【東本貢司のFCUK!】ミラクルの看板、いまだ健在2017.04.20 12:50 Thu

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▽かくてレスターのヨーロピアン・アドヴェンチャーはひとまず終止符が打たれた。とはいえ、天晴の賛辞を贈っても罰は当たるまい。そもそも、ファーストレッグのPK(グリーズマン)は誤審だった。ホームでのリターンマッチでも先制ゴールを奪われ、もはや希望の火もふっつりと消えたも同然の中、逆襲の同点弾をかっさらい、最後の1分まであきらめず攻め続けた。今大会、ホームゲームをただの一度も落とさずに乗り切ってきた事実だけをとっても、ファイナルホイッスル後、キング・パワーの観衆が万雷の拍手と総スタンディングオヴェーションの喝采を贈ったのは当然だった。何よりも、敵将ディエゴ・シメオネが(あの、シメオネが!)、レスターイレヴンの一人ひとりを健闘をたたえる熱っぽいハグで労ったことがすべてを物語っている。おそらく、このアトレティコ以下、レスターと戦ったヨーロッパのチームの全メンバーも同じ思いに違いない。自分たちは確かにイングランドのチャンピオンを相手にした、あのミラクルは決してフロックではなかったと。

▽以前にも書いた。チャンピオン・レスターが(皮肉なことにラニエリ解任直前まで)すっかり勝てなくなった理由。「ミラクル」の大パレードを席捲させるにまかせてしまったビッグクラブの意地、二匹目のドジョウはさすがに甘くないぞと引き締めた気が落としどころを見つけられないまま道に迷ってしまった自縛の罠、レスターができたのなら我々だってと目の敵にしてかかってきた“同輩”のチームの気迫。それらが混然となって、彼らに立ち直りのきっかけすら許さなかったがため・・・・。言っておくが、今でもラニエリ解任は世紀の大失態だったと断じたい。しかし、何度でも繰り返すが、皮肉にも、その世紀の大失態が「自縛の罠」から抜け出す引き金になった。それも、ある意味ではミラクルだ。つまり、ミラクル・レスターの看板は健在、少々趣を変えて凛として誇り高く掲げられている。ホームのアトレティコ戦の観戦者なら覚えているはずだ。ゴール裏に広げられたどでかいバナーの中で爛々と敵を射すくめるキツネの両眼を。そして、クレイグ・シェイクスピアの「これは手始め、改めての挑戦を目指す。今はまずはプレミア残留確保」の意気を。

▽なんとなれば「敗れてもなお強し、その誇りは見紛うことなし」以上に、ファンをときめかせるものはない。「勝てばすべて良し」はその場限りの慰撫、感傷でしかなく、気が付けば明日への不安を掻き立てる要因にもなる。例えば「半分以下のパフォーマンス」(アーセン・ヴェンゲル)で、辛うじて降格ゾーンのミドゥルズブラを退けたアーセナルのファンは、まさにそのレスターとのゲームを目前にして今、戦々恐々としているかもしれない。無論、セヴィージャをうっちゃり、アトレティコを苦しめたレスターに完勝でもすれば、トップ4フィニッシュへの首の皮一枚が二枚に格上げされる期待の方を膨らませるべきなのだが、筆者の目にもやはり「不安」の二文字がちらついて消えそうにない。肝心の二枚看板、エジルとサンチェスについてである。直近のボロ戦でも、一つ前の完敗を喫したクリスタル・パレス戦でも、二人に絡む連携がどうもぎこちなく見えて仕方がないからだ。いや、その前の(スコア上は快勝の)ワトフォード戦ですら、スコアラー3名のゴール直後の表情は冴えなかった。それは単にパフォーマンスの内容だけのゆえなのだろうか?

▽彼らの胸の裡にも「不安」の種が芽を吹いているからではないのか、シーズン終了直後からの“見えない将来の闇”にとらわれてはいないか? ならば、不肖の身で恐縮至極ながら、あえて提案しよう。ムッシュー、もとい、ミスター・ヴェンゲル、もはや躊躇うことはない、今こそ契約延長更新に首を縦に振ろうではないか。それで“彼ら”にも一つの踏ん切りがつく。ファンの“もやもや”にもはや“忖度”することはない。たとえ不遜と謗られようが続投を宣言すべきではないのか。仮にその結果、オフに誰彼が移籍を申し入れようがかまわないではないか。それはそれで、大手を振って補強市場に乗り出す正当な口実にもなる。あるいは、むしろヴェンゲルの方から“粛清”を決行したっていい。「粛清」とは“役立たず”を追放することにあらず。クラブのため、当該プレーヤーの将来のための、つまりは前向きな「改善策」としてだ。今一度、自身の原点に立ち返って「改造」に着手する。それに首をかしげるガナーズファンなどいないはず。そう、例えば“心機一転”を画策中のルカクや、それこそ宙に浮いているルーニーに目を向けてもいいではないか。

▽可能不可能の問題ではない。すでに“できる”ことが証明されているプレーヤーに新たなチャンスを与え、ヴェンゲル・アーセナル流の術を施す。そこで、敢然と「ネオ・インヴィンシブルズの再現」を掲げ、意気に感じる勇者たちを、有名無名を問わず、呼び寄せるのだ。それでこそ不満をかこつファンも目を開く、わくわくする。そのうえで、いくつか具体的な提案をしよう。狙うべきは、まず古巣モナコの人呼んで「アンリの再来」キリアン・ムバッパ。ただし、モナコとの交渉において「一年間の“Uターン”ローン貸出し」を提示して相手にウンと言わせる。その一方で、即戦力として期待したい“隠れた逸材”ワトフォードでプレーするミラン所属のムバイェ・ニアンを獲る。まだ22歳、粗削りだが大化けする可能性を秘めていると見る。ヴェンゲルの薫陶を受けて鍛えられ自信をもてば、ひょっとすればこちらもアンリ並みの戦力にならないとも限らない。もう一人は(エヴァトニアンの端くれとして内心は辛いのだが)エヴァートンのシュネデルラン(現地プレミア解説陣は概ね「シュナイデリン」と発音)。このスタイリッシュで視野の広いフランス人なら必ずや「新・ミスターアーセナル」として攻守の軸となってくれるはず。いかが?

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【東本貢司のFCUK!】胸騒ぎのミステリー/3題

▽ミステリー・アライジング。いよいよレスターが大敵アトレティコとの決戦に臨もうとするこのタイミングで飛び出した、クラウディオ・ラニエリの“問題発言”、「クラブのある人物がわたしを追い出す後押しをした」。実名をあぶり出すのは本意ではない。ラニエリ本人も明かすことを拒否し「言いたいことがあれば直接本人と差しで話をする」。つまり、彼には“当たり”がついている。気になるのは、その人物がレスターFC内のどんな地位、役職にいるかだ。推理小説でいう「最も得をする誰か」・・・・という線はもう一つぴんとこない。実際“後釜”に座ったクレイグ・シェイクスピア? あくまでもつなぎであって昇格に至る保証はどこにもない。解任直後に可能性を取り沙汰された後継候補(たとえば、元イングランド代表監督、ロイ・ホジソン)の誰かと“利益を共有する”人物がクラブ内にいるという説も論外だろう。となると、それは「ラニエリの成功を快く思わない誰か」に容疑の目が・・・・だとすれば由々しき問題ではないか。その人物は今もクラブにいるはずなのだから。プレーヤーたちの胸にどす黒い疑心暗鬼が淀むことがないと切に願う。 ▽ユヴェントスが“鬼門”のはずのバルセロナをホームで大破したのをあえてミステリーとは呼ばない。しかし、ドルトムント-モナコの開催を延期させたバス爆破事件の方は実に怪しい、いや大問題と言うべきだろう。仮に、ごくありきたりに一部の過激なモナコファンの仕業だと疑ってみるのは多分筋違いだろう。速報のニュースからその節が浮かんでこない。地元警察の初動捜査によると「サポーターによる攻撃の証拠はどこにも見られなかった」という。ふと頭をよぎるのは「テロ」だ。2年前の11月に発生したあのパリ同時多発テロ事件(パリ市街および郊外サン・ドニのスタッド・ドゥ・フランス)、および、昨年クリスマスのベルリンで起こったトラック暴走テロ事件。サン・ドニ事件の標的になったのは「フランス-ドイツ」の親善試合だった。フランスとドイツ、モナコとドルトムント。“符号”はぴったり当てはまる。元バルサのマルク・バルトラが手を負傷しただけで済んだとはいえ「3発の爆破物」(警察調べ)は大惨事もあり得た。シリア空爆問題で騒然となっている国際情勢の中、搦め手からの“(テロの)ジャブ”という線は十分にある。 ▽ミステリー、というよりも“行く末”が気が気でない案件といえば、われらがアーセン・ヴェンゲルの“近未来”。まさかの対クリスタル・パレス惨敗は、せっかく5日前にウェスト・ハムを沈めて少しは鎮火したはずのヴェンゲル批判論を、また一気にぶり返させる憂鬱の“蕾”となってしまった。なぜなら・・・・問題の根っこにあるのは、クラブ側がすでに提示している「2年契約更新」に対して、ヴェンゲルが返事を保留している事実だからだ。つまり「言い訳の利かない状況」になってしまった場合、ヴェンゲルは自ら身を引く覚悟を温めている可能性がある(と察せられる)のだ。「言い訳の利かない状況」とは、唯一残ったタイトルのFAカップ、そして、チャンピオンズリーグ出場権がかかるトップ4フィニッシュを取り逃がしてしまう事態。それでも「アーセナルの監督を続ける」と言い張ることは、さすがにファンを納得させられるものではない、いや、そもそも彼自身のプライドが許さないに違いない。パレス戦敗退はその後者に著しく現実味を帯びさせることになった。文字通りの崖っぷち。だが、その“背水の陣”は吉を呼び寄せられるのか。 ▽最大の不安がそこにある。パレス戦は言うに及ばずだが、実はスコアこそ3-0の快勝に見えるウェスト・ハム戦すら、ガナーズイレヴンのパフォーマンスは決して褒められた内容ではなかった。実際、メディアの評価も負けチーム並みに低く、相前後して伝えられた元プレーヤーたちも重い疑問が引きも切らない。一言でいえば「覇気が感じられない」とばっさりなのである。ウェスト・ハム戦をご覧になった方ならきっと思い起こすはずだ。苦戦の中でようやくもぎ取った先制ゴール、そして“ダメ押し”の3点目・・・・いずれもファインゴールに数えていいはずのそれぞれのスコアラー、エジルとジルーの、見るからに喜びも半ば以下と言わんばかりの、浮かない表情を。まるで、だめだこんなことじゃ、きっといずれ“しっぺ返し”を食らうんじゃないかとの不安をぬぐえない・・・・。そして、それは“すぐ”に(パレス戦で)現実化した。ムードは最悪、しかも、不倶戴天の仇敵スパーズが、トップ4争いではるか彼方の優位にあり、FAカップでも勝ち残っている。その若きエース、デル・アリはデータ上からも史上最高クラスのMFとしてもてはやされ・・・・。 ▽いや、逆風ばかり憂いていても何もならない。まだ“可能性”が残っている限り、首を垂れていても仕方がない。“修正点”、巻き返しへの課題克服は、パレスにしてやられたゲームから学べるはずだ。パレスのサム・アラダイスが「してやったり」と自慢した対アーセナル対策を教訓として逆手に取るのである。ボールを速く、何よりも「前」に動かす。「横」にではなく、そして、あえてポゼッションに安住しないこと。ある元プレーヤーはいみじくもこう述べた。「アーセナルのプレーヤーたちはヴェンゲルのポリシー、指示を実践していない」。もし、この指摘にエジル以下が今後もどうやっても「応えられない」のだとすれば話は“早い”。ヴェンゲルが去るか、エジルたちが去るか、二つに一つ。いや、最悪「両方」ということも? いずれにせよ、そのときはアーセナルが良くも悪くも根底から生まれ変わる運命に直面しなければなるまい。そんな「一寸先の闇」に、クラブは、サポーターたちははたして耐えられるのか。少なくとも運命の残り8試合、エジルたちが死力を尽くす「覇気」を示さなければ、「闇」が晴れる日などいつまでたっても・・・・。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.04.12 13:35 Wed
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【東本貢司のFCUK!】「地獄の4月」はまだ終わらない

▽全チーム6試合のすし詰めスケジュール、曰く、プレミアリーグ2016-17「地獄のエイプリル」。しかも、現実的に勝ち負けがほとんど“響かない”ウェスト・ブロムを除いて、決して大げさではなく“天国か地獄か”の切羽詰まった状況。ヨーロッパで勝ち残っているレスターとマンチェスター・ユナイテッドには、さらに2試合多くのしかかってくるわけだから、気の遠くなる強行軍となる。ちなみに、FAカップ準決勝組(アーセナル、マン・シティー、チェルシー、スパーズ)については、それぞれ当初予定のリーグ戦が後回し開催にされるため、試合数の増減はない。いずれにせよ、常日頃以上に気の抜けない、一試合一試合が“カップファイナル”・・・・そのせいか、このミッドウィークに行われたゲームはどれをとっても火の出るような激戦続出となった。ファンにとってはこたえられない? いいや、プレーヤーたちの体が、バックラッシュが、来シーズンが思いやられる。 ▽それにしても、ネット視聴のおかげでほぼ全試合をライヴでザッピングできるのはいいが、無論、それではゲームの機微をじっくり見極められず、痛しかゆしの考え物。だからだろうか、このミッドウィーク最大の目玉、チェルシー-シティー戦が一等“胸が騒がない”展開と結果に見えた。序盤に全得点が記録されたこともあったろうし、いつもより厳しいチェックでかかってきたシティーと、ボール支配にこだわらない効率とめりはりで受けて立ったホーム、チェルシーのコントラストが、なぜかつまらないものにさえ思えたほどだ。試合前日、シティーのグアルディオラは、「コンテは最高の指揮官かもしれない」などと、褒め殺しにも聞こえる“マインドゲーム”を仕掛けたものだが、蓋を開けてみればそんな“ベストチーム”に真っ向から挑戦するかのごとき、シティーイレヴンの覇気と熱気を目の当たりにできたにもかかわらず、にだ。ひょっとしたら、今シーズン屈指のゲームと評価すべきかもしれない。これは改めて後ほどリプレーでじっくりおさらいする必要がある。 ▽それはさておき、最もドラマティックな展開になったのはスウォンジー-スパーズで、フットボールの醍醐味を十二分に見せつけてくれたのはサウサンプトン-クリスタル・パレス、内容の妙味の点で唸らされたのがアーセナル-ウェスト・ハム、というのが、5日水曜日(日本時間では6日深夜)に行われた6試合の個人的“総括”。ああ、それにリヴァプールにミソをつけたボーンマスの、どこかとらえどころの難しい二枚腰も忘れてはいけない。まだまだ実質的に残留争いの渦中にいるボーンマスだが、ここまでスコアに関わらず、ほぼ全試合、侮りがたい、かつ、味のあるゲーム運びで出色のチームと言ってはばからない。少々先走りすぎるが、たとえ運悪く降格の憂き目に遭ったとしても、2016-17プレミアシップの「チーム・オヴ・ザ・シーズン」として記憶にとどめたいくらいだ。主というべきか、その名もジョシュア・“キング”と、笑顔が憎めないベキク・アフォベの前線コンビは意外性の塊、左ウィングバックのチャーリー・ダニエルズの迸る汗も頼もしい。実に好ましい集団、ジャック・ウィルシャーが「ここにいたい」とほだされるわけだ ?! ▽ホームでしびれるような終盤のゴール連発で快勝したサウサンプトンも、日に日に好感度が増してきた感十分。このパレス戦、前半2度のPK疑惑を見過ごされても萎むことなく攻守に粘り抜いたチームの一体感は、圧巻の一言に尽きた。筆者のマン・オヴ・ザ・マッチ、ネイサン・レドモンド以下、ファイターの粒も揃って容易に腰を割らない。勝ち越しゴールがなぜかゴール前ファーポストに居残っていた吉田麻也から、というのはおまけ・・・・と言っては可哀そうか(笑)。自身今シーズン初ゴールがよほどうれしかったのか、パフォーマンスも堂に入って、今や決して格も名前負け(?)もしないセインツのキャプテン。一時、これは戦力外に向かうかとさえ思われたにしては、よく這い上がってこれたと思う。フォンテの移籍という運があったにせよ、与えられたチャンスを不足なく務めて、クロード・ピュエルの信頼を勝ち取った恰好。今のところ、史上最高の日本人プレミアリーガーと称しても言い過ぎではなさそうではないか。代表ではちと物足りないとはしても。 ▽今回の締めに、レスターについて少々。現地メディアが「蘇った、生まれ変わった」とまで誉めそやすほどに、すっかり昨シーズン並みのエッジが随所に見られるようになった。最下位サンダランドが相手だったとはいえ(サンダランドも前半は善戦した)、主役たちがきっちり役どころを発揮して快勝で片を付けるところが、再生、復活の所以。孫と遊園地に行ったりして命の洗濯中のクラウディオおじさんも、さぞかし誇らしく、かつ胸をなでおろしていることだろう。司令ドリンクウォーターと左の“槍”フークスの本領発揮が大きい。何度も言うが、思わぬミラクル優勝とチャンピオンズ参戦で、フォクシーズはつい、何かを見失って“借り物”状態になってしまっていたのだろう。ラニエリ解任は痛恨の極みだったが、それが原点に戻る格好の引き金に(結果的に)なったのだ。ひょっとしたら、凱旋復帰だってなくはない? それはともかく、ますますチャンピオンズが楽しみになってきた。是非、戦々恐々となっている(?)アトレティコを青ざめさせてやってくれ!<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.04.06 11:35 Thu
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【東本貢司のFCUK!】平和で玉虫色の報道ワールド

▽マデイラ島プロジェクトによるクリスティアーノ・ロナウドの「胸像」がちょっとした話題になっている。制作者のエマヌエル・サントスによると「けっこう苦心した。完成に15日間かかった。本人(ロナウド)からメッセージが来て、気に入ったそうだ。もう少し若く見えるようにシワなど手を入れてもらえると嬉しいなる“意見”が添えられていだけ」なんだそうだ。“意見”とはいっても要するに「感激」をジョークめかして表現したにすぎない。32歳の現役アスリートのために胸像彫刻が制作され、故郷の空港名にまでまつりあげられたのだから、こんな名誉なことはあるまい。なにしろ、唯一の先例、ベルファスト空港の「ジョージ・ベスト空港」改名は、ベストの死後だったのだから。世界遺産にもなっている洋上の島ならではの“特権”だろうか。むろん「どちらかといえば、元アイルランド代表のナイアル・クインの方に似てる」などという揶揄も、他愛のないジョークだ。 ▽こんな“ほほえましい”ニューズも出たせいかどうかはともかく、インタナショナル・ウィーク(代表戦期間)がひとまず閉幕して、世は概ね平穏至極。マルセル・デュシャンは「玉虫色の判定齟齬」でスペインに敗れた一件をいやに鷹揚に受け止めているし、ギャレス・サウスゲイトの事実上の初陣采配も前向きな評価が大勢を占めている。ウェールズ-アイルランド戦で、クリス・コールマンの骨折を引き起こしたニール・テイラーにも、同情する気運が先行している。ウェールズのキャプテン、アシュリー・ウィリアムズの現所属が、コールマンと同じエヴァートンであり、両者を気遣う彼の言葉も不穏な感情の抑制に一役買っているようだ。そう言えば、このタイミングでミシェル・プラティニがかつての盟友、ヨーゼフ・ブラッターに愚痴の一刺しを漏らしたのも、なんとも平和だなぁと妙にほっこり。ちなみに、ブラッターの“謹慎期間”は8年、プラティニのそれは当初の8年から6年、さらに仲裁委員会によって4年に短縮されている。これも“玉虫色”だよな。 ▽そうだ、もう一つ、アーセナルをめぐる“変化の予感”についても。退団(移籍)の可能性が取り沙汰されているエース、アレクシス・サンチェスの「ロンドンが好き」発言も、その中身をよく読むと“長閑”な印象でしかない。「ロンドンが好きで引っ越しはしたくない。ただ、ウィニング・メンタリティーに優れたチームで働きたい」などと宣ったものだから、週刊文春ばりの(?)ゴシップメディアが「そうか、あいつはチェルシー移籍に傾きかけてるんだ」と、“ジョーク”でまぜっかえす。ディエゴ・コスタとアントニオ・コンテの“絶えない不仲説”を引き合いに出す。およそ現実的とは思えないことは、“彼ら”自身がわかっている。もし仮にアーセナルがサンチェスを手放すとしても、よもやチェルシー(や、まさかのスパーズ)に差し出すはずがない。英国のゴシップ文化はジョークと切っても切れない日常的伝統、もとい、伝統的日常なのだ。もちろん、間違ってその瓢箪から駒が出たら出たで儲けもの。多分何事も起こらないだろうなと高をくくっている。 ▽アーセン・ヴェンゲルの辞任説についてもしかり。ヴェンゲルの契約はもうすぐ切れる、エジルとサンチェスの移籍の噂が飛び交う中、そのエジルは遠まわしにヴェンゲル続投がカギだとほのめかす、新進FWイウォビは「ヴェンゲルは偉人」と声を上げ、不成績の責任はひとえに自分たちプレーヤーにあると強調する。一方のヴェンゲルは「エジルとサンチェスはアーセナル残留を望んでいる」と断言し、自らの去就だけは言葉を濁す。要するに、大勢は何も変わらない、もしくは、変わる気配がない。ヴェンゲルが現時点で続投希望を明確にしないのは、おそらく、不満を隠せないファンに対する一種の礼儀だと考えられる。ちなみに、イウォビ他によると「アーセナルはヴェンゲルの解任などまったく考えていない」。“変化もあり、必要”と口にするのは、お騒がせメディアと元プレーヤーも含めた“パンディット(=評論家)”たちくらいだ。そりゃそうだろう、彼らは“先を読む”のが商売。“あれやこれや”を俯瞰した物言いで“玉虫色”にしてキャリアを守る! ▽ニューズなんて所詮「話半分」である。「こういう話がありますよ」とアピールしている程度に思っておいた方がいい。要するに「ケムリを立てる」。つまり、そこでは大なり小なり何等かの意思が働いている。「モリトモ-アキエフジン」騒動の相反する報道内容を垣間見てもそれがよくわかる。いわゆるチャイナマネーが“自粛”の方向にあり、プレーヤー爆買いから大会スポンサーシップ(フットボールのみならず、バスケット、ラグビー他にまで)へ“劇的”にシフトしつつあるというニューズも、慎重に受け止める必要がある。ただ、それで法外にバカげたカネが動く流出(その実態は「孫の代まで裕福に暮らすため」の都落ち?)に歯止めがかかれば、それに越したことはない。ゆえに、少々先走りになってしまうが、この夏の「へえ」と驚く変化はほとんど期待できない。ニューズメディアが“仕事”を掘り起こそうとする、それに慣れたファンがインスタントな変化に飛びついて大騒ぎする。平和、である。本田圭祐がMLSに行くとか何とかの憶測のように。 2017.03.31 12:30 Fri
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【東本貢司のFCUK!】見えてきた“サウスゲイト式”

▽オランダがブルガリアに敗れた以外は平穏なW杯ヨーロッパ予選だった。実力伯仲のアイルランド-ウェールズのドローも“順当”、北アイルランドには底力が備わってきた。崖っぷち寸前のスコットランドは、終了間際の決勝ゴールで望みをつなぎ、その勝利はイングランドの後押しにもなった。ハイライトといえば、やはりそのイングランド。約3年半ぶりに代表復帰したジャーメイン・デフォーが話題をさらった。ハリー・ケインの負傷欠場さまさまだったとしても、きっちり先制ゴールをたたき出した事実は、ニューズネタとしても大きい。ポドルスキの“独り舞台”が既定路線だった対ドイツ・フレンドリーも、特に悲観すべき点は見当たらなかった。予選は順調でも本番でコケる最近の悪いクセを考えれば、楽観も悲観もないところだが、ギャレス・サウスゲイトの更迭論が出る余地もないだけで良しとすべきだろう。そのうえで、今後の課題についていくつか気になることを。 ▽現実的ではないという見方もあろうが、サウスゲイト・イングランドはこの対リトアニア勝利の余韻を大切にしていくべきだと思う。実績、経験、その他の“ありきたり”な尺度にあえてこだわらず、この布陣を基本路線に定めていくということだ。大筋はほぼ見えてきている。司令塔アリ、エースチャンスメイカーはララーナ、守りの軸はストーンズ。アンカーのダイアーについては、前回ユーロから個人的に物足りない部分も感じるが、穴になるというわけでもない。スターリングもパフォーマンスが安定してきて戦力としての“独り立ち”が見込める。両サイドバックはウォーカー(右)がマストになるが、オプションは豊富。ディフェンス面に不安が残るショーは、ドイツ戦でとった3バックシステムのウィングバックに使う方が生きそうだ。つまり「Bプラン要員」。中盤を5人で組む場合、底にダイアー、中央にアリとバークリー(格下で守備的な相手ならオクスレイド=チェンバレンなど)、両ワイドにララーナとスターリング。トップはケインでヴァーディーとデフォーがサブ、もしくは状況次第でいずれかがケインのパートナーに。ではルーニーは? ▽それは後回しにして、一番の考えどころがディフェンスセンター。ここほどパートナーシップが要なところもない。とっかえひっかえではサマにならない。やはり、最後はジャギエルカの経験に頼ることになるのか・・・・? とりあえず現状での「理想論」を。まず、めっきりグアルディオラの信頼を勝ち取りつつあるストーンズを軸とする。相方には心境著しいマイケル・キーン。この、若いコンビを主戦と位置付ける。ジャギエルカはいざというときの“最後の砦”として(相手次第で)起用する。あえてダメもとという言い方をするが、こうした方が先の希望が開けるはず。つまり、思い切って若返りの早期実現を“謳う”のだ。筆者はこの“謳う”メッセージこそ、スリーライオンズ復活の真の決め手になると信じている。いわば、オープン・セサミ、開けゴマ。そして、サウスゲイト自身もきっと同じことを考えていると思う。アンダーエイジで好成績を上げてきた彼だからこその説得力もある。というか、それこそがサウスゲイト指名の最大の根拠に違いないからだ。 ▽そこで、ルーニー。サウスゲイトは「まだやれる、必要」と言い切っている。そのココロ、もしくは“条件”は(おそらく)こうだ。「あまり動きすぎるな」。ルーニーが(クラブでも代表でも)しっくりこなくなっている理由は、彼自ら役割の多様性をもたらしている諸刃の剣。そもそもがストライカー由来なのに、妙に責任感が強いせいで、あれもこれも自分が、という逸る気持ちが出すぎて、かえってチームプレーをぎくしゃくさせている。モウリーニョが使い辛くなっているのもその点にあるはず。どんと構えればいい。トップ下に入ればディフェンスは他に任せる、引いた位置ならそれこそ周りの回転軸になるポジションを死守する。本人が納得するかどうかだが、筆者はあえてアンカーに固定してみてはどうかと考えている。つまり、ダイアーの代わりだ(その場合、ダイアーはセンターバックに使える)。攻撃の組み立て、お膳立てはアリとバークリーに託して、むやみにファイナルサードには立ち入らないと肝に銘じるのだ。ひょっとしたら、このルーニーの“世紀の決断”こそが、イングランドが世界の頂点に挑戦するためのキモではないだろうか。 ▽総体的にぐっと若返り、ぐっと肝が据わって“動かない”ルーニーが名実ともに柱石の姿勢を堅持すれば、きっと相手は勝手が違って面食らう。むろん、そのための十分な練習とコミュニケーションは欠かせないが、こういうチームが淀みなく一丸となり、あらゆる状況に対処できるようになれば、けっこう「負けないチーム」になっていく気がする。その点、参考にすべきなのが最近の北アイルランドだ。“国際的知名度”は薄くとも、どこか得体のしれない粒ぞろいの印象と、実際に当たってみて歯ごたえの凄さで、徐々に主導権をもぎ取っていく。劣勢になっても、さして変わらず黙々とかかってくる。これもまた、強力なメッセージになるだろう。ユーロで対戦したチームは総じてそれを痛感したのではなかったか。言うまでもなく、上記にざっと組んでみた“新生”スリーライオンズには、北アイルランドよりもずっと才能の前提があるはずだ。そして、サウスゲイトは必ずやその線に基づいてチーム改造(→醸成)を目論んでいるに違いない。楽しみになってきた。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.03.27 11:53 Mon
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【東本貢司のFCUK!】クラブレジェンドの“貫目”

▽ンゴロ・カンテについて、フランク・ランパードが「現役世界最高のミッドフィールダー」だと言ったらしい。納得するファンも多かろう、少なくとも「当たらずとも遠からず」といったところだろう。しかし、ちょっと待った。カンテがもしチェルシーのプレーヤーじゃなかったら? ランパードがわざわざそこまで声を上げて褒めちぎっただろうか。素直な感想にケチをつけるつもりは毛頭ないが、ひいき目の要素は押さえておくべきではないか。なぜなら、先のFAカップ戦でスタンフォード・ブリッジのファンがジョゼ・モウリーニョに対して冷やかし/侮蔑的なやじを飛ばした事実に思い至るからだ。二度の解任の際の後味の悪さや“口の悪さ”という瑕疵(?)は確かにあるにしろ、モウリーニョはチェルシーが果たした1部優勝5回のうち3つに導いた、史上最高の指導者ではないか。どうせならランパードもそのことに触れて「哀しい」とくらいは言ってほしかったが・・・・・。 ▽実際に、その“哀しみ”を口にした人物がいる。モウリーニョ・チェルシー時代に副官を任じたこともあり、クラブ史に名を残すレジェンドの一人、レイ・ウィルキンズだ。付け加えておくと、ウィルキンズは80年代のイングランド代表でキャプテンを務めたトッププレーヤーであり、そのうえ他ならぬマンチェスター・ユナイテッドに籍を置いていたこともある。彼曰く「チェルシーを最も輝かせてくれた男にそんな仕打ちをするとは恥ずかしい。もっと敬意を示すべきだろう」。そうなのだ。例えば、ジョージ・グレアム。ヴェンゲル到来の少し前、アーセナルに「ダブル」(リーグ&FAカップ)をもたらした名将に対し、リーズおよびスパーズの監督として彼がハイベリー(当時)に帰ってきたとき、ガナーズファンは万雷の拍手で迎えたものである。アーセナルから追われた理由が、北欧のプレーヤー2名獲得の際の「収賄(疑惑)」だったにもかかわらず。それは90年代に入ったばかりのことだった。まさか、チェルシーファンは忘れっぽいなんてことはあるまい? ▽それにひきかえ、レスターのサポーターは(まだ「間もない」とはいえ)ラニエリへの恩を熱く語り「哀しんで」いる。そこには決して、後を引き取ったクレイグ・シェイクスピアを腐す意味合いはなく、シェイクスピア自身もしっかりと敬意と“慕情”を隠さない。なぜ、ラニエリ解任後のレスターに快進撃が蘇ったのか。短絡な脳は「だから、ラニエリがダメだったってことだろう」と片付けるかもしれないが、それはまったく逆だ。ラニエリを去らせてしまった責任を感じて、シュマイケル、ヴァーディー以下が奮起したのであり、何よりもシェイクスピアが昨シーズン花開いた“ラニエリ流”の原点に戻った采配に徹しているからだ。間違っても、アーセナルをねじ伏せたリヴァプールが「不調」だったとは言わせない。レッズもハルも気圧されたのだ、レスター・イレヴンのラニエリに捧ぐ“回帰”の熱気と気迫に。セヴィージャも間の悪いときに乗り込んできたものである。ひょっとしたら「ラニエリ監督のままだったらよかったのに」と嘆いているかもしれない? ▽昨シーズンとはまるで人が変わったように、凡プレーを連発していたドリンクウォーターとフークスが、なぜか“直後”のリヴァプール戦から“復活”した。カンテの抜けた穴をまったく感じさせない、全軍躍動のオールコート・ディフェンスがさく裂する。急に得点感覚を取り戻したヴァーディーには“(移籍)価格”高騰の噂すら飛び交っている。ならば、なぜそれが“息をひそめて”いたのか。そう、彼らは予想外のチャンピオンになってしまった“重荷”に、奇妙な“とってつけのプライド”を身にまとおうとしたのではなかったか。恥ずかしいゲームはできない、相手は目の敵にして立ち向かってくるだろう、そのためには何かプラスαがなければ・・・・とか何とかの強迫観念に(無意識のうちに)とらわれていたのだろう。それが証拠に、チャンピオンズでは無心に「自分たちのプレーができて」(おや? どこかで聞いたセリフ)悠々と勝ち進んできたではないか。言葉は悪いが「負けてもともと」の肩の力が抜けた彼らの本領が“初体験の土俵”で生きたのだろう。 ▽だからこそ、ブッフォンは真っ先に「一番当たりたくないチーム」とレスター警戒を口にした。少しはプレミアを知るアンチェロッティも遠からずの気持ちかもしれない。奇跡の逆転劇の直後、まさかの対デポルティーヴォ敗戦に肩を落としているはずのルイス・エンリケには、レスターの「レ」の字も関係ないか。逆に、レスターが一番避けたい相手はモナコかもしれない。モナコにもプレッシャーに(良い意味で)鈍感なあっけらかんさを感じる(のは筆者だけ?)からだ。それを言えば、嗚呼、堅調に戻ったはずのシティーの不甲斐なさよ。あんな、マークの甘さでホームのモナコを黙らせることができると思ったのだろうか。グアルディオラもさぞやため息を・・・・その一方で、内心、あの“かっ飛び”核弾頭のムバッペをマジで獲りにいこうか、などと考えているかもしれない。おっと待った、せっかく、クラブレジェンド・アンリの「再来」といわれるからにはアーセナルに行ってもらわないとね。それがヴェンゲル続投のまたとない説得力になるやもしれないし・・・・!<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.03.16 11:15 Thu
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