【東本貢司のFCUK!】初夢は「伝統の一騎打ち」2017.01.04 09:45 Wed

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▽昨年末、本稿から数えて3本前の末尾で、柄にもなく(?)アーセナルへの“希望”に触れた。開幕戦でリヴァプールに敗れて以来、あの「インヴィンシブル(=無敵)2003-2004(無敗優勝)」を彷彿とさせる快進撃で「これは」と思わせ、ところが12月に入ってエヴァートン、マン・シティーに連敗・・・・つまり、柄にもなく(繰り返す)同情してしまったガナーズへのエール。そして2016年最後のゲームを1-0(対ウェスト・ブロム)で締めくくり、元日にはクリスタル・パレスをきれいに片づけたそのとき、筆者はついひとりごちたものだった。試練(対エヴァートン、シティーの連敗)は絶妙のタイミングで訪れたのかもしれない、ここからアーセナルはトップギアを入れて突っ走る、そのためには、ホーム連戦を乗り切った今、中一日で迎えるアウェイのボーンマス戦こそが、いずれ今シーズンの軌跡を振り返るときのハイライトになるはずだ、と。ただし、その前日(2日)、アーセン・ヴェンゲルがつぶやいた“愚痴”に一瞬、不吉なものを感じてしまったのだが。

▽「過去20年間で最も不公平なクリスマス期間だった。大金を投じている衛星放送テレビに(スケジュールをいじる)特権があるのは仕方がない。が、これほど(チームによってゲームとゲームの間に差にばらつきがあるのは)とはさすがにひどい」・・・・。「中一日」がよほど腹に据えかねたのだろうか。確かに、ホームのボーンマスは上位のライバルたちに匹敵する厄介な相手だ。多分、その辺りをぜ~んぶひっくるめての“アラーム信号”だったのだろう。フォックスとプレミアリーグに対する嫌味に“託して”、ボーンマス戦に臨むプレーヤーたちへの「ぬかるなよ!」という警告と激励ーーー。果たして、三が日の浮ついた気分を振り払いながら、その首尾のほどを見届けようと勇んでいたところが・・・・あれは逆効果だったのかと、呆れ半分で気が沈むばかり。開始から1時間が経ってスコアは3-0、ホームサイド快勝、いや圧勝で、ガナーズの命運も・・・・と、実はそのとき、モニタースクリーンの前を離れ、どうしようか、このまま一寝入りしてしまおうか、“仕事”はそれから気を取り直して筋立てを練り直すのがよかろう、とまで思い悩んだのである。

▽ひとまず、お湯を沸かしてお茶を淹れている間、ふとぼんやりモニターに目をやる・・・・70分、サンチェスのダイヴィングヘダーが決まって「おやっ?」と、マグカップ片手に座り直す・・・・5分後、60分過ぎに交代でピッチに出たルーカス・ペレスが左足のボレーで1点差ーーー「これはひょっとしたら?」そして・・・・終了間際、タイムにして90+2分、ジルーのヘディングゴールが炸裂して・・・・さすがに大逆転とまではいかなかったが、これはもう勝利に等しい勝ち点1をもぎ取ってみせたのだ。ボーンマスのサイモン・フランシスが一発レッドで退場(63分:キッチンでお茶の用意をしていて見逃した)、一人多いアドバンテージも利いたようだった。3点目献上までのちぐはぐさと生ぬるさは十分に反省の余地はあろうが、逆境を跳ね返したこの底力は今後にも大いに糧として生きてくるだろう。かくて、昨年末の予感(予言?)も息を吹き返した。格別ガナーズファンでもない筆者が覚えた、そんな衝動が“実を結ぶ”保証はまだどこにもないが、チェルシーがこのまま負けないという保証もない。ライバルはざっと5チーム。前途はつとに厳しい。しかし・・・・。

▽少なくとも、プレミア創設以来、最も激烈なタイトルレースが繰り広げられることは必至。そして、アーセナルが最後まで食いついて希望をつなぐ図も、今なら描けそうだ。プレミアファンにとってはなんと喜ばしい、すばらしい近未来図ではないか。チャンピオンズリーグ、FAおよびリーグカップの「あるなし」はこの際、勘定に入らない、いや、入れたくない。願わくば、このまま6強が僅差のまま最後の、そう、残り5試合前後まで鎬を削っていって欲しい。それでこそ、最後に笑うどこかの価値も輝き渡る。そして、今、視界を過るその勝者は、あくまでもただの直感に過ぎないが、赤と白の染め分けシャツのような気がするのだ。おわかりいただけると思う。あの「インヴィンシブル」に導いた頃から、変わっていたいのは、アーセン・ヴェンゲルただ一人なのだから。贔屓目は一切抜きの、一種の初夢のようなものだと思っていただきたい。それに、なぜか最後に立ちはだかる最大の強敵は「インヴィンシブル」時代以前からの宿敵、6連勝中のユナイテッドになる予感もする。6強のうちどこが優勝したってかまわない。が、こうなったら最後の最後で“オールド・ライバル”同士の歴史的一騎打ちを見てみたい。さて、この初夢、当たるかな?
【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。

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【東本貢司のFCUK!】ドイツに「追いつけ追い越せ」?

▽日本語で「司令塔」、英語なら「プレーメイカー」。この“肩書”に相当するプレーヤーが複数いる、それもポジションを問わず4人、5人もーーーこの4、5年、主にヨーロッパのクラブフットボールシーンを俯瞰してきて、これこそが現代フットボールの最も顕著な特徴ではないかと思っている。つまり、攻撃態勢に入る際などでほぼ決まってボールが集まる“起点プレーヤー”が、大げさに言えばフィールドのあちこちにいて敵に息つく暇を与えない。先ほど終了したコンフェデレーションカップ、チリ対ドイツを見届けて、そのことを改めて再確認する思いだ。それぞれ攻守の“性格的”スタイルは違うとしても、誰が、どこから、キラー効果満点の攻撃の起点を演じるのか、高見の視点(放送メインカメラの位置)からでも、予測がつきにくい。無論、ここではショート、ロング、いずれのパスワークに主体を置くなどという“悠長”な議論は通じない。文字通りの臨機応変。それを効率よく使い分けられなくてはもはや時代遅れの感も。それでこそ「チーム一体、一丸」が充当する。当然「体力、走力が落ちる落ちない」などの外野解説も時代遅れなのだ。 ▽さすがは二期連続南米チャンピオンと世界チャンピオンーーーと形容するのは当たり前のようでいて、実は「二流、いや素人解説の象徴的文言」にすら聞こえてしまうのは、ドイツがこの大会にぶつけた陣容が「え?」と思うくらい「若い」から・・・・ではない。相手にサンチェスがいるのだから、エジルやメルテザッカーがいたら面白い(解説の際の話ネタにもなる)のに、というのもピント外れ。確かにヨアヒム・レーヴは明らかに「若返り、世代交代」を意識しているように見えるが、ゲームをじっくり追っていけば、いかにこの「若い」チームの組織力とコミュニケーションの習熟度が高いかがよくわかるはずだ。一つ気づいたこと。中盤の運動量の多さと目まぐるしいポジションチェンジ(これは“百戦錬磨”のチリも同じ)のせいで見極めにくいかもしれないが、ドイツは実に柔軟な「3バック」を敷いているように受け取れたのだがどうだろうか。思えば、このドイツに(インスピレーションの点で見劣りするとしても)通じるパフォーマンスで、結果はともかく善戦中のニュージーランドも3バックなのだが、ひょっとしてこれは静かなブームなのか? ▽ふと、今年、足並みがよれかけたシーズン半ば過ぎから3バックに切り替えて復調気運に乗ったアーセナルのことが頭をよぎる。それに確か、プレミアの半数近いチームでも同じ“傾向と対策”が見え隠れしていた。しかも、そこには従来の「中盤を厚くする」とかの数的理論を超えた何か(の新機軸)を感じる。物理的には、足の速い両サイドバック(→ウィングバック)の攻撃参加を生かし、アンカー(中盤の底のいわゆるホールディングプレーヤー)が3バックディフェンスの“前面の盾”を役割をより意識する、という筋になりそうだ。戦術理論的にはそんな辺りなのだろうが、いずれにせよ、より柔軟に幅広くどこからでも、という、攻守のオプション増幅効果が念頭にあるのだと思う。そうなると、快速両ウイングバックとポジションにとらわれないスキルを持つアンカーがいるといないとで違いが歴然としてくるだろう。その点で、現在のチリと“若返った”ドイツはなるほど、一日の長がありそうだ。裏を返せば、彼らに対抗するには「どこをどう」強化すべきかも見えてくる。かなり短絡的見方になるが、突出したタレントの豊富なアルゼンチンがもう一つ突き抜けられないのは、やはり個人技主体のチーム構成になっているからでは? ▽話を少々巻き戻す。これだけ“次世代型”ドイツが急速に完成に近づいているとしたとき、我らがイングランドの場合はどうなのか。折しも、U21ワールドカップで歴史的優勝を遂げ、同時期に行われていたU20トゥーロントーナメントでも優勝、さらに現在進行中のU21ユーロでラスト4(準決勝)進出しているからには、十分に対抗し得る? 以前にも述べたように、U21代表監督のギャレス・サウスゲイトを昇格させた辺りにも、FA(イングランド協会)の明らかなヴィジョンがうかがえることだし? あえて(贔屓目の)結論から言えば、少なくとも希望はある、いや、膨らむ。無論、がらりと入れ替えるのは無謀だろうし、詳細は後に譲るが欠点もまだ見える。が、チームの一体感、“ツーカー度”を重視するべきなら、二人や三人程度の“抜擢”ではおそらく逆効果。ドイツだって来夏の本番では当然、エジルやノイアー、ケディーラ辺りを外すはずもなかろう。ならイングランドも・・・・おや、存在が怪しくなってきたルーニーを除けば、すでに相当若返っているじゃないか。ケイン、アリ、ダイアー、スターリング、ラシュフォード、ストーンズそしてひょっとしたらピックフォード! これはしたり。どうやらドイツの先を行っている? ▽ところが、哀しいかな、さきほど目撃したドイツほどの底力はまだ感じられない、もしくは、証明されるまでに至っていない。なぜか。上にあげた中の数名を除いて、肝心のリーグで必ずしも定位置を確保していないからだ。言うまでもなく、U21世界王者のメンバーから繰り上げられる誰かがいたとしても、経験はもっと浅い。その点を、母国の識者はこぞって指摘し、不安視する。有力外国人に頼らず“彼ら”をもっと実戦に起用せよ、と叫んでみたところで、現実的に“聞く耳”はまだまだか細い。スパーズの台頭が少しは刺激になった節もなくはないが、U21世代を確実なトップ戦力とみなす傾向が見えてきているのは、有力クラブではそのスパーズとエヴァートンくらい。皮肉なことに、ドイツの若手台頭を陰に陽に肌で感じてきているはずのユルゲン・クロップには、現時点ではまだ希望的観測ではあるが、リヴァプールに国産の若い血を吹き込もうとする“意気”のようなものを感じはするのだが・・・・。とどのつまりはサウスゲイトの決断次第。この際、ロシアW杯を「テスト」と割り切るくらいの冒険をしてみる価値はあるはずだ、2020年を照準に!<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.06.23 10:14 Fri
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【東本貢司のFCUK!】プロアスリートの熱き友情

▽済州-浦和戦終了直後の“事件”がまだ尾を引いている。ただ、奇跡的という飾り文句がつく逆転劇といえばあのバルセロナ-パリSG戦がまだ記憶に新しいところだが、そこで何等かの“穏やかならざる醜態”が演じられたわけでもない。それよりも“数字的に見劣りする”このゲームの結末に際して、予期せぬ異常なヒートアップと激高した暴力が噴出してしまった裏には、やはり歴史的な“民族敵対”の意識がなかったとはいえまい。似たような感情の迸りは、ロイ・キーンが現役時代のマン・ユナイテッドとアーセナルの間にもあったが、こちらはもちろん民族云々とは別次元の話である。そもそも、当事者のプレーヤー同士が我を忘れたように試合直後に怒りと悔しさをぶつけ合うことなど、言われるほど多くはない。ラグビーでいう「ノーサイド」の精神はフットボールとて本質的に違いはない。特に同じスポーツのピッチにおいて切磋琢磨する個人間の敬意、友情、仲間意識は、敵味方を問わず強く深い。それが嘘偽りのない(特に)プロアスリートの真実である。 ▽例えば、ジョーイ・バートン。これまで数々の“悪名”を轟かせてきたイングランド有数の悪童だが、実はプレーヤー仲間の世界では意外なほど人望があるらしい。最近のエピソードで印象深いのは、後輩のロス・バークリーに対するいかにもプロらしい思いやりと接し方だ。ひょっとしてご存知ない方もいるだろうか、あるリヴァプールのベテランジャーナリストが唐突にバークリーの血筋に絡んで悪質な人種差別的揶揄記事を書いた事件。父型の祖父がナイジェリア人だというだけで、この記者はバークリーを「ゴリラ」と同類に扱い、プレーヤーとしても下劣だと言わんばかりにこきおろしたのだ。無論のこと、多方面から批判が相次ぎ、しばらくして当のジャーナリストは所属メディアから解雇された。バートンも口汚く罵りの言葉をツイッターにアップしたが、そこから先が一味違う。奇しくもそれからまもなく巡ってきたエヴァートン-バーンリー戦で、バートンはバークリーの厳しいマンマークに徹し、反発の闘志を掻き立てさせるかのごとく、プロとしての“激励”を施したのである。筆者はそれを見て本心で感動した。おそらくはバークリー本人も。 ▽実に残念なことに、このことに気づいて指摘した記事は筆者の知る限りどこにもなかった。なぜだろうか。おそらくは、バークリーが被った謂れのない侮辱を蒸し返すこともない、と自粛したのかもしれない。そして、バートンのプレーもポジション柄、珍しくもないとスルーした・・・・。だが筆者の感触は少々違う。つまり、ジョーイ・バートンという人格を多くの人がまだ(ジャーナリズム界を含めて)誤解したままなのではないか、と。平たく言えば、バートンは“嫌われ者”で彼を美化したような記事やコメントをものするのに、多くの人々がためらいを感じている・・・・。以前にも別の機会に触れたことだが、バートンは知られざる努力家であり、その範囲は実際のプレーやスキルに限られていない。数年前のオフには大学の講義を受講したりしながら、フットボール理論の研究に努め、同時にコーチングライセンス取得の勉強も始めている。あの面構えで類を見ないインテリ志向なのだ。このような範疇の出来事について、かの国ではその途上でむやみに持ち上げたりしない。“成果”もしくはその現実的兆候を確認してから評価の素材として取り上げる。もちろんジョーイ・バートンという男の性格もあろう。が、筆者は期待していいと思っている。 ▽どんな世界、業界でもそうだが、人間関係において「性格」が及ぼす効果は非常に大きい。端的に言えば「とにかく気に入らない、虫の好かないヤツ」は、どんなに成果を上げ、他人のために尽くしても、評価される度合いが、あるいは“スピード”が落ちてしまう。もちろん、そうなってしまうのは不幸なことであり、我々もそうあってはならないと肝に銘じるべきだ。逆に、俗にいう「気のいいヤツ」はそれだけでぐんと得をする。性別を問わず「愛される人格」とは、一緒にいるだけで和み、前向きにさせてくれる。先日、中国スーパーリーグ2部のクラブに所属する、元ニューカッスルなどでプレーしたコートジヴォワール代表、シャイク・ティオテが練習中に昏倒して急死した。この世界でごくまれに起きる予期せぬ不幸だったが、その死は想像を絶するレベルで悲しみの輪を広げた。その理由は、ティオテがまれにみる「いいヤツ」だったからである。事実、数多の同輩、特に彼と一度でも“同じ釜の飯を食った”経験のある元同僚から発せられた悲嘆と追悼と言葉は、若くして逝った者に対して通常捧げられる“決まり文句”にはない、真実の響きを感じる。 ▽ベルギー、アンデルレヒトでチームメイトだったヴァンサン・コンパニー(マン・シティー)は「これまで出会った中で最高に気立てが良く、最高にタフな友人を失ってしまった」と天を仰ぎ、ニューカッスルで肩を並べてプレーしたパピス・シセは「おやすみ、兄弟。もう会えないなんて信じられない」と言葉を失った。他にも、現レスターのダニー・シンプソン:「本当に辛い。君と知り合えたことを神に感謝する」、現ニューカッスル監督のラファ・ベニテス:「本物のプロにして常に全力を惜しまなかった以上に、人としてすばらしい男だった」、オランダのトゥウェンテでティオテを擁して史上初のリーグ優勝を遂げたスティーヴ・マクラーレン:「シェイク・ティオテの笑顔は、フットボール界一すばらしかった」、同チームメイトだったシエム・デ・ヨンク:「ドレッシングルームで彼と一緒にいるだけで楽しい気分になれた。友よ、安らかに眠れ」と、枚挙の暇もない。もちろん中国のチームメイトも彼の大ファンだったとか。すでに近く彼の追悼試合が行われることも決まっている。史上有数の「いいヤツ」の魂に捧げんために。ただ、よりによってそんな「いいヤツ」が早逝してしまう、残酷な理不尽さも恨めしく思わずにはいられない。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.06.16 13:16 Fri
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【東本貢司のFCUK!】ヤングライオンズ2017年夏の乱

▽韓国で行われているU20ワールドカップにて、イングランドは同大会史上初めて決勝に進出した。昨夜の準決勝でイタリアを下した戦いぶりには、少なからず近い将来をまぶしく照らす手応えと興奮がにじみ出ていたようで、ギャリー・リネカー、フィリップ・ネヴィルらから届いた賞賛のコメントも、いつになく“簡潔で控え目”な、どこか込み上げてくる喜びをあえてぐっと抑えつけているような響きを感じてしまう。まだ「新たな黄金世代」と持ち上げるのは気が早すぎるとしても、きっと単なる快勝で終わらない底深い印象をもたらしたからだろう。チームメンバーの現所属をざっと眺めて目立つのは、エヴァートン、チェルシー、ニューカッスル、リヴァプール。クーマンの積極的な若手起用が進むエヴァートンや、晴れて復活昇格を果たしたニューカッスルの来シーズン、彼らがプレミアで躍動する機会もそこそこ期待できそうだが、大物感で突出して一気のブレークにありそうなのは大会直前にチェルシーからリヴァプールへの移籍が内定したドミニク・ソランキーだ。 ▽「ソランキー」と書いたがこれは英語読み。フルネームはドミニク・アヨデレ・「ソランケ」=ミッチェル、身長185センチのFW。チェルシー監督時代に彼を見止めたジョゼ・モウリーニョは「ドミニクは間違いなく将来のイングランド代表、それもエースに育つめったにない逸材」と褒めちぎっていたらしい。そんなホープをチェルシーが手放してしまったのは、アントニオ・コンテにそこまで見極める余裕がなかったからなのか・・・・。また、モウリーニョはモウリーニョで、この突然のリヴァプール移籍に舌打ちしている? そして、ユルゲン・クロップの、イングランドにおけるリクルートネットワークは想像を越えて目敏いのかも・・・・。いやいや、まだ煽り立てるのはそれこそ気が早い。当面はクロップの腹一つ、エヴァートンのトム・デイヴィーズばりに使われてこそである。とはいえ、このU20W杯がソランキーの株を上げたのは紛れもない事実で、準々決勝では貴重なアシスト、イタリア戦では面目躍如の2ゴール(同点弾と勝ち越し)、存在感は他を圧している。俊足でスキルも柔軟、左右ウイング、トップ下もできるモダンアタッカーの資質も十分だ。 ▽ソランキーの話ばかりでは礼を失するというもの。せめてあと二人くらいは持ち上げておこう。まずはアデモラ・ルックマン。チャールトンのアカデミー出身。すでに先シーズン、エヴァートンのファーストチーム入りして数試合出場を経験している。デビュー戦、マン・シティーを4-0で粉砕したメモリアルゲームで4点目を決めたのはまだ記憶に新しい。もう一人のリヴァプール所属シェイ・オジョは、ミルトン・キーンズ・ドンズのアカデミーを経て2011年11月11日(!)、チェルシーを含む有力クラブ入り乱れての争奪戦を制したリヴァプールの一員となり、昨年3月にプレミアデビューを果たしている。順調に運べば、いつの日かこの19歳トリオが居並ぶスリーライオンズの前線は、ちょっとした見ものとして衆目を集めるに違いない。U20チームの監督、ポール・シンプソン(マン・シティー、ダービーなどでウインガー)は「あいつらが(今大会の)優勝トロフィーを掲げる様子が今から目に浮かぶよう。それだけの実力とオーラがある」とやや浮かれすぎ気味に「これほどの素材が揃ったのはかつて記憶にない。とんでもなく楽しみだ」と手放しだ。 ▽実はこれに先立って、現在開催中のトゥーロン・トーナメントでも、イングランドは首尾よく決勝にコマを進めている。明日10日に対決するのは準決勝でチェコを退けたアフリカの雄、アイヴォリーコースト。ヤングライオンズのエースはレスター所属のハーヴィー・バーンズで、同僚のジョージ・ハーストと仲良くここまで4得点をマーク。この二人も今後、要注目だ。ちなみに、日本も参加していて同じグループAに入り、キューバ、アンゴラと引き分け、イングランドに1-2で敗れた。また、“開催国”のフランスはアイヴォリーコーストと同じグループBで3位敗退、もう一つのグループCではブラジルがスコットランドに敗れ、そのスコットランドをイングランドが準決勝で下している。各国の詳しい状況がもう一つ定かでないため、実力および将来性などを測るわけにはいかないが、現21歳以下レベルでの戦力層と勝負強さにおいて、ヤングライオンズは少なくとも世界トップクラスにあると言えるだろう。そこからどれだけ“成長”が望めるのか楽しみにしたい。 ▽なお、最新のニューズによると、マン・ユナイテッドがズラタン・イブラヒモヴィッチとの契約更新を見送る公算大とか。こうなるといよいよ、レアルのアラヴァロ・モラタ獲得へまっしぐら? また、レスターではクレイグ・シェイクスピアの正式監督就任が発表された。マーレズ(アーセナル?)に続いてヴァーディー(エヴァートン?)の退団も噂されているが、チルウェルや上記のバーンズを中心にあえて若手主軸に切り替えていくのか、それとも、あっと驚く大物リクルートに乗り出すか(チャンピオンズ参入で資金の方はそこそこ“がんばれる”)。意外に、オフの台風の目の役割はレスター辺りが演じることになるのかもしれない。あとはムバッパとラカゼットの仏大物ストライカーコンビ、その行方、はたまたルカクはやはりチェルシー入りなのか、バークリーはどうする、そしてルーニーの去就・・・・気になること満載の2017年夏の乱。うまく収まればいいのだが・・・・。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.06.09 11:40 Fri
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【東本貢司のFCUK!】ヴェンゲル:Time For Change

▽彼ははっきりと岐路に立っている。ウェイン・ルーニーはジョゼ・モウリーニョととっくり話し合う必要がある。それもできるだけ早く。このまま出番の増える見込みがなかろうと「ユナイテッドのルーニー」でキャリアを終えるのか、それとも改めてレギュラーポジションを争える新天地でもう一花咲かせるか―――腹を決めるために。サウスゲイト・イングランド代表監督は事実上、後者を明瞭に推奨している。その場合、自ら示唆した「他に選択肢はあり得ない」候補地、エヴァートンのクーマン監督は、早くから歓迎の意を表している。シーズン最終戦、ユナイテッドのキャプテンマークをつけて先発したルーニーに全盛期の面影などなく、動きに精彩を欠き、それどころかキック一つにももどかしいほど力強さが感じられなかった。ゲーム終了間近、16歳の超新星アンヘル・ゴメスと交代した瞬間は、切ないほど映画のワンシーンさながらに目に焼き付いた。筆者はそれをモウリーニョの大いなる親心、メッセージと受け取ったのだが・・・・「さあどうする、残りたいのならそれでいい。あるいはこれを引き時のサインと受け止めるどうかはすべて君次第だ」 ▽もう一つの重大な「to be or not to be」は、筆者の予想通りに一昨日30日、決着した。アーセン・ヴェンゲル、アーセナル監督として続投の契約更新。「2年」は諸々の状況を考えて妥当な線だろう(正式発表は昨日)。ただ、この件については一言申し添えておきたい。なにゆえ、ヴェンゲルは自らの去就問題をシーズン最終戦(FAカップ決勝)後まで引き延ばしたのか。自身、その「不確かさ」がチームパフォーマンスにも影響してきたと認めながらもである。対チェルシー・FAカップ決勝の前日、彼はいささか唐突に不快感を口にした。「礼を失してはいないか」。もちろん、それが直接向かう先はこの数か月間“WEXIT”(英国のEU脱退:BREXITにちなんだ「ヴェンゲルの退場」)を盛んにアジテートしてきた一部サポーターたちだったろう。悲しかった。“彼ら”は何もわかってくれていなかった、アーセン・ヴェンゲルという指導者がそれまでのアーセナルをいかに変え、ひいては、いかにイングランドのフットボール全体に“革命”をもたらしたかについて。ヴェンゲルは今一度“彼ら”にそれを思い起こしてほしかったに違いない。 ▽「革命」とは何か。こう問われてすぐに思い当たる人は相当のプレミア通・・・・というよりも、ヴェンゲル到来以前から少なくとも今世紀に入って数年を経るまで“観続けて”きた人でなければ、明確に答えを導き出せないかもしれない。今回はあえて「じっくり考えていただくため」に答えを差し控えよう。ヒントをいくつか。当初よく言われてきた「フィットネス強化のための新機軸、特に食餌法」などではない。それならすでにアリーゴ・サッキらを中心にセリエAで実践されてきた、すなわちヴェンゲル・オリジナルでも何でもないからだ。決め手となるヒントは、ちょうどあの「インヴィンシブルズ(シーズン無敗優勝を達成したチーム)」の直前に、ハイベリー(当時のアーセナル本拠地)にやってきたプレーヤーたちにある。彼らがそれまでどんなプレーヤーだったか、ヴェンゲルが彼らに期待して誘導していったか。その具体的手法と、それがもたらした果実、言い換えれば戦術上の新コンセプト。いかが? 戦術論がメシよりも好きな(?)方々ならわからないはずはないのだが・・・・それとも今や事実上当たり前になってしまって気が付かないかも? ▽さて、もしもアーセナルがFAカップ決勝で“失敗”していたら、アーセン・ヴェンゲルの契約更新はなかったかもという疑問も、まだ少しは引っかかっているかもしれない。筆者はそもそも、少なくともアーセナル内部に限ればその懸念などなかったと信じているが、「Time For Change(この際心機一転)」に傾いていた一部(主にサポーターの)セクションでなら多分に現実的な展望だったはず。実は、晴れてFAカップを手にした今でさえ、「大変なのはこれから。2年の猶予が短縮されてしかるべき可能性は十分にある」との冷めた声は燻っている。サポーターではないがその代表格となる不安と提言をものしているのが、ギャリー・リネカーその人だ。「アーセナルははるかに後手に回っている。ヴェンゲルの方針が今後も続くようなら、いつまで経ってもチェルシーやシティー、ユナイテッドらに追いつけないだろう」要するに補強戦略が“甘い”と言いたいのだろう。チェルシーらに匹敵する散財をして世界的スーパースター級を狩り集めるのでなければ、現状維持が精いっぱいだというのだ。現状では哀しいかな正論かもしれない。しかし、筆者にはどうしてもそこに根源的な違和感を覚えてしまう。おそらくはヴェンゲルも同じだろう。 ▽アーセナルの現筆頭株主、アメリカンスポーツの大君のひとり、スタン・クローンキーは、一途なほどヴェンゲルの手腕に最大級の賛辞を絶やすことはない。一時“業を煮やしかけた”ナンバー2株主、ウズベキスタン出身のアライシャー・ユスマノフも、ヴェンゲルに対する信頼度はクローンキーに負けず劣らず、全面的支援を改めて約束している。いざとなれば“そこそこのカネ”は引き出せる態勢にはあるということだ。だが、肝心のヴェンゲル自身がどれをどこまで受け容れて“活用”するかとなると・・・・あるいはそこのところで「Time For Change」の合言葉が働くのか。だとしたら・・・・? インヴィンシブルの元メンバー、マーティン・キーオンは、現二大エースのアレクシス・サンチェスとメスート・エジルを「甘やかされている」と断じ、この際“売却”してより将来的にヴェンゲル・アーセナルを支えるに足る若い逸材を、と提唱している。例えば、リヨンのアレクサンドル・ラカゼット、そしてモナコのワンダーボーイ“アンリの再来”キリアン・ムバッパ。それでFFP問題(収支の黒字化)も対処できる。あくまでも「例えば」だが、いずれにせよ、このオフ、アーセナル周辺は忙しくなること必至だ。ちなみに現在、移籍志願を表明したレスターのマーレズの名が早速俎上に上がっている。ヴェンゲルが腹をくくって主導実践する(かもしれない) Time For Change。楽しみではあるが、さて鬼が出るか蛇が出るか。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.06.01 12:30 Thu
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【東本貢司のFCUK!】多すぎるイベントが孕む不安

▽渡航の予定はない。それでも思わず背筋に冷たいものが走った。実にいたましく、かつ悩ましいことである。このタイミングで発生したマンチェスターのテロ事件。ターミナルのヴィクトリア駅前にある「マンチェスター・アリーナ」は、音楽コンサートだけでなく、テニスなどのスポーツイベントも催される屋内多目的施設だ。ISがバックにいようが何だろうが、何か荒っぽい“リハーサル”もあるいは“警告”の臭いもする。すぐにウェンブリーでFAカップ決勝が行われるし、チャンピオンズ決勝はカーディフのミレニアムが舞台だ。と思わせておいてヨーロッパリーグ決勝の地、ストックホルムを標的にする可能性もある。たった一人の自爆でも、イベント終了後に観客がどっとあふれる場外を狙われてはたまらない。多数の死者を出したテロ事件発生の報を受けて即、ウェンブリーのセキュリティー強化を打ち出したのは当然。あの、パリ同時多発テロ、サン・ドニ事件を思い出す。ドルトムント一行のバスに災禍を見舞った“模倣犯”の心配もしなければならない。 ▽そんな中、アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドはシーズンを締めくくる“重要きわまりないラストマッチ”に臨む。両者はともに“すでに”ヨーロッパリーグ出場権を確保している。FAカップのアーセナルは勝っても負けても“収穫”に変化が生じない。だが、悩ましいのはアーセン・ヴェンゲルの、あたかもタイトルを獲れなければ身を引くと言わんばかりの宣言、「カップファイナル後に“結論”を出す」。そして「たとえ(アヤックスに)敗れても失敗のシーズンだったとは思わない」という、ジョゼ・モウリーニョの“自己評価”。ユナイテッドの勝ち負けには、この世界では“天地”の違いほどに相当する“十字架”がかかっているとはいえ、両者がともに失意を引きずる羽目になった場合、来シーズンに向けての展望、強化に甚大な影響を及ぼすのは、ほぼ衆目の一致するところだからだ。だからこそ、もし、ゲームに、プレーに集中できなくなるかもしれない脅威が漂っているこの状況が実に悩ましい。逆に“言い訳”の端くれにはなる? 冗談じゃない。すでにアンダーエイジの大会も始まっている。“標的”の行く先は予測すらつかないのだ。 ▽不安ばかりにとらわれていても仕方がない。冷静に状況を“斟酌(「忖度」じゃない!)”する立場を再確認しよう。アーセナルとユナイテッドはともに「勝つ」。希望的観測ではない。かかっているものの重みが違うからだ。ユナイテッドのクラブ・シーズン最優秀プレーヤーに選ばれたばかりのアンデル・エレーラは言う。「勝ってこそだ。それで我々は前を向ける。もしそうならなかったら、なんて考える余裕はあり得ない」。それはチームメイトの誰しもが同じ思いだろう。負傷中のイブラヒモヴィッチも何くれとチームの意識向上に余念がないという。チャンピオンズ“復帰”が叶わなくなった場合、ハメス・ロドリゲスやアントワン・グリーズマンが来てくれないかもしれない、などという心配など、ただ周辺が騒いでいるだけにすぎない。いい加減にしろ、である。あえて言うならば、ジョゼのためですらない、ジョシュ・ハロップ、アンヘル・ゴメスら次代のホープのために、彼らは「勝つ」のである。新星たちの出番はまずありえない。しかし、たとえストックホルムに帯同せずとも、ハートとスピリットはともにある。それがチームというものなのだ。 ▽アーセナルについても、傍であれこれ言うほど“心配”はしていない。彼らはヴェンゲルのためにではなく、クラブの明日のために「勝つ」。仮にも、サンチェスの、エジルの心に何等かの躊躇、「もし」の腹積もりがあるのだとしたら、すでに彼らはガナーズの一員でも何でもなくなっている。そもそも、プロではない。コシェルニーの出場不能もむしろ団結と必勝の気概の掛け替えのない力になる。例えば、リーグ最終戦、退団するジョン・テリーの「26分の交代」が、賭け絡みの“出来レース”ではなかったかという“冷やかし”など、間違っても真に受けてはならない。せいぜい、ブリティッシュ流ジョークで笑って済ませればいい。「言霊」とか「事前の禁句」というものは、日本人以外には一切通用しない。あえて今回はエモーショナルな物言いをしているが、それはとりもなおさず、このスポーツが「個(の力)」で成り立っているのではない、ということを再確認してもらいたいからだ。誰が抜けて誰が入ってこようと、些末な問題でしかない。どうか、ファンを自負する皆さんには、知ったかぶりの他人事めいた評論に惑わされないでいただきたい。 ▽しかし、それにしても気が付くと、フットボールイベントがやたらと多すぎはしないだろうか。プレーヤーたちにしてもそうだが、ファン(観客/観覧者)にしたところでほとんど目が移り、それこそ目が回る。派生する問題も少なくないIT業界に比べて、世界に冠たる優良で商業的うまみも大きい業界だからこそ、統括/運営母体はもう少し冷静に足元を見直してもらいたいと思うのだが・・・・。独り勝ちになってしまわない配慮を、必要以上にでも“斟酌”していってもらえないのかと危惧するのは筆者だけなのだろうか。グローバル・テロリズムの標的になりやすい状況について、今こそ立ち止まって見つめ直すべきではないのか。ならば、例えば、W杯、ユーロ、ヨーロッパ交流リーグなどの国際大会の拡大ではなく「縮小」こそ、その確たるメッセージになりえないだろうか。まるでゲーム感覚さながらに、戦術やスキルや移籍金の額やクラブの資産価値やらを語る風潮が、実は最近とみに鬱陶しくなってきてはいないか。マンチェスター・アリーナの悲惨で許しがたい事件を耳にした今、そのことに改めて強い疑問が湧き上がる思いである。是非に善処を。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.05.24 12:05 Wed
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