【東本貢司のFCUK!】「地獄の4月」はまだ終わらない2017.04.06 11:35 Thu

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▽全チーム6試合のすし詰めスケジュール、曰く、プレミアリーグ2016-17「地獄のエイプリル」。しかも、現実的に勝ち負けがほとんど“響かない”ウェスト・ブロムを除いて、決して大げさではなく“天国か地獄か”の切羽詰まった状況。ヨーロッパで勝ち残っているレスターとマンチェスター・ユナイテッドには、さらに2試合多くのしかかってくるわけだから、気の遠くなる強行軍となる。ちなみに、FAカップ準決勝組(アーセナル、マン・シティー、チェルシー、スパーズ)については、それぞれ当初予定のリーグ戦が後回し開催にされるため、試合数の増減はない。いずれにせよ、常日頃以上に気の抜けない、一試合一試合が“カップファイナル”・・・・そのせいか、このミッドウィークに行われたゲームはどれをとっても火の出るような激戦続出となった。ファンにとってはこたえられない? いいや、プレーヤーたちの体が、バックラッシュが、来シーズンが思いやられる。

▽それにしても、ネット視聴のおかげでほぼ全試合をライヴでザッピングできるのはいいが、無論、それではゲームの機微をじっくり見極められず、痛しかゆしの考え物。だからだろうか、このミッドウィーク最大の目玉、チェルシー-シティー戦が一等“胸が騒がない”展開と結果に見えた。序盤に全得点が記録されたこともあったろうし、いつもより厳しいチェックでかかってきたシティーと、ボール支配にこだわらない効率とめりはりで受けて立ったホーム、チェルシーのコントラストが、なぜかつまらないものにさえ思えたほどだ。試合前日、シティーのグアルディオラは、「コンテは最高の指揮官かもしれない」などと、褒め殺しにも聞こえる“マインドゲーム”を仕掛けたものだが、蓋を開けてみればそんな“ベストチーム”に真っ向から挑戦するかのごとき、シティーイレヴンの覇気と熱気を目の当たりにできたにもかかわらず、にだ。ひょっとしたら、今シーズン屈指のゲームと評価すべきかもしれない。これは改めて後ほどリプレーでじっくりおさらいする必要がある。

▽それはさておき、最もドラマティックな展開になったのはスウォンジー-スパーズで、フットボールの醍醐味を十二分に見せつけてくれたのはサウサンプトン-クリスタル・パレス、内容の妙味の点で唸らされたのがアーセナル-ウェスト・ハム、というのが、5日水曜日(日本時間では6日深夜)に行われた6試合の個人的“総括”。ああ、それにリヴァプールにミソをつけたボーンマスの、どこかとらえどころの難しい二枚腰も忘れてはいけない。まだまだ実質的に残留争いの渦中にいるボーンマスだが、ここまでスコアに関わらず、ほぼ全試合、侮りがたい、かつ、味のあるゲーム運びで出色のチームと言ってはばからない。少々先走りすぎるが、たとえ運悪く降格の憂き目に遭ったとしても、2016-17プレミアシップの「チーム・オヴ・ザ・シーズン」として記憶にとどめたいくらいだ。主というべきか、その名もジョシュア・“キング”と、笑顔が憎めないベキク・アフォベの前線コンビは意外性の塊、左ウィングバックのチャーリー・ダニエルズの迸る汗も頼もしい。実に好ましい集団、ジャック・ウィルシャーが「ここにいたい」とほだされるわけだ ?!

▽ホームでしびれるような終盤のゴール連発で快勝したサウサンプトンも、日に日に好感度が増してきた感十分。このパレス戦、前半2度のPK疑惑を見過ごされても萎むことなく攻守に粘り抜いたチームの一体感は、圧巻の一言に尽きた。筆者のマン・オヴ・ザ・マッチ、ネイサン・レドモンド以下、ファイターの粒も揃って容易に腰を割らない。勝ち越しゴールがなぜかゴール前ファーポストに居残っていた吉田麻也から、というのはおまけ・・・・と言っては可哀そうか(笑)。自身今シーズン初ゴールがよほどうれしかったのか、パフォーマンスも堂に入って、今や決して格も名前負け(?)もしないセインツのキャプテン。一時、これは戦力外に向かうかとさえ思われたにしては、よく這い上がってこれたと思う。フォンテの移籍という運があったにせよ、与えられたチャンスを不足なく務めて、クロード・ピュエルの信頼を勝ち取った恰好。今のところ、史上最高の日本人プレミアリーガーと称しても言い過ぎではなさそうではないか。代表ではちと物足りないとはしても。

▽今回の締めに、レスターについて少々。現地メディアが「蘇った、生まれ変わった」とまで誉めそやすほどに、すっかり昨シーズン並みのエッジが随所に見られるようになった。最下位サンダランドが相手だったとはいえ(サンダランドも前半は善戦した)、主役たちがきっちり役どころを発揮して快勝で片を付けるところが、再生、復活の所以。孫と遊園地に行ったりして命の洗濯中のクラウディオおじさんも、さぞかし誇らしく、かつ胸をなでおろしていることだろう。司令ドリンクウォーターと左の“槍”フークスの本領発揮が大きい。何度も言うが、思わぬミラクル優勝とチャンピオンズ参戦で、フォクシーズはつい、何かを見失って“借り物”状態になってしまっていたのだろう。ラニエリ解任は痛恨の極みだったが、それが原点に戻る格好の引き金に(結果的に)なったのだ。ひょっとしたら、凱旋復帰だってなくはない? それはともかく、ますますチャンピオンズが楽しみになってきた。是非、戦々恐々となっている(?)アトレティコを青ざめさせてやってくれ!
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。

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【東本貢司のFCUK!】チャンピオンズこそ伏兵に期待

▽キリの良いところでチャンピオンズ・グループリーグがすべて完結した時点で、と思っていたら、ちょうど今年のバロン・ドール発表がめぐってきた。案の定というべきか、ほんのつい最近、インスタグラムでの偽投稿騒動とやらが番外の話題になったクリスティアーノ君が、こちらもキリ良く(というか、ライバルのメッシとのつり合い加減で?)5度目の受賞。レアルのチャンピオンズ制覇に昨年のユーロ優勝を掛け合わせて、さも順当に見えるが、なぜかどうもしっくりこない。そう感じる根拠はと問われれば、そう、そもそも近年の同賞を含む表彰の選考基準そのものが「やっつけ風でファジー」に感じられてしかたがないのである。多分、こういう表彰もの自体にマンネリズムの臭いが漂って新鮮味が薄れてきているのかもしれない。例えば、ちょうどこの頃にどこかの国にてめぐってくる「流行語大賞」とやらのように・・・・? いや、この件はいずれ改めて触れることにしよう。 ▽さて、チャンピオンズは“首尾よく”イングランドからの出場全5チームがノックアウトステージに勝ち上がった。それも、ほぼパーフェクトに近い危なげない戦りぶりで・・・・とは言い過ぎかと殊勝に控えてとも思うのだが、現にチェルシーを除く“4強”が悠々たるトップ通過。なにせ、大豪レアルとドルトムントをぶつけられて最も“不運”を予想されたスパーズにしてからが、一番の戦績(勝ち点で全チーム中最多)である。近年、特にまずユナイテッドがこぼれ落ち、今また常連中の常連アーセナルがお休みになってしまったりで、何かとパッとしなかったのがまるで嘘のよう。これはひょっとしたら、いつぞやの快挙(おや、振り返ればもう10年ほど前のことなんだな・・・・)「4の3(準決勝進出のうち3つがイングランド勢)」再現も、と胸が膨らむ今日この頃である。そういえばちょうどあの頃、スコットランドはエディンバラにいてたまたま同時期に重なったオールドファーム・ダービーの方にむしろ関心が偏ってたんだっけな、と“懐かしむ”余裕さえも・・・・。 ▽しかし(毎度のことながら)問題はこれからだ。“本番”再開の明年2月までのイングランドならではの過密スケジュールが待ち受けている。つくづく「冬休み」の恩恵ない現実が恨めしい。それでなくても、一年で最も過酷な日程を乗り切って一息ついたのもつかの間、そこでチャンピオンズ版“負けたらそこで終わり”ステージが幕を開けるのである。いろいろと「改善案」などが口にされ、それなりに“議案”として持ち出されても、一向に“手をこまねいたまま”硬直状態の、イングランドならではのお家事情をひもといていけば・・・・いや、今このときばかりは控えておこう。とにかく、イングランド勢にとっては2月こそが勝負、と言えるのかもしれない。また、今回は“追加対外試合組”が過去最多の5チームに増えることで、国内の試合の対戦相手にも少なからず影響(必然的日程調整による予定外の過密化など)が避けられない。畢竟、タイトルレース、順位戦(ヨーロッパ参戦権争い、残留争い)にも類が及ぶ。そしていつになく先の見えない終盤戦が・・・・。 ▽いやいや、現時点であまり心配の種をあら捜ししすぎるのは控えよう。なにせ、さらにその先には“ロシアの夏”がある。下手をすれば「さらにそのあと」も気になってきてしまう。つまり「来シーズン」はどうなっているんだろうか、と。だから、ひとまずはあえて目先のあれこれにのみ集中しよう。先ほどスパーズがグループリーグで「最高成績」を収めたことに触れた。リヴァプールは6試合で合計23得点を記録し、パリSGに次ぐ破壊力を証明した。相手関係云々はこの際度外視することにして、数字だけは“トップクラス”だ。無論、この勢いが“本チャン”でも、などと期待できるとは本人たちですら思ってはいないだろうが、少なくとも前向きになれる土壌にはなる。そこで今のうちに、いや今のうちだからこそ、“希望的観測”をしてしまえば、この両チームをダークホースの一番手に数えても罰は当たるまい。実は、この目、けっこうあると思っている。そして、現実に対戦する相手方もかなり警戒してマークする。すると、ゲームそのものも伯仲する・・・・。 ▽そこ、である。勝ち負けは端からどう転んでもそれは時の運。キックオフからファイナルホイッスルまで息をのみ続ける激戦を繰り広げ、見どころ・ドラマ満載の、記憶に残るひとときを演出してくれること。始まる前から「どうせ・・・・」などと結果を予測してしまう苦痛こそ、スポーツを楽しむ者にとって何よりも避けたい自爆の悪いクセ。TV音声の解説云々は“商売柄”突飛なことは口にしないもので、あえて言えば通り一遍、ほとんど金太郎飴的なもったいらしさばかりで「つまらない」。ここは是非、副音声の“ノイズ”にずっぽりひたってゲームそのものに集中してみてはどうか。きっと何か新しい発見があるはずだし、それは試合のたびに着実に少しずつ蓄積されていく。ブルース・リーじゃないが「Feel. Not think」である。もちろん、普段のリーグ戦(プレミア他)などでもお試しあれ。ふと思うのだが、是非Jリーグを“外国語音声”で観戦することができれば意外にハマるんじゃないかな、と(DAZNさん、いっそのこと提案してみては?!)。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.12.09 11:45 Sat
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【東本貢司のFCUK!】エヴァートンから始まるドラマ

▽「デイヴィッド・モイーズ」に「デイヴィッド・アンズワース」、「ウェイン・ルーニー」に「サム・アラダイス」・・・・よくもまあこれだけ“役者”が揃ったものだと思う。新監督に就任して間もないモイーズの“栄光の古巣”グディソン帰還と、ケアテイカー(暫定監督)アンズワースの“お疲れ様”采配ラストマッチに、新監督就任が内定したアラダイスの“お披露目観戦”が重なった11月29日のエヴァートン-ハマーズ戦でのことである。そこで「この場の主役はオレだ」とばかりに、見せ場尽くしのハットトリックを決めたのがルーニーだ。ちなみに、つい最近「ウンスワース」なる奇怪な読みも散見されたアンズワースだが、1995年にイングランド代表として唯一の出場を果たしている。筆者の記憶が正しければ、当時日本代表キャプテンを務めていた井原正巳が歴史的な対イングランド初ゴールを記録した試合である。目前に控えたユーロ96・強化試合の一環での“事件”だった。 ▽大柄で屈強な左SB/CBとして最も輝いていたアンズワースが三十路を過ぎてポーツマスに放出されたときのエヴァートン監督が、当時“国産指導者”としてトップクラスの評価を得て飛ぶ鳥を落とす勢いだったモイーズだ。そして、そのモイーズが不成績でマンチェスター・ユナイテッドの将の座を追われてからしばらくして、アンズワースはエヴァートン・ユースのコーチ陣に迎えられている(2004年初夏)。さらに、その直前までの彼の肩書をひもとくや、これが「プレストン・ノース・エンド」の“ケアテイカー監督”。プレストンは、モイーズが指導者としての経験を積み上げ、名門エヴァートンに“昇格”する土台となったクラブだ。あくまで推測に過ぎないが、その過程で“交流”なり“推薦の労”などがあったのは十分に考えられる。翻ってアンズワースはクラブ生え抜きにして通算出場歴300試合超の、文字通りのエヴァトニアン。現にアンズワースの下でトム・デイヴィーズやカルヴァート=ルーウィンら新世代の逸材が続々と育っている。ならば・・・・。 ▽そう、筆者にもピンとくるものがあった。クーマン解任とアンズワースの“必然”のケアテイカー抜擢は、エヴァートンにとってもはや取るべき「道は一つ」を予感させた。実際、それを推奨する識者(主に元プレーヤー筋)も少なくなかった。それなのに、メディアが最終的に嗅ぎ付けた第一候補は、現ワトフォードのマルコ・シルヴァ。ダメだと直感した。よしんば、仮にプラス効果が出たところで長持ちする保証もない。そもそもワトフォードがウンと言うわけがない。それに誰かがどん底状態に近いエヴァートンを引き受けるにしても、“現役”のヘッドハンティングには時期が悪い。「しばらくアンズワースのまま」ではダメなのか・・・・。そこではたと思い当たった。アンズワースは「とっておきの将来」なのだ。今、彼に託すにしても壁が高すぎる。おそらく、良くて残留がせいいっぱい、よもや降格したりすれば、立て直しにとんでもない労力を強いられるのは必定。そして、アンズワース自身に取り返しのつかない傷がつく恐れもある。唯一名乗りを上げたと言われる(モイーズのユナイテッドでの後任の)ファン・ハール? 今更「論外」だろうに・・・・。 ▽そして落ち着いた先が「アラダイス」だった。イングランド代表では想定外のアヤがついて“排除”されたが、クラブレベルに限ればアラダイスの履歴は“ピカいち”だ。降格の危機から救い出すことにかけてならビッグ・サムの右に出る者はいない。ボルトンに始まり、ニューカッスル、ブラックバーン、ウェスト・ハム、サンダランド、そして“直近”のクリスタル・パレス・・・・。落ち目の名門に活を入れて一息入れさせる歴代の第一人者。それに、エヴァートン首脳陣が“考慮の一端”に数えたかどうかはいざ知らず、アラダイスは実質的に「ルーニーにとっての最後の(代表)監督」である。相性という点でいいかもしれない。事実、その次期エヴァートン監督の目の前でルーニーは水を得た魚のごとく、全盛期を彷彿とさせる大活躍で門出を祝した(それを遠まわしに認めさせられたモイーズというおまけつきで)。しかも、これでアンズワースへの禅譲にも無理なく道筋がつく。 ▽なあに、たったの一試合。たまたま“こじつけの符号”がいくつか思い当たるだけ。懐疑論者はそううそぶくだろう。ビッグ5~6にしか関心を惹かれない、結果本位の野次馬ファンにとっては、エヴァートンなんぞ端から目じゃないんだし・・・・? だが、ひとまずはドカンと花火を打ち上げてみせた。エヴァートンにとって、いわばこれからが開幕に等しい、えも言えぬ手ごたえと“主役”登場(ルーニーとアラダイス)。遅ればせながらの大暴れの期待はぐんと膨らむ。そしてその“火花”がまた、モイーズとそのチームにも“伝染”するとなお嬉しい。忘れまじ、サンダランド。アラダイスで持ちこたえ、モイーズで屈したノースイーストの大古豪を。今、2部の底辺で足掻いているサンダランドをあえて引き受けた「前ウェールズ代表監督」の勇気、そのハートを。優勝して何ら不思議じゃないチームにしかなびかない、どこかの誰かさんは、この雄々しき心意気にぞ何思う?!<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.12.01 12:00 Fri
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【東本貢司のFCUK!】エヴァートン“ブランド”の迷走

▽胸騒ぎがした。そのために一日“間”を取った。まさかと思ったが悪い予感は当たった。この負けはこたえる。ホーム、相手はアタランタ、むごい大敗・・・・しかも、セカンドキーパーのロブレスが早々にPKを止めたのに? 期待外れの新ストライカー、ラミレスの初ゴールが生まれたのに? そもそも、現状ではほぼベストの布陣を組んで臨んだのに? クラブをよく知る識者やファンの反応ももはや自虐の域。「かのシェイクスピアでもこんな悲劇は書く気にもなるまい。“ウィリアム”のことだ、クレイグ(前レスター監督)じゃない。いや、彼ならまだましな結果に導いていたかもな」「実に深刻な事態。溺れかけている」「正監督がいないならいないで、この際つなぎの監督を新調しないとね」・・・・つまり、怒りを通り越して苦笑も出ないといった惨状。エヴァートンは立ち直れるだろうか。 ▽近年のプレミアファンにとって「エヴァートン“ブランド”」とはいかほどの重みをもつのだろうか。ジェラール・ウリエ時代に史上めったにない「カップ・トレブル」を果たした当時のリヴァプールを指して、ある知人は「リヴァプールって結構やるじゃないですか!」とニヤつきながら驚いていたくらいである。少し遡ってみれば、リヴァプールが我が物顔にヨーロッパを席捲した時代にすぐ気が付きそうなものなのだが。いや、今の若いファンにエヴァートンの低迷を嘆いたところで、“響く”はずもないか。フットボール(サッカー)というスポーツがポピュラー化した頃からの長い歴史において、エヴァートンは5傑に列する実績を誇り、そもそもその“5強(マン・ユナイテッド、リヴァプール、アーセナル、スパーズそして“トフィーズ”ことエヴァートン)”の中では古豪度でダントツ、それに、昔からこのクラブはどこよりも国産の主力率が常にトップクラスなんですが・・・・。 ▽それでも“方向”は間違っていないはずだった。実績重視の著名外国人監督招聘の轍を踏んで、冷徹で実利主義のロナルト・クーマンに託してから何もかもが上昇気運に乗りかけているように見えた。しかも、この夏の補強では手堅さと質量でプレミア随一の成果を手にしたように・・・・見えた。が、その中身といえば・・・・絶対的得点源たるルカクを失った穴埋めに失敗した。新ミスター・エヴァートンだったはずのバークリーを全力で引き留めるかわりに曖昧な態度に終始して結局腐らせるだけのままで“放置”している。加えて、そのポスト・バークリー対策が無計画もいいところで、ルーニーの筆頭にクラーセンとシグルドソンまで獲って、ファンや識者から「ナンバー10を新規で3人も?」と首を傾げさせた。おまけに、そのせいでせっかく大成の兆しをみせていた期待の生え抜きトム・デイヴィーズを準レギュラーに格下げするもったいなさ。さて、これすべてクーマンのプラン通りだったのか。ひょっとしてインド人オーナー筋のごり押し・横槍などがなかったか? ▽例えば、アンリが抜けたあとのアーセナル、クリスティアーノが去ったあとのユナイテッドと比較してみると何かが見えてくるかもしれない。あえて言うなら、誰(と誰)が主導したにせよ、エヴァートンは“目先を焦りすぎた”ようにも見える。これは穿ちすぎかもしれないが、2、3年先の“ビッグクラブ転身”を目指すクーマンの“功の焦りすぎ”という線も。ビッグクラブ? ほう、また誰かさんみたいに「優勝候補筆頭を渡り歩いて名を残す」のが狙いだったのかな? どうやら「ビッグ」という表現の価値基準というやつが違っているのかも。ごく普通に公平に考えれば、世界最古のリーグの“チャーターメンバー”であり、以後もほぼトップリーグの地位を維持し続け、現在も(仮に低迷することが何度もあったとしても)そのステイタスを堅持しているクラブこそが、最も「ビッグ」の形容にふさわしいと思うのである。少なくとも、そういう優勝するにはまだまだ足りないものが多いチームを率いる方にこそ、指導者たる矜持と喜びを見いだせるのでは、と。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.11.25 11:00 Sat
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【東本貢司のFCUK!】夢のハイパーヤングライオンズ

▽私事ながらゆえあってしばらく“休養”をいただくことになり、気が付けばかなり時間が経ってしまった。その間、プレミア新シーズンが始まった。ひとしきりここまでの成績や戦いぶりを振り返ってそれなりに評価の要素を引き出すのは吝かではないが、やはりまだたかだか11試合の消化、ひと波乱もふた波乱もあってしかるべきだ。例えば、とりあえず一騎抜け出した感のあるマンチェスター・シティーについて、「今後の展開有利」「独走気配」と、誰でもできそうな解説をするだけでは能がない。スポーツを「結果」のみで語るべきではない。ダイジェストのニューズ映像やポストマッチ・インタビュー、勿体付けた解説などは、あくまでも“サシミのツマ”いやそれ以下にどどめておきたい。肝心かなめは目の前のゲームそのもの。無論、ビッグチームがそこに絡む必要性などさらさらない。 ▽それに、今気になるのはどうしても「代表チーム」だ。本大会出場32チームが出そろい、来月のグループリーグ組合せ抽選の結果から吹き出す「あーだこーだ」の“井戸端会議”にこそむしろそそられる。意地悪な言い方をすれば、そこでいわゆる「事情通」の濃淡がわかってくる。有体に言うなら、参加32チームすべての「今」を熟知している御仁がこの世界にいるとはとても思えない。ならば、よく知らないなりにあえて思い切り“絵空事”を交えてストーリー(の断片でも可)を構築できる“話し上手”を見つけ出したい。知ったかぶりのオーソリティー気取りの話が一番つまらないし“残らない”。ちなみに、筆者はよく言ってヨーロッパの「半数」も語れそうにないが、それでも請われたら、前回、前々回の「印象、思い出、雑多なエピソード、体験話」をふんだんに盛り込んで、虚々実々に聞き手をけむに巻いて“楽しみたい”。ワールドカップというお祭りにはそれが一番お似合いではないか。目当ては実際の「鬼が出るか蛇が出るか」のゲームなのだから。 ▽そのうえで、少しばかり“自慢げに”ご存知スリーライオンズことイングランド代表チームについての“事前情報”を、思いつくままに並べ立ててみよう。実はこれが、かつてないほどに一味も二味を違うのである(少なくとも今回は)。世界の最新フットボール事情に知悉している方なら当然「釈迦に説法」だろうが、イングランド代表はこの夏に順次行われた「ワールドカップ・U20」および「同U17」を制した。どこかピンとこないかもしれないからもう一度言う。「20歳以下」と「17歳以下」のワールドカップで、ヤングスリーライオンズは現在世界の頂点に立って「最強を証明」したばかりなのだ。それがどうしたって? そう、確かに彼らがどんなに強かろうが、そっくりそのまま来年夏のロシアをプレーするわけでもないし、仮にそうしたところで他国代表のシニア世代に敵うわけでもあるまいに? 確かに。通常、アンダーエイジ代表はシニア代表とほとんどリンクしない。 ▽つまり、ひょっとしたら一人や二人、10代の“精鋭”がシニア代表に招集されることもある。ただし、彼らが実戦に起用されることはほとんどないし、よもや主力と見なされることもめったにない。ところが今回のイングランド代表に限ってはその「まさか」が現実になるかもしれないのだ。夏以降、監督ギャレス・サウスゲイトはワールドカップ本大会出場が確定したあとの代表戦で、U20代表のエースたちをまるで当然のように使ってそれなりの手ごたえを得たという。折しも“シンボル”のルーニーが代表引退を表明、しかもそれ以前からケイン、アリ、ダイアー、ラシュフォード、ストーンズらは事実上“レギュラーに定着”していた。そこへ、ウィンクス、ピックフォード、ロフタス=チークらをはじめ、国際的にどころかプレミア通の間でさえ無名同然のソランキー、カルヴァート=ルーウィン、クック、エイブラハム、ガンらを続々とシニアに組み入れ、実際に彼らの大半を対ブラジル、ドイツのフレンドリーに投入し、しかも本番での起用も示唆している・・・・。 ▽是非、以上の面々の年齢を資料などで確かめていただきたい。そして想定フォーメーションに当てはめたうえで「平均年齢」を出してみる。たぶん「22歳」前後に収まるはずだ。可能性は五分五分としても、ケインら現役組をベースとすると“夢”が叶う余地は十分にある。もちろん、彼らに経験を積ませるためではない、勝つためにだ。そしてそれすら、すなわち、20歳そこそこで固めた前代未聞の若い代表チームが栄冠に手が届くことも決して夢ではない、という手ごたえと自信を秘めて。先日、マンチェスター・ユナイテッドの監督ジョゼ・モウリーニョがあるインタビューでドキッとするような、こんなコメントをさりげなく述べていた。「(ロシアでの)イングランドの優勝、うん、あるかもしれない」それはほんのジョゼ流リップサービスに過ぎなかったのかもしれない。しかし、もしも彼がサウスゲイトの“野望”にそそられ、なにげなく“後押し”したくなる気になり始めているとしたら・・・・。この件はいずれ改めて突っ込んで触れよう。無性にわくわくしてきた。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.11.19 13:00 Sun
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【東本貢司のFCUK!】ドイツに「追いつけ追い越せ」?

▽日本語で「司令塔」、英語なら「プレーメイカー」。この“肩書”に相当するプレーヤーが複数いる、それもポジションを問わず4人、5人もーーーこの4、5年、主にヨーロッパのクラブフットボールシーンを俯瞰してきて、これこそが現代フットボールの最も顕著な特徴ではないかと思っている。つまり、攻撃態勢に入る際などでほぼ決まってボールが集まる“起点プレーヤー”が、大げさに言えばフィールドのあちこちにいて敵に息つく暇を与えない。先ほど終了したコンフェデレーションカップ、チリ対ドイツを見届けて、そのことを改めて再確認する思いだ。それぞれ攻守の“性格的”スタイルは違うとしても、誰が、どこから、キラー効果満点の攻撃の起点を演じるのか、高見の視点(放送メインカメラの位置)からでも、予測がつきにくい。無論、ここではショート、ロング、いずれのパスワークに主体を置くなどという“悠長”な議論は通じない。文字通りの臨機応変。それを効率よく使い分けられなくてはもはや時代遅れの感も。それでこそ「チーム一体、一丸」が充当する。当然「体力、走力が落ちる落ちない」などの外野解説も時代遅れなのだ。 ▽さすがは二期連続南米チャンピオンと世界チャンピオンーーーと形容するのは当たり前のようでいて、実は「二流、いや素人解説の象徴的文言」にすら聞こえてしまうのは、ドイツがこの大会にぶつけた陣容が「え?」と思うくらい「若い」から・・・・ではない。相手にサンチェスがいるのだから、エジルやメルテザッカーがいたら面白い(解説の際の話ネタにもなる)のに、というのもピント外れ。確かにヨアヒム・レーヴは明らかに「若返り、世代交代」を意識しているように見えるが、ゲームをじっくり追っていけば、いかにこの「若い」チームの組織力とコミュニケーションの習熟度が高いかがよくわかるはずだ。一つ気づいたこと。中盤の運動量の多さと目まぐるしいポジションチェンジ(これは“百戦錬磨”のチリも同じ)のせいで見極めにくいかもしれないが、ドイツは実に柔軟な「3バック」を敷いているように受け取れたのだがどうだろうか。思えば、このドイツに(インスピレーションの点で見劣りするとしても)通じるパフォーマンスで、結果はともかく善戦中のニュージーランドも3バックなのだが、ひょっとしてこれは静かなブームなのか? ▽ふと、今年、足並みがよれかけたシーズン半ば過ぎから3バックに切り替えて復調気運に乗ったアーセナルのことが頭をよぎる。それに確か、プレミアの半数近いチームでも同じ“傾向と対策”が見え隠れしていた。しかも、そこには従来の「中盤を厚くする」とかの数的理論を超えた何か(の新機軸)を感じる。物理的には、足の速い両サイドバック(→ウィングバック)の攻撃参加を生かし、アンカー(中盤の底のいわゆるホールディングプレーヤー)が3バックディフェンスの“前面の盾”を役割をより意識する、という筋になりそうだ。戦術理論的にはそんな辺りなのだろうが、いずれにせよ、より柔軟に幅広くどこからでも、という、攻守のオプション増幅効果が念頭にあるのだと思う。そうなると、快速両ウイングバックとポジションにとらわれないスキルを持つアンカーがいるといないとで違いが歴然としてくるだろう。その点で、現在のチリと“若返った”ドイツはなるほど、一日の長がありそうだ。裏を返せば、彼らに対抗するには「どこをどう」強化すべきかも見えてくる。かなり短絡的見方になるが、突出したタレントの豊富なアルゼンチンがもう一つ突き抜けられないのは、やはり個人技主体のチーム構成になっているからでは? ▽話を少々巻き戻す。これだけ“次世代型”ドイツが急速に完成に近づいているとしたとき、我らがイングランドの場合はどうなのか。折しも、U21ワールドカップで歴史的優勝を遂げ、同時期に行われていたU20トゥーロントーナメントでも優勝、さらに現在進行中のU21ユーロでラスト4(準決勝)進出しているからには、十分に対抗し得る? 以前にも述べたように、U21代表監督のギャレス・サウスゲイトを昇格させた辺りにも、FA(イングランド協会)の明らかなヴィジョンがうかがえることだし? あえて(贔屓目の)結論から言えば、少なくとも希望はある、いや、膨らむ。無論、がらりと入れ替えるのは無謀だろうし、詳細は後に譲るが欠点もまだ見える。が、チームの一体感、“ツーカー度”を重視するべきなら、二人や三人程度の“抜擢”ではおそらく逆効果。ドイツだって来夏の本番では当然、エジルやノイアー、ケディーラ辺りを外すはずもなかろう。ならイングランドも・・・・おや、存在が怪しくなってきたルーニーを除けば、すでに相当若返っているじゃないか。ケイン、アリ、ダイアー、スターリング、ラシュフォード、ストーンズそしてひょっとしたらピックフォード! これはしたり。どうやらドイツの先を行っている? ▽ところが、哀しいかな、さきほど目撃したドイツほどの底力はまだ感じられない、もしくは、証明されるまでに至っていない。なぜか。上にあげた中の数名を除いて、肝心のリーグで必ずしも定位置を確保していないからだ。言うまでもなく、U21世界王者のメンバーから繰り上げられる誰かがいたとしても、経験はもっと浅い。その点を、母国の識者はこぞって指摘し、不安視する。有力外国人に頼らず“彼ら”をもっと実戦に起用せよ、と叫んでみたところで、現実的に“聞く耳”はまだまだか細い。スパーズの台頭が少しは刺激になった節もなくはないが、U21世代を確実なトップ戦力とみなす傾向が見えてきているのは、有力クラブではそのスパーズとエヴァートンくらい。皮肉なことに、ドイツの若手台頭を陰に陽に肌で感じてきているはずのユルゲン・クロップには、現時点ではまだ希望的観測ではあるが、リヴァプールに国産の若い血を吹き込もうとする“意気”のようなものを感じはするのだが・・・・。とどのつまりはサウスゲイトの決断次第。この際、ロシアW杯を「テスト」と割り切るくらいの冒険をしてみる価値はあるはずだ、2020年を照準に!<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.06.23 10:14 Fri
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