【原ゆみこのマドリッド】これからが大変だ…

2016.06.24 12:35 Fri
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▽「やっぱりあまりいい仕組みじゃないわよね」。そんな風に私が思ってしまったのは木曜日、日曜にはグループ最終戦でルーマニアを破り、3位となったアルバニアがベースキャンプ地のペロス・ギレック(大西洋に面したリゾートタウン)で3日間も待った挙句、結局敗退が決まり、帰国の途につくことになったという記事を読んだ時のことでした。いやあ、これまでのユーロだったら、2位までしか決勝トーナメントに進めず、3位以下のチームは自分たちのグループリーグ戦が終わったら、すぐバケーションに入れていたものだったんですけどね。

▽この参加国が24に増やされた拡大ユーロでは、準々決勝の前にベスト16戦をつくるため、3位でも成績のいい4チームが勝ち抜けることになり、いえ、グループ3位が決まった時には国から報奨金が支給されるとか、景気のいい話もアルバニア代表にはあったんですけどね。初参加のユーロで初勝利を挙げただけで、突破はできなかったとなると、もしかしたらそれも取り消されてしまうかも。
▽まあ、そんなことを言ったら、やはり水曜の試合でアイルランドがサプライズを起こしてイタリアに勝利、それもブレイディのゴールが入った後半40分までは、最終戦で選手たちが心を入れ替えてチェコに勝利したため、成績のいい3位の上4つに入っていたトルコなど、もっと可哀想じゃないかって?それはそうなんですが、従来のシステムであれば、3位はもうその時点で落伍したチーム。それを勝ち点が4か3か、得失点差が上か下かで争って、結果として勝ち抜けたスロバキア、アイルランド、ポルトガル、北アイルランドが賞賛の的になり、敗退したアルバニアとトルコには実力が足りなかったように思われるのも、何か違うという気がしないでもないんですが…。

▽え、それより肝心のスペインが大変なことになっているんじゃないかって?その通りで、彼らは火曜にグループリーグ最後のクロアチア戦に挑んだんですけどね。首位の座が懸かっていたせいか、第2戦のトルコ戦であまりにいいプレーをしたからか、デル・ボスケ監督は3試合目もまったく同じスタメンを並べることに。いえ、前半7分にはシルバ(マンチェスター・シティ)、セスク(チェルシー)の連携からラストパスが通り、モラタ(ユベントス)がゴール前から先制点を決めてくれたため、いい感じだったんですけどね。13分にはGKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)のゴールキックがエリアすぐ近くでラキティッチ(バルサ)に渡り、そのvaselina(バセリーナ/ループシュート)がゴール枠を叩いてヒヤリとさせられたのはともかく、時間が経つにつれ、ピッチで元気に走り回っているのはクロアチアの選手ばかりという状態に。

▽それでもリードしていましたし、別に引き分けでも首位突破はできるため、私も夕食の準備をしようとハーフタイムを待っていたんですが、まさかねえ。あと1分というところで、ペリシッチ(インテル)のクロスをラキティッチに頭で流され、カリニッチ(フィオレンティーナ)に器用なtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で同点ゴールを決められてしまうとは!その日は敵の高いプレスに守備のミスが幾つか続いていたスペインですが、もしやケガでマンジュキッチ(ユベントス)やモドリッチ(レアル・マドリー)が欠場していたせいで、DF陣にも油断があった?
▽相手に心理的なショックを与える時間帯に追いついたクロアチアは後半も攻勢をかけてきたため、デル・ボスケ監督はノリト(セルタ)をブルーノ(ビジャレアル)に代えて中盤を強化。その後は、丁度この試合の始まる2時間程前、買戻しオプションを行使して、2年前に1000万ユーロで売却したユベントスから3000万ユーロで復帰することになったと、レアル・マドリーから公式発表があったモラタもその日はもう1本ゴールを挙げて、古巣でポジションを争うことになるウェールズ代表のベイルが決めた今大会最多の3得点に並んだことで、まあいいだろうと思ったんでしょうかね。アドゥリス(アスレティック)に代えたんですが、あってはならないことが起こったのは後半25分になってからでした。

▽いえ、シルバが敵DFにエリア内で倒されたプレーがペナルティとなったこと自体、ちょっと怪しかったんですけどね。スペインにPKが与えられ、最初にボールを持っていたのはセスクだったんですが、セルヒオ・ラモス(マドリー)が取ってしまうって、もしかしてそれって、キャプテン権限の乱用では?ちなみにデル・ボスケ監督によると、彼は事前にPKキッカーを誰とは指名しておらず、「ウチには何人かキッカーがいて、蹴る選手を決めるのは自分ではないと思う。自信の問題なんだから、que lo tire el que mejor se encuentre/ケ・ロ・ティレ・エル・ケ・メホール・セ・エンクエトレ(一番感触のいい選手が蹴ればいい)」って言うんですが、ちょっとお。ここまで自分のチームが29本のPK中12本を失敗していることを踏まえれば、かなり適当じゃありません?

▽実際、キックには自信があるものの、クラブの試合でのbalon parado(バロン・パラードー/止まったボールからのプレー)はクリスチアーノ・ロナウドやベイルの専売特許となっているため、前半はFKまで蹴りたがっていたラモスですけどね。そのせいか、やはりキッカー候補だったイニエスタなども、「Iba a tirarlo, pero Ramos lo pidio y estaba con confianza/イバ・ア・ティラールロ、ペロ・ラモス・ロ・ピディオ・イ・エスタバ・コン・コンフィアンサ(蹴るつもりだったけど、ラモスが頼んできて、自信があるようだった)」と遠慮してしまったんですが、唯一の計算違いはクロアチアにはモドリッチがいたこと。

▽そう、その日は太ももを痛めてベンチで観戦していたマドリーの同僚は、ラモスが蹴る前にキャプテンのスルナ(シャフタール・ドネツク)に合図。その「耐えて右に飛ぶように」というメッセージをスルナがGKスバシッチ(モナコ)に伝えたところ、見事にラモスのPKを止めてしまったから、困ってしまうじゃないですか。いやあ、あとでスバシッチは「モドリッチはプレーしなくても偉大だ」と褒めていましたけどね。万が一、イニエスタが蹴っていたとしてもラキティッチが何か言っていたかもしれないし、ここはクロアチアにはクラブの同僚もおらず、自分のチームでいつもPKを蹴っている本職のアドゥリスやブルーノに任しておいた方が良かったかもしれません。

▽え、PKをムダにすると、幸いグリースマンは木曜に契約を2021年まで延長してもらうことができたものの、CL決勝のアトレティコのように後でツケを払うのは当然だろうって?そうですねえ、引き分けでも良かったため、やはりクロアチア戦前にプレー時間の少ないことを嘆き、「No merece la pena estar aqui solo para hacer grupo/ノー・メレセ・ラ・ペナ・エスタル・アキー・ソロ・パラ・アセール・グルッポ(チームの結束を高めるためだけにここにいる価値はない)」と、代表引退をほのめかしたペドロを、いくら当人が釈明会見をして、個人的にも謝罪されていたとしても、すぐに使うのはどうかとデル・ボスケ監督も考えたんですかね。最後はセスクをチアゴ・アルカンタラ(バイエルン)に代えたところ、それから間もなく、残り3分にアドゥリスのシュートが敵エリア前で敵の壁に跳ね返された直後、クロアチアのカウンターが炸裂。

▽矢のように走っていくカリニッチをスペインの選手は誰も止められず、最後はピケ(バルサ)のタックルも空しく、ペリシッチにGKデ・ヘアのニアサイドを破られてしまったから、さあ大変!もうあまり時間もなかったため、結局、この1点でクロアチアに2-1と負けてしまいましたが、一番痛かったのは、おかげでトルコ戦快勝から盛り上がってきた雰囲気に水が差されてしまったことかも。いやあ、試合後は、ピケがスペインの国歌吹奏の時にデ・ヘアの肩にかけた手でpeineta(ペイネタ/中指を立てる卑猥なポーズ)をしていたんじゃないかという疑惑なんて、全然些末なものなんですけどね。昨季のバルサでは十分頻繁にローテーションしてもらっていたイニエスタを含め、8日間で3試合のハードスケジュールにも関わらず、同じスタメンをずっと使ったとか、やっぱり正GKはデ・ヘアでなく、カシージャスの方が良かったのではとか、デル・ボスケ監督の選手起用法に対する批判なども上がるように。

▽それだけでなく、グループ2位になったスペインは当初の予想と真逆に茨の道を歩むことが決定。ええ、ベスト16でイタリアと対戦するばかりか、準々決勝ではおそらくスロバキアを倒して上がってくるだろうドイツ、更に準決勝でもアイルランド、アイスランドをそれぞれ倒して上がってくるだろう、フランスかイングランドと当たるだろうって、一般のサッカーファンにとっては垂涎のカード続きですが、スペインを応援する立場の者としては恐ろしいことこの上ありません。

▽ええ、2008年のユーロ準々決勝ではそれこそ、イタリアにPK戦で勝ってその後、優勝を果たした彼らですが、まだミラノでの決勝の記憶が生々しいファンフラン(アトレティコ)なども記者会見では、「Espero ganar a Italia sin tener que llegar a los penaltis/エスペロ・ガナール・ア・イタリア・シン・テネール・ケ・ジェガール・ア・ロス・ペナルティス(イタリアにはPK戦まで行かずに勝ちたい)」と言っていましたよ。

▽まあ、実際彼らには「組み合わせは置いておいて、ここはアトレティコの哲学を採用すべき。Ir partido a partido/イル・パルティードー・ア・パルティードー(1試合1試合取り組む)」」(ファンフラン)という気持ちで挑んでいってもらうしかありませんけどね。逆に1位になったクロアチアはベスト16で、「ウチは3度ユーロの外にいたが、その度に戻った」と3試合目のハンガリー戦でようやく今大会で2ゴールをゲット、どちらもスコアをタイにする貴重な得点で、キャプテンの面目躍如をしたロナウド率いるポルトガルと対戦することに。こちらもモドリッチには要注意ですが、その次はスイスかポーランド、準決勝はウェールズ(ベイルも同様)/北アイルランド、ハンガリー/ベルギーの中から上がってきたチームということで、超大国とは顔を合わせないのはちょっと羨ましいかと。

▽といっても、イル・ド・レ(レ島)に戻った水曜は休養日をもらい、お昼には家族同伴でバーベキュー組と港近くのレストランでの会食組に分かれ、気分転換を図ったスペインの選手たちは元気なんですけどね。ええ、あのクロアチア戦を「el partido raro/エル・パルティードー・ラーロ(変な試合)」で片付けていたラモスなど、その後、息子のセルヒオ・ジュニア君とTVタレントの彼女、ピラール・ルビオさんと一緒にサイクリングしている様子をインスタグラムに投稿していましたし(https://www.instagram.com/p/BG9-OTji9ft/?taken-by=sr4oficial)、デ・ヘアもツィッター(https://twitter.com/D_DeGea/status/745692663228293122)に「Gracias por las críticas, me motivan/グラシアス・ポル・ラス・クリティカス、メ・モティバン(批判してくれてありがとう。ボクのモチベーションになるよ)」と、何だかロナウドみたいなことを呟いていたため、落ち込んでいる人はいないよう。

▽そして木曜からは練習も再開され、その大変なイタリア戦は来週月曜にパリであるんですが、それはまだ先のこと。相手もグループリーグ3戦目ではローテーションをしたとはいえ、アイルランドに遅れを取るなど、決して完璧ではありませんからね。その辺に希望は持てるものの、今になってデル・ボスケ監督がPKキッカーを決めることは多分、ないでしょうが、それまでにモラタからユベントスのメンバー中心の守備陣の弱点を聞き取り調査したり、幸い、ケガ人は1人もいないため、これまでのスタメンだけでなく、もっとチームの力を引き出すことのできる選手起用法を考えたりと、課題は結構、沢山あるかも。

▽何せ2年前のワールドカップとは違い、グループリーグ敗退は免れたとはいえ、ここで躓いていてはまた、muro de los cuartos/ムロ・デ・ロス・クアルトス(準々決勝の壁)にぶち当たってしまうかもしれないスペインですからね。イタリアには絶対、勝つという気構えはもちろん、作戦も慎重に練ってくださいね。

【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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