【六川亨の日本サッカー見聞録】天皇杯決勝は好対称なチームの激突に2016.12.29 19:30 Thu

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▽第96回天皇杯決勝は、6大会ぶり5度目の優勝を狙う鹿島と、初のファイナリストになった川崎Fとの顔合わせになった。準決勝の鹿島対横浜FM、川崎F対大宮の準決勝2試合は、いずれも後者が試合の主導権を握ったものの、勝ち残ったのは前者という皮肉な結果になった。

▽横浜FMは前半30分過ぎまでに齋藤のドリブル突破などから決定機をつかんだものの、前田のシュートはGK曽ヶ端に阻まれ、富樫のシュートは枠を捉えられずに好機を生かせない。齋藤は鹿島にとって脅威になっていただけに、彼にボールを集めるのは当然の策だが、それを利用するあたり、試合巧者の鹿島らしい。

▽鹿島は41分に齋藤へのパスをカットした永木から赤崎、柴崎と素早くつなぐカウンターから、最後は土居が頭で押し込んで先制した。横浜FMは後半に中村を投入して反撃を試みるも、後半28分にDF新井がビルドアップのパスを痛恨のミスで永木にプレゼント。これを柴崎、鈴木とつながれて追加点を奪われた。その2分前には金井が同点弾を決めながら、オフサイドの判定で取り消されたのも痛かった。

▽大宮は今季リーグ5位の躍進につながった攻から守への素早い切り替えと、囲い込む守備で川崎Fにサッカーをやらせなかった。それは大島が投入されても変わらず、ポストを叩いた泉澤のシュートか、フリーにもかかわらずゴール枠を捉えられなかったムルジャのシュートが決まっていれば勝てたかもしれない試合だった。

▽終了間際に右CKからのこぼれ球を、最後は谷口が押し込んで決勝点としたが、これだけ攻撃に精彩を欠き、何もできない川崎Fを見るのは初めて。それほど、大宮のサッカーは素晴らしかった。

▽ただ、決勝戦の顔合わせとしては、堅守速攻の鹿島対パスサッカーによる攻撃的な川崎Fという対照的なチーム同士の激突の方が面白いかもしれない。両者はCS準決勝でも対戦し、金崎の決勝ヘッドで鹿島が勝ち進んだが、ボールポゼッションで川崎Fが上回りながらも、決定機の数は互角だった。今シーズンでチームを離れる風間監督とFW大久保が初タイトルを置き土産にできるか。それとも鹿島が天皇杯の優勝回数を伸ばして東京VやG大阪と並ぶのか。決勝戦は元日の14時に吹田スタジアムでキックオフとなる。

▽最後に個人的なことだが、天皇杯の決勝は大学生の4年間と社会人になってからの36年間、計40年間にわたりスタジアムで観戦・取材してきた。さすがに今回は元日に吹田まで日帰り取材するのは断念して、テレビ観戦の予定だが、改めて国立競技場のロスト感を覚えずにはいられない。

▽今年のコラムもこれが最後になります。1年間お世話になり、ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。それでは良いお正月をお過ごしください。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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【六川亨の日本サッカー見聞録】U-17W杯で日本はフランスに完敗。見たい試合を探す苦労を痛感

▽個人的な感想ではあるが、これだけ日本のサッカーはあらゆるカテゴリーで活躍しているのだから、W杯という世界大会は公共放送であるNHKに、BSでもいいからライブ中継して欲しいということだ。 ▽今シーズンからダ・ゾーンに加入し、ルヴァン杯などを視聴するためスカパー! とも契約した。さらにACLを見るには日テレとの契約視聴が必要だ。そして昨日のインドで開催中のU-17W杯は、フジテレビのオンデマンドと契約しないと見られない。これほどストレスのかかる環境は、利用者にとって負担になるのではないだろうか。 ▽こうしたジレンマを解消すべく、U-17W杯の日本対フランス戦は、仕事仲間がネットで調べ、ライブ中継しているサッカー居酒屋を探し出し、昨夜は西武池袋線の中村橋にあるお店で同業者や旧知のサッカー解説者である川勝良一氏や代理人のI氏らとともに観戦した。いつもは現場にいることが多いものの、こうしてテレビ観戦すると、今回と同じ環境にありながら、現地に赴き、あるいはスポーツバーで声援を送るファン・サポーターの熱意を改めて感じる貴重な経験をできた。 ▽ただ、試合は日本の完敗だった。期待の久保建英は相手のハードマークに持ち味を消され、平川怜もゲームを作ることができなかった。給水時間があったため、かなり高温多湿の劣悪な試合環境だったことは推測される。 ▽フランスとは2015年の国際大会で勝っていたものの、今回は体のぶつけ合い、ハリルホジッチ監督の言うデュエルで圧倒された。「これほどまで体をぶつけてくるのか」という激しさ。元々、身体能力で凌駕しているフランスが本気で挑んで来る。それだけ日本のスキルを消すにはデュエルで勝負するのが効果的と判断したのだろう。 ▽それは今回のU-17W杯だけでなく、なでしこジャパンが現在は劣勢を余儀なくされていることにもつながる。日本のスキルを消すにはフィジカルで勝負する――だからこそハリルホジッチ監督はデュエルや体脂肪率にこだわるのだろう。 ▽話をフランス戦に戻すと、欧州選手権の得点王であるグイリに2ゴールを奪われた。左サイドからの突破を得意にして、日本は開始直後から何度も決定機を作られた。一瞬にしてトップスピードにギアアップする瞬間的な速さに、日本のDF陣は対応できなかった。シュートの技術もアイデアが抱負で、決まらなかったもののアウトサイドで狙ったり、右足インフロントで巻くようなシュートで右上スミを狙ったりするなど、17歳以下とは思えないクレバーな選手だった。恐らく次代のフランス代表を担う逸材だろう。 ▽対する日本は、最終戦がニューカレドニアということもあり、グループ2位通過はほぼ確定だろう。山場となる決勝トーナメントの相手は、現在のところフランスと並んで優勝候補のイングランドが有力だ。そして、ここを突破できれば一気にファイナリスト進出も見えてくる。そのためにも、久保の強気のプレーに期待したい。 ▽それにしても、NHKが中継しないのは残念でならない。 <hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.10.12 17:16 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】注目度の低いルヴァン杯。優勝チームにはACLの出場権を

▽昨日はルヴァン杯準決勝第1戦の2試合が行われ、仙台は川崎Fに3-2と先勝し、C大阪とG大阪は2-2で引き分けた。第2戦は3日後の8日に行われる。 ▽ところで、昨日準決勝が開催されたことを、Jリーグ関係者と両チームのファン・サポーターや関係者以外、どれだけ知っていただろうか。日本代表がキャンプ中で、U―17日本代表もインドでのW杯を控えているとはいえ、事前の告知もほとんどなく注目度も低い。それが決勝戦以外は盛り上がりに欠けるルヴァン杯とはいえ、寂しい限りだ。 ▽それでもC大阪対G大阪戦には21,800人、仙台対川崎F戦には8,382人の観衆が詰めかけたのだからさすがと言える。G大阪以外は初タイトルだけに、ファン・サポーターの期待の表れだろう。 ▽さて、これは今年に限った話ではなく、ルヴァン杯をグループリーグからいかに盛り上げるかは数年来の課題でもあった。リーグ戦により試合数を増やすことで入場料収入を確保したいという狙いは分かるが、照明設備を含めたスタジアムの使用料、警備員やアルバイトの確保、警察や救急車の手配など、それこそクラブスタッフは1日がかりの大イベントである。こうした諸々の経費を入場料収入から差し引いて黒字になっているのか、はなはだ疑問だ。 ▽だからこそ、J2にも門戸を開くことは躊躇われるのだろう。来シーズンからは、ACL出場の4(3)チームを引いたJ1の14チームに、前年のJ1リーグを16位と17位で終え降格した、J2の2チームを加えた16チームを4チームずつ4ブロックに分けて、ホーム&アウェーの予選リーグを行う。これなら今年のような7チームのリーグ戦(1回戦)で、ホーム開催かアウェー開催かで不公平感が出ることはなくなるだろう。 ▽とはいえ、リーグ戦で下位に低迷するチームはルヴァン杯で主力を温存せざるを得ないケースは避けられないだろう。まして来年はロシアW杯があり、Jリーグは2月17日に開幕と早められるものの、今年以上の過密日程は避けられない。 ▽大会のスリム化を図るなら、J1の14チームないしJ2の2チームを加えた16チームによるトーナメント戦しかないだろう。ACL出場の4チームは準決勝から加え、改めて抽選でドローを決め、準々決勝を2回行うというパターンだ。 ▽そして大会の価値を上げるのであれば、優勝チームはスルガ銀行チャンピオンシップという“借りてきたような“大会ではなく、ACLの出場権を与えるべきである。幸い近年の天皇杯はJ1クラブが優勝しているものの、ACLで優勝を狙うならJ1リーグの2チームとルヴァン杯優勝1チーム、そしてリーグ戦3位のチームがプレーオフ進出という現行の方式だ。スルガ銀行は天皇杯を特別協賛しているのだから、天皇杯優勝チームこそがスルガ銀行チャンピオンシップに出場するのがふさわしいのではないかと思うが、いかがだろうか。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.10.05 16:45 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】10月の代表メンバー発表は少しのサプライズ。国内組のサバイバルのスタート

▽来月6日のニュージーランド戦(豊田スタジアム)と10日のハイチ戦(日産スタジアム)の2試合に臨む日本代表のメンバーが発表された。ほぼ予想通りで、サプライズがあるとすれば左SBに車屋(川崎F)が初招集されたことと、ボランチに遠藤航(浦和)が復帰したことだろうか。 ▽わざわざ時差のある日本に、これまで実績があり、現在好調な岡崎(レスター)と、ケガをした長谷部(フランクフルト)、そして新天地を求めながら負傷し、なおかつ大地震に見舞われてコンディションに不安を抱える本田(パチューカ)を呼ばなかったのは当然だろう。 ▽現在の日本代表で選手層が薄いのはCBと両SBだ。森重(FC東京)は負傷で長期離脱し、丸山(FC東京)もチームの不振によりプレーに精彩を欠いている。やっと彼らの代わりに吉田(サウサンプトン)の相棒として昌子(鹿島)が台頭してきた。そのバックアッパーとして植田(鹿島)と三浦(G大阪)が呼ばれてきたが、今回の招集で植田が一歩リードしたかもしれない。 ▽そして車屋である。長友(インテル)の控えとして酒井高(ハンブルガーSV)がいるものの、ハリルホジッチ監督の求める純粋なレフティーではない。長友の後継者探しは急務であり、問題はそれを「誰にするか」だった。 ▽今回は車屋に白羽の矢が立ったが、練習でアピールして「チャンスをつかんで欲しい」というハリルホジッチ監督の期待に応えられるかどうか。まだスタートラインに立ったに過ぎないため、プレーはもちろんのこと、コミュニケーション能力や連日のミーティングに適応できるかどうかが注目される。 ▽遠藤航について指揮官は「ボランチにパワーをつけてもらいたいので遠藤を入れた」と説明した。彼は湘南時代から将来を嘱望された選手だ。しかし、浦和に移籍してからは、ボランチでもCBでも、運動量とスプリント回数の少なさが気になっていた。これは遠藤航個人の責任ではなく、ボールポゼッションで相手を凌駕する浦和のプレースタイルにも原因がある。 ▽個人的に、遠藤航の将来を考えるなら、阿部のポジションで起用し、同じ役割を担わせて欲しいと思っていた。果たしてハリルホジッチ監督の下で、「パワー」を発揮できるのかどうか、こちらも見物である。 ▽日本代表のテストマッチは10月に国内で行う2試合と11月に海外で行う2試合、そして12月に国内組で臨むEAFF E-1サッカー選手権(どうも馴染みがない。東アジア杯でいいのではないだろうか)、そして来年3月の国際マッチデーとなっている(もちろんW杯直前にも試合はあるはず)。 ▽そこから逆算して推測すると、11月上旬の海外遠征は、Jリーグは佳境を迎えるだけに国内組よりも海外組を優先することが濃厚だろう。今回はケガで招集を見送った柴崎(ヘタフェ)を筆頭に、森岡(メフェレン)や中島(ポルティモネンセ)らがコンスタントに活躍していれば招集される可能性もある。 ▽それだけに、10月の試合は国内組の攻撃陣にとって、アピールの重要性は増してくる。その筆頭が杉本(C大阪)ということになるだろう。大迫のバックアッパーとして存在感を残せるか。例えゴールという結果を出せなくても、国内組の最終選考の場となる12月の東アジア杯で再び「もう一度見たい」と指揮官に再招集を思わせるプレーをできるのか。 ▽攻撃陣は「狭き門」であるだけに、今回招集された武藤(マインツ)も含め、出番が与えられたらニュージーランドやハイチ相手にどんなプレーをするのか楽しみでもある。 ▽最後に、スポーツ紙の報道によると、2020年の東京五輪の監督は元広島の森保一氏でほぼ決まりだそうだ。早ければ10月の理事会で承認されるという。もしもそれが事実なら、すぐにでも日本代表のコーチ兼任にして、12月の東アジア杯のキャンプはA代表と五輪候補であるU-20日本代表の合同で実施してはいかがだろうか。 ▽東アジア杯をU-20日本代表で臨むことはハリルホジッチ監督も拒絶するだろう。その代わり、キャンプを合同で実施することで、小野や稲本が早い段階でA代表に引き上げられたような“トルシエ効果”も見込めるかもしれない。JFA(日本サッカー協会)には一考して欲しいプランだし、取材する記者はもちろん、ファンもワクワクする合宿になるはずだ。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.09.29 12:00 Fri
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【六川亨の日本サッカー見聞録】退場者を間違える誤審に改めて主審の苦労を痛感

▽今年から開催されているレフェリーブリーフィングの第5回目が9月21日に開催された。今回は冒頭に小川審判委員長から、この会を催す趣旨が改めて紹介された。それは次の3点である。 1)クラブと審判アセッサー間で意見交換。 2)クラブによるレフェリングに関するフィードバック。 3)メディア関係者へのレフェリング説明会 ▽と、いうものだ。なぜ改めて趣旨を説明したかというと、メディア関係者に、表現について配慮を求めるためだった。覚えている読者もいるかもしれないが、8月16日のJ2リーグ第28節の町田対名古屋戦で、PR(プロフェッショナルレフェリー)の家本政明主審が誤審をした。 ▽試合終了間際の89分、名古屋の青木がこぼれ球を拾いゴールへ突進し、GKと1対1になりかけた。すると町田DF深津と奥山が両側から挟むように体を寄せ、深津が足を引っ掛けて青木を倒した。走り寄った家本主審は即座にレッドカードを取り出しが、彼がカードを突きつけたのはプレーに関与していないMF平戸だった。 ▽審判委員会のヒアリングによると、家本主審は「誰がやったのか」と聞いたところ、町田の選手からは、「それは主審が決めて下さい」という返事だったそうだ。試合後、キャプテンでもある深津は「自分がやった」と告白したが、すでに試合は成立している。 ▽小川審判委員長は、「犯人捜しはしない」と審判委員会の基本的立場を述べつつ、メディアに要請したのは、「誤審」という表記についてだった。誤審であることは認めるものの、家本主審の子供が学校で嫌がらせを受け、泣きながら帰宅したことを明かした上で、メディアに配慮を求めたのだった。 ▽過去には08年4月6日のJ2第6節、甲府対C大阪戦で56分に西村雄一主審からレッドカードを提示されたDF池端が退場となったが、後日行われた規律委員会で“人違い”であったと判断され、本来退場処分を受けるべきだったGK桜井に退場処分が付け替えられたことがある。 ▽Jリーグではそれに続く2度目の誤審で、今後はルヴァン杯のように追加副審を置くか、VAR(ビデオアシスタントレフェリー)を導入しないと対応は難しいと審判4人制の限界を話していた。 ▽2日後の規律委員会では「警告、退場、出場停止処分」の懲罰の運用上、平戸には「退場処分及び出場停止処分を科さないこととする」とし、「本来退場処分を受けるべきであった深津選手に退場処分を付け替え、1試合の出場停止処分を科す」と訂正。ただし、サッカー競技規則第5条で主審の決定「プレーに関する事実についての主審の決定は最終である」ことから公式記録は変更されず、平戸の退場処分は残ったままだ。 ▽この試合で返す返すも残念なのは、深津が素直に自分の非を認めていれば、違った意味で注目を集めたかもしれないということだ。そして、この件を聞きながら、JSL(日本サッカーリーグ)時代のあるエピソードを思い出した。 ▽古河(現ジェフ千葉)のある選手が、特定の主審からよくイエローカードをもらった。自分では反則ではないと思っても警告されてしまう。あまりにも厳しいジャッジに、意を決し主審に理由を聞いてみた。すると主審は「背番号●はダーティーなプレーヤーだから気をつけろと先輩から聞いている」と答えたそうだ。 ▽確かに自分の背番号ではある。そこで念のために選手の名前を聞いたところ、それは自分の前に同じ背番号でプレーしていた先輩で、すでに引退していた。そのことを主審に伝えたところ、以後はイエローカードもめっきり減ったという。 ▽これは先入観の悪しき例で、今日のブリーフィングでも小川審判委員長は「先入観を持って笛を吹くことはない」と強調していた。ただ、先入観と予備知識の違いはどこにあるのかを判断するのは難しいところではないだろうか。 ▽かつてJリーグの審判技術向上のため招かれたレスリー・モットラム主審は、離日の際の会見で、「Aというチームは主審が背中を向けていたり、ボールがないところでの反則が巧妙なので気を遣った」と述懐していた。それがAというチームの伝統であり強さかもしれないが、今回の件も含め、改めて主審は「労多くして功少なし」と実感せずにはいられなかった。 2017.09.21 21:00 Thu
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【六川亨の日本サッカー見聞録】殿堂掲額式典で小倉最高顧問が明かしたジョホールバル秘話

▽毎年9月10日はJFA(日本サッカー協会)の創立記念日だ。今年で96周年となったが、同日は日本サッカー殿堂掲額式典の行われる日でもある。第14回となる今年は、特別選考としてJSL(日本サッカーリーグ)で日産自動車に数々のタイトルをもたらして黄金時代を築き、Jリーグでは横浜フリューゲルスで天皇杯を制し、その後は日本代表の監督を務めた加茂周氏が選出された。加茂さんについては、また別の機会でエピソードを紹介したいと思う。 ▽そしてもう一人はカメラマンの今井恭司氏である。サッカーカメラマンの草分け的存在で、70年代から日本代表や日本ユース代表の試合を取材にアジアはもちろん、ヨーロッパまで足を伸ばして貴重な写真の数々をサッカーマガジン誌に発表してきた。 ▽懐かしいVTRを交えての掲額式典は1時間ほどで終わり、その後はラウンジに移動しての歓談となった。今井さんとは、日本代表の取材に行くと、シュート練習の際はゴール裏で球拾いをした思い出話に花が咲いた。当時の代表チームは監督とコーチ、マッサーと協会事務員に、スポーツメーカーから派遣された5人くらいしかスタッフはいなかったからだ。 ▽いまと比べると隔世の感があるが、当時の方が選手との距離も近かったのは言うまでもない。そんな昔話で当時を振り返っていると、自然にロシアW杯杯アジア最終予選のオーストラリア戦の話しになった。すると小倉純二JFA最高顧問が、97年のフランスW杯アジア最終予選での隠れたエピソードを教えてくれた。 ▽当時を知らない読者がいるかもしれないので簡単に紹介しよう。W杯予選は5カ国2グループに分かれ、ホーム・アンド・アウェーのリーグ戦で、各組1位がストレートイン。2位同士が第3代表決定戦に回り、勝てば本大会に出場し、敗れたチームはオーストラリアとのプレーオフに最後のチャンスを賭けることになる。 ▽B組の日本は残り2試合で3位だったが、11月1日のアウェー韓国戦に勝ち、勝点を10に伸ばした。そして翌日、2位のUAEがウズベキスタンと0-0のドローに終わったため、勝点は9にとどまる。この結果、日本は再び2位に浮上し、地力での出場権獲得の可能性が復活した。 ▽このため、FIFA(国際サッカー連盟)は、JFAに対して、「第3代表決定戦の希望地はどこか」と聞いてきたそうだ。そこで小倉専務理事(当時)は、「中東(A組はサウジとイランに可能性があった)と極東にとって中間距離のマレーシアでの開催を希望する」と答えた。 ▽そしてすぐさまマレーシア協会に連絡を取り、スタジアムの確保を依頼したところ、第3代表決定戦の行われる11月16日は「カップ戦のため、クアラルンプールのスタジアムはどこも予定が入って満杯だ。すでに負けているジョホールバルなら空いている」との返事だった。小倉専務理事にとって「初めて聞いた都市名で、どこにあるのかも知らなかった」ものの、二つ返事でジョホールバルを押さえてもらうよう依頼した。 ▽一方のA組は、1試合を残しイランが勝点12の1位、サウジが同11で続いていた。サウジが第3代表決定戦で希望したのは、自国と橋でつながっている隣国のバーレーンだった。ところがイランは、同じ中東に位置しながら、アラブ圏ではない。他の国々がアラビア語なのに対し、ペルシャ語と独自の言語と文化を持っている。宗教も、同じイスラム教でもサウジはスンニ派が多数を占め、イランはシーア派とこちらも相違がある。 ▽そうした事情から、イランはバーレーンでの開催に難色を示し、マレーシア開催を支持した。もしかしたら1位抜けする予定だったかもしれないし、第3代表決定戦に回っても日本なら勝てると思ったのかもしれない。 ▽11月7日、FIFAは第3代表決定戦をマレーシアで開催することを決定。その翌日、日本はホームでカザフスタンに5-1で大勝し、ジョホールバル行きを決めた。そしてA組では、11月7日にイランがカタールに0-2で敗れ、勝点は12でストップ。5日後の試合でサウジがカタールに1-0で勝ったため、勝点を14に伸ばしてフランス行きを決めた。 ▽決戦の地であるジョホールバルは、首都クアラルンプールから331キロ離れ、クルマで移動すると3時間28分かかる。むしろシンガポールからは23・3キロで、国境越えがあるとはいえクルマで42分と近距離だ。「それを知らずにイランはクアラルンプール経由で移動したので、その点も日本にとってアドバンテージになったかもしれない」と小倉最高顧問。 ▽岡野のVゴールで日本はW杯初出場を果たした。そしてオーストラリアとのプレーオフに回ったイランも78年以来となる2度目のW杯出場を決めたのだった。<hr>【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。 2017.09.14 16:20 Thu
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