、今年ベストイレブンを初受賞。今冬の海外移籍にも注目が集まる自身のサッカー人生にとって、大きな意味を持つシーズンになったに違いない。
◆補強成功度「C」(評価:S~E)
▽一方で、MF泉澤仁とMF井出遥也の両アタッカーは、前線にも守備のタスクを求める長谷川監督の下、持ち場を固めることに苦戦。シーズン前に噂されながら今夏に加入がずれこんだFWファン・ウィジョにおいては、戦術を理解し切れていない中でも潜在能力を示していただけに、13試合3ゴールという成績でも「開幕前に加入していれば」と同情の余地がある。
◆総合評価 「E」(評価:S~E)
▽長谷川監督が指揮して以降、G大阪は西野朗前監督時代の「取られたら取り返す」攻撃的なスタイルを一新。チーム全体にハードワークを求める守備的なスタイルを落とし込み、4つのタイトルを獲得した。だが、それはFW宇佐美貴史とFWパトリックのスペシャルな存在が前線にいたからこそ成り立ち、彼らを失った今、そのスタイルは反発力を失い、ボヤけて映る。
▽また、今シーズンの低迷を引き起こした要因として、フロントを含む上層部の働きにも問題がありそうだ。MF阿部浩之とMF大森晃太郎のように生え抜きで働き盛りだった主力が引き抜かれる事態は、Jトップクラスの実績と資金力を有するG大阪としては異例。逆に、補強においても、今オフに噂された数名のストライカーの獲得にことごとく失敗しており、そういったフロントの空回りが現場の足を引っ張ったように感じてならない。
▽来シーズンからレヴィー・クルピ氏が監督に就任するが、上層部は新時代を迎えるにあたり、今シーズンの失敗をどう糧にしていくのか。ただ、監督の首をすり替えただけだと、何も変わらない。かつてセレッソ大阪でMF香川真司やMF山口蛍らの才能を見出した名伯楽であり、攻撃的なサッカーの志向者でもあるブラジル人指揮官の下、来シーズンは失った立ち位置とスタイルを再確立する旅に出る。チームとして一体感を作り、新時代の幕開けを迎えたい。
▽「DAZN」マネーにより、シーズンの成績で今後のクラブ強化に大きな影響を及ぼすこととなった2017シーズン。超ワールドサッカー編集部は、J1全18クラブを総括。トピックやチームMVP、補強成功度、総合評価で振り返る。第9弾は長谷川体制のラストイヤーを10位でフィニッシュしたガンバ大阪を総括する。
(C)CWS Brains,LTD.
【主なトピック】
●U-20日本代表MF堂安律が今夏、フローニンヘンに期限付き移籍
●主力に故障者続出
●FWアデミウソンが絶不調
●シーズン途中に長谷川健太監督の今季退任を発表
●クラブワースト記録を連発
●2012年以来の二桁順位で終了
▽ホーム最終戦でのサポーターの大ブーイングが長谷川体制ラストイヤーの評価を物語る。最終成績は11勝10分け13敗(勝ち点43)の10位。2013年に長谷川健太監督が就任以降、2014年に国内三冠(J1、天皇杯、Jリーグカップ)を達成するなど、毎年のように終盤のタイトル争いに絡んできた“西の雄”だったが、今年は2012年以来の2桁順位に終わり、一時代の終焉を告げるシーズンとなった。
▽序盤戦こそ苦手の春先を乗り越え、一時は首位に立つなど4位でターンしたが、後半戦によもやの大ブレーキ。成長をチームの結果に還元しつつあったMF堂安律の途中退団や、守備の要として出色ぶりが際立ったDFファビオら主力の相次ぐ故障離脱、FWアデミウソンの絶不調といった数々のエクスキューズがあるにせよ、クラブのブランド力や歴史、総タイトル数を鑑みても、あまりにも酷すぎた。
▽後半戦の獲得勝ち点数は、総合順位で最下位の大宮アルディージャと並び18チーム中最低の11ポイント。9月の長谷川監督退任発表後は、「公式戦13試合未勝利」、「リーグ戦10試合未勝利」、「リーグ戦19試合連続失点」とクラブワースト記録を連発。結果的に、クラブ上層部のシーズン中盤での監督交代発表という決断は、“早過ぎた”と言わざるを得ない。チーム全体で迷走ぶりを極めた。
◆チームMVP
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MF井手口陽介(21歳)明治安田生命J1リーグ30試合出場(先発29試合)/4得点
▽チームが混迷を極めた中、個人として煌々と輝き続けたのがMF井手口陽介だ。今シーズンから背番号8を背負った21歳の怪物は、30試合に出場して4ゴールをマーク。序盤こそ負傷離脱した時期もあったが、無尽蔵のスタミナと攻守の積極性を武器に、G大阪でMF遠藤保仁とMF今野泰幸による聖域を奪っただけでなく、代表でも「欠かせない選手」に成長を遂げた。その結果、今年ベストイレブンを初受賞。今冬の海外移籍にも注目が集まる自身のサッカー人生にとって、大きな意味を持つシーズンになったに違いない。
◆補強成功度「C」(評価:S~E)
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▽日本代表に選出されたDF三浦弦太は、その事実が示すとおり、期待値以上の活躍を披露。ファビオに関しては、シーズン途中の故障が痛かったが、離脱前まで三浦と共に身体能力を生かしたセンターバックの一角としてフル回転していただけに好印象だ。また、終盤にトップチームで出番を増やしたMF中原彰吾の台頭も来シーズンに向けて評価すべきだろう。▽一方で、MF泉澤仁とMF井出遥也の両アタッカーは、前線にも守備のタスクを求める長谷川監督の下、持ち場を固めることに苦戦。シーズン前に噂されながら今夏に加入がずれこんだFWファン・ウィジョにおいては、戦術を理解し切れていない中でも潜在能力を示していただけに、13試合3ゴールという成績でも「開幕前に加入していれば」と同情の余地がある。
◆総合評価 「E」(評価:S~E)
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▽毎シーズンの優勝争いが義務付けられたクラブであることを考えると、今シーズンの戦いぶりは不甲斐なさ過ぎた。その要因の1つとして、長谷川監督の偏りすぎた堅守速攻スタイルにも今シーズンの低迷を引き起こした責任がありそうだ。▽長谷川監督が指揮して以降、G大阪は西野朗前監督時代の「取られたら取り返す」攻撃的なスタイルを一新。チーム全体にハードワークを求める守備的なスタイルを落とし込み、4つのタイトルを獲得した。だが、それはFW宇佐美貴史とFWパトリックのスペシャルな存在が前線にいたからこそ成り立ち、彼らを失った今、そのスタイルは反発力を失い、ボヤけて映る。
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▽そのなかで、長谷川監督の信頼を勝ち取ったFW長沢駿が全34試合に出場してチームトップの10ゴールと奮闘。だが、周囲を生かすプレーでの貢献度が低く、タイトルを狙うクラブのストライカーとしては物足りない。ポテンシャルを秘めたファン・ウィジョがいるが、頼りになるストライカーの獲得が今オフの最大のテーマになるだろう。▽また、今シーズンの低迷を引き起こした要因として、フロントを含む上層部の働きにも問題がありそうだ。MF阿部浩之とMF大森晃太郎のように生え抜きで働き盛りだった主力が引き抜かれる事態は、Jトップクラスの実績と資金力を有するG大阪としては異例。逆に、補強においても、今オフに噂された数名のストライカーの獲得にことごとく失敗しており、そういったフロントの空回りが現場の足を引っ張ったように感じてならない。
▽来シーズンからレヴィー・クルピ氏が監督に就任するが、上層部は新時代を迎えるにあたり、今シーズンの失敗をどう糧にしていくのか。ただ、監督の首をすり替えただけだと、何も変わらない。かつてセレッソ大阪でMF香川真司やMF山口蛍らの才能を見出した名伯楽であり、攻撃的なサッカーの志向者でもあるブラジル人指揮官の下、来シーズンは失った立ち位置とスタイルを再確立する旅に出る。チームとして一体感を作り、新時代の幕開けを迎えたい。
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