【日本サッカー見聞録】ルヴァン杯MVPは時間が決めた?
2016.10.20 18:00 Thu
▽今週のコラムはメルマガに引き続き、YBCルヴァンカップ決勝の話題をピックアップしよう。この試合のMVPは途中出場からファーストタッチで浦和の同点弾を決めた李忠成だった。この1点がなければ延長やPK戦にはならず、G大阪が優勝していた可能性もあるだけに、価値ある同点ゴールと言える。
▽李忠成はPK戦でも4番手に登場し、呉屋のPK失敗に動ずることなく強シュートを右サイドに突き刺した。ただ、延長戦では2度の決定機に遭遇しながら、シュートをゴール枠に飛ばすことができなかった。どちらか1本でも決めていれば、文句なくMVPだけに惜しまれる。
▽それでも李忠成がMVPに選ばれたのは、同点ゴールの時間帯ではないだろうか。実は取材受付でIDカードをもらう際に、私ともう一人のベテラン記者の名前に蛍光マーカーで印がつけられていた。気になったので理由を聞いたところ、「大会MVPの候補を両チームから選出して欲しい」と言われて投票用紙を渡された。恐らく新聞社や通信社、そして専門誌の記者も投票したのだろう。
▽記者席に着くと、大会関係者が回収のための座席を確認し、「投票のリミットは後半の35分くらいです」と言う。そして試合は76分(後半31分)に李忠成の同点ゴールが生まれた。その時点ではまだ記入していなかったし、試合は1-1の同点になったため、両チームからMVP候補を選ぶのは至難の業。そこで試合終了まで待ってもらえないかと打診したところ、答えはNGとのこと。そこで仕方なく、浦和の候補は李忠成、G大阪は先制点を決めたアデミウソンがすでに交代で退いていたため、今野か井手口かで迷ったが、ニューヒーロー賞を獲得した井手口の名前を書いた。
▽最終的には大会関係者がPK戦も含めてMVPを決めたのだろうが、個人的には李忠成のゴールにつながるCKをお膳立てし、延長後半は体力を消耗してふらつきながらも果敢にサイドアタックを仕掛けた関根をMVPに推したい。今大会で浦和の攻撃を牽引したのは、この関根や駒井、高木らサイドアタッカーの活躍があったからだ。米倉や藤春との攻防は、決勝戦にふさわしい高レベルだったことを付け加えておこう。
▽記者会見場へ移動する際に、偶然にも上川元審判委員長と遭遇したので、米倉のプレーについて聞いたところ、「たぶん」と断った上で、「ズラタンも後ろ手で米倉選手のシャツを引っ張っていたのでしょう。だから佐藤主審は笛を吹かなかったのだと思います」と解説してくれた。まだまだ見方が甘いと痛感した次第である。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
▽李忠成はPK戦でも4番手に登場し、呉屋のPK失敗に動ずることなく強シュートを右サイドに突き刺した。ただ、延長戦では2度の決定機に遭遇しながら、シュートをゴール枠に飛ばすことができなかった。どちらか1本でも決めていれば、文句なくMVPだけに惜しまれる。
▽記者席に着くと、大会関係者が回収のための座席を確認し、「投票のリミットは後半の35分くらいです」と言う。そして試合は76分(後半31分)に李忠成の同点ゴールが生まれた。その時点ではまだ記入していなかったし、試合は1-1の同点になったため、両チームからMVP候補を選ぶのは至難の業。そこで試合終了まで待ってもらえないかと打診したところ、答えはNGとのこと。そこで仕方なく、浦和の候補は李忠成、G大阪は先制点を決めたアデミウソンがすでに交代で退いていたため、今野か井手口かで迷ったが、ニューヒーロー賞を獲得した井手口の名前を書いた。
▽最終的には大会関係者がPK戦も含めてMVPを決めたのだろうが、個人的には李忠成のゴールにつながるCKをお膳立てし、延長後半は体力を消耗してふらつきながらも果敢にサイドアタックを仕掛けた関根をMVPに推したい。今大会で浦和の攻撃を牽引したのは、この関根や駒井、高木らサイドアタッカーの活躍があったからだ。米倉や藤春との攻防は、決勝戦にふさわしい高レベルだったことを付け加えておこう。
▽そしてもう1点、この試合で気になったことがあった。それは84分にペナルティエリア左でボールをキープしたズラタンを、背後からマークしていた米倉が倒したものの、佐藤主審はファウルを取らずにプレー続行をうながしたことだ。ハリルホジッチ監督はデュエルを求め、村井チェアマンもタフな攻防を推奨する。それはそれで悪いことではないが、米倉のプレーはW杯予選では“アジアの笛”によりPKを取られないかと危惧したものだ。
▽記者会見場へ移動する際に、偶然にも上川元審判委員長と遭遇したので、米倉のプレーについて聞いたところ、「たぶん」と断った上で、「ズラタンも後ろ手で米倉選手のシャツを引っ張っていたのでしょう。だから佐藤主審は笛を吹かなかったのだと思います」と解説してくれた。まだまだ見方が甘いと痛感した次第である。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。
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