【編集部コラム】“さいたまダービー”で感じた渋谷監督の想い…大宮プライドを懸けた采配
2017.05.02 22:45 Tue
▽試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、スタンドをオレンジ色で埋め尽くした大宮アルディージャサポーターは歓喜の渦に包まれ、タッチライン際で戦況を見つめていた渋谷洋樹監督の表情は安堵の感情を含んだ笑顔に包まれた。
▽4月30日、明治安田生命J1リーグ第9節の大宮アルディージャvs浦和レッズの“さいたまダービー”が大宮の本拠地であるNACK5スタジアム大宮で行われた。ここまでリーグ戦8試合で開幕6連敗を喫するなど1分け7敗で最下位の大宮が、6勝1分け1敗で首位に立つ浦和を迎えたが、63分に生まれたMF茨田陽生のゴールで大宮が1-0と勝利を収め、シーズン初白星を飾った。
▽喉から手が出るほど欲しかったシーズン初勝利を、首位・浦和との“さいたまダービー”で掴んだ大宮。前節のガンバ大阪戦で0-6と大敗を喫し、チームが崩れていくようにも思えたが、浦和戦は一枚岩となり、闘う集団が戻ってきた印象を受けた。チームが一枚岩になれたのは、渋谷監督の存在が大きかったように思う。
◆ダービーへの“想い”を感じる采配
▽その想いは、スターティングメンバーからも感じられた。ボランチの一角に3試合ぶりの出場となるMF金澤慎を起用。G大阪戦でボランチコンビを組んだ、MF岩上祐三、MF茨田陽生とともに、ボランチでプレーする3選手をピッチに並べた。さらに、チームのキャプテン、副キャプテンではない金澤にキャプテンマークを託したことも、“ダービー”への想いの強さを感じるものだった。
◆期待に応えた教え子・金澤、監督の“想い”を体現
▽ハードなマークが持ち味の金澤は、この試合でFW興梠慎三のマンマークを担当。その采配は見事に的中した。[4-4-2]を標榜する渋谷監督にとって、相手選手1人にマンマークをつかせる決断は容易ではなかったはず。しかし、チームが置かれている状況、G大阪戦の大敗、そしてダービー。「プライドを持って戦いたい」と語っていた渋谷監督は、理想である“ポゼッションサッカー”を捨て、プライドを懸けて勝負に徹した。
▽マンマークを託したことにより、興梠のポジショニングに合わせるため、金澤が最終ラインに吸収され、[5-3-2]の形になったシーンが多く見られた。「レッズさんの攻撃力を考えた上での対応だった」と試合後に語ったように、渋谷監督はリスクを冒すことを避け、徹底して強力な攻撃力を誇る浦和対策を遂行。[4-4-2]へのこだわりを捨てたのも、“ダービー”という特別な試合への想いが影響したのかもしれない。
◆生え抜き3選手を交代カードに
▽また、交代カードも“ダービー”への想いを感じさせるものだった。後半開始から左サイドのMF長谷川アーリアジャスールに代えてMF大山啓輔を起用。さらに、72分にはFW瀬川祐輔に代えてFW清水慎太郎、87分にはFW江坂任に代えてDF高山和真を投入した。大山は大宮のジュニア第1期生であり、清水は浦和ジュニアユースから西武台高校を経て大宮に加入した生え抜き、高山もジュニアユースから大宮に所属している。
▽大山はフレッシュな状態でもあったが、ハードなプレスと豊富な運動量で中盤の守備を締めた。金澤がより興梠のマークに集中できたことも、大山の動きが影響しただろう。また、清水は前線でのターゲット役を遂行した。リードしている状況において、ロングボールを収める役を担っていた。また、高山もクローザーとして投入され、最終ラインで体を張り浦和の攻撃を封じた。
▽前述の金澤に加え、右サイドバックに入ったDF渡部大輔も下部組織出身。試合終了のホイッスルが鳴った時には、4名の下部組織出身選手がピッチに立っていた。同じ街のライバルである浦和との“ダービー”において、より想いが強い選手を起用したのも、渋谷監督からのメッセージだったのかもしれない。
◆まずは第一歩、次に繋げられるか
▽しかし、大きな1勝であることも変わりない。たかが1勝、されど1勝。今の大宮にとって、首位であり同じ街のライバルである浦和からの1勝は、勝ち点3以上の価値を生み出すキッカケになるはずだ。
▽渋谷監督は「今日の勝ちを次につなげられるように、全員でまた準備して向かっていきたいと思います」ともコメントしている。この1勝を弾みに、ゴールデンウィーク期間中に開催されるYBCルヴァンカップのベガルタ仙台戦(3日)、リーグ戦の札幌戦(6日)と結果を残し続け、本当の意味で“ダービー”での勝利を価値あるものにできるのか。ここからの大宮の巻き返しに期待が懸かる。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
▽4月30日、明治安田生命J1リーグ第9節の大宮アルディージャvs浦和レッズの“さいたまダービー”が大宮の本拠地であるNACK5スタジアム大宮で行われた。ここまでリーグ戦8試合で開幕6連敗を喫するなど1分け7敗で最下位の大宮が、6勝1分け1敗で首位に立つ浦和を迎えたが、63分に生まれたMF茨田陽生のゴールで大宮が1-0と勝利を収め、シーズン初白星を飾った。
◆ダービーへの“想い”を感じる采配
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▽「34分の1とは考えていません」とダービー前日に力強く語った渋谷監督。今シーズン初となる非公開練習を実施した後、囲み取材でコメントした。結果が出ないことに対し「私の責任」と試合後にコメントを重ねており、今回のダービーに関しても「(苦しい状況で)残念だし、申し訳ないです」と囲み取材で何度も口にした。誰よりもこの“さいたまダービー”への想いが強かったのは、渋谷監督だったのかもしれない。▽その想いは、スターティングメンバーからも感じられた。ボランチの一角に3試合ぶりの出場となるMF金澤慎を起用。G大阪戦でボランチコンビを組んだ、MF岩上祐三、MF茨田陽生とともに、ボランチでプレーする3選手をピッチに並べた。さらに、チームのキャプテン、副キャプテンではない金澤にキャプテンマークを託したことも、“ダービー”への想いの強さを感じるものだった。
▽金澤は大宮ユースの第1期生であり、東京ヴェルディへの2年間の期限付き移籍期間以外は大宮でプレー。渋谷監督とはユース時代の師弟関係でもあり、これまでもチームを立て直すタイミングでは、必ずと言っていいほど金澤がピッチに立っていた。試合後には「慎もずっと大宮を背負ってきている。彼が発信することによって何かが変わるかなと思って、彼に託しました」とキャプテンマークを託した理由を語っており、厚い信頼を感じさせた。
◆期待に応えた教え子・金澤、監督の“想い”を体現
▽ハードなマークが持ち味の金澤は、この試合でFW興梠慎三のマンマークを担当。その采配は見事に的中した。[4-4-2]を標榜する渋谷監督にとって、相手選手1人にマンマークをつかせる決断は容易ではなかったはず。しかし、チームが置かれている状況、G大阪戦の大敗、そしてダービー。「プライドを持って戦いたい」と語っていた渋谷監督は、理想である“ポゼッションサッカー”を捨て、プライドを懸けて勝負に徹した。
▽マンマークを託したことにより、興梠のポジショニングに合わせるため、金澤が最終ラインに吸収され、[5-3-2]の形になったシーンが多く見られた。「レッズさんの攻撃力を考えた上での対応だった」と試合後に語ったように、渋谷監督はリスクを冒すことを避け、徹底して強力な攻撃力を誇る浦和対策を遂行。[4-4-2]へのこだわりを捨てたのも、“ダービー”という特別な試合への想いが影響したのかもしれない。
◆生え抜き3選手を交代カードに
▽また、交代カードも“ダービー”への想いを感じさせるものだった。後半開始から左サイドのMF長谷川アーリアジャスールに代えてMF大山啓輔を起用。さらに、72分にはFW瀬川祐輔に代えてFW清水慎太郎、87分にはFW江坂任に代えてDF高山和真を投入した。大山は大宮のジュニア第1期生であり、清水は浦和ジュニアユースから西武台高校を経て大宮に加入した生え抜き、高山もジュニアユースから大宮に所属している。
▽大山はフレッシュな状態でもあったが、ハードなプレスと豊富な運動量で中盤の守備を締めた。金澤がより興梠のマークに集中できたことも、大山の動きが影響しただろう。また、清水は前線でのターゲット役を遂行した。リードしている状況において、ロングボールを収める役を担っていた。また、高山もクローザーとして投入され、最終ラインで体を張り浦和の攻撃を封じた。
▽前述の金澤に加え、右サイドバックに入ったDF渡部大輔も下部組織出身。試合終了のホイッスルが鳴った時には、4名の下部組織出身選手がピッチに立っていた。同じ街のライバルである浦和との“ダービー”において、より想いが強い選手を起用したのも、渋谷監督からのメッセージだったのかもしれない。
◆まずは第一歩、次に繋げられるか
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▽1-0で浦和を下し、今シーズンの公式戦初勝利を挙げた大宮。しかし、渋谷監督は「今日勝ったからといって何かが変わったわけでもありません」と気を引き締めた。「勝って兜の緒を締めよ」とは言ったもの。浦和対策を講じ、何とか掴んだ1勝に過ぎず、最下位というポジションに変化はなかった。▽しかし、大きな1勝であることも変わりない。たかが1勝、されど1勝。今の大宮にとって、首位であり同じ街のライバルである浦和からの1勝は、勝ち点3以上の価値を生み出すキッカケになるはずだ。
▽渋谷監督は「今日の勝ちを次につなげられるように、全員でまた準備して向かっていきたいと思います」ともコメントしている。この1勝を弾みに、ゴールデンウィーク期間中に開催されるYBCルヴァンカップのベガルタ仙台戦(3日)、リーグ戦の札幌戦(6日)と結果を残し続け、本当の意味で“ダービー”での勝利を価値あるものにできるのか。ここからの大宮の巻き返しに期待が懸かる。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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