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【日本代表コラム】いつも変わらない足りないもの…“ドメスティック”な選手を生まない環境へ2016.08.13 11:00 Sat

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▽「勝って終わることは残念」とスウェーデン戦後の記者会見で語った手倉森誠監督。試合を重ねるごとにチームの戦い方が整理され、試合結果も負け、引き分け、勝ちと上がってきたことを考えれば、確かに残念な結果だ。

▽手倉森ジャパンに“足りなかったもの”は、トレーニングでは埋めることができないもの。これは日本代表、なでしこジャパンにも共通する部分はあるだろう。日本サッカー全体に共通する部分とも言えるかもしれない。“世界基準”を測り切れないことが、“足りないもの”の根幹にあると思う。

▽「世界を経験していない選手と監督だった」と手倉森監督が敗退後にコメントしていた通り、このメンバーで世界を知っているのはオーストリアのザルツブルクでプレーするMF南野拓実だけだ。同じく世界を知っているヤング・ボーイズのFW久保裕也が不参加となったことは、戦力以外の部分でも大きかった。

▽手倉森ジャパンの面々は、アジアを知っていても、世界は知らない世代。トゥーロン国際大会でも、その差を感じ、大会直前のブラジル戦でもその差を感じていたはずだ。

▽ナイジェリア戦の1失点目、コロンビア戦の1失点目は、どちらも“世界基準”を測り間違えた結果だと言える。ナイジェリア戦は、止められると思ったタイミングで仕掛けられ、失点に繋がった。コロンビア戦は、奪えると思ったタイミングでいなされ、そのまま失点に繋がった。“世界基準”を測り間違えると、失点に直結する。そのことを、リオ五輪ではより体感したはずだ。

▽オリンピックに限らず、世界と戦い、勝つことを目標としている代表チームであれば、まずは“世界”を知る必要がある。しかし、それを経験する場を、U-20という大事な世代で10年以上作ることができていない。“世界”のレベルを知ることもできず、国際大会で戦う経験もできていない。U-20ワールドカップの出場権を4大会連続で逃しているという事実は、日本のサッカー界全体が抱える大きな問題だと言える。

▽“世界”を知る選手をオーバーエイジで呼べば良かったという話も、大会中から耳にした。確かに、その考え方は間違っていないだろう。今回招集されたFW興梠慎三、DF塩谷司、DF藤春廣輝は、アジアでの経験はあっても、“世界”での経験はほとんどないからだ。その基準で考えれば、適任は他にも居たのかもしれない。

▽しかし、それでは根本的な解決にはならない。オーバーエイジの選手に頼り切ってメダルを獲ることが、このチームの目的ではない。あくまでも、その世代の選手が中心となり、チームを作り上げて勝つことが重要であり、オーバーエイジは“スパイス”のようなものだと思う。

▽リオ五輪の結果、経験、そして悔しさを、この先のキャリアでどの様に生かすのかは、選手個人にかかっている。「23歳」という年齢は、決して若くない。“世界基準”で考えれば、若手という表現も使われない。A代表の枠を争うべき年代だ。

▽そのためにも、今後“ドメスティック”な選手になることは避けてもらいたい。そして、そのような選手を生み出さない環境を作ってもらいたい。チャンスがあるならば、“世界”を知るために、できるだけ早く海外移籍するべきだと思う。個人としても、チームとしても、“世界”を知るチャンスを逃して欲しくはない。

▽これで五輪代表チームとしての活動は終了した。選手たちはA代表入りを目指して競争することが始まる。何を感じ、何が必要なのか。今後の選手たちの変化を見守りたい。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

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【U-20日本代表コラム】適応能力の高さを見せた守備の要・冨安健洋の伸び代

▽5大会ぶりにU-20W杯に出場を果たしたU-20日本代表。東京オリンピック世代ということ、そして2世代を超えて招集されたFW久保建英(FC東京 U-18)の招集もあり、これまで以上にも大きな期待が寄せられている中、初戦となったU-20南アフリカ代表戦を1-2で制した。 ▽長年に渡り、この世代でのアジア予選を勝ち抜くことができなかった日本だったが、昨年行われたAFC U-19選手権を無失点、無敗で初制覇。2007年以来の本大会出場を決めた。 ▽予選を無失点で終えていた日本だったが、南アフリカ戦では先手を奪われる。7分、一瞬の隙を突かれると、マージマンが最終ラインのズレを生かして裏に抜け、そのままゴールを奪い切った。思わぬ先制点を許してしまった日本。「予測以上の個々のスピードがあった」と試合後に内山篤監督が語ったように、想定を超える瞬発力の前に、ディフェンスラインを突破されてしまった。 ▽前半は最終ライン裏へのロングボールに苦労し、全体をコンパクトに保ちたい日本としては、厄介な相手となった。ラインを高く設定しても、長い距離のスプリントで勝つことができず、ボックス付近まで簡単にボールを運ばれていた。 ▽チャンスこそ多く作られていた日本だったが、徐々に南アフリカのスピードにも慣れが見えてくる。ロングフィードに対するカバーリング、サイドバックの絞りなどが時間の経過とともに改善され、南アフリカに攻め込まれるものの、1ゴールに抑えた。 ▽この試合で特筆すべきは、センターバックでDF中山雄太(柏レイソル)とコンビを組んだDF冨安健洋(アビスパ福岡)の2人だ。冨安は試合が進むごとにレベルアップしている印象さえ受けた。内山監督も「修正能力が非常に高い」と評価したように、失点以降は南アフリカのエースであるシング相手にも臆することなく対応。ゴールを許さず、封じ込めることに成功した。 ▽確かに、これまでのアジアでの戦いとは違い、裏を取られるシーンが多かった。エコパスタジアムで行われたU-20ホンジュラス代表との親善試合での失敗も生きたように思う。日本でプレーしているだけでは感じにくい足の伸びや、出足の早さ、瞬発力…前半の南アフリカは日本を大きく上回っていた。 ▽後半の中盤にも南アフリカに押し込まれる時間帯が続いた。右サイドバックのDF初瀬亮(ガンバ大阪)が積極的に攻め上がる一方で、南アフリカは裏のスペースにロングボールを蹴り、アフリカユース選手権で得点王にも輝いたエースのシングを走らせた。しかし、冨安は前半とは違いしっかりとこれに対応。身体の寄せ方や、相手との間合い、スペースのケアなどが改善されていた。 ▽冨安は「試合の中で相手のスピードにも慣れて対応できる部分はあった」と語っており、前半はバタつく印象があった相手の攻撃への対応も、後半は安定感を見せていた。南アフリカのロングボールに関しては、J1に比べてロングボールが多いJ2で戦っている経験も生きたかもしれない。 ▽さらに、守備だけでなく繋ぐ意識もしっかりと持ち、ビルドアップにも貢献。相手に囲まれながらも、蹴り出す場面は少なかった。後半は、ボランチとしてもプレーできる冨安の良さを随所に見ることができた。 ▽初戦の勝利は、U-20日本代表のチームとってはもちろん、各選手にとっても大きな経験となったはずだ。そして、未知数の南アフリカのスピードにしっかりと適応できた冨安にとっても大きな経験となったはず。「もっと早く対応できれば良かった」とさらなる成長を口にしたことを考えても、未来は明るい。 ▽この先は、ウルグアイ、イタリアとさらにレベルが高い相手との対戦が待っている。初戦での逆転勝利も去ることながら、世界との対戦で大きな伸び代を見せてくれた冨安。今大会中にどれだけ大きく成長するのかワクワクが止まらない。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.05.22 23:00 Mon
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【日本代表コラム】結果は満足、内容は不安…再確認できたウィークポイント

▽平日でありながら、ホームである埼玉スタジアム2002には59003人の観客が集まった。大観衆の前で勝たなくてはいけないプレッシャーの中でのタイ代表戦で日本代表は最終予選で最多となる4得点を奪っての勝利。選手や監督、スタッフは勝利を喜び、観衆は笑顔でスタジアムを去ることとなった。 ▽最下位のタイが相手だったとはいえ、最終予選最多の4得点を奪い、無失点で試合を終えられたことは素直に評価すべきことだと思う。残りが3試合になった時点で、得失点差で上回られていたサウジアラビア代表を抜き、初めてグループ首位に立つことができた。結果が全ての最終予選においては、ひとまず賞賛して良いことだ。 ▽しかし、結果が重要とは言いながらも、やはり課題を残しての勝利は素直に喜べないものだろう。試合後の記者会見でヴァイッド・ハリルホジッチ監督は開口一番「素晴らしい勝利だった」と賞賛した一方で、「不満を抱く点もあった」とすぐさまクギを刺した。監督の言う通り、4-0と勝利したタイ戦の結果は評価できるが、ウィークポイントを改めて気付かされた試合でもあった。 ▽この試合で特に不安定さを露呈したのは、MF山口蛍、MF酒井高徳が並んだボランチのポジションだ。本来であればMF長谷部誠と山口がコンビを組むポジションだが、長谷部がヒザの負傷で離脱。2-0で勝利したUAE戦ではMF今野泰幸をインサイドハーフに置き、山口をアンカーとして起用。守備時には今野がボランチの位置に下がってプレーするなど、試合中に流動的にプレーしていた。 ▽1得点を決め、攻守に貢献した今野だったが、こちらも骨折が判明し負傷離脱。久々の代表招集となっていたMF高萩洋次郎も骨折が発覚して離脱したことで、ボランチを本職としている選手は山口だけに。MF遠藤航を追加招集したものの、ハリルホジッチ監督のチョイスは酒井高だった。 ▽本来はサイドバックを主戦場としていた酒井高だが、所属のハンブルガーSVではボランチを務めている。日本代表ではサイドバックでしかプレーしていないが、ハリルホジッチ監督は山口と酒井高を並べた。これは、いくつかの“ソリューション”の中での守備的な選択だったと考える。崖っぷちに立たされているタイを考えれば、前がかりに攻撃に比重を置く可能性も残されていたからだ。 ▽しかし、蓋を開けてみると、ボランチコンビは機能したとは言い難い内容だった。香川、FW岡崎慎司が幸先よく2点を先行したから良かったものの、前半の終盤にはMFチャナティップ・ソングラシンにはバイタルエリアを使われ、プレスをかけてもかわされるなど好き放題にやられていた。 ▽守備面を期待されたはずの2人だったが、連動性に乏しく、バイタルエリアをあけるシーンも多く見られた。さらに課題として浮上したのが攻撃面。ビルドアップした回数は数える程で、最終ラインからのパスを受ける動きも少なく、DF吉田麻也、DF森重真人がロングボールを蹴るシーンも見られた。攻撃面でも、やりたかったことを実現できたとは言えない内容だった。 <div style="text-align:center;"><img src="http://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20170329_konno_tw.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽UAE戦ではボランチを本職とする今野が、今シーズンのガンバ大阪での起用法と同じインサイドハーフに入った。前線からのプレス、MFオマル・アブルドゥルラフマンのマーク、バイタルエリアのケアと守備面で貢献すれば、前線への飛び出し、ボール奪取からのフリーランなど攻撃面でも活躍。長谷部の穴を埋めるに止まらず、自身の特徴を最大限に発揮していた。 ▽山口、酒井高のパフォーマンスが良くなかった点もあり、また初コンビということで連携面も良くなかったというエクスキューズはある。しかし、今回の選択によって、ハリルホジッチ監督は“個人の能力”ではなく、“組み合わせ”の確認をすることができたはずだ。 ▽今回のコンビの役割についてハリルホジッチ監督は「クラブでは守備的な役割でプレーしている。ただ、代表ではボールの回収とビルドアップの役割を担っている」と酒井高について語り、山口には「攻撃面でさらに期待している」とコメントしていた。つまり、守備的なチョイスとは言え、山口に攻撃を、酒井高は守備+攻撃を求めていたことがわかる。 ▽しかし、山口はどちらかと言えば引いて守備に終始し、酒井高は前線にボールを取りに行くなど要求されていたプレーはしていたように感じた。どちらが良い悪いということではなく、この2人を並べた場合は、攻撃面で求めている役割がこなせないという結果が見えた。ボールを受ける動き、ポジショニング、前線への効果的なパスなどだ。 <div style="text-align:center;"><img src="http://image.ultra-soccer.jp/800/image/get20170329_hasebe_tw.jpg" style="max-width: 100%;"></div><div style="text-align:right;font-size:x-small;">Getty Images<hr></div>▽最終予選での日本代表のボランチ起用は、長谷部、山口、MF柏木陽介、MF大島僚太、酒井高の5名。インサイドハーフで起用した今野も入れれば6名だ。しかし、今回の2試合以外は長谷部が軸となり、大島が1回、柏木が2回、山口が2回コンビを組んでいる。長谷部がバランスを見ることで、攻守ともに崩れる場面が少なかったが、長期離脱が確定。6月の最終予選も難しいだろう。 ▽今野が復帰となれば、再びインサイドハーフでの起用も考えられるが、ボランチでプレーする日本人選手にとってはある種チャンスとも言える。あと2カ月の間にリーグ戦で良いパフォーマンスを見せれば、メンバー入りも不可能ではない。 ▽ハリルホジッチ監督には、新たな中盤の構成を考える理由が見つかった試合となった。特にダブルボランチを起用する際のコンビをどうするかは、しばらく悩みの種になるかもしれない。そういった意味では、結果を含めて、テストもできたタイ戦はプラスだったとも言えるだろう。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.03.30 00:00 Thu
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【日本代表コラム】“経験”と“勢い”の融合が見せたモノ

▽約4カ月ぶりの代表活動、そして後半戦を迎えるロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選。日本にとってはこの上ない勝利だったと言える。勝ち点3という結果、そして収穫も多かった。 ▽試合前に最も驚いたのは、所属クラブのミランで出場機会に恵まれないFW本田圭佑、レスター・シティで再びポジションを掴んだFW岡崎慎司がベンチに座ったことではなく、守護神にGK川島永嗣を起用したことだった。「経験がたくさん必要な試合になる」と前日会見でヴァイッド・ハリルホジッチ監督が語っていたが、それはセカンドチームでプレーする川島にも当てはまることだったことがうかがえた。 ▽試合後の会見でハリルホジッチ監督は「メンタル的に落ち着いた選手が必要だった」と川島の起用についてコメント。得点を与えないことはもちろんのこと、時間の使い方、最後尾からの精神的な支柱という意味でも川島の起用に踏み切ったのだろう。ゲームキャプテンを務めたDF吉田麻也のパフォーマンスが安定していたことにも影響はあるはず。兼ねてから川島の姿勢を評価して代表に招集していたことも、ここに来て生きたと言える。 ▽そして、攻守に躍動し1ゴールを記録したMF今野泰幸も経験をチームにもたらしていた。「ほぼ完ぺきなプレーをして、ボールを奪いながら点も決めてくれた」とハリルホジッチ監督が評価したとおり、厳しい試合での日本の勝利に大きく貢献した。4度目のW杯最終予選ともなれば、中東での戦い方も心得ていることがうかがえる。そして、ガンバ大阪ですでに3ゴールを決めている調子の良さも遺憾なく発揮した。 ▽一方で、昨年11月のサウジアラビア代表戦に続き右ウイングのポジションに入ったFW久保裕也は出色の出来だった。13分には右サイドバックのDF酒井宏樹からのスルーパスを引き出すと、相手DFを振り切りダイレクトシュート。狭いニアサイドを打ち抜いて代表初ゴールを記録した。また、51分には右サイドでキープすると、走り込んだFW原口元気ではなくファーサイドに左足でクロス。今野をめがけたピンポイントクロスでアシストを記録した。 ▽冬にベルギーのヘントへと移籍すると、環境の変化にも適応しゴールを量産。すでにチームの中心選手として活躍をしている。スイスで磨いたゴールへの意識は、ベルギーで開花。そして、日本代表としても結果を残した。クラブでの調子の良さを、結果として代表チームに還元できたことは大きな収穫だ。 ▽また、ケルンで高い評価を得ているFW大迫勇也も1トップとして仕事をこなした。身体の強さを生かしたキープや競り合いでも強さを発揮。ゴールこそ生まれなかったが、可能性のあるシュートも放った。終盤にヒザを痛めたことは気がかりだが、久保同様にクラブでの好調ぶりを見せてくれた。守備での貢献度が高かったFW原口元気も同様。前線での攻守への貢献は高く、クラブでの調子の良さをしっかりと発揮できたことは収穫と言える。 ▽クラブで結果を残し、勢いに乗っている選手、そしてこれまで数多くの激闘を経験している選手がしっかりと融合でき、結果も残せたUAE戦はハリルホジッチ監督が目指しているものに少し近づいた様に思う。 ▽ベンチスタートとなった本田や岡崎は経験値も高く、UAE戦では強力なオプションとなっていた。岡崎は大迫の負傷で急遽の出場となったが、ファーストプレーでCKを得意の頭で合わせた。終盤にはビッグチャンスを生かせなかった場面があったが、頼れる経験者がベンチに控えていることは、観ていても頼もしかった。 ▽本田はクラブで試合出場がほとんどないために試合勘不足は否めないが、コンディションや調子が悪いとは思えないプレーだった。MF倉田秋やMF山口蛍とも良い距離感を保ち、本田がボールを持つことで原口やDF長友佑都など逆サイドの選手も積極的に動き出していた。やはりこのチームには欠かせない存在であることを、短時間でも証明してくれた。 ▽失意の敗戦でスタートしたW杯アジア最終予選だったが、ここに来てハリルホジッチ監督が目指していたものが、形になりかけている様子がうかがえる。若手とベテラン、勢いと経験───これらの融合が進むことで、日本代表は1つステージを上げることができるはずだ。チームとしてのバランスを考えた選手選考、そしてしっかりと結果を残した日本代表。その歩みを止めないためにも、28日のタイ代表戦はより完璧な試合を見せてもらいたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2017.03.24 15:00 Fri
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【日本代表コラム】大きな収穫はなくとも、前進は見せたオマーン戦

▽収穫があったと言って良い試合だろう。キリンチャレンジカップという親善試合であることを加味しても、手にした収穫がわずかであったとしても、前には進んでいると言えるだろう。11日に行われたオマーン代表との一戦では、結果、内容以上の収穫を見て取れた。 ▽ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は試合前の会見で「テストであり調整の場」であると語った。しかし、だからと言って、全てを変えて臨むとも言わず、「サウジアラビア戦に向けた準備をしなければいけない」と強調した。 ▽スターティングメンバーに名を連ねた11名のうち、GK西川周作、DF酒井宏樹、DF吉田麻也、DF酒井高徳、MF山口蛍、MF清武弘嗣、FW本田圭佑の7名は、おそらくサウジアラビア戦に向けたテストだろう。特に、MF清武弘嗣、FW本田圭佑は、所属クラブでの出場機会がないため、試合でのコンディションチェック、そして調整の場として使ったはずだ。 ▽ご存知の通り、清武はFW大迫勇也の2ゴールをアシストし、後半はFW浅野拓磨が得たPKをしっかりと決め、3得点に絡んだ。10番を背負い、不動のトップ下としてここまでプレーしてきたMF香川真司が負傷の影響で欠場したとは言え、ポジションを獲るためのプレーを見せ、結果を残した。ロンドン五輪世代としてU-23日本代表で長らくプレーしていた2人の関係性は良く、呼吸が合っている様子を見せた。 ▽一方で、本田は明らかにコンディションが良くなかった。身体の重さを感じさせただけでなく、試合を行っていないことによるキレのなさを感じた。しかし、その事が分かったことはプラスに捉えられる。中3日で行われるサウジアラビア戦。そこまでにどこまでコンディションを上げられるかだが、難しい可能性も把握できた。これはハリルホジッチ監督にとっては大きかったはずだ。 ▽また、DF丸山祐市、MF永木亮太、FW齋藤学、FW大迫勇也と、ここまでプレー機会がなかった4選手を先発させた。丸山以外は今回のW杯最終予選での出場機会はなく、丸山も普段とは異なるポジションでのワンポイント起用だったのでゼロに等しい。新戦力の発掘、そしてチームとしてのベースアップと考えられる。 ▽3トップの中央で先発した大迫は、慣れ親しんだ県立カシマサッカースタジアムで凱旋の2ゴール。ケルンでの調子の良さを窺わせた。齋藤は硬さが見られたものの、何度か得意とする仕掛けを見せ、タイミングの良いクロスも見せていた。オプションとして起用される可能性は高く、チームにフィットすれば相手によっては先発もあるだろう。代表デビューとなった永木は、そつのないプレーを見せた。ボール奪取からの展開という点では物足りなかっただけに、さらなるレベルアップは求められるだろう。丸山も細かい判断ミス、マークの甘さなど経験不足を感じさせたが、最低限のパフォーマンスだったと思う。 ▽また、途中出場ではMF小林祐希、FW久保裕也、FW浅野拓磨と出場機会が少ない、または初起用の選手を選択した。小林は最後にダメ押しゴールを奪い、久保はシュートへの意識を高く持っていた。浅野はスペースが少なく飛び出すことができなかったが、PKを奪取。満足はできないが、テストはできた。FW岡崎慎司、FW原口元気、DF森重真人に関しても、サウジアラビア戦での起用を見据えての試運転といったところだろう。調整はできたといえる。 ▽MF井手口陽介、DF植田直通に関しても、起用できるチャンスはあったはずだ。しかし、チームのバランスを崩すことはしないのがハリルホジッチ監督。まだチーム戦術の理解が足りていないという評価なのだろう。それでも、ポテンシャルは評価されているため、来年3月の試合に出場できるように努力を積むことが必要だ。いずれ、出場機会は巡ってくると考える。 ▽今回のオマーン戦に関しては、あくまでもサウジアラビア戦に向けた調整試合であり、テストの場であった。結果として4-0で勝利。新戦力がプレーしたということは、主力だけでなく、控えメンバーに大きな影響を与えたはずだ。日本代表が1つのチームとして成長するために、この時期にテストできたことは大きい。来年3月までの目標も個々に持てたはずだ。 ▽15日に行われる、W杯アジア最終予選でグループ首位に立つサウジアラビア戦への舞台は整った。2016年最後の試合に向けて、そしてその先にあるロシアW杯出場に向けての準備は、一歩ずつ着々と進んでいるように感じさせたオマーン戦だった。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.11.13 20:00 Sun
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【日本代表コラム】ハリルホジッチに導かれる日本代表が進む道

▽グループ首位に立つオーストラリア代表のホームで試合に臨んだ日本代表。既に最終予選で1敗を喫していることを考えれば、ここでの敗戦は避けたかった。結果は1-1のドロー。結果以上に、日本代表には手応えを感じた。 ▽オーストラリア戦後の記者会見でヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、「後悔は全くしていない」と試合の感想を述べた。ここまでの最終予選3試合に比べ、日本は落ち着いた試合の入りを見せ、前線から最終ラインに至るまで、特に中盤では強度を強め、オーストラリアを自由にさせなかった。 ▽その流れの中で迎えた5分、自陣に戻ったFW原口元気がボールをカット。MF長谷部誠がボールを拾うと、少し貯めを作って1トップに入ったFW本田圭佑に縦パス。それと同時に原口は走り出し、本田からの絶妙なタイミングで出されたパスに抜け出て先制点を奪い切った。 ▽『縦に早いサッカー』とハリルホジッチ監督が常に口にするが、このシーンはまさにその言葉を体現したものだった。この試合は右サイドにFW小林悠を置き、トップ下にMF香川真司、ボランチの一角にはMF山口蛍を起用した。さらに、ケガ人により選択肢が狭まった左サイドバックには、攻撃を得意とするDF太田宏介ではなくDF槙野智章を起用。指揮官の狙いは明白だった。 ▽これまでの空中戦に頼った戦い方から変貌を遂げているオーストラリアに対し、日本は中央を固める作戦に出た。長谷部、山口のボランチに加え、サイドに入った原口、小林が献身的な守備対応を見せることで、オーストラリアの推進力を奪った。サイドバックのDF酒井高徳、槙野も落ち着いた対応を見せていた。まさに、『デュエル』の部分で負けなかった証だろう。 ▽ゴールシーンに繋がった守備以外にも、オーストラリアのホールホルダーに対する寄せの早さや、前を向かれた際のDF吉田麻也、DF森重真人の守備対応はほぼ完璧だったと言える。さらに、奪ってからのボール運びも、この3試合とは異なり、縦の関係を上手く利用したダイレクトパス交換などが随所に見られた。オーストラリアの決定機はほぼゼロ。細かなミスは起こっていたが、前半は見違える出来だった。 ▽後半に入り、オーストラリアのスイッチが入ったことで立ち上がりに圧力をかけられた。それでもしっかりと守っていた日本だったが、PKからゴールを献上した。妥当なPKだったが、原口のチャレンジは悪いものではなかったと思う。 ▽試合を通してブロックを作り、カウンター狙いに徹した日本は、小林のヘディングシュートなど追加点を奪うチャンスも作っていた。勝利が欲しかった試合内容ではあるが、オーストラリアとアウェイで戦っている以上、勝ち点1でも問題なかった。むしろ、試合内容としては、最終予選の4試合でベストだったのではないだろうか。 ▽個人的に最も評価したい部分は、“アウェイ”での戦い方を見せたことだ。日本はこれまで“アウェイ”での戦い方を得意とせず、ホームでもアウェイでも変わらない戦い方を見せていた。もちろん、それで結果を出せればいいのだが、そうでないことの方が多かった。世界で戦うには時にはリアリストになることも重要であり、それはユーロ2016を見ても分かる通り。守ってカウンターという戦い方で結果を残した国はご存知のとおりだ。 ▽もちろん、手放しで喜んでいるわけではない。攻撃の組み立て方、フィニッシュの精度、クロスの精度…課題は数多いだろう。しかし、ハリルホジッチ監督がチームを作り上げている過渡期と考えれば、一定の結果をオーストラリア相手に示せただろう。そして、進んでいる道は間違っていないことを感じさせてくれたように思う。 ▽采配についても多くの意見が見られるが、目指していたものを考えれば妥当とも言える。最後のカードとして先制ゴールの原口に代えてDF丸山祐市を選択した。確かに、勝利を目指すためには、FW齋藤学という選択肢もあっただろう。しかし、あの時間帯で目指したのは、守備のリスクを軽減することだったはず。試合を通して集中した守備を築いてきた中で、得点を目指すためにバランスを崩すプランはなかったはずだ。浅野のカウンターで一発という狙いはあったが、人数をかけて崩す前に、オーストラリアに逆転ゴールを奪われていたかもしれない。ハリルホジッチ監督は、プラン通り勝ち点1を獲りに行ったのだろう。 ▽主力を負傷や出場停止で欠き、普段とは違うゲームプランでオーストラリア戦に臨んだ日本代表。勝ち点があと2つ取れていれば言うことなしだったが、試合の流れから決めたプランを遂行できたことは大きいだろう。当然、ホームでのオーストラリア戦は同じゲームにはならない。きっと、ハリルホジッチ監督は勝利を目指して戦うはずだ。 ▽来月のサウジアラビア代表戦で最終予選は折り返すこととなる。このオーストラリア戦での戦いを無駄にしないためにも、1カ月後のホームゲームまでチームとして同じ道を進み、勝利を掴むためにしっかりと準備をしてもらいたい。 《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》 2016.10.12 18:00 Wed
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