【六川亨の日本サッカー見聞録】ACL準決勝第2戦は今季ベストゲーム。決勝の相手は日本と因縁深いアル・ヒラル2017.10.20 09:00 Fri

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▽視察したハリルホジッチ監督が「スーパーな試合」と驚いた昨夜のACL準決勝第2戦、浦和対上海上港の試合は、間違いなく今シーズンのベストマッチだった。堀監督に代わり、システムも4-1-4-1に変更した浦和。しかしリーグ戦では7試合連続失点中と、お世辞にも結果が出ているとは言い切れない。

▽しかしながらACLになると、ホームではグループリーグから6試合全勝と圧倒的な強さを発揮してきた。しかも1次リーグでFCソウルに5-2、ウエスタン・シドニーに6-1と大勝すると、決勝トーナメント1回戦の済州戦ではアウェーを0-2で落としながら、ホームは延長戦で3-0と逆転勝ち。さらに川崎Fとの準々決勝も第1戦は1-3と敗れながら、ホームでは4-1とひっくり返す離れ業をやってのけた。

▽準決勝の上海戦は、アウェーで1-1のドロー。上海はご存じのようにフッキ、オスカル、エウケソンと元ブラジル代表を前線に揃え、破壊力はアジアでも1、2位を争う強敵だ。その反面、自国選手で固めた守備陣に脆さがある。このため第2戦は、浦和が守備を固めて0-0のドロー狙いに行くか、激しい打ち合いを演じるのではないかと予想した。

▽しかし浦和は自陣に引いて守備を固めるのではなく、前線からのプレスとミドルサードでの複数選手による囲い込みなど、インテンシティの高いサッカー、ハリルホジッチ監督の言う「デュエル」で上海に勝負を挑んだ。決勝点は柏木のCKからラファエル・シルバが頭で押し込んだものだが、このシーン以外にも槙野のヘッドがクロスバーを直撃するなど、カウンターから上海ゴールを脅かし、決定機の数でも上海を上回った。

▽上海の決定機はフッキのミドルによる一撃くらい。これはGK西川が好反応を見せ、直後のこぼれ球にも身体を張ってゴールを死守した。決勝戦の相手はサウジアラビアの名門アル・ヒラル。13度のリーグ優勝を果たしているが、ACL(01―02年まではアジアクラブ選手権)では何かと日本勢と縁が深いクラブだ。

▽日本勢が初めてアジアの頂点に立ったのは、古河(現ジェフ千葉)が天皇杯を棄権して参加した1986年のことだった。大会はリーグ戦で行われ、準優勝がアル・ヒラルだった。そして翌1987年、読売クラブ(現東京V)が日本勢として連覇を果たしたが、決勝戦を棄権して準優勝に終わったのもアル・ヒラルだった。決勝はホーム&アウェーで行われる予定だったが、サウジアラビアの大学の試験と日程が重なるため、第1戦を前にアル・ヒラルは棄権した。

▽そんな彼らが2度目のアジア王者に輝いたのが99―00年のこと。前年のアジア王者である磐田をホームに迎え、ゴールデンゴールから3-2で磐田の連覇を阻んだ。ACLになってからは、14年に決勝まで進んだものの、アウェーの第1戦はウエスタン・シドニーの1チャンスに失点して0-1と敗退。ホームでは怒濤の猛攻を見せたもののゴールをこじ開けられず0-0で準優勝に甘んじた。ACL最大の番狂わせでもあった。

▽アル・ヒラルとの決勝戦は第1戦が11月18日、第2戦が1週間後の25日となっていて、浦和は初戦がアウェーで、第2戦をホームで戦える。ミラクル・レッズの再現なるか。決勝戦は昨夜の4万4千357人ではなく、満員にして選手をサポーターしたいものだ。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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外人枠の規制緩和とHG制度の導入【六川亨の日本サッカー見聞録】

▽Jリーグの原博実副チェアマンは、9月18日の実行委員会後、日本版ホームグロウン制度(以下HG)の導入と外国籍選手の規制緩和について、メディアと意見交換の場を設けた。これは7月の実行委員会でも議題に上ったそうで、来シーズンの課題の1つとして育成と強化に新たなシステムを採り入れるため現在も検討中だという。 ▽そもそもの発端は、2016年にダゾーンと高額契約する際に、Jリーグの競争力を高めるために規制を緩和して外国人枠の見直しをすべきではないかという意見が出たことだった。これはその後、「アジアの提携国の選手は外人枠に入れない」という形で、まずは日本から門戸を開いて行こうということになった。 ▽その結果、今シーズンは札幌のチャナティップだけでなく広島にティーラシン、神戸にティーラトンらタイ代表がJリーグに参入したことで、タイ国内でもJリーグの人気が高まり、観戦に日本を訪れるファンの増加というプラス効果があった。戦力としても効果的なため、この「アジア提携国枠」は今後も見直した方がいいという議論も出ているという。 ▽ヨーロッパに目を向けると、イングランドのプレミアリーグだけでなく、ドイツのブンデスリーガ、スペインのラ・リーガも現地でデーゲームを開催することで、アジアのマーケットの拡大を意識している。そこで日本も外国人枠の規制を緩和し、イニエスタのようなスター選手を獲得することで、アジアのマーケットを拡大したいという狙いがある。 ▽原副チェアマンいわく「外国人を使えと言っているわけではなく、外国人も競争になる。その一方でバスク人だけのアスレチック・ビルバオのようなクラブがあってもいい」と、チーム作りは各クラブに任せる方針だ。 ▽こうした規制緩和に舵を切ると同時に欠かせないのが日本人選手の育成で、HG制度の導入は両輪の輪と言えるだろう。UEFAは25名の登録選手中、「年齢、国籍を問わず15~21歳の3年間、現クラブに登録されていた選手=CTPを4名」か、「同じく協会のクラブに登録されていた選手=ATPを4名」の計8名を登録することを各クラブに義務づけていて、不足した場合は登録枠そのものが減らされることになっている。 ▽現在の日本は登録25名枠にプラスして5名のユース枠を設けているが、将来的に7~8名のHG制度を採用する方向で検討中だ。 ▽現状ではACLは外国人枠が3+1に対し、Jリーグは「アジア提携国枠」がありレギュレーションが違う。さらにCWCでのヨーロッパ勢との対戦では、鹿島が外国人部隊のレアルと対戦するなど整合性が取れていない。このため「すべてを決めているわけではなく、話し合いの土台を作っているところ。多くの方の意見を聞きながら、制度設計のための議論をしているところ」(原副チェアマン)でもある。 ▽規制緩和にあたり、「ロシアW杯の強豪国のGKは190センチ台が常識になりつつあるが、日本人選手の大型GKやCBは少ない。その結果、韓国人選手が増加している。規制緩和でその傾向が強まるのではないか」と懸念をぶつけてみた。 ▽すると原副チェアマンは「GKコーチは各年代で、日本の指導スタッフで一番遅れている。このため指導者の育成が急務になる」との見解を示した。そして「U-17の日本と韓国の試合を比べると、日本はペナルティーエリア内でのプレーが少なく、中盤でのプレーが多い。それが優秀な中盤の選手を生んでいるが、逆に大型GKやストッパー、ストライカーが育ちにくいのではないか」と私見を述べた。 ▽まさに正鵠を射ていると思う。Jリーグの多くのチームはボールロストを恐れ、サイドから攻撃を仕掛けながらも、なかなかクロスを入れない。かつての闘莉王や中澤のように、空中戦に圧倒的な強さを誇る選手も近年は激減した。ゴール前の競り合いほどスリリングなシーンはないだろう。「外国人枠の規制緩和」がJリーグのレベル向上につながるならば、早期の導入を期待したい。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.09.20 21:01 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】気配りのできる森保監督

▽森保ジャパンは9月11日のコスタリカ戦を3-0の快勝で飾る好スタートを切った。右サイドからは堂安と室屋、南野らの組織的な仕掛けで崩し、左サイドは中島が得意のドリブルからカットインやタテに抜け出し、相手が警戒すればキープから味方を使うなど独壇場の活躍を見せた。 ▽元日本代表の西野監督は、ロシアW杯で左サイドのジョーカーにG大阪時代の教え子だった宇佐美を選んだが、昨シーズンの活躍からして中島が上回っていただけに、W杯で中島のドリブルを見られなかったのは残念だった。ただ、ポルティモネンセで1シーズンを過ごしても、サッカーを「楽しむ」ことが一番という姿勢に変わりはないのも中島らしい。 ▽できれば、もう少し骨のある相手と試合をやりたかったが、それは10月の2試合に期待するとしよう。さて、試合の翌日、森保監督は市内のホテルからC大阪のクラブハウスへと向かった。代表の紅白戦で杉本が右足薬指を傷めて離脱したことを、強化担当者に会って直接謝罪するためだった。 ▽その後は松本のクラブハウスを訪ね、アジア大会の準決勝UAE戦で右足首のじん帯損傷により全治5~6週間の重傷を負った前田のことを反町監督に詫びた。律儀な性格の森保監督らしい行動と言える。 ▽それというのも広島での監督経験から、代表に選手を送り出しながら、ケガをして戻って来たときのチームの痛手というものを実際に経験しているからだろう。このエピソードを聞いて思い出した話がある。 ▽1996年アトランタ五輪後の出来事だった。西野監督はブラジルを1-0で倒す“マイアミの奇跡”や、ハンガリーを3-2で振り切るなど2勝しながらも決勝トーナメントへ進めなかった。大会後、当時の技術委員長だった大仁氏は、技術委員会の総括として西野監督は「守備的だった」と批判した。 ▽これに激怒したのが、当時柏レイソルのGMを務めていた久米氏(その後は清水や名古屋で活躍)だ。「結果を残せなければメディアから批判されるのは仕方ないが、これでは協会が西野の顔に泥を塗ったようなもの。長期間に渡り西野を貸したのだから、技術委員長ならせめて柏のクラブハウスに来て、レイソルの社長にお礼の一言があってもいいのではないか」というのが久米氏の言い分だった。 ▽大仁氏にしても悪気はなかったと思う。ただ、当時はそこまで気が回らなかったのだろう。Jリーグができて3年目、代表チームを取り巻く環境も現在とは雲泥の差があったし、チームはすでに解散していたからだ。 ▽もちろん今回のように、気配りのできる森保監督ならそんな心配は無用だろう。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.09.13 20:40 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】チリ戦開催中止決定まで遅すぎるJFAの判断

▽今日6日の朝のこと、羽田空港6時10分発のフライトに乗るため、4時30分に友人のクルマで送ってもらった。テレビでは3時8分頃に北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源とする震度7の地震が発生し、各地で被害が出ているというニュースは知っていた。 ▽5時前に空港に着いてカウンターに行ってみると、すでに機内に荷物を預ける人の列ができている。しかしフライト状況を確認すると北海道行きの便はすべて「運航状況確認中」の表示が出ている。場内アナウンスでは「6時15分頃に発表します」と繰り返すだけ。 ▽そして結果はというと「本日の新千歳行きは全便欠航です。便の変更ならびに払い戻しは●番カウンターで受け付けています」とのことだった。チリ戦は7日なので、明日の便を予約するかと思いつつ、早朝で申し訳ないが代表の広報担当者の携帯に連絡し、試合開催の可否を聞いたところ、「まだ夜が明けたばかりで、これから情報を収集してアナウンスします」という返事。 ▽便の振り替えは試合の開催が決まってからでいいだろう。そう思って、まず今日の札幌行きは不可能なのでホテルにキャンセルの電話をしたところ、これがまったくつながらない。「災害用伝言ダイヤルをご利用ください」のアナウンスが流れるばかり。とりあえず空港内のテレビで現地の様子を見たが、次々と悪いニュースが入ってくる。 ▽札幌市内の地下鉄とJR全線がストップしているだけでなく、全土で停電している。これでは札幌ドームでの前日練習もできないし、「明日の試合は中止になる可能性が高い」と判断し、8時過ぎに払い戻しをして自宅に戻った。 ▽過去に地震により試合が開催中止となった例は多い。近くでは今年7月の大阪府北部地震の影響でJ3のG大阪U-23の3試合が中止になったし、2016年は熊本地震の影響でJ1~J3の14試合が中止となった。 ▽海外では1986年メキシコW杯を翌年に控えた85年大地震があり、死者・行方不明者は8千人に及んだが、スタジアムの被害は軽微だったため無事に開催された例がある。 ▽そしてチリ戦についてJFA(日本サッカー協会)は、「明日9月7日(金)に開催予定のSAMURAI BLUE(日本代表)対チリ代表の国際親善試合につきましては、現在、現地の詳しい状況を確認している段階です。日本代表チームとチリ代表チームの無事は確認しておりますが、試合開催につきましては、本日18時までに開催の可否を決定することにしております」とのメールを9時49分に発信した。 ▽状況を確認するのは悪いことではない。しかし昼過ぎの時点で被害は深刻さを増し、死者・行方不明者も出ている。例え電力が復旧し、札幌ドームが使用可能になり、市内の地下鉄やJRが運行されたとしても(この原稿を書いている時点ではいずれも復旧していないが)、地震翌日の試合は避けるべきだし、もっと早く決断すべきだった。 ▽プロ野球の日本ハムは7日から仙台で楽天との3連戦を控えていたが、新千歳空港が使用不可となったため試合の中止を正午のHP(ホームページ)で発表した。ラグビーのトップリーグも8日に札幌市内の月寒屋外競技場で神戸製鋼対宗像サニックスの試合が予定されていたものの、開催中止を12時40分過ぎにリリースしている。 ▽「国内リーグなら簡単に決断を下せるが、国際試合では判断に慎重を期さざるを得ない。代替試合も開催できないのだから」という反論もあるだろう。しかし被害は時間の経過とともに拡大するばかり。日本代表はもちろん、チリも南米では地震大国ではあるが、日本人ほど地震に慣れてはいないだろう。選手の心情を考慮しても、JFAはもっと早く試合の中止を決断し、リリースを流すべきだった。 ▽午前中からスマホが通じないことは書いたが、まだLINE電話による通話は可能だった(いまは不通でSMSしか連絡手段がない)。現地に先乗りしている記者に安否を確認すると「いま水を買うためイオンの長蛇の列に並んでいる」とか、「wi-fiが通じないのでテザリングで情報収集しているが、充電ができないのでいつまでパソコンとスマホが使えるかわからない」、「停電のため夜は真っ暗になるだろう」と不安を訴える。 ▽さらに「東京に戻る方法を教えて」とフェイスブックに書き込む記者もいた。JRがストップし、高速道路も通行止め。このため稼働している帯広空港までの足を確保しようにもレンタカー会社は電話が通じないそうだ。苫小牧発、大洗行きのフェリーもすでに満席だという。まさに八方塞がりの状況だ。 ▽もちろん日本とチリの代表チームはここまで困ってはいないだろう。一般市民の苦労を知らないからこそ、「18時までに開催の可否を決定」と悠長なことを言ってしまったのではないだろうか。危機管理能力の欠如と指摘されても仕方ない対応である。 ▽日本代表が無事に何らかの手段で札幌から移動できれば、11日は吹田スタジアムでのコスタリカ戦である。こちらは台風21号の被害でまだ避難所生活を余儀なくされている人もいる。いずれも天災だから逃れようはないが、こちらの試合開催の是非が問われるのではないだろうか。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.09.06 22:00 Thu
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【六川亨の日本サッカーの歩み】アジア大会で感じた男子と女子の成功体験の差

▽インドネシアで開催されていたアジア大会で、男子のU-21日本代表は銀メダル、なでしこジャパンは金メダルを獲得した。韓国との決勝戦となった男子は、元々苦戦が予想された。相手は23歳以下の代表で、兵役免除を狙ってOA枠でFWソン・フンミンとファン・ウィジョ、GKチョ・ヒョヌを起用してきた。 ▽それでも森保ジャパンは試合を重ねるごとに堅守からのカウンター狙いというチームコンセプトが固まりつつあったので、「もしかしたら」と期待したのだが、肝心の守備で後手に回ったのは残念だった。 ▽90分間は韓国の猛攻に耐えて無失点で切り抜けた。しかし、ミドルサードであまりにも韓国選手をフリーにしすぎた。ギャップに入られるとフリーにしてしまい、簡単にパスをつながれる。そして攻撃陣はプレスバックすることなく味方の守備を見守るだけ。連戦での疲労なのか、それとも森保監督からカウンターに備えるよう指示があったのかどうかはわからないが、テレビで見ていてもどかしさを感じた90分間でもあった。 ▽そして延長戦、先制点はペナルティーエリア右に侵入したソン・フンミンをフリーにしてしまう。一番警戒しなければならない選手に対し致命的なミスだ。彼の突破は防いだものの、こぼれ球をイ・スンウに決められた。 ▽結果は1-2で敗れた。大学生の上田が決勝トーナメントに入ってゴールという結果で頭角を現したのは朗報だ。“格上”相手の韓国に善戦したことを評価する声もある。Jリーグからは1チーム1名という招集制限と、ぶっつけ本番で大会に臨まなければならなかったこと、そして「まだ21歳以下のチームだから」という理由からだ。しかし、21歳以下でもロシアW杯で活躍した選手の存在を忘れてはならない。 ▽今大会のメンバーは20年東京五輪に向けて伸びしろを期待されてのメンバーでもある。さらにU-19世代の選手も東京五輪を虎視眈々と狙っている。だからこそ、格上相手の韓国とはいえ金メダルという結果を残して欲しかったと思うのは期待しすぎだろうか。 ▽対照的になでしこジャパンは、中国に圧倒されながらも菅澤の決勝ヘッドで金メダルを獲得した。この結果を当然と思うファンも多いのではないだろうか。フランスで開催されたU-20W杯ではヤングなでしこが優勝し、U-17W杯と年齢制限のないW杯の優勝とあわせ、日本は初めて3カテゴリーにわたりW杯を制するという偉業を達成した。 ▽しかし、90年代にアジアの女子サッカーを牽引したのは日本でも北朝鮮でもなく中国だった。W杯では95年に4位、99年は準優勝。アジア杯は86年から99年まで7連覇を達成し、アジア大会でも女子サッカーが採用された90年から3連覇を果たしている。 ▽当時の中国は、強靱なフィジカルでアジア諸国を圧倒した。当たりの強さに加え高さも群を抜いていた。そんな中国の女子サッカーが衰退した理由は定かではないが、90年代は女子サッカーへの世界的な注目度が低かったため、身体能力の優れた選手は五輪で注目を浴びるバスケットやバレーに流れたのではないかと推測している。 ▽しかし時代は変わり、W杯や五輪で女子サッカーも注目を浴びるようになった。そのきっかけは11年のなでしこジャパンのW杯優勝だろう。澤が脚光を浴び、12年のロンドン五輪ではアメリカのレジェンドであるアビー・ワンバックが母国を金メダルに導いた。もはや女子サッカーはマイナー競技ではなくなった。 ▽そうした時代の移り変わりに、中国が再び女子サッカーの強化に乗り出した結果、銀メダルに終わったとはいえ、なでしこジャパンを圧倒したのではないだろうか。アジアでは北朝鮮とオーストラリア、そして近年力をつけてきた韓国がなでしこジャパンのライバルだった。しかし今大会では中国の躍進を実感しただけに、新たなライバルの出現に危機感を覚えずにはいられない。 ▽とはいえ、それでもなでしこジャパンは金メダルを獲得した。それが男子と女子の“メンタリティー”の違い、背負う歴史の違いではないだろうか。成功体験の違いがなでしこジャパンには確実に受け継がれているようだ。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.09.03 19:30 Mon
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【六川亨の日本サッカー見聞録】キリンチャレンジ杯に臨む日本代表23名から見えてくるシステムとは

▽アジア大会では8月31日の決勝戦に進んだU―21日本代表の森保監督が、インドネシアで9月7日と11日に開催されるキリンチャレンジ杯の日本代表メンバー23人を発表した。会見で森保監督は「W杯ロシア大会に出ていた選手で、基本的に海外でプレーしている選手の招集は今回見送りました」と説明したように、香川、大迫、武藤、原口らに招集のレターは送らなかった。 ▽恐らく彼らの実力はロシアW杯に帯同していたのだから把握済み。さらに大迫はブレーメン、武藤はニューカッスル、乾はセビージャ、柴崎はヘタフェ、原口はハノーファーと新天地に移ったため、所属クラブでのポジション争いに専念できるように配慮したことも想像に難くない。 ▽森保監督は「世代間の融合や世代交代」もチーム作りのテーマとしてあげていたが、さすがにアジア大会に参加している選手の招集は見送った。8月12日から9月1日まで、約3週間、酷暑のインドネシアでプレーしただけに、選手に休養を取らせることを優先したのだろう。 ▽さて、今回招集した23名だが、GKからは長らく主力を務めてきた川島が外れた。世代交代が急務なポジションではあるが、改めて人材不足が浮き彫りになった。継続性という意味で東口の招集は当然として、他の2人はちょっと意外だった。権田は代表経験こそあるものの、すでに29歳とベテランの域に近づきつつある。197センチという長身が魅力のシュミット・ダニエルは26歳と若いものの、過去の代表歴はゼロと国際経験に不安を残す。 ▽柏GK中村を呼ばなかった理由は不明だが、裏を返せばそれだけJ1リーグで若手GKが育っていないことの証明でもある。GKは経験が必要と言われるものの、J1クラブでは7人のGKが外国籍選手だ。11人いる日本人選手もベテランが多く、中村とシュミット・ダニエルは若手の部類に入る。ポジションが1つしかないだけに、9月の2試合では誰が起用されるのか気になるところでもある。 ▽DF陣には森保監督の目指すスタイルが表れていると言っていい。ロシアW杯組の槙野、遠藤航、植田を含め、初招集の佐々木、冨安に加えて三浦の6人はいずれもCB(センターバック)タイプ。このことからも森保監督は3BK(バック)をベースにした3-4-2-1システムを採用する可能性が高い。 ▽例外は室屋と車屋で、彼ら2人は4BKを想定しての招集だろう。ただし、現状では酒井宏と長友のバックアップという位置づけかもしれない。これまで、なかなかバックアッパーが見つからず、槙野を左に起用したこともあったし、右で起用されてきた酒井高は代表からの引退を示唆した。彼ら2人にかかる期待は大きいと言える。 ▽話をCBに戻すと、来年のアジアカップでは吉田と昌子がスタメン候補だろう。このため今回招集された6人には今後も厳しいポジション争いが待っていると言える。 ▽中盤の選手を見て最初に思ったのは、やはり長谷部の代わりは簡単に見つかりそうにないということ。アジア大会での森保ジャパンの攻撃スタイルを見ていて、青山敏の招集は「やはり」と思った。1本のパスで決定機を作るには、青山敏のように視野が広く正確なロングパスを出せる選手が必要だからだ。 ▽ポジション別には攻撃的ボランチに青山敏と大島、守備的なボランチに山口と三竿の4人。右アタッカーが伊東、堂安の2人、左アタッカーが中島、南野、伊藤の3人で、堂安と南野はトップ下でもプレーできる。森保監督もリオ五輪世代以下の若手の成長に期待をよせているだけに、彼らがどんなプレーを見せるのか楽しみでもある。 ▽最後にFW陣は小林、杉本、浅野の3人だが、小林は万能型、杉本はストロングヘッダー、浅野はスピードスターと持ち味の異なる選手を招集したのはわかりやすい。ボールポゼッションで相手を凌駕できる試合なら小林、カウンター狙いなら浅野という起用で、杉本は劣勢の際のパワープレー要員といった位置づけだろう。ハリル・ジャパン時代に1対1の練習で守備がまったくできなかった杉本に前線からのプレスは期待しにくい。ことためスタメン起用はリスクが高いので、攻撃の切り札として招集された可能性が高いと見た。 ▽最後にキャプテンだが、昌子がいれば彼になっただろうが、現状では経験値から槙野か青山敏といったところ。アジアカップでは吉田が務めることになるだろう。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2018.08.31 13:10 Fri
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