【ユーロ2016総括】守備組織の際立った大会はポルトガルの初優勝で幕

2016.07.12 07:00 Tue
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▽6月10日から7月10日にかけて行われたユーロ2016は、開催国フランスを破ったポルトガルの初優勝で幕を閉じた。参加国がこれまでの16チームから24チームに増大したことで試合レベルの低下が懸念されたものの、質の伴った非常に拮抗した試合が多かった印象だ。その要因としては、戦力的に劣るチームが優れた指揮官の下で際立った守備組織を構築していたことが挙げられる。そんな大会を制したのは、これまでの攻撃スタイルからサントス監督の下で守備偏重なスタイルを貫いたポルトガルだった。

◆貫いた守備意識~ポルトガル~
▽伝統的に優秀なウインガーを数多く輩出するポルトガルはウインガーを生かす[4-3-3]を採用することが多かった。しかし、今大会はストライカー不在という長年の懸念を払拭するべく、C・ロナウドとナニを前線に置く[4-4-2]で臨んだ。結果的にこのシステム変更によって攻撃面での機能性は失われていたものの、中盤の枚数を増やしたことでA・シウバやジョアン・マリオ、レナト・サンチェスといった若手たちの献身的な守備が機能し、ディフェンス力が増した。さらにバックラインには世界屈指のセンターバックであるペペが構えていたため、安定した試合運びを実現できた。
▽とりわけ決勝トーナメントに進出して以降のポルトガルの戦いぶりは徹底されていた。グループステージでは格下のハンガリー、アイスランドに続く3位通過と苦戦を強いられたが、決勝トーナメント1回戦では大会屈指の攻撃力を誇っていたクロアチアを120分間に渡ってシャットアウト。クアレスマのゴールで競り勝った。続くポーランド戦も新星レナト・サンチェスの同点ゴールが33分に生まれて以降はボールを持たせる戦いを徹底し、PK戦の末に勝ち上がった。

▽そして準決勝ウェールズ戦でも戦力的に劣る相手にボールを譲る守備ベースの戦術を採用し、C・ロナウドの1ゴール1アシストで決勝に進出。迎えた決勝のフランス戦も負傷でC・ロナウドが途中交代となった中、リスクを排除しながら時間を進め、劣勢ながら延長戦の末に生まれたエデルのゴールで、悲願の初戴冠に漕ぎ着けた。今大会のポルトガルは自らが理想とするサッカーからは程遠かったものと思われるが、一方で守備組織が際立った今大会の象徴的な存在がポルトガルだったことも事実。歴史的な初優勝に値する戦いぶりだったと言えるだろう。

◆優勝には届かずも堂々の準優勝~フランス~
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▽あと一歩で優勝を逃したフランスだが、開催国として十分な存在感を放った。グループステージではパイエが、決勝トーナメントに入って以降はグリーズマンといったタレントがその実力をコンスタントに発揮。ベンゼマ不在によって懸念されていた得点力をカバーする働きを見せた。守備陣に関してもコシエルニーを軸に安定。デシャン監督の采配も冴え、準々決勝アイスランド戦で出場停止のラミに代わって先発したユムティティを準決勝ドイツ戦でも起用し、決勝まで導いた。惜しむらくは決定力を欠いた決勝でベンゼマがいたら…という点だが、チームに雑音が生まれる可能性もあっただけに致し方ない結末だったのかもしれない。いずれにしろ、グリーズマンやポグバ、ユムティティといった今後のフランスを担う人材が今大会で積んだ経験は計り知れないものがあるはずだ。
◆初出場でベスト4の偉業~ウェールズ~
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▽ユーロ初出場のウェールズがベスト4進出の偉業を果たした。チームを牽引したのは紛れもなくベイルだ。決勝トーナメントに入って以降はゴールを奪えなかったものの、グループステージで3戦連発し、イングランドが同居したグループを見事首位で通過。準々決勝ではタレント軍団ベルギーに3-1と快勝する番狂わせを演じた。A・ウィリアムズを軸とした5バックを自陣に形成し、攻撃に人を割けない中、ベイルの単騎突破によってウェールズはゴールを生むことができた。彼と共にラムジーの推進力もウェールズにとっては強力な武器となっていたが、そのラムジーを準決勝ポルトガル戦で欠いたことが何より痛かった。とはいえ、この戦力で欧州4強の座まで登り詰めたのは歴史的偉業。胸を晴れる結果だ。

◆主力欠いて力尽きた世界王者~ドイツ~
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▽ブラジル・ワールドカップ王者であるドイツも負けて尚強しという存在感を示した。2戦目までゲッツェのゼロトップを採用していたドイツだったが、機能しないと見るやレーブ監督が断念。見切りを付けてグループステージ最終節からゴメスを最前線に置くと、それ以降は圧巻の強さを誇った。ゴメスの存在によって2列目のエジルやドラクスラーが生かされ、攻撃の機能性が格段に改善された。決勝トーナメント1回戦のスロバキア戦を快勝し、続く準々決勝イタリアとの激闘は1-1の末に9人目までもつれ込んだPK戦を守護神ノイアーの活躍で制した。しかし、そのイタリア戦でゴメスとケディラが負傷し、フンメルスが出場停止に追い込まれ、準決勝フランス戦では満身創痍の状態に陥ってしまった。そんな中でもフランス相手に主導権を握る力強さを見せ付けたが、ゴメス不在による決定力不足が響き、決勝進出は阻まれた。

◆堅守光った好チーム~アイスランド、イタリア、ポーランド~
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▽ベスト8に進出したチームの中でアイスランド、イタリア、ポーランドの3カ国も堅守の光る好チームだった。ウェールズと共に今大会のサプライズチームとなったアイスランドは、長年スウェーデン代表を指揮してきたラーゲルベック監督の下で、統制の取れたフラットな[4-4-2]の布陣を形成。優勝したポルトガルが同居したグループステージを無傷で乗り切ると、決勝トーナメント1回戦ではイングランドを撃破するジャイアントキリングを起こした。続くフランス戦では力の差を見せ付けられたものの、熱いサポーターと共に大会を彩るチームとなった。

▽前評判の低かったイタリアは闘将コンテ監督の下で実力以上の結果を残した。守備陣以外にタレントのいない今大会のイタリアだったが、ハードワークと守備意識を徹底することでベルギーやスペインといった格上のチームを撃破。準々決勝ドイツ戦も粘りを見せてPK戦にまでもつれ込ませる泥臭さを見せ付けた。

▽初の決勝トーナメント進出を果たしたポーランドも堅守が売りのチームだった。今大会屈指のストライカーであったレヴァンドフスキが本調子でない中、グリクを軸とした守備陣が奮闘。ドイツが同居したグループステージを無失点で終え、決勝トーナメントに入って以降もスイスを1失点に抑えてPK戦の末に制した。ポルトガルとも互角以上に渡り合ったが、PK戦で涙を呑んだ。

◆大会盛り上げたマイナー国~北アイルランド、スロバキア、ハンガリー~
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▽初出場ながら決勝トーナメント進出を果たした北アイルランドとスロバキア、44年ぶり出場の古豪ハンガリーといったマイナー国も大会を大いに盛り上げた。J・エバンスとマッコーリを擁して鉄壁の5バックを築いた北アイルランドは、乏しい戦力ながら専守防衛とセットプレーを生かす割り切った戦いぶりで見事ベスト16進出を果たした。

▽スロバキアもシュクルテルがさすがの存在感を放って守備を締め、ハムシクとヴァイスの両アタッカーが攻撃を牽引。グループステージを2位で通過し、チェコとの分離独立後初の決勝トーナメント進出を果たした。ハンガリーは良い意味で予想を裏切るチームだった。大会最弱かと思われていたが、意外にもボールをつなぐサッカーを展開し、グループステージではポルトガルと激しい打ち合いを演じて見せた。

◆優勝候補も期待外れ~イングランド、スペイン、ベルギー~
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▽戦力的には優勝してもおかしくないレベルにあったはずのイングランドだったが、ベスト16でアイスランドに敗退と期待外れの結果に終わった。原因は大会前から懸念されていた監督の問題に尽きる。ケインやヴァーディ、スタリッジにルーニーと優れたストライカーを多数擁しているにも関わらず、ホジソン監督は[4-3-3]にこだわり2トップを採用しなかった。さらにアイスランド戦で今大会乗れていなかったケインとスターリングを先発で起用するなど、采配に柔軟性が見られなかった。今大会を持って契約が切れるホジソン監督は当然ながら辞任に至っている。

▽イングランド同様、ユーロ3連覇を目指したスペインも期待外れだった。イニエスタがチームを牽引し、モラタがゴールを重ねたが、グループステージ最終節のクロアチア戦でケチが付いた。引き分けでも首位通過だった中、終盤の被弾でまさかの2位通過に終わり、苦手イタリアとノックアウトラウンド1回戦で当たることになってしまった。そのイタリア戦では終始相手のハードワークに苦しみ、良いところのないまま完敗。ワールドカップとユーロ優勝に導いたデル・ボスケ監督は退任し、王者の称号を失ったスペインは新たな船出を切る。

▽ベスト8まで勝ち上がったものの、ベルギーも本領を発揮したとは言い難い大会となった。大会屈指のタレントを擁していたベルギーだったが、個人頼みの仕掛けが目立ち、連動性を欠いていた。結局、守備陣に故障者が相次いだ準々決勝のウェールズ戦で相手との組織力の差が如実となり、インパクトを残せないまま大会を去った。期待外れに終わった3カ国はともに監督がチームに自らの哲学を植え付けきれなかった国々だったと言えそうだ。
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