【ブンデス前半戦総括】初昇格ライプツィヒが旋風もバイエルンが順当にヘルプスト・マイスター

2017.01.07 07:00 Sat
Getty Images
▽アンチェロッティ新体制のバイエルンが順当に秋の王者(ヘルプスト・マイスター)となった。昨季までのような盤石の強さこそなかったものの、FWレヴァンドフスキがエースの仕事を果たし、新加入のDFフンメルスが期待通りに守備の要として存在感を発揮した。ライプツィヒとの頂上決戦となった年内最終戦では完勝して貫禄を示し、12勝3分け1敗の十分な戦績を残している。
PR
▽王者が順当な成績を残した中、今季のブンデスリーガに新風を吹き込んだのが、創設7年の初昇格を果たしたライプツィヒだ。レッドブルを資本とするチームは提携するザルツブルクを中心に有望な若手選手を引き抜き、まとまりのあるチームに仕上げて怒涛の8連勝を飾るなど、第14節で初黒星を喫するまで首位にも立った。
▽一方で期待外れ気味だったのがドルトムント。バイエルンに唯一黒星を付け、王者に対抗できる戦力を持っているかに思われたが、チャンピオンズリーグ(CL)との過密日程に耐えきれずケガ人が続出し、トゥヘル監督の懸命なやり繰りも実らず取りこぼしが目立って6位とふるわなかった。

▽その他、レバークーゼンとボルシアMGのCL出場組に加え、ヴォルフスブルクが大きく躓いた。レバークーゼンはCLでは決勝トーナメント進出を果たしたものの、リーグ戦では波のある戦いを続けて9位と凡庸な成績に終わり、ボルシアMGは昨季に続いて監督交代を強いられ、14位と低迷。FWゴメスを迎えたヴォルフスブルクはリーグ戦に集中できる環境ながら低空飛行を続け、13位に終わった。

▽一方で昨季に続いて堅守を維持したヘルタ・ベルリンが3位と健闘。昨季残留争いに巻き込まれたフランクフルトも堅守を武器に4位と躍進した。そして、29歳の若き指揮官ナーゲルスマン監督率いるホッフェンハイムは唯一の無敗を維持し、5位に付けている。
▽日本人選手ではフランクフルトのMF長谷部誠とハンブルガーSVのDF酒井高徳が新境地で存在感を示した。長谷部は本職ボランチからリベロにポジションを移し、4位と躍進したチームの守備の要となった。また、酒井高は未勝利で降格圏に沈んでいた中でキャプテンに任命され、新境地のボランチでチームを勝利に導く働きを見せた。

▽攻撃陣ではケルンのFW大迫勇也がストライカーとして本領を発揮し、ヘルタ・ベルリンのMF原口元気が今季も献身的な守備を武器にレギュラーとしてプレー。一方でドルトムントのMF香川真司は若手ライバルの加入によって居場所を失い、アウグスブルクのFW宇佐美貴史は出場機会を得られず苦労した。マインツのFW武藤嘉紀とシャルケのDF内田篤人はケガに泣かされたシーズン前半戦となっている。

【最優秀選手&監督】
★最優秀選手
◆MFウスマーヌ・デンベレ(ドルトムント)
Getty Images
▽バイエルンやマンチェスター・シティを筆頭にメガクラブとの争奪戦を制してレンヌからドルトムントが獲得した19歳が、前半戦で大いに躍動した。利き足がどちらかわからないほど両足のボールスキルが高い上にスピードも備えており、繰り出すドリブルは変幻自在。多くのゴールシーンに絡み、4ゴール7アシストと多彩なメンバーが揃うドルトムント攻撃陣の中でチームを牽引する働きを見せた。

★最優秀監督
◆ユリアン・ナーゲルスマン(ホッフェンハイム)&ニコ・コバチ(フランクフルト)
Getty Images
▽1人に絞れなかったため、2人を選出。まずはホッフェンハイムの若き指揮官ナーゲルスマンから。昨年2月に28歳のブンデス史上最年少で監督に就任したナーゲルスマンは、残留争いに巻き込まれかけていたチームを立て直して残留に導くと、迎えた今季もここまで6勝10分けの戦績を収め、ブンデス唯一の無敗チームとなっている。名のある選手を擁していないものの、渋く実力のある選手を的確に起用し、規律あるチームになっている印象だ。

▽続いてフランクフルトのニコ・コバチ監督。同監督も昨季残留争いを強いられたチームを任され、プレーオフの末に残留を勝ち取った。今季は守備ベースのチームを作り上げ、16試合で12失点と堅守を築いた。3バックと4バックを柔軟に使い分ける中、長谷部をリベロで起用するサプライズも起こし、見事に機能させている。

【期待以上】
★チーム
◆ライプツィヒ
Getty Images
▽この項目は文句なくライプツィヒで決まりだ。レッドブルの資本をバックに、教授ことラングニック氏がスポーツディレクターを務めるライプツィヒは、強烈な個性を持った選手こそいないものの、走れる選手を集め、チームとしての一体感を感じるチームだ。[4-2-2-2]の革新的なシステムを採用し、中央突破を大胆に狙うチームに仕上がっている。

★選手
◆ティモ・ヴェルナー(ライプツィヒ)
Getty Images
▽降格したシュツットガルトでくすぶっていた20歳アタッカーが新天地で本領を遺憾なく発揮している。17歳でプロデビューを果たしたU-19ドイツ代表FWは、ショートカウンター主体のチームで自身最大の武器であるスピードを存分に生かし、9ゴール5アシストと躍動。2位と躍進したライプツィヒの攻撃を牽引する働きを見せた。

【期待外れ】
★チーム
◆ボルシアMG
Getty Images
▽昨季のファブレ監督に続き、シューベルト監督もまさかの解任に遭った。昨季は開幕5連敗スタートからシューベルト監督の就任によってV字回復し、最終的には4位フィニッシュで2年連続CL出場権を獲得した。ところが今季もCLとの兼ね合いに耐えきれず、リーグ戦にしわ寄せが行ってしまった。結果、16試合を終えて14位と低迷したチームは、評価を高めていたシューベルト監督の解任を決断。ヴォルフスブルクを解任されたヘッキング監督の就任を発表している。

★選手
◆マリオ・ゲッツェ&香川真司(ドルトムント)
Getty Images
▽大きな期待を持って3年ぶりに帰ってきたクラブ生え抜きのスター選手であるゲッツェに、かつての輝きはなかった。コンスタントに出場機会を得ていたにも関わらず1ゴール1アシストと、まるで結果を残せなかった。プレー内容もかつての創造性溢れるプレーは影を潜め、凡庸なプレーに終始していた。また、香川もノーゴール1アシストと結果を出せなかった。昨季は完全復活を印象付けていただけに、残念な結果となっている。

◆前半戦ベストイレブン
Getty Images
GK:バウマン
DF:オルバン、長谷部、フンメルス
MF:O・デンベレ、N・ケイタ、チアゴ、フォルスベリ
FW:オーバメヤン、レヴァンドフスキ、モデスト

【後半戦展望】
★旋風ライプツィヒはバイエルンにどこまで食らいつけるか
▽後半戦の注目は旋風を巻き起こしているライプツィヒが王者バイエルンにどこまで食らいつけるかだ。ライプツィヒは年内最終戦の天王山でバイエルンに惨敗したものの、王者とは3ポイント差で、優勝はまだまだ射程圏内。後半戦では対戦相手に研究される難しさがあるが、引き続きリーグ戦一本に集中できる点は大きなアドバンテージだ。ライプツィヒの健闘が、近年盛り上がりに欠ける優勝争いがヒートアップするかどうかの鍵となる。

▽一方、バイエルンはCLとの過密日程に耐えられるかがポイントだ。前半戦はターンオーバーを使ったアンチェロッティ監督のマネージメントによって、CLとの過密日程をうまく乗り切った。ケガ人も最小限に抑えており、後半戦に向けて順調な歩みを進めている。唯一、得点源であり代えの利かないレヴァンドフスキにケガがあった際に不安が残るが、エースがコンスタントに出場できる状況が続けば大崩れすることは考えにくい。

▽優勝争いがこの2チームに絞られた感のある中、例年通り混沌としてきそうなのがCL出場権争いと残留争いだ。CL出場権争いでは上位にヘルタ、フランクフルト、ホッフェンハイムとCL出場歴が過去にほぼないチームが名を連ねているだけに、ドルトムントやレバークーゼン、シャルケといった強豪勢の巻き返しが十分に考えられそうだ。

▽残留争いでは戦力を考慮すると、昨季昇格したインゴルシュタットとダルムシュタットの降格が濃厚か。残留プレーオフに回る残り1枠を巡っての激しい争いとなりそうだが、ヴォルフスブルクやボルシアMGといった強豪が残留争いに飲み込まれてしまうのかが注目だ。

PR
関連ニュース

至宝ムシアラにバイエルンが新契約打診へ シティ関心話も

バイエルンがドイツ代表MFジャマル・ムシアラ(21)に新契約を申し出るようだ。 2020年6月にバイエルンのトップチームでデビューしてから瞬く間にチームの中心となり、今やドイツ代表でも主力と化すムシアラ。まだ21歳だが、バイエルンでは通算161試合も積み上げ、今季も公式戦36試合で12得点7アシストをマークしている。 バイエルンでは至宝とも評されるように順風満帆のキャリアだが、契約も2026年夏まで残すなか、最近ではまことしやかにマンチェスター・シティの関心報道も。だが、バイエルン側に手放す気などない模様だ。 移籍市場に精通する記者のファブリツィオ・ロマーノ氏によると、「バイエルンはムシアラに関してのプランを明確にしている。この夏に彼らの宝石を売るつもりなどない」とし、新たな契約も準備しているという。 新契約はアドオン付きの大幅な昇給というもので、近くオファーするとのこと。イングランドとスペインのトップクラブが注視しているものの、話し合いに至っていないそうだ。 また、ドイツの移籍市場に精通するフロリアン・プレッテンベルク記者も「ムシアラは間違いなく非売品。マックス・エベールはいかなるオファーも考慮したりしない」とした。 2024.04.19 16:35 Fri

CL4強入り貢献も…負傷抱えるサネは「ぎりぎりの状態だった」

バイエルンのドイツ代表FWレロイ・サネは痛みを押して大一番を戦ったようだ。ドイツ『スカイ・スポーツ』が伝えた。 アーセナルとのチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝では1stレグに続いて2ndレグにも先発し、バイエルンの準決勝進出に貢献したサネ。しかし、両レグともに直前のブンデスリーガを欠場していた。 ベスト4入りが決まった2ndレグ後、スポーツ・ディレクター(SD)を務めるクリストフ・フロイント氏がオーストリア『スカイ・スポーツ』にコメント。サネが痛みとつきあいながらプレーしたと明かした。 「完全にぎりぎりの状態だった。彼は一切のトレーニングができていない。メディカルスタッフたちは本当にできる限りのことをしてくれた」 「レロイは必死に歯を食いしばり、素晴らしい仕事をしてくれた。実際、彼は数週間トレーニングできなかったが、この試合にはなんとか間に合わせた」 また、『スカイ・スポーツ』で解説者を務める元ドイツ代表MFディートマー・ハマン氏は痛みに耐えながらプレーするサネの様子を気にしていた模様。すでにバイエルンのブンデスリーガ12連覇の夢が途絶えていることもあり、トーマス・トゥヘル監督は大一番以外、サネに頼るべきではないという考えだ。 「バイエルンは幸運だ。必ずしもブンデスリーガでプレーする必要はない。私ならプレーさせない。必要に応じて準決勝で起用する」 「彼をしばらく休ませて、この状況に対処できるか様子を見るべきだ。痛みのない100%の状態のサネがいれば、優位に進められる可能性がはるかに高くなる」 2024.04.19 14:13 Fri

ニャブリにトッテナムが獲得本腰? バイエルンは売却に前向きとの見立ても

トッテナムの、バイエルンのドイツ代表FWセルジュ・ニャブリ(28)に対する関心は本物だという。 ドイツ代表通算45試合22得点を誇る同国屈指のアタッカー・ニャブリ。バイエルン歴も長くなった28歳だが、今季は相次ぐケガでなかなか稼働できず、公式戦17試合出場にとどまっている。 イギリス『フットボール・インサイダー』によると、アーセナル在籍経験も持つニャブリにはトッテナムが具体的な関心。両ワイドに時としてセンターフォワードもこなす能力の高さを、アンジェ・ポステコグルー監督が高く評価しているのは想像に難くない。 ニャブリの現行契約は2026年6月まで。選手本人がトッテナム行きを含む移籍を考慮しているかは不明だが、バイエルン側はニャブリの売却に前向きとの見立てもあり、「現段階で去就は不透明」というのが妥当なところか。 ニャブリはイングランドだとアーセナルとWBAに在籍経験があるが、ブレイク前の若手時代だったため、プレミアリーグ通算11試合1得点。アーセナルから放出された先のブレーメンで才能を開花させ、現在に至る。 2024.04.19 14:00 Fri

ガスペリーニ、クロップ、アルテタ…個性豊かな名将に師事してきたソクラティスの“特別なボス”とは「師匠のサッカーは…」

レアル・ベティスの元ギリシャ代表DFソクラティス・パパスタソプーロスが、これまで師事してきた名だたる指揮官たちを振り返った。 ギリシャを代表するフットボーラー、35歳ソクラティス。ミランやドルトムント、アーセナルといった強豪に在籍歴を持つ歴戦の雄だ。 そんな彼は20年近いプロキャリアの中で名だたる指揮官たちに師事。 例えば、19歳で加入したジェノアにて、当時のボスは現在アタランタで長期政権を敷くジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督。“個”を伸ばすマジシャンであり、普段は温厚かつ選手に対する平等な姿勢から人望も厚い男として知られる。 ジェノアからのレンタル移籍で10-11シーズンに1年間だけ在籍したミランでは、セリエA優勝メンバーの一員に。ボスは当時まだ40代前半で、青年指揮官として評価急上昇中だったマッシミリアーノ・アッレグリ監督。 ドルトムントではユルゲン・クロップ監督の“深い愛”に始まり、トーマス・トゥヘル監督体制下でレギュラーポジションを確保。アーセナル時代はウナイ・エメリ監督およびミケル・アルテタ現監督と共闘した。 現所属ベティスでも、指導者として世界各地を渡り歩いた老将マヌエル・ペジェグリーニ監督に師事。スペイン『Relevo』のインタビューで“ボスたち”を振り返ったソクラティスは、それぞれの特徴を語っていく。そこに負の記憶はない。 「誰もがそれぞれ異なる特徴を持っているのは面白いよね。クロップなんか、ピッチを離れれば選手の友達じゃないか(笑) 心理学者のように選手の内側を見透かしていく。信頼されるはずだ」 「トゥヘルとアルテタは似ているかも。戦術面に強くて、それらを試合で表現するための努力を絶対に怠らない。僕はアルテタの下で長くプレーできなかったけど、負の感情はない。優れたボスであることは就任初日から明らかだったんだ」 「エメリもいわゆる“真面目タイプ”かな(笑) 熱心に仕事に取り組む一方、選手との対話にも時間を割く。そうだね、僕のキャリアで最も重要な1人はエメリだ」 そんななかでも「特別な人」がいると言う。 「特別な人は…やっぱりガスペリーニかな。師匠のサッカーは本当に難しくて、最初の1カ月は混乱しっぱなしだったよ(笑) ようやく理解し起用して貰えるようになり、彼の下での経験は今の僕の基礎となっているよ」 「アッレグリを含め、総じてイタリアの指揮官は『戦術面』に明るい。僕がディフェンダーだからなのか、カルチョの戦術は本当にレベルが高いと感じる。あの経験は大きかったよ」 このように歴代の名だたるボスたちを振り返ったソクラティス。現在師事するぺジェグリーニ監督からロッカールームのリーダーを託される35歳は、引退後の将来をどう考えているのか。 「マヌエル(ぺジェグリーニ監督)にはとてつもなく長いキャリアがあって、僕は彼に何でも相談することができる。常に冷静で、それは40年の経験値からなせるものだよ。いつか僕もそうなれるか?...まだ考えたこともないな(笑)」 多くの名将に師事してきたソクラティスにも監督業を期待したいところだが、今のところ、自身はその名将たちの足元にも及ばないと考えているようだ。 2024.04.18 17:20 Thu

CL敗退、公式戦連敗…「サポートと愛を与える」と選手を想うアルテタ監督が残すプレミアリーグ優勝へ意気込み「好転させられると示す」

アーセナルのミケル・アルテタ監督が、公式戦連敗を受けて選手たちを思いやった。クラブ公式サイトが伝えた。 17日、チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝2ndレグでバイエルンと対戦したアーセナル。1stレグは2-2のドローとなっており、勝てばベスト4行きとなった中、1-0で敗戦。またしてもバイエルンに阻まれる形となった。 プレミアリーグで2シーズン続けて優勝争いをしているアーセナルだが、14日に行われたプレミアリーグ第33節のアストン・ビラ戦で0-2と完敗。チャンスを逃し続けたことが響いての敗戦となり、2024年のリーグ戦初黒星に。首位からも陥落し、チームは落胆していた。 そしてバイエルン戦でもパフォーマンスを発揮しながら接戦で敗れて敗戦。2試合続けてゴールがなく、この先のプレミアリーグにも不安が募る結果となった。 試合後、アルテタ監督は公式戦連敗を受けてコメント。選手に対してのアプローチについて言及した。 「今日は選手たちに気分を良くしてもらうための適切な言葉があれば良かったと思う。確実にやろうとしていることは、スタッフ全員、コーチングスタッフ全員が選手のそばにいるということだ」 「彼らの監督として、毎日彼らと一緒に仕事ができることにとても感謝している。彼らが必要としていることは、我々がすぐ隣に立ち、サポートと愛を与えることだ」 そのアーセナルは20日にウォルバーハンプトンと対戦。中2日と厳しい日程での戦いに向けても意気込みを語った。 「土曜日には大きな、大きな、大きな試合がある。私がそれを迎えにいかなければいけない。我々はまだプレミアリーグを戦っており、本当に望んでいるものだ。今、この状況を好転させられることができると示さなければいけない」 公式戦連敗を止め、プレミアリーグの優勝争いを最後まで繰り広げられるか。大事な一戦となりそうだ。 2024.04.18 12:45 Thu
NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly