【原ゆみこのマドリッド】エンジンがかからない…
2016.08.30 12:09 Tue
▽「そりゃあ嬉しくて投稿したくもなるわよね」そんな風に私が呟いていたのは月曜日。ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設からセルヒオ・ラモスがアップしたツィートを見た時のことでした。今回のスペイン代表は、デル・ボスケ監督からロペテギ監督に代わって初めてのインターナショナルウィーク。おかげで招集された選手の顔ぶれもかなり変化して、レアル・マドリーからはラモスを筆頭にルーカス・バスケス、モラタ、カルバハル、アセンシオと5人が呼ばれることに。翻って永遠のライバルの方はイニエスタが負傷中という事情もあったものの、ピケ、ブスケツ、ジョルディ・アルバ、セルジ・ロベルトと4人に留まり、久々に数でバルサ勢に上回ったのが嬉しかったのか、クラブのチームメートでテーブルを囲んでいる姿を載せていたから。
▽そう、ラモス自身もお昼の施設入りの際、「Es una buena noticia que haya muchos madridistas/エス・ウナ・ブエナ・ノティシア・ケ・アヒャ・ムーチョス・マドリディスタス(マドリーの選手が沢山いるのはいいニュースだよ)。ボクらがクラブで上手くやっていることだからね」と言っていましたしね。夕方から行われた初練習では、前日のアスレティック戦で打撲を受けたピケと疲労のセルジ・ロベルトもグラウンドに顔を見せなかったため、ますますマドリー天下な気分がしてしまったかもしれませんけど…。実はその日の早朝にはパコ・アルカセル(バレンシア)がバルセロナでメディカルチェックを済ませて代表合宿に到着。移籍市場が閉じる水曜前にバルサ入りが発表される見込みとなれば、人数は結局5対5で拮抗?
▽いえまあ、ラモスもモラタも練習後は長い時間、見学に来たファンたちにサインをしてあげて、代表中多数派クラブのメンバーの義務を果たしていましたしね。一方でアトレティコは、フアンフランがセルジ・ロベルトに取って代わられ、サウールも木曜日の親善試合・ベルギー戦が終わったら、マルメでスウェーデンと対戦するU-21代表にヘルプに行かされてしまうため、コケを入れて1.5人しか呼ばれていません。そんなアトレティコには次元のまったく違う話なんですが、確かにリーグ開幕してからの3強の調子を考えると、意外とこれって正しい割合だったかと。何故かと言うと…それは後程。
▽さて、先週末は土曜日にサンチャゴ・ベルナベウを訪れた私ですが、まだバケーション中のabonado(アボナードー/年間チケット保持者)も多かったのか、スダンドは満員にはならず。それでもホームでのシーズン開幕戦に駆けつけたファンたちには大きな期待があったはずですが、その日のマドリーは後でジダン監督も「puede ocurrir que en algunos partidos no podemos jugar como queremos/プエデ・オクリル・ケ・エン・アルグーノス・パルティードス・ノー・ポデモス・フガール・コモ・ケレモス(幾つかの試合ではウチが望んだようにプレーできないということも起こりうる)」と言っていたように、プレスをしっかりかけて組織的に敵のパスをカットするセルタの前になかなか得点できず。
▽おかげでモドリッチがエリア外から撃ったシュートが枠に当たるなど、0-0ままイヤな感じでハーフタイムを迎えたんですが、まさか後半になって、敵の方からチャンスを演出してくれるとはツイているじゃありませんか。そう、それは59分のことで、手を使ってのプレーは上手いものの、足技はあまり得意でなさそうなセルヒオのゴールキックがエリア近くにいたモドリッチの正面に。彼の出したパスはモラタとジョニーを経て、アセンシオが受け、GKと一対一になりシュートを試みたところ、弾かれてしまって失敗。それでもいい場所にいたモラタがこぼれ球を撃ち込んでゴールにしてくれたから、ようやくスタジアム中が活気付きます。
▽それでもその4分後、クロースのスルーパスに抜け出したモラタが今度はフリーでシュートしたものの、ゴールポストに当たってゴールにならなかったのには眉をしかめてしまった私でしたが、こういうチャンスをモノにできないと後に響くんですよね。実際、66分にはオレジャナにエリア前から見事な一発を決められ、マドリーは1-1の同点に追いつかれてしまったんですが、この辺りから暑さの影響が出てきたか、セルタにかなり危険なカウンターを喰らうことに。
▽ただ、GKカシージャの守るゴールに独走したのが、今はマンチェスター・シティでプレミア生活を満喫しているノリートか、丁度土曜日に獲得が決まったジュゼッペ・ロッシ(フィオレンティーナから移籍、昨季はレバンテでプレー)か、もっと現実的になって言えば、打撲からギリギリ回復してその日は途中出場だったイアゴ・アスパスだったら…。昨季7-1のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らったリベンジを果たす勝ち越しゴールを奪えたかしれないんですけどね。
▽19歳のセネガル人カンテラーノ、パペにはベルナベウの雰囲気が重くのしかかったか、ラストパスを誤ってフィニッシュには至らず。逆にマドリーは80分、エリア内のルーカス・バスケスからのパスを受けたクロースがシュートしたところ、地面を転がったボールは弧を描き、ゴールポストの内側に命中してネットへ。うーん、彼は2年前のラージョ戦でも似たようなゴールを決めていて、その時も何て器用なことができるんだと驚かされたものでしたけどね。こんなMFがいれば、クリスチアーノ・ロナウドとベンゼマがケガで出られなくても、ベイルが不発でも、全然大丈夫かと。
▽結局、そのままマドリーは2-1で勝って、開幕2連勝としたんですが、この日はルーカス・バスケスに続いて2番目の交代選手としてピッチに入ったハメス・ロドリゲスも奮闘。彼についてはずっと売却の噂が絶えず、記者会見があるたび、しつこく訊かれるのに閉口していたジダン監督も試合後、「Se va a quedar/セ・バ・ケダール(彼は残る)」と断言していたため、今季もマドリーでプレー時間をイスコやルーカス・バスケス、アセンシオらと分け合っていくようですが…はあ。どの選手も皆、人並み以上の才能あるのに控えって、ホントに贅沢なチームですよね。
▽え、私がそんなにマドリーの選手層を羨ましがるのは珍しくないかって? その原因は次の時間帯でプレーしたアトレティコにあって、いえ、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)にたどり着いて、ようやくTV中継を見られた時にはすでに60分になっていたんですけどね。途中、聴いていたオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)からは前半、グリーズマンのvolea(ボレア/ボレーシュート)がGKセランテスにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されたり、後半に入ってもガメイロは弾かれ、ゴディンのゴールもオフサイドで認められなかったなどと、チャンスの情報は入っていたものの、スコアは0-0のままというのが悲しい現実。
▽幸い、相手のレガネスの方が「En la primera parte no hemos pasado ni del semicirculo/エン・ラ・プリメーラ・パルテ・ノー・エモス・パサードー・ニ・デル・セミシルクロ(前半のウチはセンターサークルすら越えられなかった)」(アシエル・ガリターノ監督)という状態だったため、失点は心配しなくて良かったんですが、その頃になって、ようやくガメイロをフェルナンド・トーレスへ、ガビ、アウグストをカラスコ、ガイタンへと、開幕のアラベス戦と同じ対策しか取れないシメオネ監督もねえ。しかもレガネスはアラベスと同じ昇格組、それこそ「負けないためには守るしかなかった。それも後ろに人を多くしてね。En ningun momento el equipo fue capaz de estar cerca de ganar/エン・ニングン・モメントー・エル・エキポ・フエ・カパス・デ・エスタル・セルカ・デ・ガナール(ウチが勝利できそうだった時はなかった)」というガリターノ監督のチームだったにも関わらず、そこをゴリ押しして点を取れないのが今季のアトレティコなんですよ。
▽実際、私が見ている間もトーレスやカラスコがシュートを決めることができず、試合はスコアレスドローで終わってしまったんですが、この2引き分けのせいで、連勝したお隣さんとバルサとはもう勝ち点差が4。いえ、だからって試合終了後、今季アトレティコでの初試合だったためか、まだリズムに乗れていないというグリーズマンが、「Si seguimos asi vamos a pelear por el descenso/シー・セギモス・アシー・バモス・ア・ペレアル・ポル・エル・デセンソ(こんなことをしていたら、ウチは降格を争うことになる)」と言っていたのは、カンテラーノのサウールも「Griezmann acabo caliente/グリーズマン・アカボ・カリエンテ(グリーズマンはカッカしていたんだよ)」とフォローしていたように、当人がレアル・ソシエダ時代のデジャブを見ていただけだと思いますけどね。
▽というのも、ここ10年強、ダメダメなアトレティコも見てきた私ですが、ヨーロッパの大会出場権が得られる順位に入れず悔しい思いをしたことはあっても、ヘタフェやラージョのように本当に降格を心配する程の惨状は記憶にはなし。よって、あまり気にすることはありませんが、やっぱり心配なのはこの開幕の出遅れが後々、リーガの2強との優勝争いに憂いを残すかもしれないこと。何せ、「El futbol son goles/エル・フトボル・ソン・ゴーレス(サッカーはゴール)。この2試合、ウチは沢山チャンスは作ったが、相手にツキがあった」というシメオネ監督は、「Trabajaremos cuando estemos todos/トラバハモス・クアンドー・エステモス・トードス(皆が揃った時、取り組んでいく)」と言っていましたけどね。今週から世間はインターナショナルウィークに入るんですよ!
▽そう、スペイン勢こそ少ないですが、代表出向組の人数だけを取ってみれば、お隣さんの14人対し、アトレティコも総勢12人と決して負けておらず。グリーズマン(フランス)を筆頭にオブラク(スロバキア)、サビッチ(モンテネグロ)、ブルサリコ(クロアチア)らのヨーロッパ組はまだしも、ゴディン、ヒメネス(ウルグアイ)、アウグスト、コレア、ガイタン(アルゼチン)、フィリペ・ルイス(ブラジル)と中南米組なんか、いつ帰って来るかもわかりません。おまけに次節はマドリー相手に善戦したセルタを10日の土曜日午後1時という早い時間にビセンテ・カルデロンに迎えるとなれば一体、何度、全員揃った練習ができる?
▽それでもその間、トーレスやガメイロにシュートの精度を上げるよう努力してもらうということはできると自分を慰めていれば、日曜日になって、後者はフランス代表に追加招集されることが決定。もう、こうなったら、徹底的にグリーズマンとの前線コンビを極めてきてほしいですが、でもねえ。FWだけでなく、アラベス、レガネスの2試合ではお隣さんのように中盤にあっと驚くゴールを挙げてくれる人材がいてくれたら、結果は大きく変わっていたかもしれないと思うのは、私の単なるないものねだりでしょうか。
▽一方、監督の試合評は厳しかったものの、初めての1部リーグでまだ敗戦を経験していないレガネスの選手たちはもちろん大喜びで、髪を青く染めたキャプテンのマントバーニによると、「アトレティコ相手の勝ち点1は3倍の価値がある。Para un recien ascendido como nosotros, un empate sabe a gloria/パラ・ウン・レシエン・アセンディードー・コモ・ノソトロス、ウン・エンパテ・サベ・ア・グロリア(ウチみたいに昇格したばかりのチームにとって、引き分けは栄光の味)」なのだとか。うーん、試合前に今季、ブタルケ(レガネスのホーム)を訪れるチームにはキュウリの籠盛りを贈るという企画を知った時には、これってもらった方が困るんじゃないだろうかと思ったものでしたけどね。
▽大体がして、青と白のストライプがずっと基調のチームなのに、何故、愛称がpepineros(ペピネーロス/キュウリ栽培農家)なんだろうと調べてみれば、以前はマドリッド近郊のレガネスにはキュウリ畑が多かったからというオチだったんですが、とりあえず、ここ2試合の印象はとにかく守り倒して、セットプレーででも1点が取れれば御の字といった感じのチーム。いえ、今回の相手がアトレティコでなければ、もっと褒め言葉を探したんですけどね。ギリギリまで補強も続くようですし、paron(パロン/リーガの停止期間)後の様子を見ないことにはまだ、この新弟分に1部で生き残っていける力が本当にあるのか、私もちょっと判断がつきかねています。
【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
▽そう、ラモス自身もお昼の施設入りの際、「Es una buena noticia que haya muchos madridistas/エス・ウナ・ブエナ・ノティシア・ケ・アヒャ・ムーチョス・マドリディスタス(マドリーの選手が沢山いるのはいいニュースだよ)。ボクらがクラブで上手くやっていることだからね」と言っていましたしね。夕方から行われた初練習では、前日のアスレティック戦で打撲を受けたピケと疲労のセルジ・ロベルトもグラウンドに顔を見せなかったため、ますますマドリー天下な気分がしてしまったかもしれませんけど…。実はその日の早朝にはパコ・アルカセル(バレンシア)がバルセロナでメディカルチェックを済ませて代表合宿に到着。移籍市場が閉じる水曜前にバルサ入りが発表される見込みとなれば、人数は結局5対5で拮抗?
▽さて、先週末は土曜日にサンチャゴ・ベルナベウを訪れた私ですが、まだバケーション中のabonado(アボナードー/年間チケット保持者)も多かったのか、スダンドは満員にはならず。それでもホームでのシーズン開幕戦に駆けつけたファンたちには大きな期待があったはずですが、その日のマドリーは後でジダン監督も「puede ocurrir que en algunos partidos no podemos jugar como queremos/プエデ・オクリル・ケ・エン・アルグーノス・パルティードス・ノー・ポデモス・フガール・コモ・ケレモス(幾つかの試合ではウチが望んだようにプレーできないということも起こりうる)」と言っていたように、プレスをしっかりかけて組織的に敵のパスをカットするセルタの前になかなか得点できず。
▽おかげでモドリッチがエリア外から撃ったシュートが枠に当たるなど、0-0ままイヤな感じでハーフタイムを迎えたんですが、まさか後半になって、敵の方からチャンスを演出してくれるとはツイているじゃありませんか。そう、それは59分のことで、手を使ってのプレーは上手いものの、足技はあまり得意でなさそうなセルヒオのゴールキックがエリア近くにいたモドリッチの正面に。彼の出したパスはモラタとジョニーを経て、アセンシオが受け、GKと一対一になりシュートを試みたところ、弾かれてしまって失敗。それでもいい場所にいたモラタがこぼれ球を撃ち込んでゴールにしてくれたから、ようやくスタジアム中が活気付きます。
▽いやあ、1節のレアル・ソシエダ戦でもいいプレーはしていたものの、得点はできず、その日も「Morata estaba deseando marcar/モラタ・エスタバ・デセアンドー・マルカル(モラタはゴールを決めたがっていた)」と、同じカンテラーノ(下部組織出身の選手)であるカルバハルに後でバラされていたモラタでしたからね。この1点でかなり安心できたんじゃないかと思いますが、何かというと敵に引っくり返されていたり、変なところで滑っていたりと、ユベントスで修業したという割にはまだどこか物足りず。ベンゼマがケガから復帰した暁にはスタメンの座を得るのが難しい気がしてしまうのは私だけではないかもしれませんが、ローマは1日にして成りませんからね。マドリー復帰第1号がgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)でなくても、まずは第1歩を踏み出したことを喜ぶべきかと。
▽それでもその4分後、クロースのスルーパスに抜け出したモラタが今度はフリーでシュートしたものの、ゴールポストに当たってゴールにならなかったのには眉をしかめてしまった私でしたが、こういうチャンスをモノにできないと後に響くんですよね。実際、66分にはオレジャナにエリア前から見事な一発を決められ、マドリーは1-1の同点に追いつかれてしまったんですが、この辺りから暑さの影響が出てきたか、セルタにかなり危険なカウンターを喰らうことに。
▽ただ、GKカシージャの守るゴールに独走したのが、今はマンチェスター・シティでプレミア生活を満喫しているノリートか、丁度土曜日に獲得が決まったジュゼッペ・ロッシ(フィオレンティーナから移籍、昨季はレバンテでプレー)か、もっと現実的になって言えば、打撲からギリギリ回復してその日は途中出場だったイアゴ・アスパスだったら…。昨季7-1のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らったリベンジを果たす勝ち越しゴールを奪えたかしれないんですけどね。
▽19歳のセネガル人カンテラーノ、パペにはベルナベウの雰囲気が重くのしかかったか、ラストパスを誤ってフィニッシュには至らず。逆にマドリーは80分、エリア内のルーカス・バスケスからのパスを受けたクロースがシュートしたところ、地面を転がったボールは弧を描き、ゴールポストの内側に命中してネットへ。うーん、彼は2年前のラージョ戦でも似たようなゴールを決めていて、その時も何て器用なことができるんだと驚かされたものでしたけどね。こんなMFがいれば、クリスチアーノ・ロナウドとベンゼマがケガで出られなくても、ベイルが不発でも、全然大丈夫かと。
▽結局、そのままマドリーは2-1で勝って、開幕2連勝としたんですが、この日はルーカス・バスケスに続いて2番目の交代選手としてピッチに入ったハメス・ロドリゲスも奮闘。彼についてはずっと売却の噂が絶えず、記者会見があるたび、しつこく訊かれるのに閉口していたジダン監督も試合後、「Se va a quedar/セ・バ・ケダール(彼は残る)」と断言していたため、今季もマドリーでプレー時間をイスコやルーカス・バスケス、アセンシオらと分け合っていくようですが…はあ。どの選手も皆、人並み以上の才能あるのに控えって、ホントに贅沢なチームですよね。
▽え、私がそんなにマドリーの選手層を羨ましがるのは珍しくないかって? その原因は次の時間帯でプレーしたアトレティコにあって、いえ、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)にたどり着いて、ようやくTV中継を見られた時にはすでに60分になっていたんですけどね。途中、聴いていたオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)からは前半、グリーズマンのvolea(ボレア/ボレーシュート)がGKセランテスにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されたり、後半に入ってもガメイロは弾かれ、ゴディンのゴールもオフサイドで認められなかったなどと、チャンスの情報は入っていたものの、スコアは0-0のままというのが悲しい現実。
▽幸い、相手のレガネスの方が「En la primera parte no hemos pasado ni del semicirculo/エン・ラ・プリメーラ・パルテ・ノー・エモス・パサードー・ニ・デル・セミシルクロ(前半のウチはセンターサークルすら越えられなかった)」(アシエル・ガリターノ監督)という状態だったため、失点は心配しなくて良かったんですが、その頃になって、ようやくガメイロをフェルナンド・トーレスへ、ガビ、アウグストをカラスコ、ガイタンへと、開幕のアラベス戦と同じ対策しか取れないシメオネ監督もねえ。しかもレガネスはアラベスと同じ昇格組、それこそ「負けないためには守るしかなかった。それも後ろに人を多くしてね。En ningun momento el equipo fue capaz de estar cerca de ganar/エン・ニングン・モメントー・エル・エキポ・フエ・カパス・デ・エスタル・セルカ・デ・ガナール(ウチが勝利できそうだった時はなかった)」というガリターノ監督のチームだったにも関わらず、そこをゴリ押しして点を取れないのが今季のアトレティコなんですよ。
▽実際、私が見ている間もトーレスやカラスコがシュートを決めることができず、試合はスコアレスドローで終わってしまったんですが、この2引き分けのせいで、連勝したお隣さんとバルサとはもう勝ち点差が4。いえ、だからって試合終了後、今季アトレティコでの初試合だったためか、まだリズムに乗れていないというグリーズマンが、「Si seguimos asi vamos a pelear por el descenso/シー・セギモス・アシー・バモス・ア・ペレアル・ポル・エル・デセンソ(こんなことをしていたら、ウチは降格を争うことになる)」と言っていたのは、カンテラーノのサウールも「Griezmann acabo caliente/グリーズマン・アカボ・カリエンテ(グリーズマンはカッカしていたんだよ)」とフォローしていたように、当人がレアル・ソシエダ時代のデジャブを見ていただけだと思いますけどね。
▽というのも、ここ10年強、ダメダメなアトレティコも見てきた私ですが、ヨーロッパの大会出場権が得られる順位に入れず悔しい思いをしたことはあっても、ヘタフェやラージョのように本当に降格を心配する程の惨状は記憶にはなし。よって、あまり気にすることはありませんが、やっぱり心配なのはこの開幕の出遅れが後々、リーガの2強との優勝争いに憂いを残すかもしれないこと。何せ、「El futbol son goles/エル・フトボル・ソン・ゴーレス(サッカーはゴール)。この2試合、ウチは沢山チャンスは作ったが、相手にツキがあった」というシメオネ監督は、「Trabajaremos cuando estemos todos/トラバハモス・クアンドー・エステモス・トードス(皆が揃った時、取り組んでいく)」と言っていましたけどね。今週から世間はインターナショナルウィークに入るんですよ!
▽そう、スペイン勢こそ少ないですが、代表出向組の人数だけを取ってみれば、お隣さんの14人対し、アトレティコも総勢12人と決して負けておらず。グリーズマン(フランス)を筆頭にオブラク(スロバキア)、サビッチ(モンテネグロ)、ブルサリコ(クロアチア)らのヨーロッパ組はまだしも、ゴディン、ヒメネス(ウルグアイ)、アウグスト、コレア、ガイタン(アルゼチン)、フィリペ・ルイス(ブラジル)と中南米組なんか、いつ帰って来るかもわかりません。おまけに次節はマドリー相手に善戦したセルタを10日の土曜日午後1時という早い時間にビセンテ・カルデロンに迎えるとなれば一体、何度、全員揃った練習ができる?
▽それでもその間、トーレスやガメイロにシュートの精度を上げるよう努力してもらうということはできると自分を慰めていれば、日曜日になって、後者はフランス代表に追加招集されることが決定。もう、こうなったら、徹底的にグリーズマンとの前線コンビを極めてきてほしいですが、でもねえ。FWだけでなく、アラベス、レガネスの2試合ではお隣さんのように中盤にあっと驚くゴールを挙げてくれる人材がいてくれたら、結果は大きく変わっていたかもしれないと思うのは、私の単なるないものねだりでしょうか。
▽一方、監督の試合評は厳しかったものの、初めての1部リーグでまだ敗戦を経験していないレガネスの選手たちはもちろん大喜びで、髪を青く染めたキャプテンのマントバーニによると、「アトレティコ相手の勝ち点1は3倍の価値がある。Para un recien ascendido como nosotros, un empate sabe a gloria/パラ・ウン・レシエン・アセンディードー・コモ・ノソトロス、ウン・エンパテ・サベ・ア・グロリア(ウチみたいに昇格したばかりのチームにとって、引き分けは栄光の味)」なのだとか。うーん、試合前に今季、ブタルケ(レガネスのホーム)を訪れるチームにはキュウリの籠盛りを贈るという企画を知った時には、これってもらった方が困るんじゃないだろうかと思ったものでしたけどね。
▽大体がして、青と白のストライプがずっと基調のチームなのに、何故、愛称がpepineros(ペピネーロス/キュウリ栽培農家)なんだろうと調べてみれば、以前はマドリッド近郊のレガネスにはキュウリ畑が多かったからというオチだったんですが、とりあえず、ここ2試合の印象はとにかく守り倒して、セットプレーででも1点が取れれば御の字といった感じのチーム。いえ、今回の相手がアトレティコでなければ、もっと褒め言葉を探したんですけどね。ギリギリまで補強も続くようですし、paron(パロン/リーガの停止期間)後の様子を見ないことにはまだ、この新弟分に1部で生き残っていける力が本当にあるのか、私もちょっと判断がつきかねています。
【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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