【東本貢司のFCUK!】結果は必ずしもすべてじゃない2016.10.13 11:15 Thu

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▽正直、鼻白む思いだ。ハリル・ジャパンが表面的にはもどかしいドローに終わった直後から、降って湧いたように「解任論」が噴出し始めた。それも、これまで「勝って嬉しい、負けて悲しい」程度だったはずの“素朴なファン(および、普段はさして関心を示さなかった人々)”たちからである。物事を判断する際には「わかってきた気がするとき」ほどむずかしい。慎重、熟考がないと底の浅い“結論めいたもの”に走ってしまうもの。ブラジルW杯前後辺りから、サムライブルーには異変が目立ち始めていた。主戦級が軒並み海外へと飛び出し、彼らのポテンシャルが国際的に認められ始めたことも、一種の逆作用を及ぼしているのかもしれない。「いつでも(代表に)合流すればそれなりのサッカーができる」ということは、裏を返せば「いつでも同じサッカーしかしない」ことになりかねない。おそらくハリルもそれを案じていた。果たして蓋を開けたW杯最終予選、苦戦の連続だ。そこで前半戦の天王山・対オーストラリアに「新路線」をぶつけてみた。そして・・・・。

▽皆まで言うまい。素人目にも「変えたな」と気づく節が見え、それが結果を伴ったとは見えにくい、わかりにくいとなると、すわ、批判の矢を浴びせかける。本当は、何がどう変わり、その意図が奈辺にあるのか説明もできない向きほど、その傾向が強くなる。要するに、増幅されたやり場のない苛立ちだ。何の話かって? もちろん「ハリルの更迭近し」の静かなる大合唱にも重大な関わりがある。が、ここではスリーライオンズ、そのイングランドのキャプテンをめぐる「不要か否か論」に触れていかなければならない。代表最多ゴール、フィールドプレーヤーとして代表最多キャップという蓄積の節目を越え、名実ともに「偉大」の領域に入ったはずのウェイン・ルーニーが、今、その立ち位置の危なっかしさに直面している。年齢的な衰えはほぼない。31歳でそれは酷というもの。その理由、こちらはハリル(の戦術的変更)とは違って、素人目にもわかりやすい。一言で言えば、適性と与えられたポジションとの齟齬―――あからさまに言うなら、現在のルーニーはナンバー10、アンカー、トップ下、それらのいずれにも適合しない存在になっているのだ。

▽しかも、何よりの問題は、ルーニー自身が「覚悟を示す方向性」を定めきれずに彷徨っている状態にあることだと思う。ジョゼ・モウリーニョの評価(ナンバー10、ストライカーの適性)や、今年のユーロでのもどかしいプレーには、彼にも忸怩たるものがあるはずだが、では何をどうすべきかの答えが(少なくとも今はまだ)見つけられていない。ポジションでの貢献度に疑問符をつけられ、ユナイテッド、代表でスタメンから落とされてもなお、彼は「上から与えられたポジションはどこでも厭わない」と、精神論でしか応えられていない。おそらくは、献身的に攻守に駆け回り続ける昨今のプレースタイルを今更変えることはできない、という強い思い、覚悟なのではあろう。そして、そのことがチームの戦術上、必ずしも有意義、良好に機能していないことも自覚しているからだろう。少々穿った言い方をすれば、彼は今、そんな「矛盾」を突き抜けて自らの存在を示すしかないと腹をくくっているようにも見える。ただ、その“兆し”はまだプラスに表面化していない。

▽口を開けば「結果(がすべて)」と人は簡単に言うが、多くの場合、それも自らの生業や糧に直結するわけでも何でもない物事(余暇)に関しては、その「原因」をよく吟味などしないものだ。ハリルが「変えようとした、もしくは試みている」としたら、ルーニーの場合は「変えられない(から何にでも従う)」ことになるが、いずれも「原因」はほぼ明白だろう。そして、もうお気づきだと思うが、ここには「戦術ありきか、プレーヤー(の能力)ありきか」という、素朴で根源的ともいえる命題が行きつ戻りつ彷徨っている。さあ、どなたかこの命題について、自信をもって答えられますか? 「時と場合による」では話にならない。なぜなら、ここには歴然たる前提:「ほとんどの該当するプレーヤーたちは能力的にも戦術眼的にもできあがっている」があるからだ。つまり「どちらか」が歩み寄らねば問題解決に至らないことになるが・・・・。と、ここまで言い及んでおきながら恐縮だが答えは見えない。苦し紛れだが「相性と時の運次第」でしばしご勘弁いただきたい。

▽ただ、突破口、ないしはそれにつながるヒントなら、よく目と耳を凝らして見つけることはできる。イングランドはFIFAランキング60位代のスロヴェニア相手に、シュートたったの3本でスコアレスドローに甘んじた。暫定の将、ギャレス・サウスゲイトが腹をくくった、ルーニーをスタメンから落とすというショック療法は逆効果に終わり、都落ちしたジョー・ハートのスーパーセーヴでやっと最低限の体面を繕えた格好。残り20分で登場したルーニーが何をどう思ったかは神のみぞ知る。豪州戦後、本田がつぶやいた「自分は下手になっているのかも」は、今後ハリル流に身を預けるという意思表示なのか、それとも・・・・。ただ、本稿の締めくくりにこれだけは言っておきたい。監督交代はリセット、ゼロからの出発と同義である。ここで断行してどんな結果が出ても、そこに評価する土台は薄い。成功も失敗も「たまたま」でしかない。たとえ仮にロシアを逸したとしても、次につながる明確な評価基準を築くことこそ何より肝要。W杯出場だけがすべてじゃない ?!

付記:現地最新報道は「サウスゲイト正式就任論」とそのサウスゲイトの「ルーニーは今後もキャプテン」声明を伝えています。

【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。

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【東本貢司のFCUK!】クラブレジェンドの“貫目”

▽ンゴロ・カンテについて、フランク・ランパードが「現役世界最高のミッドフィールダー」だと言ったらしい。納得するファンも多かろう、少なくとも「当たらずとも遠からず」といったところだろう。しかし、ちょっと待った。カンテがもしチェルシーのプレーヤーじゃなかったら? ランパードがわざわざそこまで声を上げて褒めちぎっただろうか。素直な感想にケチをつけるつもりは毛頭ないが、ひいき目の要素は押さえておくべきではないか。なぜなら、先のFAカップ戦でスタンフォード・ブリッジのファンがジョゼ・モウリーニョに対して冷やかし/侮蔑的なやじを飛ばした事実に思い至るからだ。二度の解任の際の後味の悪さや“口の悪さ”という瑕疵(?)は確かにあるにしろ、モウリーニョはチェルシーが果たした1部優勝5回のうち3つに導いた、史上最高の指導者ではないか。どうせならランパードもそのことに触れて「哀しい」とくらいは言ってほしかったが・・・・・。 ▽実際に、その“哀しみ”を口にした人物がいる。モウリーニョ・チェルシー時代に副官を任じたこともあり、クラブ史に名を残すレジェンドの一人、レイ・ウィルキンズだ。付け加えておくと、ウィルキンズは80年代のイングランド代表でキャプテンを務めたトッププレーヤーであり、そのうえ他ならぬマンチェスター・ユナイテッドに籍を置いていたこともある。彼曰く「チェルシーを最も輝かせてくれた男にそんな仕打ちをするとは恥ずかしい。もっと敬意を示すべきだろう」。そうなのだ。例えば、ジョージ・グレアム。ヴェンゲル到来の少し前、アーセナルに「ダブル」(リーグ&FAカップ)をもたらした名将に対し、リーズおよびスパーズの監督として彼がハイベリー(当時)に帰ってきたとき、ガナーズファンは万雷の拍手で迎えたものである。アーセナルから追われた理由が、北欧のプレーヤー2名獲得の際の「収賄(疑惑)」だったにもかかわらず。それは90年代に入ったばかりのことだった。まさか、チェルシーファンは忘れっぽいなんてことはあるまい? ▽それにひきかえ、レスターのサポーターは(まだ「間もない」とはいえ)ラニエリへの恩を熱く語り「哀しんで」いる。そこには決して、後を引き取ったクレイグ・シェイクスピアを腐す意味合いはなく、シェイクスピア自身もしっかりと敬意と“慕情”を隠さない。なぜ、ラニエリ解任後のレスターに快進撃が蘇ったのか。短絡な脳は「だから、ラニエリがダメだったってことだろう」と片付けるかもしれないが、それはまったく逆だ。ラニエリを去らせてしまった責任を感じて、シュマイケル、ヴァーディー以下が奮起したのであり、何よりもシェイクスピアが昨シーズン花開いた“ラニエリ流”の原点に戻った采配に徹しているからだ。間違っても、アーセナルをねじ伏せたリヴァプールが「不調」だったとは言わせない。レッズもハルも気圧されたのだ、レスター・イレヴンのラニエリに捧ぐ“回帰”の熱気と気迫に。セヴィージャも間の悪いときに乗り込んできたものである。ひょっとしたら「ラニエリ監督のままだったらよかったのに」と嘆いているかもしれない? ▽昨シーズンとはまるで人が変わったように、凡プレーを連発していたドリンクウォーターとフークスが、なぜか“直後”のリヴァプール戦から“復活”した。カンテの抜けた穴をまったく感じさせない、全軍躍動のオールコート・ディフェンスがさく裂する。急に得点感覚を取り戻したヴァーディーには“(移籍)価格”高騰の噂すら飛び交っている。ならば、なぜそれが“息をひそめて”いたのか。そう、彼らは予想外のチャンピオンになってしまった“重荷”に、奇妙な“とってつけのプライド”を身にまとおうとしたのではなかったか。恥ずかしいゲームはできない、相手は目の敵にして立ち向かってくるだろう、そのためには何かプラスαがなければ・・・・とか何とかの強迫観念に(無意識のうちに)とらわれていたのだろう。それが証拠に、チャンピオンズでは無心に「自分たちのプレーができて」(おや? どこかで聞いたセリフ)悠々と勝ち進んできたではないか。言葉は悪いが「負けてもともと」の肩の力が抜けた彼らの本領が“初体験の土俵”で生きたのだろう。 ▽だからこそ、ブッフォンは真っ先に「一番当たりたくないチーム」とレスター警戒を口にした。少しはプレミアを知るアンチェロッティも遠からずの気持ちかもしれない。奇跡の逆転劇の直後、まさかの対デポルティーヴォ敗戦に肩を落としているはずのルイス・エンリケには、レスターの「レ」の字も関係ないか。逆に、レスターが一番避けたい相手はモナコかもしれない。モナコにもプレッシャーに(良い意味で)鈍感なあっけらかんさを感じる(のは筆者だけ?)からだ。それを言えば、嗚呼、堅調に戻ったはずのシティーの不甲斐なさよ。あんな、マークの甘さでホームのモナコを黙らせることができると思ったのだろうか。グアルディオラもさぞやため息を・・・・その一方で、内心、あの“かっ飛び”核弾頭のムバッペをマジで獲りにいこうか、などと考えているかもしれない。おっと待った、せっかく、クラブレジェンド・アンリの「再来」といわれるからにはアーセナルに行ってもらわないとね。それがヴェンゲル続投のまたとない説得力になるやもしれないし・・・・!<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.03.16 11:15 Thu
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【東本貢司のFCUK!】ヴェンゲル放逐の大いなる罪

▽数字は正直だ。確かに、アウェイのファーストレッグと寸分違わない最終スコアは屈辱的だろう。だが、その(合計)「2-10」の“字面”にとらわれすぎてはいないか? 一部の“比較的まともな”メディアは、同点ゴール(レヴァンドフスキのPK)が決まった直後から、アーセナルイレヴンの戦意がみるみる萎んでいった結果、「17分間」に立て続けに4ゴールを失ったと“分析”している。要するに、ガナーズの面々のプレーぶりは明らかに(哀しむべきことに)投げやりになってしまっていたということだ。さらに、ヴェンゲル自身「(それまでは)台頭以上に戦っていた」と述べ、敵将アンチェロッティもそれを認めている。ならば、この大敗の責任は誰でもない、プレーヤーたちにこそあるはずだ。ところが、メディアも、大半のアーセナル・フェイスフル(=忠実なサポーター)も、口を揃え、さも当然のように「ヴェンゲルのクビ」を声高に叫ぶ。批判や揚げ足取りが仕事のメディアはともかく、ファンまで即物的なシロウトよろしく“背を向ける”とは驚いた。 ▽百歩譲って、この期に及んでは「リフレッシュ」、もしくはある元プレーヤー曰く「クレンジング」つまり「洗い清める」ための、監督交代要望も一つの手ではあろう。たまたまにしろ(?)、ラニエリを切った直後のレスターが蘇ったかのように連勝を収めた事例を見たばかりでもある。嗚呼、しかし、なんと思慮の浅きことだろうか。たとえ、もしも仮にここでヴェンゲルにご退場いただき、誰が引き継ごうと(おそらく、暫定的にスティーヴ・ボウルド辺りになるのだろう)、そして残り10戦あまりのリーグ戦で“快進撃”を続け、唯一の希望となったFAカップを制してみせたところで、ではそのあとはどうする? アレグリ? まさかとは思うが、彼をコンテの“二番煎じ”と錯覚はしていまいか? 少々うんざりした気分で「探索」してみた。そしてやっと見つけた。「現実」を最も正しく理解していると思われる意見を。アーセナル・レイディーズ(アーセナル女子チーム)の前キャプテン、レイチェル・ヤンキー。「ヴェンゲルを切って、それで誰が? 誰をつれてくるというの? 彼以外にこの逆風を受けて立つことができる人がどこにいると? ▽そして、何よりの“証明”は他でもない、アーセナル・ディフェンス陣からの“叫び”、「すべては自分たちの落ち度。我々は全員、アーセンを今までと変わらず、信頼し支持している」。なぜ、彼らがそう主張するのか。これもたまたまだが、拙訳『インヴィンシブル~アーセナルの奇跡』を読めば、その意味がわかるはずだ(これ、決して本の宣伝ではありません、念のため)。アーセン・ヴェンゲルという人物が、いかに優れた異能の指導者、メンターなのかを、彼らは誰よりも肌身をもって知っているからだ。では、なぜあの2003-04シーズンを最後に、ヴェンゲルのアーセナルがリーグ優勝に届かないままでいるのか。ロマン・アブラモヴィッチの登場がリーグの地平をそっくり変えてしまったからだ。誤解のないように言っておこう。決して、ラニアリ(!)が、ジョゼ・モウリーニョが、アンチェロッティ(!)が、監督としてヴェンゲルよりも優れていたからではない。決して彼らの“戦術(論)”がヴェンゲルのそれよりも優れていたからでもない。この単純明快な事実がわからない(ふりをしている?)評論家やメディアは「ヘボ」である。 ▽と、ここまで書き進めて、ふと「どうなったかな」とニューズサイトを覗いてみると・・・・とんでもないドラマの結末が飛び込んできた。終了2分前(正規タイム)からの3得点でバルセロナ、奇跡的な逆転勝利! 大したものだが、パリSGのディフェンスも何やってんだかと思う一方で、これじゃアーセナルへの風当たりもさらに・・・・? いいや、むしろ現実がもっとあからさまに明白になったと考えたい。先制点がスアレス、崖っぷちからの起死回生の2ゴール(うち1点はPK)がネイマール。いざとなった局面で“不可能”を何とか可能にしてしまう、名前も実績も、そして何より動いたカネも桁違いのプレーヤーの(それも複数の)存在・・・・。ヴェンゲルがそのポリシーにおいて決して良しとしない、出来上がった大物プレーヤーの大挙補強が、やはり最後にモノを言う“味気ない”時代。なるほど、グアルディオラがメッシを喉から手の出るほど欲しがるはずだ、ユナイテッドがロナウドを買い戻したくなるはず、それらをチェルシーが虎視眈々横取りを狙うはず? ▽だが、そんな阿漕な“物量作戦”がいつまでもまかり通っていいはずがない。もうお忘れか。“手作りミラクル”レスターの快挙をもろ手で喧伝した大はしゃぎぶりを、アカデミー上がり主体で長く牙城を守り抜いたファーギー・ユナイテッド、そのハイライトとしてドイツ中の精鋭を揃えたバイエルン(!)を劇的にうっちゃってみせて果たしたトレブルのしびれるような快感を、0-3から大豪ミランをイスタンブールに葬ったリヴァプールの気骨を、ほぼ「未完」と「無名」で始まったヴェンゲル・アーセナルの歴史的“インヴィンシブル”をーーー。そう、チェルシー、シティーにレアル、バルサ、パリSGに倣ったカネ太りチームを作って、それでヨーロッパを制したところで何か誇れるものがあるだろうか。以前にも述べたように、名前が入れ替わってもおかしくも何ともないチームばかりがチャンピオンズの歴代覇者に名を連ねて、何が名誉か。そのためにも、アーセン・ヴェンゲルにはその信念と信義を貫いてもらいたい。願わくば引き続き・・・・エミレイツにて。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.03.09 11:30 Thu
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【東本貢司のFCUK!】ミラクル・レスター“異聞”

▽ロンドン在住の友人に聞いてみた。「ラニエリは“プレーヤーたちの造反”でクビになった」という一部報道についてどう思う? 信憑性はあるのか? 返事は「・・・・に違いない、ってところだろうな」。つまり、メディアは昨今の“症例”に照らし合わせて「その可能性が大だと決めつけている」ということらしい。真相は今も藪の中だ。が、友人の印象はほぼ的を射ていると思う。彼はさらに言い及ぶ。「(ジェイミー)カラガーは歩く(フットボールの)辞書かもしれないが、真実を見通す感性はスッカスカだ」。カラガーはあまりにもフェアな、言い換えれば、ありきたりで平均的な考え方しかできない、と彼は言う。友人はとりたててレスターの内情に詳しいわけでも何でもないが、ラニエリ解任直後のリヴァプール戦勝利だけを取り上げても、カラガーの「不器用な見立て」は成立しないと言う。「(信用できなくなった)監督がいなくなっただけで、人が変わったように強いチームに変身するはずがない。ヤツらは怒ったんだ、捨て身でね。それがあの快勝だったのさ」 ▽なぜかほっとした。その通りだと思う。そして、遠い異国にいながらも、友人の見解を後押しする“証拠”を並べることだってできる。リヴァプール戦で昨シーズンのフォームを取り戻したかに見えるヴァーディーは言った。「間違いだらけの風評にすごく傷ついた」シュマイケルも「(ヴァーディーと一緒にラニエリ追放を直訴したと囁かれて)冗談じゃないと思った」と反論した。何よりも、暫定で指揮を執ることになったクレイグ・シェイクスピアが「ドレッシングルームにもどこにもそんな(ラニアリを嫌う)雰囲気は一切なかった」と証言している。今更、彼らが嘘をつく理由などあるだろうか。すべては“自分たち”のせいだ、“自分たち”の不甲斐なさがラニエリをスケープゴートにしてしまった、このままおめおめと降格してしまおうものなら、それこそラニエリの業績と名誉を汚すことになる・・・・だから「捨て身」で怒りをプレーにぶつけた、それ以外に世間の「間違った悪意」を雪ぐすべはない。クロップ自身が嘆いたように、リヴァプールはそれこそ不甲斐ない試合ぶりだったが、おそらくそれもヴァーディー以下の怒りに気圧されたからだろう。 ▽出る杭は打たれる。それも“ミラクル”の看板付きの“ぽっと出”なら“打つ”勢いも半端じゃなくなる。今シーズンが始まった頃から、それは感じられた。“まぐれ”のチャンピオンならばこそ、さあて、どんな“化けのはがれ方”を見せてくれるんだろうか、どうせなら・・・・そう、筆者は密に心配していた。メディアの意地悪な“目論見”を、おいしい(かつ、ウキウキするような)ヘッドラインと特集記事の青写真を。プレミア始まって以来の「チャンピオン、一転して降格へ」。困ったものだ。およそあり得ない(はずの)成功を、羨み、嫉妬し、足の引っ張りどころばかりを探しつつ、目の敵にする人の世の習い。もし、優勝ではなく、準優勝もしくはチャンピオンズ参戦程度で収まっていたら、天晴あっぱれ、たとえ翌シーズンに失速しようとも、ずっとこの先も好意の目で包み込んであげたのに? リヴァプール戦快勝の直後、元アーセナルのマーティン・キーオンは、そんな虚しさを込めてか、逆説的な笑えないジョークをもらした。「これをクラウディオ(ラニエリ)がイタリアで見ていたら、テレビに飛び蹴りを食らわしたい気分になったかも」 ▽あえて、あえて前向きなとらえ方をしてみようか。ラニエリ解任は、あわよくばこうなることを願ってのショック療法だった。プレーヤーたちの憤りと反発を引き出そうと、ラニエリには悪いが、禁断の最後の手段に出た。それが裏目に出たなら、つまり、何も起こらなければ、降格もやむを得まい、それだけのチームだというだけのことだ、と。ならば、プレーヤーたちは、非情なクラブ上層部を見返すためにも、それ以上の結果を目指さねばなるまい。その最大の標的はもちろん、3月14日の対セヴィージャ・リーターンマッチ。彼らは心に誓っているに違いない。“その先”までもを。そして無言の直訴をつきつける。ホジソンだろうとマンチーニだろうとごめん被る、ラニエリの分身シェイクスピアとともに突き進むのみ。そして、あわよくば・・・・新たな“ミラクル”を歴史に刻むこまんことを。「ラニエリ、逆転の復帰」! しがない物書きの笑ってしまうような「夢」である。だが、考えれば考えるほど、どこも真似のできっこない、ミラクル・レスターにはお似合いの道筋ではないか。ギャリー・リネカーなら必ずや「よくぞ言った」と喝采してくれるだろう。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.03.02 13:34 Thu
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【東本貢司のFCUK!】FCUKの夢、全開 ?!

▽苦境にあってもクラウディオ・ラニエリの頭は澄んでいる。むしろ、こうなることを予期して、あえて泥をかぶる心意気が透けて見える。セヴィージャの地に旅立つ直前、“ティンカーマン”はずっと胸の奥底に秘めてきた本音を告白した。「昨シーズン終了をもって辞任する道もあった」。その、ミラクルな“名声”を人々の記憶に押し付ける身勝手を良しとせず、必ずやってくる茨の道を選んだ“男気”を。だからこそ、チャンピオン転じて降格の危機に直面している最中にあっても、レスターは迷うことなくラニエリ支持を公言し、プレーヤーたちも望外の夢を見させてくれた恩義に報いて愚痴の一つも漏らさなかった。ここには、昨今の“目先の損得勘定”でやっつけの措置に走る(もしくは、それが当然とばかりにうるさく暴言をまき散らすファンやメディアに惑わされる)愚挙など、一切跳ね返す、クラブの意地、いや、本来の姿、ステイタスがある。ヴェンゲルのクビをしどけなく叫ぶファンの皮をかぶった似非ファンには爪の垢を煎じて飲ませてやりたいものだ。 ▽その意気に(「この対セヴィージャ・ファーストレッグが我々のターニングポイントになるかもしれない」と述べたラニエリの決意とメッセージに)、プレーヤーたちは応えてみせた。スコアは2-1、ゲーム単体では敗れたが、貴重な、この上なく値千金のアウェイゴールをもぎとってみせた。それも、今シーズンここまですっかり冴えを失っていたドリンクウォーターのスルーパスから、シンボルエースのヴァーディーが蘇ったようにシャープな身のこなしから決めた。あとは、どこぞの国で“ホワイトデイ”とか称する奇妙な習慣が男たちを戸惑わせる「3月14日」(のホーム、セカンドレッグ)まで、“彼ら”が何をどうして“身を証明する”かにかかっている。それで、レスターの明日も見えてくる。ひとまず、ラニエリの言う「ターニングポイント」は良き方向へと舵を切った。そもそも、はらはらドキドキ胸を騒がせるのが“ミラクル・レスター”の魅力、真骨頂ならば、これはもう筋書通り。大敵セヴィージャを少しなりともがっかりさせた意義は相当にデカい。 ▽その前日、苦闘の末にホーム・ファーストレッグを勝ちで収めたマンチェスター・シティーの方はどうか。反発しての5得点は褒めてしかるべき。だが、3失点のツケは小さくない。グアルディオラの表情も「次にこちらが得点できなければ、多分終わる」と冴えない、心細い。数字以上に、レスターのアウェイゴール1は、モナコのアウェイゴール3は、天と地の差ほどに見える。なかでも、蘇ったファルカオの2ゴール以上に、ムバッペの(その時点での)勝ち越しゴールは鮮烈なメッセージだった。キリアン・ムバッペ、18歳。そう、アーセン・ヴェンゲルが「ティエリー・アンリに似たところがある」と言い切った新星。モナコがヴェンゲルの“縄張り”だったからには、その将来性に注目しないではいられない。すなわち、ムバッペの将来は、アーセナルの今後の巻き返し(プレミアおよびチャンピオンズ)にも大きく左右されるはず。アンリを大成させたヴェンゲルか、それとも、パリSG、シティー、チェルシーの“カネ”か。ムバッペという青年の気質はいかほどなのだろうか。“それでも”ユナイテッドにこだわるマーシァルほどの気骨の持ち主なのか。 ▽そのマン・ユナイテッドはめっきり安定感を増してきた。負けない手応えは現状、おそらくチェルシーをも上回る。サンテティエンヌだろうと何だろうと、隙も抜け目もなく、さも当たり前のように退ける。ひとえに勝利の質と中身にこだわるモウリーニョに、悠々落ち着いたポストマッチコメントをものさせる。おまけに、このサンテティエンヌ撃退では、ファンにとってちょっとした希望をももたらす“瑕疵”をも引き連れてきた。ミヒタリアン(とキャリック)の故障だ。目前に控えたえEFLカップ決勝(対サウサンプトン)に、ルーニー起用の目が現実的になったこと。どこかひねくれたところのあるジョゼ君のことだ、先発で使うかどうかは少々怪しまねばならないが、ちょうど中国のCSL行きが取りざたされていた最中で、ルーニーを“引き留める”(といっても本人にその気はさらさらないが)恰好の口実にはなる。レスター同様、ルーニーにとっても、これは何かが変わるきっかけになりそうだ。チャンスは誰も文句がつけようのない形で生かさねばなるまい。スタンドで観戦していたサー・アレックスもひそかに「その証明」を望んでいるだろう。 ▽ここまでをまとめてみるならば、レスターは俄然昨シーズンの光を再び取り戻して残留を確保し、少なくともセヴィージャを撃退してみせる。ルーニーはウェンブリー(のEFL決勝)で、モウリーニョの信頼を取り戻し、ユナイテッドのキャプテンたる真のステイタス奪回に力強く再生する。“アンリの再来”ムバッペはアーセナル入団の夢を語り、いずれガナーズの一人としてプレミアにお目見えする。そういえば、FAカップ準々決勝でチェルシー-ユナイテッドの大一番があるんだっけ。これは大変な(いずれの優勝云々は関係なく)ゲームになる。願わくば、それまでに(時間はあまりないが)ルーニーが掛け替えのない存在として復活していますように。“何か”をさらに実り多きものにするためにも。いやはや、希望的観測ばかりで恐縮ながら、FCUKはすべてが“叶う”ことを祈らずにはいられない。あともう一つ、アーセナルの怒涛の追い込みとヴェンゲルの契約更新。まさかと苦笑する向きもあろうが、ここからあっと驚く(?)チャンピオンズ決勝へとひた走るガナーズの“快挙”にも夢を馳せたい。いや、できないはずはないと思うのだが?<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.02.23 12:54 Thu
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【東本貢司のFCUK!】エンリケとヴェンゲルの差

▽これはちと、ひどい。いくらなんでもリターンマッチで4点差を跳ね返すのは骨が折れるどころではない。チャンピオンズ・ラスト16。バルセロナとアーセナルのことだ。ただし、両者の問題と修復への課題には、天と地の差ほどの、つまり、まるで正反対の要因があることを見逃してはいけない。あえてこのコラムでスペインの雄を引き合いに出す意味もそこにある。バルサの蹉跌、その理由は(たぶん)誰の目にも明らかだろう。十八番の、トレードマークのポゼッションプレスよ、今いずこ。いや、それ自体は必ずしも失敗だとは言えない。方向転換(の必要性)はどんなチームにも、いつかめぐってくる。しかし、それを承知の上だとして、ルイス・エンリケが見誤ってしまった最大の失敗とは・・・・メッシ、スアレス、ネイマールの“ワンダー3”にあまりにも頼りすぎた戦術・・・・いや、それはもう戦術でさえない。いったい「個の能力任せ」のどこに戦術があろうか。筆者はいまだに首を傾げている。就任1年で「ルイス・エンリケの戦術論」本が世に出た“謎”について。 ▽パリSGの前に無残の散った試合後、セルヒオ・ブスケッツは「我々は戦術的に敗れた」と述べたそうだ。それを会見の場で伝え聞いたルイス・エンリケは「何のことか(ブスケットが何を指してそんなことを言ったのか)さっぱりわからず」、当の記者に逆切れして?みついたという。そして、その一件を伝え聞いた某評論家は「これで終わりだな」と思ったとか。ルイス・エンリケ体制の終わり。すでに後任候補の名はいくつか上がっている。最有力はセヴィージャの将、ホルヘ・サンパオーリ。バルサ上層部はスパーズのポチェッティーノやエヴァートンのクーマンも「お気に入りリスト」にアップしているといわれているそうだ。もっとも、リーガとコパ・デル・レイの優勝の目はまだ残っている。タイトルを一つは確保できればお目こぼしはあるのかも・・・・いや、その可能性は低いと、前出の評論家は断言する。ブスケッツの指摘にルイス・エンリケがカチンときたということは、プレーヤーたちに不信の輪が広がり、エンリケ自身にもきっと思い当たる節があるからだ。 ▽では、アーセナルは? エミレイツに戻ってこの、緩急自在の剛腕をまざまざと見せつけたバイエルンをひっくり返すのは至難の業。つまり、チャンピオンズはほぼ絶望、残る現実的なタイトルの目はFAカップだけだ。この数年、定番のようになった(今やイングランドでも哀しいかな価値が薄れゆく一方の)トロフィーを仮に獲ったところで、アーセン・ヴェンゲルの地位は保たれるのか? 確率でいえば「保たれる」方に、筆者なら賭ける。なんとなれば、こちらは戦術で負けたわけではないからだ。明白な力負け。つまり、敗戦の責任は一にも二にもプレーヤーたちの側にある。具体的には、ガナーズの生命線というべきペース(スピード)の点で、バイエルンにほぼ完全に競り負けた。その上、バイエルンが絶妙な間合いで差しはさむ「緩」に翻弄されてはおよそ太刀打ちできるはずがなかった。なにゆえに? 思うに、あのワトフォード戦敗退の屈辱がまだ尾を引いている。精神的に立ち直れていない。だからペースで敵を上回るヴァイタリティーを絞り出せなかった。 ▽最近、何かというと、かつての“レジェンドたち”のコメントが引き合いに出される。本人たちが何を言ったかということより、そこには、あの「インヴィンシブル」シーズンのチーム(2003-04)と比較したがっている(ゲスな)“下心”が透けて見える。無論、そんな“揶揄めいた”ことに何の意味もない。比べる基準などどこにもないからだ。ならば、さすがに無敗とはいかずとも、アーセナルが今も優勝争いの輪に踏みとどまっているのはなぜだ? 当時とまったくわけが違うのは、あの翌シーズンからチェルシーの“爆買い”が始まり、しばらくしてマン・シティーも追随したという、いわば「世界が変わってしまった」ことである。同じ尺度で測れるはずがない。そんなことよりも、今季のアーセナルはここまでを通してほぼベストメンバーを組めないで、何とかやりくりしてきた点を思い出すべきではないか。無論、今後、思い切った補強に向かうのは当然だとして、そこで立ち止まって考えてみなければならない。ヴェンゲルが去ったアーセナルにはたして、誰が、どんな大物即戦力がはせ参じるだろうか。上辺しか見ない輩にはそこがわかっていない。 ▽ルイス・エンリケには悪いが、そこに天と地ほどの差があるのは明白だろう。そう、このバイエルン戦を控えた時点でも「後継者」候補が取りざたされていた。だが、そのどれをとっても(エンリケじゃないが)さっぱり理解に苦しむ話にしか聞こえない。果ては、現在イングランド2部のニューカッスルを率いるベニテスの名前が飛び出す始末。笑ってしまうしかないが、筆者は思ったものである。どうせ“冗談の一環”なら、サー・アレックス・ファーガソンの名前くらい出してみろ、と。さもなくば、ヴェンゲルの前の前のジョージ・グレアムとか。“物理的”に現実味のある名前を出すことに、むしろ真実味が薄れるのに、誰も気づかないとは。かつてのガナーの一人、マーティン・キーオンは「まだアーセナルはヴェンゲル更迭の準備ができていない」と述べ、イェンス・レーマンは「チャンピオンズを獲ってこそ、アーセナルもヴェンゲル自身も“変化”を真剣に考えるだろう」と予言している。そう、まだ早いのだ。それに何よりも、ヴェンゲルが去って誰が来たところで、その節は多分、いやきっと、サンチェスとエジル辺りは新天地を望むだろう。そうなってからでは遅い、いや、それこそ壮大な一からの出直しになってしまうだろうから。<hr>【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】 1953年大阪府生まれ 青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。 2017.02.16 13:25 Thu
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